ユリウスさんのブログ
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世界と日本の囲碁界
「囲碁データベース」さんが、昨年世界戦で活躍した棋士のランキングを作ってくださいました。それを見ながら世界の囲碁界と日本の囲碁界を考えてみたい。
まず、ランキング表をご覧ください。(一部加筆しました)各国からそれぞれ選ばれて、昨年世界戦に出場し、3勝以上を上げたトップランクの棋士21名です。
トップの1位~3位までは韓国棋士、それに中国棋士が続いています。
2007年世界戦勝ち星ランキング(1月1日~12月31日、対象:3勝以上の棋士)
順位 棋士名 成績 勝率 記録
1位 李世石九段(韓) 14勝3敗 .824 第3回トヨタ&デンソー杯優勝、第19回TVアジア杯優勝
2位 朴永訓九段(韓) 12勝4敗 .750 第20回富士通杯優勝
3位 李昌鎬九段(韓) 10勝5敗 .667 第11回三星火災杯準優勝、第3回中環杯優勝
4位 胡耀宇八段(中) 9勝6敗 .600 第11回LG杯準優勝
5位 古力九段(中) 7勝5敗 .583 第6回春蘭杯優勝
6位 韓尚勲初段(韓) 6勝1敗 .857
6位 常昊九段(中) 6勝5敗 .545 第11回三星火災杯優勝、第6回春蘭杯準優勝
6位 張栩九段(日) 6勝6敗 .500 第3回トヨタ&デンソー杯準優勝 → 日本棋院(台湾出身)
9位 李文真五段(韓) 5勝0敗 1.000
9位 朴賴恩六段(韓) 5勝2敗 .714
9位 朴正祥九段(韓) 5勝3敗 .625
9位 王檄九段(中) 5勝3敗 .625
13位 依田紀基九段(日) 4勝3敗 .571 →日本棋院
13位 睦鎮碩九段(韓) 4勝3敗 .571
15位 内迺偉九段(韓) 3勝0敗 1.000 → 世界最強の女性です
15位 温昭珍三段(韓) 3勝1敗 .750
15位 鄭岩二段(中) 3勝2敗 .600
15位 黄奕中六段(中) 3勝2敗 .600
15位 周俊勲九段(台湾) 3勝4敗 .429 第11回LG杯優勝
15位 河野臨九段(日) 3勝4敗 .429 → 日本棋院
15位 趙漢乗九段(韓) 3勝6敗 .333
上のリストから棋士を国別に見て見ましょう。(同一国のはずなのに、中国と台湾は囲碁の世界では分けて扱われているのでそれに従っています)
韓国 11(52.4%)名
中国 6(28.6%)
日本 3(14.3%)
台湾 1(4,8%)
一見して、韓国の大優勢、二位は中国で、わが国は3位に甘んじています。一昔前は世界をリードしていた囲碁大国でしたが、最近の現状はこのリストの通りです。日頃NHKTV対局や新聞等でお目にかかる棋士は世界戦ではほとんど勝てない存在のプロなのです。この傾向はここ数年変わりません。しいて言えば中国の若い人が勢いを増したくらい。
知的格闘技(写真はAMERICAN GO E-JOURNAL(Volume 9, #8)より借用)
我が国の囲碁をこのように衰退させた原因は何か? 色々な議論はあり、文化や社会構造や育成方法や国民性をもって論じる方もいますが、これは結果から見ての後付講釈であったり、不毛の水掛け論になったり、百家争鳴状態で、まだ結論は得られていません。
そういう議論はやめて、ここでは上位三国の囲碁の制度を単純に比較してみたいと思います。
1 強さの基準(プロの場合)
囲碁は勝敗を争うゲームですから、強いものが勝ち、弱いものが負けるのですから、ランキングは簡単に作ることができます。囲碁ファンはどの棋士が一番強いのか、とか若手で上位に迫る勢いのある棋士は誰かなど、一目で分かるランキングを望んでいます。(テニスでも、ゴルフでも、相撲でも、ファン真理は同じと思います)
韓国:ランキング制をとっている。毎月末日に発表される韓国等級ランキングが現在の棋士の実力を正しく表していると考えられます。世界戦にはこのランキング上位者が出場権を与えられるよう最近なりました。
中国:ランキング制度は韓国よりも歴史は古い。以前から、このランキングの上位者が世界戦に出場できると定めていたので、どこよりも透明性は高い。
日本:段位制をとっているが、最高段位の九段が一番強いわけではないから、段は強さの基準とはいえない。では強い棋士は誰かと言えばタイトルフォルダーになろうが、タイトルは複数の棋士が分散して獲得しており、現在一番強い棋士は誰か、誰にも分からない。
要するに、ファンは誰が強いか知りたいが、巧妙に分からない仕掛けになっている。これは戦後、新生日本棋院が発足してから、ほとんど改革らしい改革もなしに今日まで来ていることに起因する。また、国際戦に出場する棋士の選抜も、国内棋戦の方を優先しているので、ファンにとって、選抜方法は訳の分からないやり方ないなっている。
2 わが国のプロ組織
制度の不備は統合したランキング制度がないことを示せば十分なのですが、これ以外に、わが国のプロ集団はいまだに一本化されていないという欠陥を持つ。
日本棋院と関西棋院という二つの専門家集団があり、二つの棋院では棋士の昇段基準も違えば、対局数も、対戦相手も違い、勝数や勝率でさえ、所属が違えば比較することすらできない状態ですから、話にもなりません。
一つの国に、プロ棋士を統括する組織もないありさまでは、不都合が多すぎる。外国から見たら何とも変な国に見える。時々、日本人からも「関西棋院とは何か?」という素朴な質問を受けることがあります。インターネット時代になっても、内部から改革の声は上らず、10年一日、沈滞したままであります。囲碁の仲良し倶楽部と呼びたいほどのぬるま湯プロ集団に見えます。
当然のことではありますが、韓国、中国、台湾はいうに及ばず、ヨーロッパやアメリカなどプロ棋士制度があるなしに拘わらず、囲碁界を統括する組織を持っています。
3 アマチュアの強さの基準、尺度
わが国は免状による段級制をとっているが、現実に5段より弱い6段がいるので強さの基準たり得ない。ハッキリいえば無茶苦茶、基準はあってないようなものです。(免状発行は棋院の資金源)
韓国、中国、台湾も段級で強さを表示していますが、尺度としての精確度については詳しくはしりません。強さの基準としては曖昧さはあるように感じてます。
そこへ行くとヨーロッパとアメリカはアマチュアも、ポイント制というキチンとした強さの基準が出来ています。ヨーロッパ全体、アメリカ全土にこのポイントは有効ですから、各地を旅してもすぐ好敵手が見つかります。極めて合理的なシステムで、すべてコンピューターで管理されているので信頼できます。
ちなみに、小生はAGA(アメリカ囲碁協会)では4.9ポイントですから、強い四段という判定です。このため、「いきいき塾」に初対面の外国人を迎えた時、このランキングを参考にして、直ぐに正しいハンディキャップの下で、碁を楽しめます。
何事にせよ、
1 シッカリした枠組みをつくって
2 キチンとしたルールの下で
3 正々堂々と競争できる
オープンで透明性の高い制度のあるところに、発展があると信じるものです。
まず、ランキング表をご覧ください。(一部加筆しました)各国からそれぞれ選ばれて、昨年世界戦に出場し、3勝以上を上げたトップランクの棋士21名です。
トップの1位~3位までは韓国棋士、それに中国棋士が続いています。
2007年世界戦勝ち星ランキング(1月1日~12月31日、対象:3勝以上の棋士)
順位 棋士名 成績 勝率 記録
1位 李世石九段(韓) 14勝3敗 .824 第3回トヨタ&デンソー杯優勝、第19回TVアジア杯優勝
2位 朴永訓九段(韓) 12勝4敗 .750 第20回富士通杯優勝
3位 李昌鎬九段(韓) 10勝5敗 .667 第11回三星火災杯準優勝、第3回中環杯優勝
4位 胡耀宇八段(中) 9勝6敗 .600 第11回LG杯準優勝
5位 古力九段(中) 7勝5敗 .583 第6回春蘭杯優勝
6位 韓尚勲初段(韓) 6勝1敗 .857
6位 常昊九段(中) 6勝5敗 .545 第11回三星火災杯優勝、第6回春蘭杯準優勝
6位 張栩九段(日) 6勝6敗 .500 第3回トヨタ&デンソー杯準優勝 → 日本棋院(台湾出身)
9位 李文真五段(韓) 5勝0敗 1.000
9位 朴賴恩六段(韓) 5勝2敗 .714
9位 朴正祥九段(韓) 5勝3敗 .625
9位 王檄九段(中) 5勝3敗 .625
13位 依田紀基九段(日) 4勝3敗 .571 →日本棋院
13位 睦鎮碩九段(韓) 4勝3敗 .571
15位 内迺偉九段(韓) 3勝0敗 1.000 → 世界最強の女性です
15位 温昭珍三段(韓) 3勝1敗 .750
15位 鄭岩二段(中) 3勝2敗 .600
15位 黄奕中六段(中) 3勝2敗 .600
15位 周俊勲九段(台湾) 3勝4敗 .429 第11回LG杯優勝
15位 河野臨九段(日) 3勝4敗 .429 → 日本棋院
15位 趙漢乗九段(韓) 3勝6敗 .333
上のリストから棋士を国別に見て見ましょう。(同一国のはずなのに、中国と台湾は囲碁の世界では分けて扱われているのでそれに従っています)
韓国 11(52.4%)名
中国 6(28.6%)
日本 3(14.3%)
台湾 1(4,8%)
一見して、韓国の大優勢、二位は中国で、わが国は3位に甘んじています。一昔前は世界をリードしていた囲碁大国でしたが、最近の現状はこのリストの通りです。日頃NHKTV対局や新聞等でお目にかかる棋士は世界戦ではほとんど勝てない存在のプロなのです。この傾向はここ数年変わりません。しいて言えば中国の若い人が勢いを増したくらい。
知的格闘技(写真はAMERICAN GO E-JOURNAL(Volume 9, #8)より借用)
我が国の囲碁をこのように衰退させた原因は何か? 色々な議論はあり、文化や社会構造や育成方法や国民性をもって論じる方もいますが、これは結果から見ての後付講釈であったり、不毛の水掛け論になったり、百家争鳴状態で、まだ結論は得られていません。
そういう議論はやめて、ここでは上位三国の囲碁の制度を単純に比較してみたいと思います。
1 強さの基準(プロの場合)
囲碁は勝敗を争うゲームですから、強いものが勝ち、弱いものが負けるのですから、ランキングは簡単に作ることができます。囲碁ファンはどの棋士が一番強いのか、とか若手で上位に迫る勢いのある棋士は誰かなど、一目で分かるランキングを望んでいます。(テニスでも、ゴルフでも、相撲でも、ファン真理は同じと思います)
韓国:ランキング制をとっている。毎月末日に発表される韓国等級ランキングが現在の棋士の実力を正しく表していると考えられます。世界戦にはこのランキング上位者が出場権を与えられるよう最近なりました。
中国:ランキング制度は韓国よりも歴史は古い。以前から、このランキングの上位者が世界戦に出場できると定めていたので、どこよりも透明性は高い。
日本:段位制をとっているが、最高段位の九段が一番強いわけではないから、段は強さの基準とはいえない。では強い棋士は誰かと言えばタイトルフォルダーになろうが、タイトルは複数の棋士が分散して獲得しており、現在一番強い棋士は誰か、誰にも分からない。
要するに、ファンは誰が強いか知りたいが、巧妙に分からない仕掛けになっている。これは戦後、新生日本棋院が発足してから、ほとんど改革らしい改革もなしに今日まで来ていることに起因する。また、国際戦に出場する棋士の選抜も、国内棋戦の方を優先しているので、ファンにとって、選抜方法は訳の分からないやり方ないなっている。
2 わが国のプロ組織
制度の不備は統合したランキング制度がないことを示せば十分なのですが、これ以外に、わが国のプロ集団はいまだに一本化されていないという欠陥を持つ。
日本棋院と関西棋院という二つの専門家集団があり、二つの棋院では棋士の昇段基準も違えば、対局数も、対戦相手も違い、勝数や勝率でさえ、所属が違えば比較することすらできない状態ですから、話にもなりません。
一つの国に、プロ棋士を統括する組織もないありさまでは、不都合が多すぎる。外国から見たら何とも変な国に見える。時々、日本人からも「関西棋院とは何か?」という素朴な質問を受けることがあります。インターネット時代になっても、内部から改革の声は上らず、10年一日、沈滞したままであります。囲碁の仲良し倶楽部と呼びたいほどのぬるま湯プロ集団に見えます。
当然のことではありますが、韓国、中国、台湾はいうに及ばず、ヨーロッパやアメリカなどプロ棋士制度があるなしに拘わらず、囲碁界を統括する組織を持っています。
3 アマチュアの強さの基準、尺度
わが国は免状による段級制をとっているが、現実に5段より弱い6段がいるので強さの基準たり得ない。ハッキリいえば無茶苦茶、基準はあってないようなものです。(免状発行は棋院の資金源)
韓国、中国、台湾も段級で強さを表示していますが、尺度としての精確度については詳しくはしりません。強さの基準としては曖昧さはあるように感じてます。
そこへ行くとヨーロッパとアメリカはアマチュアも、ポイント制というキチンとした強さの基準が出来ています。ヨーロッパ全体、アメリカ全土にこのポイントは有効ですから、各地を旅してもすぐ好敵手が見つかります。極めて合理的なシステムで、すべてコンピューターで管理されているので信頼できます。
ちなみに、小生はAGA(アメリカ囲碁協会)では4.9ポイントですから、強い四段という判定です。このため、「いきいき塾」に初対面の外国人を迎えた時、このランキングを参考にして、直ぐに正しいハンディキャップの下で、碁を楽しめます。
何事にせよ、
1 シッカリした枠組みをつくって
2 キチンとしたルールの下で
3 正々堂々と競争できる
オープンで透明性の高い制度のあるところに、発展があると信じるものです。
人々に親しまれているみたいですね。
日本ではサザエさんくらいです。
日本でももっと裾野が広がればいいですね。