「驚きのゼロ回答、悲観一色」

著者:黒岩泰
投稿:2016/04/28 19:03

「投資は順張りが原則」

 本日の日経平均は624.44円安の16666.05円で取引を終了した。注目の日銀金融政策決定会合は、驚きの「ゼロ回答」。金融政策の現状維持を発表し、マーケットは嫌気売りが優勢となった。

 日銀金融政策決定会合の結果は、お昼過ぎに早々に発表された。市場に「現状維持」が伝わると、日経平均先物が大幅安。一気に16800円台へと突っ込んだ。同時に円相場も1ドル=108円台に突入。市場では「何らかの追加緩和策が発表されるのでは」との期待が高かったために、その反動が強く出た。もともと直近の株価上昇は、日銀の言質をとったわけではなく、マーケットが半ば暴走気味に政策を催促したもの。日銀からしてみれば何の拘束力もなく、ただただ金融政策の維持を決定したことになる。日銀の視点から見れば、物価上昇率の低迷は原油価格の下落が要因。足元では原油価格が底入れを果たしており、「デフレ要因は消滅しつつある」との認識となっている。マーケットにとってはやや酷な仕打ちとなったが、「通貨・物価の番人」として日銀は一定の冷静さ保ったと言える。「投資家が勝手に暴走したのが悪い」とでも言いたそうだ。

 日経平均の日足チャートは、完全に弱気形状へと転じてしまった。明らかに日銀要因で軸が下向きに傾いており、大きな下落リスクが生じている。目先は下方の窓(16526.90円―16570.50円-)を埋める展開が予想され、その後はさらに下方の窓(15963.03円-16132.23円)を埋めることになるだろう。短期的にはまだ700円程度の下落余地があるということだ。

 今回の下落相場がちょっと不可思議なのは、ボラティリティが低下したことだ。これだけの急落があったにもかかわらず、足元でオプションから逆算されるインプライド・ボラティリティ(予想変動率)は26%程度から23%程度に低下している。通常は30%とか、場合によっては35%程度まで上昇してもおかしくないのだが、その動きが逆となっているのだ。裏返して言えば、マーケットは「非常に落ち着いている」ということにもなる。むしろ米FOMCや日銀金融政策決定会合というイベントそのものを「リスク」と捉えており、それが終了したら、「安心感」が漂ったということになる。なるほど、投資家たちは「暴落を恐れていない」ということなのか――。

 確かにリーマンショックや9・11、3・11のような危機感はまったくない。あくまでも日銀が「現状維持」を決めただけで、1週間前の株価に戻っただけだ。改めて買い直すことも可能であり、そういった意味では「やり直しが効く相場」ということになるのであろう。

 しかし、チャートが弱気形状に変化したからには、投資家はそれなりの対応をしなければならない。買い方は弱気転換した銘柄から順次、閉じていき、売り方は弱気形状に変化したものから順次、ポジションを積み上げる必要がある。今回の弱気転換が「大暴落の助走」になることも十分に考えられ、そのような意味で、投資家として準備を怠ってはならない。もし、日経平均がアベノミクス開始の8500円レベルまで下落すると仮定すれば、ここから大きな下落余地が生じるからだ。その可能性も念頭に置き、相場の流れに身を任せなければならない。相場に逆らって、中途半端な押し目買いを入れたりすると、痛い目に遭うだろう。あくまでも投資は「順張り」が原則だ。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想