橋本明男(はしもと・あきお)
ジャパン・ストック・トレード投資助言担当
【プロフィール】
大手スーパー勤務などを経て、1978年、共栄リサーチ入社。同社でチャーチスト、投資助言者としてのキャリアを積んだ後、84年に独立し、フューチャー出版を設立。「顧客に利益をもたらさなければ報酬は一切貰わない」を信条に、完全成果報酬型の投資顧問を30年以上に渡って展開。2014年よりジャパン・ストック・トレードの選任投資助言者として活動開始。自らの投資助言経験をもとに生み出した、通称“橋本ケイ線”によって導き出す推奨銘柄の的中率の高さは、密かに話題を呼んでいる。
日経平均2万円台が定着し、相変わらずの地合いの良さを見せる東京市場。世間の株式投資への関心も高まり、ネット取引の隆盛も相まって、投資助言も百花繚乱のごとく乱立し、それぞれ工夫を凝らしてサービスを展開している。そんな中、異彩を放っているのが、キャリア30年超、独自に編み出した手書きのチャートを駆使して渾身の投資助言を展開する橋本明男氏だ。本インタビューでは橋本氏に、自身の助言哲学とチャート分析の極意をうかがった。
━━ジャパン・ストック・トレードの投資助言者として、その的中率の高さが一部の投資家の間で話題になっている橋本さんですが、銘柄選出に、独自に編み出した手書きのチャートを使われているそうですね。
「株でメシを食っていこう」と決意して、1978年に投資顧問業を始めてから今日まで30年以上、毎日、チャートを書いています。まあ、他の人が見ても全く意味が分からないと思うんですがね(笑)。
そもそも、皆さん「株は難しい」というけれど、私はそれが不思議でしょうがない。上がるか下がるか、答えはふたつに一つ。相場の流れを見れば、それを読み説くことは簡単なんです。そして、相場の流れはチャートの中に必ず表れる。
だってチャートというのは過去の膨大なデータの蓄積なんですよ。よく「相場のことは相場に聞け」なんて言いますが、全くその通りで、過去のデータを引っ張り出せば、つまりチャートに表れた過去の相場の動きを見れば、ほぼ現在の相場にも当てはめることができるものなんです。
現在のように情報が氾濫した時代だと、色々と余計な情報が入ってきますよね。でも真の情報は、チャートの中にしかないと私は思う。極論を言えば、ファンダメンタルの分析なんて一切必要ない。チャートに表れた相場の流れに素直に従えばいいだけのことです。例えば、私が推奨する銘柄は今年の2月以降、ほぼパーフェクトの結果を出していますが、これもチャートに表れた過去の経験則に素直に従っただけなんですから。
━━とは言え、チャートを見て相場の流れを読み解くのは、やはりかなりの能力が必要だと思いますが。
それは当然のことです。漁師と一緒ですよ。いくら科学が発達したと言っても、やっぱり最後は経験が成否を分ける。私が手書きのチャートにこだわるのは、そうした部分もあるんです。自分の手で罫線を引くことによって相場の動きを自分で体感できるようになる。漁師と一緒で、人に教えられただけで身に付くものではないのです。
チャートを長年書いていると、現時点の株価から先の罫線が目に浮かぶようになる。この辺は言葉で説明するのが難しいのですが、例えて言えば、グラフに白い用紙を被せた状態でしょうか。現時点の株価の先は余白が広がっているだけですが、私が見ると、白い用紙が覆いかぶさっているだけで、それを透かして見れば、富士山のような形をしたチャートが描かれているのです。当然、山の頂もはっきり見えるし、谷も見える。そんなイメージなんですよね。
━━もはや達人の域ですね。ところで銘柄推奨するにあたり、他の要素でこだわる部分はあるのですか。
こだわりがあるのは、無配の企業は絶対に推奨しないということです。どんなにチャートの形が良くても、配当をしていない企業は、株主に応える企業ではない。つまり、一流企業とは言えないと思う。私がお客さんに薦める投資対象は一流企業だけです。だから、東証2部や新興市場は一切見ていません。
もちろん、そうした市場にも優良企業があるのは分かっていますが、玉石混交ですからね。その点、日経225に採用されるような企業で、配当を実施している企業は、間違いなく社会的にも経営的にも影響力の大きい一流企業だと考えていいですから。
あと、これは私の助言スタンスにも関係するのですが、東証が制度信用の貸借銘柄に選定している銘柄も投資対象として考えますね。東証の厳しい基準をクリアしている企業で、なおかつ空売りも可能な企業。こうした銘柄から無配のものを除外した銘柄が、私の推奨範囲なんです。
━━確かに、みずほ銀行、野村証券、三井住友銀行など、橋本さんが推奨される銘柄には誰もが知る大型株が多いですね。現在、テクニカル分析を主とした投資顧問の多くが、ボラティリティの高い新興市場の小型株を推奨対象にするのとは対照的です。
ネット証券の利用者が増え、短期で利益を稼ごうというデイ・トレーダーも増えてきましたが、私はそのような短期の回転売買には全く興味が無いですね。「1か月で何百万稼げた」なんて宣伝が目に付きますが、彼らのようなやり方に対してはネガティブに考えています。海外の資金も含めて巨大な資金が投入される日経225のような銘柄なら、彼らに荒らされる心配もない、というのも大型株を推奨するもう一つの理由ですね。
あと最近、「ロスカット」っていう言葉をよく耳にしますが、実は私はこれが全く理解できないんです。相場は生き物ですから、予想しなかったような株価の動きをする時もありますが、私なら損切なんて絶対させない。というより、自分が自信を持って奨める銘柄なら、下げを待ってさらに買い増せ、という指示を出すべきなんですよ。
信用取引では、損切りをしないと追証が怖いなんて言いますが、例えば私が野村證券や三井住友銀行を推奨した理由の一つは、その時点での株価水準で考えれば、10%以上の下落は無いと確信を持って言えたからです。10%以上下げないと追証は発生しませんからね。そうした計算ができるのも、多くの人が投資対象にする一流企業だからこそなんです。
━━本来の投資助言業の意味合いからすれば全く正論ですが、現在の大勢から見れば、そうしたスタンスはかえってユニークに見えてしまいます。
一つの銘柄の株価を見る。相場になってから立会い日数で14日間で天井が来ます。本来の投資では、このスパンで売買することを“超短期”投資と言います。14日間上げ相場が続いた後、6日間下落し、また14日間上がる。週足で言えば3週間上昇、1週間下落、3週間上昇ですが、これを中期投資のスパンと考えるんです。
さらにこれを2回繰り返し、13週から14週を経ると6週間の調整に入り、また13週から14週。過去何十年にもわたる市場の法則で、相場になる銘柄はこのサイクルで動く。これはほぼ、信用期日までの期間にも重なるのですが、この流れに則った投資をするのが、本来あるべき株式投資のスタンスです。
強調したいのは、私がやっているのは株式投資の助言で投機の助言ではないということですね。
━━そうした確固たる投資助言スタイルを築き、活動をしている橋本さんですが、そもそもこの世界に入ったきっかけはどのようなものなんですか。
実は、最初に就職したのはイトーヨーカ堂なんです。紳士服売り場のチーフなんかをやっていましたよ。それがある投資コンサルタントの方に出会い、話を聞いているうちにがぜん興味が掻き立てられた。それまでは多くの人たちと同じで、全く株のことなど興味が無かったのですがね。
それで株の本を読み漁りながら自分なりのチャートの勉強をして、78年に共立リサーチという会社に入り、投資助言の世界に足を踏み入れました。そこで経験を積み、「投資の世界で生きていこう」と心に決め、84年に投資顧問会社・フューチャー出版を立ち上げたのです。
日経平均が5000円ぐらいの頃ですよね。当時は、「株の予想屋」なんて言われて、世間の投資助言に対するイメージもあまり良くなかったのですが、私自身はそう思わなかった。むしろ、お客さんと確かな信頼関係を築くことができれば、素晴らしい職業だと考えていました。
アメリカでは、投資助言業は顧客の財産を守る大切な職業だと社会的に認知されています。命を守るのが医者で、権利を守るのが弁護士、投資顧問はそれに並ぶような高いステイタスを築いているのに、日本ではそうではない。でも人にどう思われようが構わない。自分の信じる道を行こうと考えて、今日までやってきたわけです。
━━70年代と現在では、市場環境も大きく様変わりしていると思います。長年のキャリアを持つ橋本さんは、現在の状況をどう捉えていますか。特に当時と比べると、外国人投資家の存在感が大きくなっていますね。
投資家の主体が外国人になったと言っても、基本的に株式市場は変わらない。海外の資金が入って、単に市場規模が大きくなっただけだと思います。ただ、相場の仕掛け人が、かつては仕手グループだったのが、今は外国人になった。どんな相場でも必ず仕掛け人はいますが、その主役が交代したということでしょうね。
でも日本の個人投資家の意識が変わりつつあるのは確かだと思います。アメリカでは多くの国民が、株式市場に何らかの形で関わっていますが、日本ではわずか5%程度の人しか株式市場に参加していなかった。それが401Kの普及やアベノミクスもあって、状況は大きく変化しつつあるのではないかと感じています。
━━目先では日経平均2万円が定着するなど、久々の良好な相場が続いていますね。
私はずばり、現在の東京市場は“暴騰前夜”を迎えていると見ています。ただ、まだ抑制された上昇相場です。私のチャート分析でいくと、ピークは9月25日、日経平均は2万4000円、TOPIXは1800ポイントを超えるところまで上昇するでしょう。
でも個人投資家は残念ながら個人投資家は皆、売りに回っていますよね。高所恐怖症というか、高値掴みをするのではないかと怖がっている。信用買い残の水準から見てまだまだ上昇の余地があるのですが。
とは言え、今後もずっと上がり続けるわけではない。これからしばらくは上昇しますが、信用買い残の水準が一定のラインを超えると、ドーンと下落する可能性が高い。今も昔も変わらない、相場のリズムなんですよ。
━━なるほど、相場のリズムですか。では最後に、ジャパン・ストック・トレードの投資助言責任者として、全国の投資家に橋本さんの“想い”をお伝え下さい。
成果報酬型の投資助言を30年以上続け、現在は縁あって出会った信頼できる若い経営者とタッグを組み、思う存分、自分の信じる投資助言を展開しています。私の今の目標は、この会社を「日本一の投資助言会社にしたい」ということなんです。私は正直、現在活動している投資顧問会社の多くは“ニセモノ”だと感じています。そして、うぬぼれかもしれませんが、私たちこそは“ホンモノ”だと信じています。
昨年から始めたこの会社もお蔭様で、現在、会員が日増しに増えていますが、その一人一人の信頼を勝ち取るために、皆さんに成功体験を与えたい、と強く思っています。私は投資助言のサービスを受けるお客さんは、信頼にお金を払うものだと思っていますから。
相場に上がり下がりはつきものだし、いつの時代も、多くの個人投資家にとって、株というのは売るのも買うのも怖いもの。特に“売り場”を見極めるのが最も難しい。でも勝負時に勝負をしなければならないのが株式投資の世界。そんな勝負時に、力強く背中を押してあげるのが、投資顧問の重要な役割だと考えています。
《編集後記》
実際に“橋本罫線”と呼ばれる手書きのチャートを拝見した。力強い筆跡で書き込まれたグラフには、相場の動きが一目で分かるシグナルが詰め込まれ、これさえあれば波動が一瞬で理解できるという。素人目でその内容を理解するのはなかなか難しいが、毎日書き加えられるという100枚以上のチャート用紙の束は圧巻だ。
「自分の中では、まだまだチャート分析の手法が完全に確立されたとは思っていない。現時点で完成度は60%ぐらいで、これから100%を目指したい」。便利な機器やあふれる情報の中、あくまでも己のスタンスで株式市場と向き合い、自身の投資助言技術の向上を目指す橋本さんには、本物のプロフェッショナルとしての誇りを感じずにはいられない。
(みんかぶ編集部)
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