2016年10月3日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2016/10/04 15:37

花の一里塚~市場見通しサマリー

2016年10月3日時点での主要市場見通し

 
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基本シナリオと見通し数値について

 世界経済・市場の大きな流れは、比較的楽観的に見込んでいる。新興諸国の経済は、中国は減速が続き、ブラジルなど低迷している国々もあるが、中国経済の減速度合いは緩やかにとどまり、ブラジルなども昀悪期は徐々に脱しつつあると予想する。先進国では米国の緩やかだが堅調な景気回復基調が、全体を支える形となろう。市場価格の評価においては、日本株は依然として割安に放置されており、上方への株価水準の修正が見込まれる。

 ただし11月上旬にかけては、株安・円高への振れを懸念せざるを得ない。その背景は、1)米国株の割高さが修正されうる、2)米大統領・議会選挙や米財務省半期為替報告書などによる、政治的な米ドル安が生じうる、3)日本株については、7~9月期までの企業業績の不振を織り込みに行くと予想される、といった点だ。

 その後中長期的には、世界市場は明るさを取り戻そう。

 前号までの当レポートで、既に11月初旬にかけての株安・円高は予想していたが、その調整前に生じると期待していた、株高・円安が完全に空振りに終わってしまった。当面の株安・円高の起点(発射点)が予想より低くなった(株安・外貨安になった)ことを受けて、今年内の予想を中心に、見通しを下方修正した。

 2016年12月までの予想について、具体的な修正は次の通り(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 16000~18000 ⇒ 1470017500
10年国債利回り(%) -0.3~0.3 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 100~110 ⇒ 97107
ユーロ(対円) 110~120 ⇒ 105~120
豪ドル(対円) 73~85 ⇒ 70~85

 2017年6月までの予想について、具体的な修正は次の通り(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 16000~21000 ⇒ 15000~21000
10年国債利回り(%) -0.1~0.5 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 100~115 ⇒ 変更なし
ユーロ(対円) 115~130 ⇒ 110~130
豪ドル(対円) 75~100 ⇒変更なし

シナリオの背景

・中長期的には、株高・外貨高シナリオを堅持する。

・世界全体の実質経済成長率は、IMF(国際通貨基金)の7月時点の見通しによれば、2015年3.1%→2016年3.1%→2017年3.4%と、決して加速はしないが、底固く推移すると予想されている。緩やかな景気回復に沿った、緩やかな株価上昇基調が、世界全体としては期待できる。

・新興諸国では、これまで経済の不振が失望を招いてきた。中国では過剰設備の調整が進む(政策もその方向性にある)ことから、今後も経済成長率が低下していこうが、その度合いが緩やかにとどまるよう、景気支持策も打ち出されている。そのため、今後も長期間にわたるが緩やかな景気調整が中国では持続すると見込まれ、他国経済を後退に引きずり込むような悪化度合いとはならないだろう。

・実際、豪州から中国向けの輸出額によって、中国経済の状況を推し測ると(図表1)、輸出額は減少傾向にはあるが、一本調子の減少とはなっていない。中国の景気減速が限定的な速度で進んでいると推察できる。

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・ブラジル、ロシアなどの新興主要国では、景気は不振だ。ただ、国際商品市況の下げ止まりなどもあって、悪化には歯止めがかかりつつあると予想される(とはいっても、経済が大きく改善するわけでもない)。こうした景気の自律的な底入れを先取りして、ブラジルやロシアの円換算後の株価をみると、今年1月を昀悪期として、既に持ち直しに入っている(図表2)。

・先進国においては、米国では8月の諸経済指標が減速色を強めたが、一時的なものであり、景気の緩やかな回復といった基調は揺らいでいないと推察される。週当たりの雇用者総賃金額をみると(図表3)、8月に減速はしたものの、傾向的には前年比で4%前後の極めて安定した伸びを維持しており、個人消費や住宅投資の下支えとして働いている。

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・一方欧州では、ユーロ圏・英国とも、実質経済成長率は1%台で低迷しているものの、英国のEU離脱に伴う、家計や企業の心理の悪化は、限定的にとどまったようだ。ドイツ銀行など大手銀行の経営不安が取りざたされているが、ドイツ銀行クラスの銀行については、財務内容を踏まえれば破たんなどは杞憂に過ぎない。


・ただ、欧州ではECBのマイナス金利政策により、金融機関の収益環境は厳しい。個別行の破たんは、今後否定できない。ただし個別の経営破たんが全体の金融システムに不安をもたらすようであれば、EU、ECB、各国政府はそれを容認せず、潤沢な資金供給などの対応策を打ち出そう。

・以上の経済環境を踏まえれば、世界的に2017年に向けては、株高・外貨高(円安)傾向が見込まれる。

・特に日本株は、予想PERが安倍政権発足後のレンジ下限で推移しており(図表4)、依然として割安に放置されている。中長期的には、何らの新規の好材料がなかったとしても、株価の上方への水準訂正が期待される。

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・ただし目先(11月初旬にかけて)は、株安・円高が進む恐れが強いと考える。その要因は、主に3つある。

・1つ目は、米国株価が予想PERで見て高すぎる状態にあるため、その調整が生じると懸念されることだ(図表5)。近年でのPER調整は、2015年7~8月(図の左の丸印)と今年1~2月(右の丸印)に生じ、ともに株価指数が10~15%下落した。目先も、同程度の株価下落が見込まれよう。

・とは言っても、米国経済の基調が悪化するわけではなく、米国株価が下がる理由はPER調整だけであるため、株価が短期的に下落してPERの水準が低下すれば、そこからは、再度米国株価は上昇基調に復すると予想する。

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・2つ目は、米大統領・議会選挙(11月8日投開票)において、候補者が、「米輸出企業の雇用を守るため、米ドル安・円高および中国元高が望ましい」といったような発言を行ない、それが米ドル相場を押し下げる(円高になる)恐れがあることだ。また、10月には、米財務省為替報告書が公表される予定(過去に11月に公表がずれ込んだことはある)で、4月に続き、日本を「監視リスト」に載せるなど、米ドル高に対するけん制色が強く打ち出される可能性が高い。

・しかし米国での選挙などが一巡すれば、政治的な米ドル安圧力は剥落し、その後は米景気の堅調さ(およびそれに沿った米連銀の緩やかな利上げ)と並行的に、米ドル高に向かうと予想している。

・3つ目は、日本株に関連して、企業業績は7~9月期まで前年比で2割程度の減益が見込まれており、前年比ベースでの改善は10~12月期からになると予想されている。このため、決算発表前に企業側が自社の収益見通しを下方修正すると懸念されるうえ、7~9月期の決算発表が一巡する11月上旬までは、国内株式市況は、収益悪化を織り込まざるを得ないだろう。

・とりわけ、国内消費者のマインド停滞と、中国人観光客による「爆買い」の剥落で、高価格帯の小売・外食・消費財産業が、足元では大きく打撃を受けている。また夏場の台風の多さも、消費関連産業に影を落としたようだ。

・こうした収益面での昀悪期を織り込めば、その後は収益持ち直し期待に沿った、国内株価の水準訂正が期待できる。

・以上より、世界市場の先行きについては、目先は調整、中長期的には好転を、予想しているわけだ。

以上、シナリオの背景。このあと、前月号(2016年9月号)見通しのレビュー。

前月号見通し(2016/9/1時点)のレビュー

(1)日経平均株価
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日経平均株価は、予想レンジ内での推移が続いたが、9月下旬~11月上旬に予想する株価調整期の前に、一旦レンジ上限に株価が近付くと予想していたところ、上昇は空振りに終わった。調整相場の発射台が低くなったため、予想レンジを下方修正する。

(2)国内長期金利
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・10年国債利回りは、マイナス圏で推移していたが、9/20~21の日銀金融政策決定会合で、0%近辺に誘導する意向が打ち出された。長期金利は動きに乏しい推移を続けよう。


(3)外国為替相場
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・9月の外貨相場は、大きく円高にも円安にも振れなかった。
・今後は米国発の政治的な米ドル安要因が台頭し、短期的に米ドル安・円高に進むものと懸念される。他通貨の対円相場も、それにつれて外貨安・円高に進みうる。このため、予想レンジを総じて下方修正する。

(以上)

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配信元: みんかぶ株式コラム