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FRB議長会見(1)景気回復遅れ、理由正確にわからず 他


2011/06/23, 07:51, 日経速報ニュース, 1452文字
 【ニューヨーク=伴百江】バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は22日の記者会見で、景気回復が遅れている理由について「正確にはわからない」と述べ、一時的か長期的要因によるのかを、慎重に見極める姿勢を示した。また、追加措置をとらなかったのは、デフレのリスクがあった「昨年8月とは状況が違う」ためだと強調した。
 会見の要旨は以下の通り
 【景気見通し】
 2012年に入れば景気拡大ペースは加速するとみるが、そのペースは今年4月(の見通し)よりは鈍いだろう。景気拡大が遅れている状況が長引いている理由は正確にはわからない。金融業界の業績低迷、住宅市場の低迷などの要因が予想以上に長引いているからかもしれない。一時的な要因もあれば、来年まで長引く長期的な要素もある。
 【追加緩和について】
 FRBによる今後の資産買い取りに関して、今日はとくに新たな決定をしなかった。今後の景況次第でFOMCのメンバーが決める。
 資産買い取りについて検討を始めた昨年8月と現在との違いは、当時はインフレは低水準で、さらに低下傾向にあったほか、ある程度デフレのリスクがあったことだ。証券買い取りはこのデフレのリスクを解消するのに効果を発揮してきた。
 さらに私が昨年8月にジャクソン・ホールで講演した4カ月前から雇用は拡大を始め、それまでは月平均8万人の雇用増加数だったのが、今年に入り年初から5月までに月18万人近い雇用増加数まで改善した。昨年8月時点では物価安定と雇用創出というFRBの二つの責務の両方を果たしていなかった。インフレは低すぎ、失業率は再び上昇を始めつつあったからだ。当時は量的緩和の実施の必要性は明白だった。
 しかし、現在の状況は違う。望ましい状況とは言えないものの、昨年と比べればFRBは二つの使命を果たしつつあるといえる。
 【インフレ目標】
 私がかねてからインフレ目標設定の擁護者であることはご承知の通りだ。インフレ目標の設定はインフレ期待値を固定させ、我々の目標に到達する助けになるし、雇用目標とも両立できる。その意味で導入は検討余地がある。導入方法としては世界中にいろいろなやり方があり、必ずしも導入に障害があるとは思わない。ただ、そのためには国民や議会とのコミュニケーションが重要で、インフレ目標の導入により雇用創出という目標を捨てるわけではないことを明確に理解してもらう必要がある。
 【コアインフレ率の上昇】
 (食料、エネルギーを除いた)コアインフレ率の上昇は一時的な要因によるものだ。例えば日本の震災後のサプライチェーンへの打撃で自動車価格が先月に大きく上昇した。これも競争が回復し、コストが下がれば徐々に価格上昇はおさまるだろう。もう一つの例はエネルギー価格の上昇で航空料金が上昇している点。これも原油価格が下落すれば落ち着くだろう。
 需給ギャップが依然として大きく、インフレ期待値が安定し、一時的な要因で一部のインフレ上昇があるという状況を踏まえれば、コアインフレはいずれは目標水準に落ち着くとみている。
 【雇用正常化の時期】 FRBの予測通り、今年後半から来年にかけて景気拡大ぺースが加速すれば、それに伴い雇用も健全な拡大を見込める。ただ、経済成長率の見込みが今のところ2.5~2.8%と長期的潜在成長率に満たない現在、失業率が低下するのにはかなり時間がかかる。失業率が5.5%程度の完全雇用状態になるにはあと数年はかかるだろう。景気には長期的な打撃を与えることになるだけに大きな懸念材料だ。

 

FRB議長会見(2)低金利、「少なくともFOMC2~3回」

 

2011/06/23, 07:58, 日経速報ニュース, 1526文字

 

【ニューヨーク=蔭山道子】バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は22日の記者会見で、異例の低水準の政策金利を続ける「長期間」という声明の表現について、「少なくともFOMCの会合2~3回」と明言。また、金融緩和からの出口戦略に着手する目安を経済統計などの数値で設定するのは難しいと述べた。
 発言要旨は以下の通り
 【インフレ目標】
 インフレ目標の採用で、我々は(物価安定という)目的を達成しやすくなる。インフレ期待を低く安定的に保つことで、経済に打撃が加わった際の対応に時間的な余裕を確保できる。
 世界には様々なモデルがある。例えば欧州の中央銀行は物価安定のために独自の目標を設けている。インフレ目標の設定に何らかの障壁があるわけではない。ただし市民とのコミュニケーションは非常に重要だ。説明が不十分だと、雇用促進というもうひとつの目標を忘れているのではないかと考える人も出る。インフレ目標を設定したからといって雇用促進という目標を忘れているわけではないということを、市民や議会に理解してもらう必要がある
 インフレ目標について、米議会の意向を探ることは重要で、そのために法的な機関を設置する必要があるのかもしれない。それに向けて進むには政府や議会の賛同を得ることが必要となる。(インフレ目標を公認のものにするかどうかという問題は)定期的に議論をしており、今後も続けていく。
 【「長期間」とは】
 声明文で、異例の低水準の政策金利が「長期間」にわたり正当化されるという文言を残しているのは、わざとぼかしているのではなく、具体的な期間がどの程度なのか我々にも分かっていないためだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)の回数で数えて“少なくとも”2~3回の間、だと考えている。
 だが要は経済やインフレ、雇用などの状況次第だ。それらにより「長期間」は非常に長い期間にもなりうる。仮に物価や雇用の状況が見通しを越えてくるようになれば、その時は出口戦略の着手を検討する必要がある。だが我々はまだその段階にはない。
 経済状況が悪化して物価も上昇しなければ、出口(戦略)には着手しないし文言も変えないだろう。見込まれる期間は金利水準も低く保たれるだろう。ただし我々は期間は明示しない。これは、経済の動向を見ながら見通しを修正していくという(我々の)意図を示している。実際、(今年の)4月以降、経済指標をみて我々は見通しを大幅に修正した。だから(「長期間」の意味する期限を)固定したくはない。
 【追加措置】
 足元の経済状況は昨年8月時点とは大きく異なる。デフレのリスクは無いし、雇用状況も改善している。現在は、景気回復の減速が一時的とはいえ、それがどの程度かということが不透明だ。何が起こるのか状況を見極める必要がある・
 状況を見ながら、見通しが変われば適切に対応する。追加の証券購入など対応策はひとつではない。だが何をするにも費用はかかる。バランスシートの見通しを公表するとか、(超低金利を維持する)「長期間」を明示するなどの方法はとの質問も出たが、それらは先例が無いためどのような費用が必要になるのか分からない。いずれにしても、状況に応じて追加的な措置をとる準備はできている。
 【出口戦略発動の目安】
 米連邦公開市場委員会(FOMC)には17人の委員がいて、金融政策やインフレ、雇用に対する考えもそれぞれに異なる。雇用やインフレがどの水準になれば出口戦略に着手するのかということを統計的な数字で示すのは難しい。
 出口戦略の始まりがふさわしい時期を探るために様々なシナリオを考えてはいる。それらは、その時々の状況や見通しに基づく。だが見通しは新たな情報が入るたびに変わる。
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