木下 晃伸さんのブログ

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【投資脳のつくり方】特別編/米金融株、リーマン破綻で急落

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みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
経済アナリスト、木下 晃伸(きのした てるのぶ)です。

●リスク許容度

かつてUFJグループに所属していたとき、
自身も「もしかすると破綻」の可能性を考えていた中で、
モナコの投資会社がUFJの筆頭株主になったという時期がありました。

結果として、この会社はUFJの大幅な株価上昇を理由に、
大きなリターンを得た訳ですが、それ以上にリスクをとった事に驚いたものです。

これを結果論と見るかどうか。

私たちは一度金融危機を経験しています。
冷静に海の向こうの金融危機を眺めると、実はチャンスであるという、
かつて、日本で大きなリターンを得た外国人投資家の視点を持つ事が
可能ではないか、と思うのです。


●本日は、新聞休刊日ではありますが、米リーマン・ブラザーズが15日、
連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請する
と発表したことを受け、臨時に自分なりの考えを述べさせていただけれ
ばと思います。


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●米金融株、リーマン破綻で急落/出所)日経速報ニュース等より
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まずは、報道ベースの事実関係を整理したい。


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●米四位の証券大手リーマン・ブラザーズが15日、連邦破産法11条
(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請すると発表


●米メディアの報道によれば、負債総額は6130億ドル(約64兆3000
億円)。経営破綻を受け、リーマンの株価は15日、前日比3.44ドル
(94.3%)安の0.21ドル。


●これを受け、15日の米株式相場は急落。
ダウ工業株30種平均は続落で、
前週末比504ドル48セント安の1万917ドル51セントで終えた。
ダウ平均は2006年7月以来の安値で、
下落幅は米同時テロ直後の2001年9月17日に記録した684ドル安以来、
7年ぶりの大きさ。

●ダウ構成の金融5社(アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)
アメリカン・エキスプレス、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、
JPモルガン・チェース)と証券4社(ゴールドマン・サックス、
モルガン・スタンレー、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズ)
の時価総額を試算したところ、
年初に約9200億ドル(約96兆円)だった合計時価総額は
15日時点で約5000億ドル(約52兆円)に急減。

●ダウ・ジョーンズ通信によれば、日本のあおぞら銀(8304)が
リーマンに対し4億6300万ドルの融資残高があるほか、
みずほコーポレート銀行は2億8900万ドルの融資残がある。

●一方で、米大手銀行バンク・オブ・アメリカは15日、
米大手証券メリルリンチの買収で合意したと発表した。
買収総額は500億ドル(約5兆3000億円)。

●バンク・オブ・アメリカの株価は急落。
前週末比7.19ドル(21.3%)安の26.55ドルで通常取引を終えた。
下落率はダウ工業株30種平均の構成銘柄で、
保険大手アメリカン・インターナショナル・グループに次いで2位。

●メリルはバンカメによる救済合併発表により、15日は下げ止まった。


*************

■米NYでは、寄り付きの大幅下落後は、一時は値を戻す動きも見られていた。
メリルは買収価格である1株29ドルに鞘寄せされるように
2割弱の上昇を見せていたが、
終わってみれば、株価は前日比ほぼ横ばいであった。

また、財務体力に余裕のある米銀が米証券を買収することは、
私には魅力的に映るが、バンカメも大幅な株価下落に見舞われた。

■しかし、90年代後半から00年代前半の日本の金融不安時を振り返れば、
一連の動きは最終的には「株価上昇要因」となるのではないか、
と私は考えている。

不良債権処理の過程は、いつも以下のような流れだ。
そして、以下に示す第5のポイントに到達すると株価は反発するというのが、
過去日本で見られた事例だ。


************

第1のポイントは、「金融緩和」(=利下げ)

第2のポイントは、「不良債権額増大」

第3のポイントは、「資本増強」

第4のポイントは、「株価大幅下落」

第5のポイントは、「公的資金投入」or「大手金融機関破綻」

************

■そう考えると、先週末の米住宅公社2社(フレディマック、ファニーメイ)
への公的資金投入、ならびに、リーマンの破綻は、
まさに第5のポイントに到達したことになる。

日本で具体的な事例を絡めて流れを見ると、以下のようになる。


************

第1のポイントは、「金融緩和」(=利下げ)
→2001年3月/ゼロ金利導入

第2のポイントは、「不良債権額増大」
→2002年3月/みずほフィナンシャルグループ巨額赤字決算転落

第3のポイントは、「資本増強」
→2002年12月/三井住友資本増強、2003年1月/

第4のポイントは、「株価大幅下落」
→資本増強後も株価下落に歯止め効かず

第5のポイントは、「公的資金投入」or「大手金融機関破綻」
→2003年5月/りそなホールディングス国有化、公的資金投入

************

■結果、2003年5月をボトムに株価は大幅反発、
最終的には、金融株は1年で数倍の上昇を見せた。

2004年3月末の終値を1年前と比較した時の、
株式値上がり率ランキングの上位を見ると以下のとおりだ。


************

1位/UFJ/461.0%

2位/みずほ/362.8%

3位/三井住友/263.2%

4位/三井トラスト/239.2%

5位/りそな/205.3%

※社名は当時のもの


************

■そして、その後、UFJグループの実質的な破綻として
三菱グループとの統合が実現したとき、
つまり、金融再編が起こったとき、株価はさらに上昇した。

もちろん、今回のリーマンに関しては、
国有化という選択が採られなかったため、
りそなとまったく同じという構図ではない。
そのため、世界中の投資家が不安視、売りに拍車をかけてしまったのだろう。

また、リーマンの次と噂される保険大手AIGの破綻懸念も手伝い、
短期的には弱含む可能性も否定はできない。


■しかし、金融不安に至る道筋、そして、それが解消される道筋というのは、
後から振り返ればシンプルなものだ。
そのことをすでに私たち日本の投資家は経験している。

日本の金融業界ですら、ほんの数年前までは倒産の危機にさらされていた。
未曾有の金融危機だったはずだ。しかし、それは今や昔の話。

いくら海の向こうで大騒ぎしていても、日本のメガバンクが
つぶれてしまうと考える投資家はほとんど皆無に近いだろう。


■つまり、金融不安は、渦中にいると「この世の終わり」と感じてしまう。
しかし、必ずや「時が癒す」ということも、また真実ではないだろうか。

かつて、アジア通貨危機と呼ばれた金融危機もそうだった。
勃発した98年当時は、「回復には10年かかる」と言われたものだった。
しかし、結果はどうだったか。
10年どころか、近年の成長は目を見張るものとなった。

今回のサブプライムローン問題に端を発した金融不安も、
いよいよ最終局面に差し掛かろうとしている。
未だ渦中にいるため、私たちは不安に悩まされてしまう。
本日の日経平均株価も、前日の米NYダウの下落につられてしまう可能性は高い。

しかし、私は、こうした事態はチャンスである、と考えたい。
暴落をしたタイミングで通常よりも大幅なバーゲンセールで
投資する事ができる、ということに他ならないからだ。


■昨年の夏に書いた、
「サブプライムローン問題は根が深い」という趣旨のコラムを、
文藝春秋の書籍「日本の論点2008」に掲載いただいた。
当時を振り返ると、サブプライムローン問題は
「一過性」という意見が多数だった。

その後、「新興国は逃避地」、「さよならサブプライム」といった言葉が踊り、
何事もないように株価が上昇した時期があった。
しかし、結果、その流れは脆くも崩れた。

今回も同様ではないか。
つまり、「もう終わりだ」と投資家が総悲観になる中で、
株価が下落しているものの、結果として数年後から見れば、
「あの時がボトムだった」という株価反転のキッカケになるのではないか、
ことになると考えている。


■非常に苦しい相場が続く。そして、ニュースも厳しいものが続く。
だからこそ、頭に汗をかき、情報を収集し、将来を見据えたい。
今回の米住宅公社2社への公的資金投入、
そして、リーマン破綻に至る一連の報道は、
私に「買いチャンス」と映っている。
投資家一人一人、当文を参考の上、ご判断いただきたい。


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◇発行人/編集人

木下晃伸(きのしたてるのぶ)
(社団法人)日本証券アナリスト協会検定会員
株式会社 きのしたてるのぶ事務所

(C)2005-2008byTerunobu Kinoshita&TERUNOBU KINOSHITA OFFICE LIMITED. All Rights Reserved.


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2件のコメントがあります
  • イメージ
    おかモッチさん
    2008/9/17 23:56
    AIGの保険業務で、サブプライムローン問題による
    不測な事態が起こらなければいいのですが、
    非常事態を考えた上で、FRBの9兆円融資(上限)
    では、まだまだ安心できない様な気がします。

    シロト考えですね。(笑)
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    yoc1234さん
    2008/9/16 14:32
    2003年からの上昇を思い起こすと確かにチャンスでしょうね。特に値動きの激しい米国金融機関はねらい目でしょう。ダウの構成銘柄がひとつなくなりそうですね。