「チャートは弱気形状、買いポジションは整理」

著者:黒岩泰
投稿:2016/12/31 11:50

「相場を予想するということは、見えない意思を汲み取ること」

「チャートは弱気形状、買いポジションは整理」
 大納会の日経平均は30.77円安の19114.37円で取引を終了。売り一巡後は押し目買いが優勢となった。日経平均の日足チャートでは、ローソク足で陽線が出現。短期的な下値メドとして意識されていた下方の窓(19042.48円―19054.00円)を完全に埋めたことで、強い調整一巡感が台頭。その後の下げ渋りにつながっている。

 ただ、すでに前日の下落によって、チャートは弱気形状に転換。本日の下げ渋りは、単なる「アヤ戻し」にすぎない。基本的には下落トレンドに突入しており、この先は「下方向」を目指す可能性が高い。下方には複数の窓が存在しており、これらを連鎖的に埋める可能性がある。2段目の窓下限(18502.47円)までの下落であれば、「ワンチャンス」であり、投資家はさらなる下振れに警戒しなければならない。ここはポジションをいったん軽めにし・・・、というよりか、もうすでに大納会を迎えてしまったので、大発会からでも遅くはないので、買いポジションは整理した方が良いだろう。

 今年1年は色々あったが、株式市場を取り巻く環境もかなり変化した。もっともショッキングだったのが、6月の英ブレグジットと11月の米大統領選だ。いずれも、いわゆる支配層の意思が反映されず、大衆志向の結果となっている。これまでの支配構造がガラガラと崩れており、それが株式市場にも影響を及ぼしそうなのだ。

 足元ではオバマ大統領が退任直前に、対ロシア制裁を発表。外交官などロシア政府関係者35人に対して、「72時間以内の国外退去命令」を発令した。理由は、先の大統領選において、サイバー攻撃によって、選挙結果を捻じ曲げたから。オバマ大統領は「自らが出馬していたら勝利していた」とも語っており、トランプ次期大統領の怒りを買っている。

 いずれにしても今回の措置は、オバマ大統領の「最後っ屁」ということになる。米軍産複合体にとって生命線である事実上の「米ロ冷戦」状態を保持するのが目的であり、退任まで全力で「援護射撃」をするという意味合いを持っている。当然、トランプ次期大統領からしてみれば、これからは「親ロ路線」で突っ走る予定。北極海油田での共同開発なども視野に入っており、この「最後っ屁」は当然、承服できるものではない。就任直後に解除する公算が大きく、支配層との対立は一層強まるだろう。「なんとかトランプ大統領を阻止できないか」―という発想につながることになり、かなりキナ臭くなるかもしれない。
 あと、トランプ次期大統領とFRBの関係も、マーケットにとっては重要だ。そもそも通貨発行権という「打ち出の小槌」をFRBという民間銀行群が握っており、その存在自体が怪しいというもの。FRBがトランプ次期大統領の主張する「強い米国経済」と相反する金融政策を推し進めれば、当然「FRB不要論」が台頭することになる。イエレン議長の首を挿げ替えることで納得できれば良いが、組織の存在自体にメスが入れば、これまで推し進めてきた「QEナントカ」という「ドルと米国債のバーター取引」の持続が難しくなる。それがドル安・米国債売りにつながる可能性があり、そういった意味でトランプとFRBの関係は最重要項目なのだ。当然、トランプ政権を裏で操っている人間の意思も重要であり、その「見えない意思」を汲み取ることが「相場を予想する」ということになるのだろう。トランプ大統領に対して単に「差別主義者」というレッテルを貼るのではなく、制度・構造上の立ち位置・役割を認識した上で、氏の発言を理解しなければならない。

 今年もご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。1月4日(水)が大発会となります。来年もよろしくお願いいたします。




黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想