「完全なる下放れ、新たな下落波動へ」

著者:黒岩泰
投稿:2018/03/25 08:24

貿易戦争への懸念、そして国内では森友問題が佳境へ

 本日の日経平均は974.13円安の20617.86円で取引を終了した。米国株急落を受けて、大幅安からのスタート。その後はさらに下値を試す動きとなり、投資家たちはリスク回避の売りを迫られた。

 トランプ大統領が対中貿易の関税強化を発表したほか、マクマスター大統領補佐官を解任、為替が円高に進んだことで、東京株式市場は全面安の商状となった。

 日経平均の日足チャートでは、窓を空けて下落。下方の2つの窓を突き抜けており、完全に「下放れ」の様相となっている。最近1か月半は安値圏でのもみ合い相場が続いており、かなり相場のエネルギーが蓄積されていた。新たな下落波動に突入したことで、しばらくこの流れは続きそう。とりあえず2段下方の大きな窓(19933.40円-20122.00円)を目指す展開となりそうだ。いよいよ2万円割れを覚悟しなくてはならない。

 株式市場は「米中の貿易戦争」を懸念している。トランプ大統領がいよいよ自国民ために公約を実現。「本格的に貿易赤字解消に乗り出した」ということになる。そもそも論から言えば、貿易赤字が多いということは、その分、自国が過剰に消費をしているということ。本来ならば、こちらを是とするべきだが、国際金融・貿易論では「赤字は悪」とされている。「儲からないのだから、それを解消しよう」――そう考えても何ら不思議ではないのだ。

 我々は過去にこの手の報復合戦を何度も見てきた。将来的には関税強化に加え、「為替切り下げ競争」というものに、お目にかかることになるだろう。かつてのブロック経済、のちのリアル戦争を彷彿させるものであり、かなり危険な流れとなる。ただ、今回のトランプ大統領の政策は、野球でいえば高めのボール球。脅しのビーンボールに過ぎない。彼なりの交渉術であり、それほど深刻に捉える必要はないだろう。本気で中国とケンカするわけでもなく、その辺は過剰反応すべきではないと考える。

 そして、国内では、野党による籠池氏との接見が行われている。焦点となるのは、政治的関与がなかったのか否か。当然、「森友事件」は「安倍事案」であり、官邸と官僚のパイプ役がいたと考えるのは至極当然だ。その役割を果たしていたのが、一説によると今井首相秘書官と言われており、佐川氏とも親密な関係にあったという。首相夫人付きの谷氏は経産省からの出向。今井首相秘書官は経産省出身であり、FAX送信時は谷氏の上司という立場だ。このラインが成立すれば、この事案は「官邸主導」であったことが明らかになる。当然、そうなれば安倍首相の責任は免れなくなる。「秘書が勝手にやったことだから」と言い逃れはできないのだ。外堀のみならず、内堀も埋まりかけている安倍政権。「辞任」の一報で、どこまで株価が下がるのか———投資家は売りポジションを持ちながら、高みの見物といきたい。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想