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雅楽 存続ピンチ 篳篥用ヨシ原 真上に高速道建設へ
新名神高速道路が真上を通る計画がある「鵜殿のヨシ原」=7月18日、大阪府高槻市で
ユネスコの無形文化遺産で千年を超える歴史を持つ雅楽に欠かせない楽器、篳篥(ひちりき)に使う天然のヨシが危機にひんしている。篳篥用ヨシの唯一の産地、大阪府高槻市の「鵜殿(うどの)のヨシ原」の真上に、新名神高速道路の建設が決まったためだ。雅楽を担う宮内庁の楽部などからヨシの保全を求める声が上がり、地元でもこの七月、署名活動が始まった。 (小林泰介)
ヨシ原は淀川河川敷に広がる約七十五ヘクタールで、甲子園球場の十八倍。ここで平安時代から採れるヨシの茎が加工され、篳篥の吹き口「蘆舌(ろぜつ)」になっている。江戸時代の古文書に鵜殿のヨシが最高と記録があり、宮内庁の楽部もここで採れたものだけを使っている。
篳篥奏者の東儀秀樹さんによると、茎が太く、肉も厚く、繊維の密度も高く、世界で唯一の質。ここのヨシでも素材として満足できるものは千本に一本程度しかなく、他の場所のヨシでは代替はまず不可能という。
国土交通省淀川河川事務所の淀川環境委員会委員、小山弘道・元大阪市大助手(植物生態学)によると、鵜殿には高さ五メートルもの太いヨシが、地下二メートルの肥沃(ひよく)な黒土に根を張っている。「大都市圏でこれほど保全されているのは奇跡的」という。
小山さんは「工事が始まれば、ヨシの生育に欠かせない水を供給しているポンプは止められるだろう。害虫駆除のためにヨシ焼きが行われているが、真上に高速道路ができれば車の通行を妨げる煙害となり、焼けなくなる」と心配する。環境が変化しヨシ焼きができなくなれば、二、三年でヨシが全滅する恐れがある。
新名神高速は無駄な公共事業として凍結されていたが、国交省は今年四月に着工を決断。これに対して宮内庁楽部は五月、「現地の保全と環境への配慮」を要望した。六月には首席楽長らの連名で「雅楽の篳篥のヨシを守るために」という声明を出した。
地元ではヨシ原の保全を続けてきた人々を中心に、七月に「SAVE THE鵜殿ヨシ原~雅楽を未来へつなぐ~」実行委員会が設立され、全国規模の署名活動を始めた。他にも雅楽団体や研究者などが保全を求める動きもある。
国交省は着工の理由に、名神高速の渋滞緩和や震災時の多重的な交通の確保などを挙げる。ただ工事の凍結解除を決めた前田武志・前国交相は「しっかり環境保全に努めているという認識だった」と雅楽との関係を知らなかった。国交省側も「雅楽がユネスコの無形文化遺産だと知らなかった。専門家と意見交換したい」(高速道路課)としている。
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