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東京テアトルのニュース
―世界的な大ヒットに期待、聖地巡礼関連株などに注目―
全世界待望の新海誠監督による長編アニメーション最新作「天気の子」が7月19日から公開された。歴史的な大ヒットを記録した「君の名は。」から3年。東宝 <9602> は同監督の最新作に史上初の試みを取り入れるなど、かつてない力の入れようだ。株式市場では、映画公開とともに材料出尽くし感から東宝に利益確定売りも出たが、長期的な業績への寄与が見込め関連株の一服場面は買い場となる可能性がある。
■史上初の全劇場で初回一斉上映、試写会も実施せず期待感高める
2016年8月に公開された「君の名は。」の国内興行収入は250億円を超えた。当初は興行収入20億円程度を目指して制作された作品だったといわれており、10倍以上の興行収入を叩き出す大ヒットとなった。更に全世界での興行収入は337億円以上となり、全世界興行収入では「千と千尋の神隠し」を超えている。これにより新海誠監督は一気に知名度も人気も上がることになった。それだけに、3年ぶりとなる「天気の子」に対する期待も大きく、配給先の東宝は史上初の試みとして、公開初日の7月19日に全上映劇場359館で初回を一斉上映したほか、同日の午前0時から東京・大阪の2館だけで世界最速上映を行った。また、「天気の子」は公開間際まで制作作業が続けられ、試写会を実施していないことも、より期待感が高まる一因となった。
ちなみに、「君の名は。」の公開の際には東宝はもちろんのこと、タイアップキャンペーンを展開したモバイルファクトリー <3912> や、投資先が中国市場における興行権、テレビ放映権、インターネット権を獲得していることが材料視されたアジア投資 <8518> 、制作を請け負ったIGポート <3791> [JQ]などが物色された。
■話題作は長期姿勢の評価必要、海外の映画祭での受賞なども期待
「天気の子」の公開3日間の興行収入は、約16億4000万円に達した。「君の名は。」の時との比較では前作を約28%上回る好スタートを切った。市場には、「想定の範囲内」との見方から関連株を売る動きもあったようだが、株価の下落は買い場となる可能性がある。同氏の作品のような話題作は短期で評価するべきものではない。長期間の公開が予想されるだけに1カ月、半年、あるいは1年単位での結果をみる必要がある。映画のヒット次第では、海外での映画祭での受賞などへの期待も出てくるだろう。加えて、京都アニメーションへの放火は痛ましい事件だが、同氏の新作にはアニメ映画に対する応援の意味を込めた鑑賞需要も見込めるかもしれない。以下では「天気の子」に関連する銘柄を深堀りしてみる。
■王道は東宝、東京テアトルやポールトゥウィン、KADOKAWAなども
関連銘柄の王道としては、配給先である東宝が挙げられる。同社は12日に第1四半期決算を発表。売上高は前年同期比2%増の677億円、営業利益が同25%増の159億円だった。市場コンセンサス(145億円程度)を上回ったほか、通期計画に対する進捗率は35%と、順調な進展となっている。映画事業では「名探偵コナン」や「ドラえもん」の新作が好調だったほか、「キングダム」がヒット。不動産事業は全国に保有する物件の貸し出しが堅調に推移している。「天気の子」の大ヒットが期待される中、もう一段の業績上振れが期待されてくることになりそうだ。
また、東京テアトル <9633> では同社が運営するテアトルシネマグループの映画館において上映する。「天気の子」では視覚障害者用音声ガイド、聴覚障害者用日本語字幕などバリアフリー上映も設けられており、松竹<9601>のグループである新宿ピカデリーなどで上映される。専用アプリをインストールしたスマートフォンなどで音声ガイド付きの映画が見られるほか、日本語字幕は、字幕表示用の専用メガネ機器にアプリをダウンロードして楽しめるようだ。このシステムはポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス <3657> 傘下であるポールトゥウィンの子会社が手掛けている。
「天気の子」製作委員会は、東宝、コミックス・ウェーブ・フィルム、STORY、KADOKAWA <9468> 、ジェイアール東日本企画(JR東日本 <9020> )、voque ting、ローソン <2651> 傘下のローソンエンタテインメントとなる。KADOKAWAは、映画公開に先駆けて今月18日に新海誠監督の最新小説「小説 天気の子」を発売している。10万部でベストセラーといわれるなか、初版50万部という驚異的な部数での刊行となる。
コミックス・ウェーブ・フィルムは、アニメーション映画の企画・制作・配給、ビデオグラムの販売・輸出入業務、作家マネージメント、版権管理業務などを手掛けている。同社は1998年に伊藤忠商事 <8001> 、旭通信社(現ADK)などにより設立されている。
●ハピネットはサウンドトラックの販売、JVCケンウッドは製造委託先に
テレビ朝日ホールディングス <9409> では、テレビ朝日系において「天気の子」公開記念として「君の名は。」のほか、新海誠監督作品を多数放送。ハピネット <7552> は、RADWIMPS(ラッドウィンプス)の最新作「天気の子」のサウンドトラックの販売を行っており、今後は「天気の子」のDVDやブルーレイディスクなどの販売の効果が期待される。なお、RADWIMPSは「天気の子」の主題歌など音楽を担当している日本の4人組ロックバンド。所属レコード会社はユニバーサルミュージックだ。JVCケンウッド <6632> の子会社のJVCケンウッド・クリエイティブメディアは、日本におけるユニバーサル ミュージックの製造委託先でもあるため、関連銘柄の一角とみることができよう。
●聖地巡礼で東海汽船の大型客船「さるびあ丸」に特需発生か
ドラマや映画、アニメファンの間では、作品に登場したロケ地を巡る聖地巡礼がブームだ。映画の中で舞台とされる場所では、JR代々木駅に隣接する「代々木会館」、銀座3丁目にある「朝日稲荷神社」、JR新宿駅近くの歌舞伎町1丁目の「新宿大ガード」とセントラルロードにあるラーメン店「天下一品」、六本木ヒルズ展望台の「屋上 スカイデッキ」、JR田端駅南口、都電荒川線の鬼子母神前駅近くの「のぞき坂」、JR中央線高円寺駅近くの「気象神社」、「お台場海浜公園」などとなる。「君の名は。」では、舞台のモデルの一つとされた新宿御苑のカジュアルレストラン「Cafe La Boheme(カフェ ラ・ボエム)」が挙げられており、運営するグローバルダイニング <7625> [東証2]は当時、ストップ高を交えて急騰する局面をみせている。なお、JR東日本では、山手線周辺のまち歩き情報を発信する「FUN!TOKYO!」の一環として、タイアップした特別企画を実施している。
更に聖地巡礼で、最も注目されそうなのが、東海汽船 <9173> [東証2]だ。「天気の子」は、離島から家出して東京にやって来た高校生・帆高と、不思議な力を持つ少女・陽菜の物語。東京にやってくる際に利用したのが東海汽船の大型客船「さるびあ丸」とされている。同船は東京~大島~利島~新島~式根島~神津島航路、夏季の東京湾納涼船に就航。現在、東海汽船では創立130周年にあたる20年夏に、新造船2隻が就航する予定である。大型客船「さるびあ丸」、高速ジェット船「セブンアイランド虹」の代替船となるため、現行のさるびあ丸に乗船できるのは20年6月頃までとみられる。そのため、聖地巡礼として同船への乗船需要が高まることになりそうだ。
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