一時的に為替と株式市場の連動が薄れる可能性

著者:堀篤
投稿:2016/07/11 11:14

■雇用統計に異なる反応をした株式市場と通貨市場

先週は、米国雇用統計の発表と、週末の参院選挙、という二つのイベントがあり、なにか飛び出すか?と思いきや、結局、あまり大きなサプライズもなく、相場は小動きを続けている。

雇用統計は、前月比で28万7000人増加という、想像を超えた強い数値が出た。
しかし、ここで少し注目すべき事態が生じている。
為替相場と株式相場では、真逆の反応が出たのだ。

NY株式市場は、この数値の強さに素直に反応し、NYダウは前日比250ドル高となり、英国選挙前の水準を回復した。
しかし、為替相場では、ドルは急落。1時、100円を割れたのだ。
ドル円の動きは、次の二つの要因にその原因を求められる。

①5月の雇用統計の数値が低く、6月が高いといっても、平均では、それほどでもない。
②6月の強い数値は、英国選挙以前の数値であり、その影響が顕在化していない。

この株式市場と為替市場の異なる動きをどう解釈したら良いか、が、今後の相場を占う一つのヒントになる。
実際、CMEの日経平均先物は、為替が円高になっているにも関わらず、前日の日経平均株価に比べ、240円高いところで終わっている。
もしこれが、各国共通で、英国選挙前の水準を目指す、という動きであれば、日経平均も英国選挙前の16230円近辺まで、1100円程度の上昇を見込めることになる。
これまでは、円高がその動きを阻止してきたが、ドル円が100円より下には行きづらい(100円を割れると介入などにより、すぐに戻る)という認識が通るようになれば、株式市場は、ある程度安心して上昇することができる。
一定の「人工的な」相場介入が必要と思われるが、サミットも終了した今、良い子ちゃんにしている理由もあまりない。
100円は大きくは割らない・・・そして株価は16000円台回復、という、為替と株式を切り離した見方が、短期的に訪れるかもしれない。


■選挙後はどう動くか?

一方、もう一つの材料と言われる参院選挙は、予想通り、保守陣営の大勝利で終わった。しかし、これが新しい材料にはなりにくいだろう。
過去の国政選挙では、株式市場は以下のように動いている。

2012年 衆議院選挙 自民党政権復活 
選挙までの1か月 +7.9% 
選挙後の1か月  +8.9%

2013年 参議院選挙 自民党大勝
選挙までの1か月 +10.3% 
選挙後の1か月  +-8.0%

2014年 衆議院選挙 自民党大勝
選挙までの1か月 -0.7% 
選挙後の1か月  -3.3%

自民党政権の復活時には、期待度から、選挙前、選挙後と株式市場は急騰した。そして、翌年の参院選でも、期待度から選挙前は上昇。しかし、その後は材料出尽くしのように株式市場は下落。
そして、2014年衆院選は、自民勝利は既定路線となり、選挙の前も後も、ほとんど反応がなくなったと言って良いだろう。
今回も、選挙以上の材料も多々あり、あまり、それによって株式市場が振られる状況にはないと見るのが妥当だ。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想