バラの会さんのブログ

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経済・経営キーワード塾 国際会計基準

■楽天で10社目の任意適用企業

昨年末(2012月20日)の日経電子版の記事によると楽天は2013年12月期第1四半期(2013年1~3月期)決算から、日本の会計基準(日本基準)に替えて、国際会計基準(IFRS)によって連結財務諸表と連結会計書類を開示するといいます。

このIFRSを企業が任意に適用することを表明・開始している日本企業は、日本電波工業住友商事HOYA日本板硝子JTディー・エヌ・エーSBIホールディングスアンリツ中外製薬に続いて10社目ということです。

今回は国際会計基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)について見てみます。

■経営者の意図に左右されない「包括利益」

IFRSは直訳すると国際財務報告基準の意味ですが、日本では国際会計基準と呼ばれています。欧州を中心に世界100カ国以上で使われている会計基準です。世界の会計基準は、主に欧州中心の国際会計基準、アメリカ基準、日本基準の3つがあります。国際会計基準の特長としてプリンシパル・ベース(原則主義)と資産・負債アプローチが挙げられます。前者は例外を認めず、原理原則を明確にし、実態に即した判断を行うことです。また、資産・負債アプローチは期首と期末の純資産の変動をとらえ、経営者の意図に左右されない「包括利益」を重視しています。

財務報告では利益が最も重視されます。俗に「経営者の成績表」に例えられますが、国際的にみると「利益」の内容が日本基準と国際基準、アメリカ基準で異なります。仮に、日本、米国、欧州の3社の利益が同じ「100億円」であったとしても、その内容に違いがあるのでは、国際的に正しい評価が行えません。

例えば日本基準では「経常利益」があります。本業の儲けを示すと言われていますが、アメリカ基準や国際基準では「経常利益」という概念がありません。国際基準では保有する株式や金融商品の時価変動を加えて「包括利益」として表示します。これらの資産を得た段階での簿価ではなく、現在の価格を利益に含めて表示します。本業の事業の損益だけでなく、保有する資産の値下がり・値上がりも利益に計上するので、より正確に企業の一定期間(決算期)における利益を表すことができるわけです。

M&Aの際の資産の評価やのれん代、年金債務、在庫評価でも同じことが言えます。これらの資産の評価についても日本基準と国際基準では異なっています。資産の評価方法が異なると、利益について正確に比較することができず、その結果、日本企業の国際的な活動が大きく阻害されることになります。

■結論は先延ばしに

現実の先に上げた楽天を例にとると、事業活動がグローバル化しており、M&Aも頻繁に実施しており、この作業を効率化するのが狙いの一つだと言います。海外投資家の持ち株比率も高まっており、海外での資金調達をしやすくする点も、IFRS摘要の要因だとしています。

IFRSの導入は当初、2012年に最終決定し、2015年に導入される予定でしたが、導入を検討していた金融庁の企業会計意審議会では結論が2013年移行に先延ばしされる見通しとなって来ました。経団連などは、会計システム変更の企業に与える負担が大きいといった“屁理屈”からすべての上場企業へ全面的に強制適用するのは反対との姿勢をとっています。希望する企業が「適応すればいい」という任意摘要用のままという意見と、一定数の主要企業には強制適用すべきだとすべき意見に割れてまとまりません。

筆者はもちろん、IFRSは全面的に導入すべきだと考えています。

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2件のコメントがあります
  • イメージ
    バラの会さん
    2013/2/2 19:58

    今後、TPPとか考える上で必須かもですね。



     

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    市谷次郎さん
    2013/2/2 11:03

    バラの会さん

     

     IFRSの詳細な説明ありがとうございました。

     

    以下 勝手な拙いひとりごと・・・

    (1)全部でたったの10社とは、日本の制度改革いいかげんですね(人気の5202板硝子、狙い目の8053住友商事 がはいってる 注目!)

    (2)企業評価のものさしがこれじゃ真実のVALUEは測れない(極端にいえばメートルとくじら尺みたい?)

    (3)投資目的の有価証券に関しては日本基準でもたしか時価会計になって有価証券評価損益を表示している

    (4)より真実な企業価値評価を求めて時間軸で並んでる感じか

       日本基準→米国基準→IFRS

    (5)EPSの注記にIFRSではこれだけ企業価値が下がりますとの表示が必要(あるいは日本基準ではこれだけ評価が上がります)