未来にワクワク!ソフトバンクグループ(9984)はまだ買い?
同社は、業界でパラダイムシフトが起こる時には、売れるものは売って、借りられるものは借りて挑戦してきました。
過去を振り返ってもインターネットがパソコンからモバイルへシフトしていく時、ヤフーBBでNTTに挑戦した時もそうしてきました。
そして今、全てのモノがインターネットと繋がるIoTを成長のテーマに投資を行っています。
IoT時代の本格到来を見据え、昨年は240億ポンド(日本企業による海外M&Aの額として最高レベル!)でCPUやGPUなどを設計開発するARMを買収しました。
同社にとってこの買収は、IoTの本格到来への準備となりました。
~世界のスマホの9割に使われるARMのチップ~
ARMは半導体の研究開発・設計を行っています。チップ市場の10%を構成するプロセッサ市場において、スマホ・車載情報機器で95%、タブレットで85%、ウェアラブル端末やストレージで90%のシェアを握るという圧倒的存在です。
工場を持たずにライセンス供与するビジネススタイルで、ルネサスやApple、サムスン、米エヌビディア、クアルコムといった大手を始め、400社を超える企業に1300件超えのライセンス提供をしています。
ARMの2016年度のチップ出荷数は前年の17%増となる177億個、累計で1000億個となりました。4年後には2000億個に達し、さらに20年以内に1兆個を超えるチップがARMによって出荷されていくと見ています。
あらゆる物がインターネットが繋がるIoTの広がりによって、これまでの「人の作るデータ」に「モノがつくるデータ」が加わることになっていきます。インターネットに繋がるモノの数は2013年の158億個から2020年には530億個になるとの予想があるように、これからは様々なものが(空気までもが!)インターネットに繋がることになるのです。
<「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」はこうしたIoTをテーマとした投資のために設立されたのです。>
そのインターネットにつながるモノの9割にARMのチップが入り、ARMが設計し、データが生成される、という具合になっていく、つまりARMの買収は「IT業界の成長エンジンそのものを手に入れたも同然」、孫社長はそのように見ています。
5月10日にはARMが技術供与するクアルコムと5G移動体通信技術を共同開発するとの発表がありました。
5G移動体通信技術の実現は、業界では2020年以降だとされていますが、2019年に同社が初めて実現する可能性が高まっており、注目されています。
まずは米国でのスタートとなりますが、これはスプリントの価値を上げることになります。
このように、ARMを起点とする新たな成長を期待できることになってきたと言えます。
既存事業も好調です。
17/3期は特にスプリントの業績が改善しました。
業績不振が懸念されていたスプリントは、国内通信事業で培ったネットワーク接続技術の駆使により、全米2位の接続率を誇るまでになっています。契約が増え解約率が低下していることに加えて.コスト削減も奏功して業績が急改善しました。
【スプリントの状況】
売上高 調整後EBITDA 営業利益
円 3兆6234億円 1兆796億円 1,864億円
前年比(▼6.4%) (+9.8%) (+203.1%)
ドル 333億ドル 100億ドル 17億ドル
前年比(+3.4%) (+20.7%) (+3300%)
国内通信事業は安定して推移しており、このスプリントの著しい業績改善、昨年から加わったARMの業績寄与と、業績が上向いていることが確認できました。
2017/3期の業績は、最終利益が前期の3倍となる1兆4263億円と初めて1兆円を突破しました。国内企業で最終利益が1兆円を超えたのはトヨタと同社だけです。それでも孫社長はこれを通過点とかみていません。事業成長はこれからが本番だと話しています。
将来的には、トランプ政権誕生を背景とした米携帯電話業界の再編進展への期待、世界規模でテクノロジー分野に投資する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の進捗が注目されます。
~「「借金は、金の卵を産むガチョウのエサだ」~
同社の財務状況を見ると、純有利子負債は15/3月の6兆円から17/5月には8兆円と2兆円増となっています。
ただし、企業価値自体18兆円から25兆円と7兆円拡大していることがポイントです。
【企業価値】
15/3月 17/5月
国内通信 6兆円 7兆円
アリババ 8兆円 9兆円
sprint 2兆円 3兆円
ヤフー 1兆円 1兆円
その他 1兆円 1兆円
ARM ―― 4兆円
合計 18兆円 25兆円
アリババの株価上昇も同社株の押し上げに寄与しますが、
直近ではエヌビディアの株式を買い進めていると伝えられており、IoT分野への投資が活発に行われています。
ちなみにエヌビディアは、ビジュアルコンピューティングの先駆者として有名で、ここ数年で自動運転用に開発されたプラットフォームで人工知能分野でも存在感を高めています。
株価は10年前から3倍の水準になってきていますが、収益基盤が強化されていること、IoTに備えた将来基盤が構築されていることが評価されるべきだと思われ、現在の株価はまだ割安ではないかなと思います。