ユリウスさんのブログ

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ドッキリ短歌 -歌崎功恵-

 文藝春秋7月号のエッセイ欄の歌崎功恵(ウタザキノリエ)の短歌に目が留まった。7首掲載されている中の3首が気に入りました。

十五年のつきひの後の湾岸線神戸のひかりは視野に溢れて    歌崎功恵    
→ 3.11の地震のことには一言も触れていないけれど、追憶と復興した神戸の夜景が被災地への応援歌になっていて素晴らしいと思いました。


群生のひまわりは揺れ遥かなるチェルノブイリに似るか ゆうやみ    歌崎功恵
→ 向日葵は放射能物質を吸収する働きがあるという。詩人は何を思っているのか想像できませんが、人間の営みの愚かさとか儚さは十分感じ取れるのではないでしょうか?
大きな景を歌って何かを考えさせるこういう表現方法は大好きです。



後ろから抱かれるときわたくしの出す溶液はさなぎの匂い    歌崎功恵
→ ドキッ。
情景はなんとか理解できる(笑)ものの「さなぎの匂い」がさっぱりわかりません。男の書くものでは「蜜」とか「蜜液」、「蜜汁」が常套句なのに。こういうことに疎い翔年はなんぼ考えても先へ進まない。ブレインのK.Y.さんに「これ分る」と聞いてみたら、「分る」と言う。
説明は色々あったがそれは省略して、最後の見事な一言だけ読者におすそ分けします。
「さなぎは蝶になるのよ」。
ごもっとも。


歌崎功恵の歌集「走れウサギ」、本屋でよく見てから買うつもりです。いい歌があったらいつか紹介します。


そう言えば俳人はこんな俳句も作っていました。
手枕や蝶は毎日来てくれる    小林一茶

蝶高く登れアルプスの雪見えるまで    石原 透

日盛りに蝶のふれ合う音すなり      松瀬青々

蝶の羽のこまかくふるへ交わりけり    室生犀星
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