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―「オンライン診療の恒久化」と「オンライン初診料の引き上げ」がビッグトピックに―
マーケットフレンドリーとは呼べない岸田首相に対する株式市場からの評価には厳しいものがある。その一方、1年ほどの短い期間だったが、厳しい状況の中で各方面において、日本の改革の道筋をつけたのが菅前首相だった。菅氏が残した置き土産の一つに今大きな動きが見られ始めた。コロナ禍にあって急速に注目度が高まったテーマでもあるオンライン診療 の現状と、その関連銘柄にスポットを当てた。
●22年度から恒久化されるオンライン診療
2020年9月16日から21年10月4日まで、在職日数384日という1年ほどの短い期間だったが、コロナ禍という正解の見えない状況の中で陣頭指揮を執った菅前首相。辞任した安倍氏の後任として、コロナ禍という明らかに火中の栗を拾う状況となることを呑み込んだうえで、日本を前進させるべく政権運営に取り組んだ。その置き土産の一つが「オンライン診療」だ。所信表明演説において彼が明言した通り「オンライン診療の恒久化」の道筋をつけた。もともとオンライン診療(初診)は、20年4月にコロナ禍における特例措置という位置づけだったのだが、22年度からついに恒久化されることになる。
これに併せて、オンライン診療の普及に関して大きな課題の一つだった「初診料」についてもメスが入るようだ。直近の報道によると厚生労働省は、オンライン診療の初診料について、現在の水準から2割程度引き上げる方針とされている(※1月26日に開催された中央社会保険医療協議会で大筋合意、診療報酬の22年度改定に盛り込む方向)。具体的にはもともとの初診料2140円を2500円程度とする方針で、最終的には2月に決まるとみられる。
●オンライン診療は地方ほどニーズが高い
感染力が強い新型コロナウイルスへの対策の一つとして、オンライン診療の役割は非常に大きいと目されていた。しかし、蓋を開けてみれば、想定よりもはるかに普及しない現実が待っていた。そこで、促進剤的な効果を期待して実施するのが今回の初診料の引き上げなのだ。制度自体が恒久化されて基盤が整ったとしても、利用自体が着実に増加しなければ、これまでの努力も水の泡となる。
まずは今回の引き上げによって、どのような変化が見られるか注視していく必要があろう。対面診療と同等の水準まで更に初診の診療報酬を引き上げるべきとの意見もある一方、対面でしかできない診療行為がある以上、同等の評価はできないとの反論もあり、今後もオンライン診療を巡っては議論が続いていくことになるのは間違いない。ただし、「オンライン診療の恒久化」と「オンラインの初診料引き上げ」という2つのビッグトピックを受けて、これまで以上に関心が強まることは間違いないだろう。
更に、報酬引き上げの話題と時を同じくして、福井県の杉本達治知事が新型コロナの感染者に関して自宅経過観察の支援体制を手厚くするなかで、オンライン診療を基にした投薬を可能にするとの方針を岸田首相に伝えたとの報道もある。人的・物的資源が相対的に限られている分、それらの効率的な活用を目指している地方ほどその意識は高いようだ。
また、新型コロナとは別角度の動きとして、福島県の「会津オンライン診療研究会」が脳卒中患者を画面越しに診断し、救急車内で薬剤を投与しながら会津若松市の病院に搬送する体制づくりを目指していることなども話題となった。命が助かったとしても、搬送と治療のスピードによって、予後が大きく左右されてしまうような病気の場合にも、オンライン診療の活躍余地は大きく広がっている。
●中長期投資でも魅力十分なオンライン診療関連株
そこで今回、オンライン診療関連の銘柄に注目してみたい。コロナ禍以降も成長可能性が広がっている同テーマは、中長期投資の観点からも魅力がある。
◆JMDC <4483> ~医療分野においてヘルスビッグデータ事業、遠隔医療事業、調剤薬局支援事業を展開する。グループ会社のドクターネットにおいて、国内最大規模の放射線診断専門医プラットフォームである遠隔画像診断支援サービス「Tele-RAD」のほか、遠隔読影システム利用サービス「Virtual-RAD」、汎用画像診断システム「ドクターPACSfor」、人工知能(AI)での診断アシスト「AI-RAD」まで、画像診断をトータルソリューションで提供する。
◆勤次郎 <4013> [東証M]~就業ソリューション、人事ソリューション、ヘルスケアソリューションなどの統合HRMソリューション開発やLinux搭載タイムレコーダー・就業情報端末(NRLシリーズ)開発などを手掛けている。同社では遠隔診療システム「ケリーオンライン診療システム」を提供しており、初診患者、慢性疾患などを有する定期受診患者に対してオンラインでの診察並びにオンラインによる服薬指導が可能である。また、スマートボックス(東京都港区)と連携し、オンライン診療システムと医療通訳サービスを連携した新サービスの提供を開始している。
◆エムティーアイ <9438> ~音楽動画配信・ヘルスケア・生活情報のほかフィンテックの領域においてスマートフォン決済サービスを展開している。また、21年2月から医療情報システムの高度化を進めるサービスとして、健診機関や医療機関での個人の医療画像データを、クラウド上に自動保存するシステム「CARADA ブリッジ」を提供。医療画像データをクラウドに保管して個人が持ち運べる時代を目指している。
◆NSD <9759> ~システム開発事業を主力に、新コア事業としてクラウドを利用した新技術・デジタルトランスフォーメーション(DX)関連のシステム開発事業を手掛けている。同社は自社開発による遠隔健康支援サービス「CAReNA(カレナ)」を提供しており、医療の専門家との連携により、生活習慣改善・疾病予防を目的とした運動や食事に関する指導サービスなどを提供する。タイでは「CAReNA」を活用して複数の病院を運営するビシャイヴェート病院グループと連携し、タイ保健省や地方政府が実施する新型コロナ感染症対策を支援している。
◆Welby <4438> [東証M]~生活習慣病や、その他多種多様な症例に合わせて、患者の「自己管理」をサポートするサービスやツールの開発・運営事業のほか、製薬企業、医療機器メーカー、医療関係者、地方自治体などに対するマーケティングやプロモーション支援、調査・分析事業を手掛けている。20年6月にはPHR(Personal Health Record)を利用した対面/オンライン診療向け個人情報管理機能をリリースしている。
◆メドレー <4480> [東証M]~日本最大級のオンライン診療システムである「CLINICS オンライン診療」を中核として、かかりつけ薬局支援システムやクラウド歯科業務支援システムなどを提供する。昨年8月からNTTドコモ、NTTコミュニケーションズと連携して、医療機関が新型コロナの自宅療養者に対して速やかにビデオ通話を用いたオンライン診療を実施するためのシステムを無償提供している。
◆MRT <6034> [東証M]~医師に特化した人材紹介サービスや医師の転職サポートサービス、遠隔診療・健康相談アプリなどを提供している。遠隔診療における同社の取り組みとして、オプティム <3694> と共同で、パソコン・スマホ・タブレット端末でできる遠隔診療サービス「ポケットドクター」を手掛けている。
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