超高齢化・生涯未婚率上昇でシェアリングビジネスに出番

著者:冨田康夫
投稿:2016/04/20 18:07

“所有”から“シェアリング”

 もともと米国のシリコンバレーを起点に、企業や個人が所有する遊休資産や既存設備などを不特定多数の人々とインターネットを介して共有するのが「シェアリングエコノミー」の出発点だった。日本国内にもこの考え方が徐々に浸透し、独自の市場が形成されはじめている。

 内閣府が2014年2月に公表した「目指すべき日本の未来の姿について」のデータによると、日本の65歳以上の高齢化率は、12年の24.1%から2060年には、39.9%とほぼ40%に達し、単身高齢者の数も激増する見通し。また、15年版厚生労働白書の予測によると、10年現在で男性20.1%、女性10.6%となっている生涯未婚率は、35年には男性29.0%、女性19.2%にまで拡大する見通しという。こうした予測データからも、単身者あるいは高齢者夫婦のみ世帯の増加により、自家用車に代表される耐久消費財を中心に“所有”から“シェアリング”しようという意識が強まるものとみられる。

 時間貸し駐車場運営最大手のパーク24<4666>は、2009年にカーシェアリングサービスをスタートし、5年目の14年10月期には営業損益段階で黒字化を達成。今期の16年10月期のカーシェアリング車両台数は、1万6000台(前期比21.7%増)に増加すると見込んでいる。同社では、規模拡大と収益力強化を図るとともに、レンタカーとのサービス一体化を通じ顧客の囲い込みを図るほか、販売チャネルの多様化、サービスレベルの向上を目指す。

 都内ハイヤー・タクシー大手の大和自動車交通<9082>の「ドライバーサービス」は、顧客の車両を専任ドライバー(2種免許取得)が運転するサービス。自分で運転するのが不安な人が同サービスを活用。一方で普段使わない車を貸し出すライドシェアに関心を示す人が増える可能性もある。

 三井物産<8031>は3月2日、スマートフォン向けフリーマーケットアプリ「メルカリ」の企画・開発・運営を行うメルカリ(東京都港区)に出資したと発表した。シェアリングエコノミー分野で事業投資を行うのは総合商社としては初めての取り組みで、東南アジア、ロシア、アフリカなどを含む新興国を中心に、メルカリのグローバル展開を支援していく。

 家電、家具、雑貨等の総合リサイクル店を展開するトレジャー・ファクトリー<3093>は、シェアリングエコノミーの広がりにより、リユース品の需要拡大が続くとの見方で、同社も出店による成長が続くと予想される。同社の17年2月期の単独業績予想は、売上高は132億8100万円(前期比8.7%増)、営業利益は11億3700万円(同4.7%増)を見込む。新店舗の売り上げ寄与に加え、インターネット経由の売買の強化などを進め、本業のもうけを示す営業利益段階で連続最高益更新が想定される。

 訪日外国人旅行者の増加も一因となって、レンタサイクルの普及が加速している。従来、大都市圏を中心にコミュニティーサイクルなどの導入が進んでいたが、ここにきて旅行者を対象に、交通機関がやや不便な観光地を効率的に巡る手段としての需要が拡大をみせているという。主要電鉄会社では、沿線の駅を中心にレンタサイクルへの参入が相次いでいる。なかでも、阪急阪神ホールディングス<9042>が展開する阪急レンタサイクルは、沿線の20駅を超える駅前を中心に幅広いサービスを継続している。

 シェアリングビジネスとして今後成長が見込めるのが民泊だ。関連銘柄としては「民泊」および「短期・中期」賃貸事業に参入し、「民泊」、「短期・中期」賃貸のサイトをオープンしたアパマンショップホールディングス<8889>、東京23区中心に借り上げた居住用不動産を転貸するサブリース主力のAMBITION<3300>、筆頭株主のシノケングループ<8909>と共同で、民泊プロジェクトを立ち上げているプロパスト<3236>などにも注目。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想