今週の相場は、前半の急激な上昇から一転して木曜日の暴落と、上下に大きく振れる展開となりました。木曜の下げについては、いろいろ言われているようですが、下げを想定していた投資家の動きにヘッジファンドが反応し、東証の超高速処理システムとプログラム売買が下げを加速させたと考えています。
前半は、「石が流れて木の葉が沈む」、後半は「機械は人間の感性を超える」相場になりました。ファンダメンタル重視の私としては、PER、配当利回りなどの指標がないような会社の株がどう動いても、別世界の出来事と思っていたのですが。
ところが、木曜日の大幅な下げは、1日の現物や先物の出来高、値幅、すべてが記録ずくめで、あの3.11大震災を超えていたのです。ヘッジファンドの投資行動は、私の想像をはるかに超えてしまいました。
前日アメリカのバーナンキ議長の議会証言で金融緩和の出口戦略に触れたとか、この日に発表された中国のPMIが50を下回ったとか、後講釈はあるのでしょうが、世界の指数はそれほど反応していません。
日本で何が起こったのでしょうか。それが今後の相場見通しにどのような影を落とすのでしょうか……。
東証が取り入れた超高速処理システムは、導入の当初から個人投資家にはほとんどメリットがなく、機関投資家有利とされていました。相場に少しでも早くアクセスし売買するには、コンピューターのほうがはるかに早く、人間の力では及びません。
そのためヘッジファンドばかりでなく多くの機関投資家は、プログラムで取引を行っています。中身は秘中の秘でしょうが、ヘッジファンドのプログラムは、動くものに反応するよう設定されているようです。こう考えると、前半の「石が流れて木の葉が沈む」のも、記録ずくめの木曜日相場も、よく理解できます。
前半はファンダを無視し、動くものに乗ってストップまで持ち上げ、木曜日には下げに反応し、想定外の暴落を演出したのです。異常とも思える順張りの投資行動もこれで説明できます。超大型株がファンダを無視してストップ高になるのも、彼らの資金量以外に、こうしたプログラムによるものといえます。
そのプログラムは、相場のわずかな動きを人間よりも数倍早く嗅ぎ取り、行動に映すことも実証されました。「機械は人間の感性を超えた」のです。
こうして持ち上げられた株の後始末はどうするつもりなのでしょうか。
ファンダが利いていれば、それなりに落としどころが分かりますが、ファンダ無視で持ち上げられた株価は、需給に材料がない限り、半値8掛け2割引まで落ち込むとされています。長期では、ファンダで買いが入る水準まで下がると見たほうがよさそうです。これらの株はしばらくの間、新たな買いを誘い込むように動くと思いますが、新規買いは避けたいところです。
「そんな心配はご無用!彼らはプログラムでとっくに売り切っているもんな~」
相場は来週からまた上昇トレンドに入るでしょう。ただ、相手がヘッジファンドであり、その動きがプログラムによるものである以上、想定外の動きは今後も発生することが予想されます。
相場は下げの後、物色の潮目が変わるといわれています。ファンダに基づいて買っていれば、下げは限定的で戻りも早いと思われます。ファンダメンタルに着目し、出遅れている中小型株の押し目を拾って吹き値を待ちましょう。動かないうちに仕込み、何かのきっかけで動けば、プログラムが反応してくれます。
「将棋もコンピューターに勝てなかったし……、だんだん難しくなるなあ~」