先物取引の短期売買、実はローリスク? 「一日先物取引」顧客データで明確になった“不安定相場を乗り切る投資手法”
───松井証券シニアマーケットアナリスト・窪田朋一郎氏に聞く
「一体、この先どうすればいいのか?」こんな個人投資家たちのため息が聞こえてきそうな昨今の不安定な証券市場。8月の中国人民元の切り下げに加え、国際市場の優等生と見られていた世界ナンバーワンの自動車メーカー・フォルクスワーゲンの不正発覚などにより、つい数か月前までは想像もつかなかったような混迷局面を迎えている。ではそんな中、私たち個人投資家はどうやって生き残ればいいのだろうか。
本稿では、現状の分析と、今後の個人投資家が取るべき方策について、「株式経済新聞」副編集長の中村潤一が、各メディアでお馴染みの松井証券シニアマーケットアナリスト・窪田朋一郎氏に聞いた。
正念場を迎えたアベノミクス。では個人投資家はどう動くべきか?
中村 中国経済減速の余波が周辺のアジア新興国を覆い、欧州ではフォルクスワーゲンの排ガス不正問題が発生、米国でもFRBが利上げを後ろ倒しするなど、ここに来て、世界経済の変調が露わになってきました。そんな中でわが国の株式市場も、わずか1か月強で2万円台から1万6000円台まで下落するなど、不安定な状況を迎えています。窪田さんは現状をどのようにお考えですか?
窪田 おっしゃる通り、世界的にリスクオフの流れが明確になってきたのではないかと考えています。チャイナ・ショックはもちろん、欧州ではフォルクスワーゲン以外にも難民問題が今後の市場の混乱に結び付く可能性が出てきましたし、原油を始めとした資源価格下落の影響も大きい。米国の経済指標次第で利上げを決定すると言っていたFRBが不安定なマーケットの影響を受けて早々に利上げを見送った事も、金融政策の予見性が失われてマイナスです。これらを見ても、近年続いた世界的な株価の上昇局面は、実は既にピークアウトしているのではないかと感じざるを得ません。一部には大手ヘッジファンドが損失を抱え、利益確定の売りを出さざるを得なくなっているといった話もあります。
中村 市場関係者の話を聞くと、強気と弱気の真っ二つに分かれています。窪田さんは、まだ日本市場が上昇トレンドにあった夏以前から、今回の局面を予想するようなシビアな見方をしていたのが印象的でしたが。
窪田 楽観論の背景には、株価が短期間で急落したことによる割安感があると思いますが、ファンダメンタルを冷静に観察すれば、企業収益の改善は円安による為替差益が主なもので、もし、FRBがさらに利上げを延期するようなことがあれば、これまでのドル高基調が一変し、企業収益を直撃する“円高リスク”も考えられます。そういった意味でも、私は今、アベノミクスは正念場を迎えていると考えています。現在、追加緩和など政府の景気対策を期待する声も聞こえてきますが、少なくとも今年いっぱい、冬にかけては不安定な相場状況が続くと思います。
中村 そう考えると、多くの個人投資家にとっては非常に投資しづらい局面が続きますね。アベノミクス開始以来、多くの個人投資家が利益を上げることに成功しました。上昇局面では素直に投資していればよかったのですが、現在のような見通しの中ではそうもいかない。先日、中堅の海運会社が倒産しましたが、特に個別株への投資では読みにくい状況が続くのかもしれませんね。
窪田 そうですね。そうした背景もあってか、現在、個別株から株価指数へと個人投資家の関心が徐々に移ってきているのではないかと感じています。特にアクティブな投資家にその傾向は顕著です。現在、日経平均を対象としたレバレッジ型のETFの取引が活発で、このところ松井証券の顧客データでは売買代金トップに立っていますが、これはその象徴でしょうね。
昨年まで、アクティブな投資家はミクシィやFFRIなど新興市場の人気銘柄に集まっていました。ですが、現在のような不安定な相場では、流動性の面からこうした新興市場銘柄には手を出しにくくなっています。そうした投資家にとって受け皿になっているのが、レバレッジ型のETFで、さらに積極的に利益を得ようと考える一部の投資家は、先物取引へと流れています。
中村 なるほど。ですが一般的な投資家にとって、先物取引というとボラティリティが高く、非常にハイリスクなイメージがありますよね。
窪田 もちろん、個別株やETFと違って先物取引はレバレッジが大きいですから損失も大きい。フルにレバレッジを掛けている場合、日経平均の先物では10%下落すると投資資金が全て吹っ飛ぶ計算になります。しかも夜間取引もあって取引時間が長いですから、ちょっと気を抜くと一気に損失が拡大する恐れもある。実際、8月の人民元切り下げショックによって多くの先物投資家がダメージを受けました。
そうした前提があることは確かですが、ここに一つ興味深いデータがあります。松井証券が2月に始めた「一日先物取引」のお客様と通常の先物取引のお客様の実現損益額を比較したチャートなのですが、8月19日に始まった日経平均の急落によって、通常の先物取引ではお客様に大きな損失が生じました。1口座当たり平均100万円の損失ですから大変な状況です。ところが「一日先物取引」の投資家に限っては、ほとんど損失が出ていないのです。
実現損益額の比較(「一日先物取引」vs先物取引) ※左軸=実現損益額(顧客一人あたり平均)、右軸=日経平均先物価格 ※金額はラージとミニの合計 ※松井証券の2015年8月の顧客取引データを元に作成 |
荒れた相場には「一日先物」、上昇トレンドでは通常の先物取引を
中村 ここまで鮮明に違いが浮き彫りになるとは、確かに面白いデータです。なぜこうした結果が生じるのか。通常の先物取引と「一日先物取引」では具体的にどのような点が異なるのでしょう?
窪田 「一日先物取引」は、松井証券が今年2月にアクティブな投資家向けに開発したサービスです。返済期限をワンセッション内に限定したうえで、日経225先物miniでは約定1枚あたり25円という業界最安水準の手数料を設定し、少額証拠金制度の適用によって約40倍という業界最高水準のレバレッジを実現しています。安い手数料で、しかも通常の先物取引の半額程度の資金で先物取引ができるのです。
中村 先んじてサービスを開始した「一日信用取引」のノウハウを先物取引に発展させたわけですね。「一日信用取引」でも、オーバーナイトを認めない強制ロスカットのシステムで、結果としてローリスクな商品になったとお聞きしましたが。
窪田 はい、ですから私たちも今回の結果はある程度は予測していましたが、レバレッジの大きな先物取引ではより顕著に現れましたね。「一日信用取引」が一日で手仕舞うのに対して「一日先物取引」ではセッションごとですので一日2回手仕舞うことになります。
多くの個人投資家の心理としては、株価の急落を受けてまず考えることは、元本を取り戻すこと。急落すればすぐに反発すると考えてしまいがちです。ですが、現在のようなボラティリティの高い不安定な相場では、予想以上に株価の急落が続き、大きく損失が膨らんだ所でロスカットされてしまいます。その点、「一日先物取引」なら、セッション毎に一旦リセットされるので、冷静な頭で再度ポジションを持つ事ができ、結果的に勝てるという結果が現れています。
中村 個別株の投資にも言えることですが、得てして個人投資家は、含み損には甘いですからね。
窪田 「一日信用取引」でも実証されたデータですが、個人投資家は自らの失敗を認めることがなかなかできない。これが私情の弱さと言えるのではないかと思いますが、「一日先物取引」のシステムならこの弱さを補い、サポートすることができるわけです。しかも先ほどお話ししたように、少額証拠金制度を適用していて、通常の先物取引の半額程度の資金でトレードをすることができます。そういった意味で、先物取引初心者にこそ適したサービスだと思うのです。
中村 一般的には先物取引やデイトレードと言えば、いまだにハイリスク・ハイリターンというイメージを持たれていますが、不安定かつ流動性の乏しい現在のような局面では、「一日先物取引」なら利益を狙いつつリスクを極力抑えることができる。世間一般の認識とは逆に、むしろローリスク・ローリターンの商品だということですね。
窪田 その通りです。もちろん、先物取引をしようと考える投資家の皆さんは、より多くの投資利益を得ようと考えるアクティブな投資家でしょうから、相場が落ち着いてきたら通常の先物取引に戻ればいいのです。一方、現在のような荒れた相場なら「一日先物取引」でリスクを回避すればいい。
中村 長年相場を見てきて実感するのは、投資は言わば“トーナメント方式”であるということ。どんなベテラン投資家でも、一度大きな損失を出してしまうと市場からの退場を余儀なくされてしまう。大勝ちしている人はひと握りです。そういった点からも、リスクを抑えることに成功した「一日先物取引」は、投資家動向を踏まえた、松井証券らしい画期的なサービスだと言えますね。ましてや個別株への投資が難しくなっている現状では、次の投資をどうすればいいかと考える多くの個人投資家にとって、一つの示唆を示していると言えるかもしれません。
窪田 アベノミクス始動以来、株式市場に参入した個人投資家の多くは現在、身動きが取れなくなっているように感じます。これまでは、人々の夢や期待に働きかける政策がうまく機能し、上昇してきました。ですが、これからもそれが続くでしょうか。世界経済が明らかに変調する中で、その効果に限りが見え始め、今後の展開を読むのは非常に難しい。こうした先行き不透明な状況では、大きな損失から投資家を守るシステムを持った「一日先物取引」に、トーナメントを勝ち抜き、生き残る投資家を増やす効果があるのではないかと考えています。
「一日先物取引」の特徴 松井証券ホームページより |
《インタビュー後記》
強弱観が交錯する現在の株式市場。一つだけ確かなことは、アベノミクスが始動して以来の3年間で、日本の株価は今回の急落を受けてなお、底値から2倍の水準にあるということだ。「アベノミクスは正念場を迎えている」。現在の世界経済を俯瞰してみれば、窪田さんのこの言葉には、誰もがうなずかざるを得ないだろう。
今回の取材テーマである「一日先物取引」のシステムは、こうした状況下でリスク回避の選択肢の一つとして極めて有効なものだ。長年市場と向き合い続け、投資家心理を知りつくしてきた老舗ネット証券会社だからこそできた、理にかなったサービスなのではないか。少なくとも、現状に逡巡する多くの個人投資家にとっては、確かな光明だと言えるだろう。
(「日刊株式経済新聞」副編集長・中村潤一)
不安定な相場を乗り切る!松井証券の「一日先物取引」とは?
⇒http://bit.ly/Matsui862858
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