「大幅安、下方の窓下限にほぼ到達」

著者:黒岩泰
投稿:2016/04/01 19:10

「想定為替レートで、業績懸念が強まる」

 本日の日経平均は594.51円安の16164.16円で取引を終了した。朝方から軟調な値動きとなり、その後はズルズルと下落幅を拡大させる展開。後場に入っても下げ止まらず、安値圏で取引を終了した。

 本日は、名実ともに新年度相場入り。昨日までの「買い支え期待」が消滅したほか、機関投資家の期初の益出しも積極的に行われたようだ。

 また、寄り付き前に発表された日銀短観では、大企業・製造業の想定為替レートが1ドル=117.46円と非常に高い水準。今年度の経常利益は前年比2.2%減と発表されたこともあり、輸出企業の業績下方修正懸念が一気に強まった。「足元、1ドル=112円台で推移しているのに、117円台の予想ということは、そのうち業績の下方修正を発表するのではないか」――そういった思惑が一気に強まったのだ。本日の株価急落は企業業績に対する投資家の警戒感が一気に露呈したことが要因だと思われる。

 日経平均の日足チャートでは、目標としていた下方の窓下限(16099.42円)にほぼ到達した。若干の窓を残しているものの、ここで強い達成感が漂っている。窓の株価を引き寄せる力は減退し、いったんは上昇しやすくなっている。問題は本日の寄り付きで空けた窓(16719.56円―16758.67円)まで戻るかどうか――この辺が焦点となる。

 もし、軸が水平に近ければ、株価は近くの窓を埋めることになる。つまり、本日、埋め残した下方の窓(16099.42円―16113.01円)を埋めたあと、一気に上方の窓(16719.56円―16758.67円)まで値を戻すパターンとなるのだ。

 しかし、軸が下向きの場合は、リバウンドの動きは限定的となる。目先はズルズルと下値を切り下げる動きとなり、下方の窓下限(16099.42円)を無視して下落し続けることになるだろう。なので、目先はこの窓下限(16099.42円)との攻防が極めて重要となる。現時点で売りポジションを維持しながら、その攻防を見極める必要がある。

 こうなってくると政府は、7月の参院選(場合によってはダブル選挙)に向けて、株価対策を講じなくてはならなくなる。このままの低水準の株価では選挙を戦えないからだ。

 そこで考えられる手段が、大きく2つ。ひとつは政府による為替介入であり、もうひとつは日銀による大胆な追加緩和策だ。ゼロ金利政策が不発となりつつあるなか、直接株式市場で個別銘柄を買い上げる(たとえば225銘柄を一律○億円みたいな)禁じ手を発表する可能性がある。事実上、日銀は国債を買い取る「財政ファイナンス」という禁じ手を続けており、今更、悪事がひとつぐらい増えたってもはや関係ない、と開き直る可能性すらある。「毒を食らわば皿まで」ということである。

 あと、株価対策として考えられるのは、消費税増税を凍結することぐらいだろう。もちろん市場参加者の間では、8割方「増税凍結」は織り込まれている。政府が正式発表したところで大したサプライズはないのだが、それでも増税凍結は一定の評価が得られそうだ。増税の旗を自ら揚げておいて、それを勝手に降ろすのだから、「マッチポンプ」もいいところ。それでも選挙に勝つためには、手段なんか選んではいられない。ちなみに、政府は3月末時点でのGPIFの運用成績を、通常よりも遅れて7月末に発表するという。参院選のあとに発表するということであり、かなりセコイことをやろうとしている。次の国政選挙で規定の改憲勢力を得るためには、「考えられることは何でもする」ということなのだろう。

 なお、本日、お昼頃に三重沖で比較的大きな地震(M6.1)が発生した。次に大地震が予想されている南海トラフに近い場所だけに、目先はこの付近での地震に注意をしておきたい。もしかしたら、本日の地震が巨大地震の「前震」かもしれない。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想