堅実さんのブログ

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捨ててこそ 2年7月22日(水) 13時26分

講談からです。

ささいな、いざこざから、果し合いをすることになった、黒田新之助

相手は、藩で一番の剣豪といわれている、山本三郎

新之助は、こんなことになるなら、山本に、一言「言い過ぎた。申し訳ない」と言えば、こんなことには、ならなかったと後悔した。しかし、もう遅すぎる。この噂は、藩中に広まっている。


しかし、新之助も、武士。ここで、簡単に引き下がることは、できない事情もあった。


 数日、考えてみたが、どうしても、勝てる相手ではない。考えた結果、藩の剣道指南役の、坂上団五郎に、相談してみることにした。


 2人で、お茶を飲んだ後に、坂上は、静かに言った。


「まともに戦っては、勝てる相手ではない。方法は一つだけある。しかし、これさえも、必ず切られる。うまくいって、相打ちだ。やってみるか。」


「それは、剣を、上段に構えること。そして、相手が打ち込んできたら、迷わず、力一杯、振り下ろせ。」


「その時には、お主は、切られている。しかし、相手も、頭を割られている。相打ちだ。」


「これしか、ないであろう。」


「私は、今回の、見届け役を、殿から、仰せつかっておる。助太刀は出来ない。」


数日後、2人は果し合いの、辻屋の前に、対峙した。見届け役の、坂上団五郎もその場にいた。そして、この3人を大きく取り巻く、見物人も数多くいた。

 2間(4メートル)程の、間合いをとり、2人は、剣を抜いた。静かな時が流れる。やがて、黒田新之助は、おのれの刀を、上段に構えた。山本は、正段の構えである。

 新之助は、やがて、静かに目を閉じた。誰が見ても、隙だらけである。


これを見た、山本三郎。時の流れとともに、刀の切っ先が、小刻みに震えだした。山本程の、剣の腕前では、この結果がどうなるか、明瞭に読めた。これは勝てない。相打ちか、あるいは、負ける。切られる。


そして、時の流れとともに、その刀の切っ先の震えは、大きくなっていく。息は、次第に荒くなってゆく。


そして、山本は、その場に、膝をついて、動けなくなってしまった。


同時に、「負けた。」と一声。


「勝負有。」坂上の大きな一声が、辺りの静けさを、打ち消した。

「この勝負、相打ちである。そこで、引き分けといたす。」

辺りに、見物人の、ざわめきが、聞こえた。

すべて、坂上の筋書きどうりであった。


「捨ててこそ、浮かぶ瀬もあり、根なし草」



 



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2件のコメントがあります
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    堅実さん
    2020/7/23 20:59

    kouboudaisi   さんへ


    これは、はっきりとはしませんが、10年程、前ですか。NHKラジオの、日曜日の、夜6時40分ころからの、「日曜名作座」の記憶からだと、思います。

    原作は「藤沢周平」だと、思います。


    それを、少し、変えたものだと、思います。


    「捨ててばかりいて、全然浮かんで来ません! 」

    これは、株式ですか。投資方法にもよりますが、案外、長期投資が、経験からですが、うまくいくのでは。


    「緑内障は良くなりましたか?」


    禄内障は、まだ、はっきりしませんが、場合によると、右目がかなり悪くなって、おりますので、車の免許更新は、まず、無理でしょう。



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    kouboudaisiさん
    2020/7/23 15:22

    >「捨ててこそ、浮かぶ瀬もあり、根なし草」


    捨ててばかりいて、全然浮かんで来ません!


    緑内障は良くなりましたか?