リスク回避高まる(早期利上げ観測後退・英国民投票・米テロ事件)

著者:菊川弘之
投稿:2016/06/13 14:44

105円の攻防戦へ

 弱気の雇用統計を受けた米早期利上げ観測の後退に続いて、英国のEU離脱の是非を問う国民投票の不透明感や、休日に起きた米国のテロ事件(アメリカ・フロリダ州銃乱射事件・カリフォルニア州サンタモニカでの銃撃未遂事件)などリスク回避の動きが、週明けの東京市場で「ドル売り・円買い」の動きを誘っている。ドル円は、弱気の雇用統計後の安値を下回り、2016年5月3日安値~心理的節目105円の攻防戦へ移行してきた。

 同水準を割り込んだ場合の下値目途だが、心理的節目100円、95円以外には、2012年9月安値~2015年6月高値までの上昇幅に対する、半値押し(101.49円)、61.8%押し(95.73円)。2011年11月安値~2015年6月高値までの上昇に対する半値押し(100.69円)、61.8%押し(94.76円)などがカウントできる。

 100円前半は、2014年に半年ほど保合いを形成した水準でもある。現在、2015年6月高値を起点に左右対称形を形成しており、フラクタルな動きとなるなら100円台前半でもち合うシナリオも想定される。過去の平均的な米大統領選挙年の値幅は既に出し切っており、不透明感強い米大統領選挙が近づくにつれて様子見から保合う可能性も考えられる。
 一方、向こう数週間内に、米連邦捜査局(FBI)が、公務のメールのやり取りに私用サーバーを使っていたことでクリントン氏と部下らを起訴すべきかどうか勧告を出す事が控えている。結果如何では波乱要因となるリスクがある。

 今週は、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC、14~15日)政策金利、16日の日銀金融政策決定会合(15~16日)金融政策発表、英中銀(BOE)政策金利、スイス銀行(SNB)政策金利などが相次ぐ。今回のFOMCでは、利上げは見送られるとの見方がコンセンサス。一方、日銀金融政策決定会合に対して、海外勢の一部には追加緩和期待の声もある。追加緩和を催促するような動きにも注意したい。仮にサプライズ緩和があれば2円程度のリバウンドはあると見られるが、108~110円水準の抵抗は強いだろう。
 資産運用の世界最大手ブラックロックのジェフ・ローゼンバーグ氏は、経済がサイクルの最終局面を迎えたと述べている。「ジョージ・ソロス氏の復帰、カール・アイカーン氏の警鐘は、その最たる兆候」としている。中国リスクと合わせて、米景気循環サイクルからの頭打ちも、米株・米経済リスクとなろう。ドル円は「FOMC後の知ったら終い」的な動きも予想されるが、戻りは売られて「天井を打った相場は、底を付けるまで安い」との相場格言に沿った値動きとなりそうだ。

 英国では23日に、EUからの離脱の是非を問う国民投票が行われる。YouGovの最新の世論調査によると、英国の欧州連合(EU)離脱を支持する人の割合が43%と、残留を支持する人の42%を1ポイント上回った。6日に公表された同調査では、残留支持が離脱支持を1ポイントリードしていた。一方、英国が欧州連合(EU)を離脱するかどうかについての賭け業者のオッズは、残留が67%、離脱33%(プリディクトワイズ)、残留68%、離脱32%(ベットフェア)と圧倒的に残留が予想されている。離脱決定なら大波乱だが、その可能性は極めて低いと見る。国民投票で残留決定なら足元で進んでいるポンドやユーロ売りのポジション巻き戻しが予想される。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想