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―次世代通信インフラとの融合で巨大市場創出、世界を動かす最強コラボレーション―
IT社会と言われて久しいが、これからの世界はここまでの世界とは大きく異なる景色がひらけている可能性が高い。スマートシティ構想や自動運転などIoT技術の進展に伴い、極めて付加価値の高い新たなIT社会が創出される時代へと変遷を遂げていく。その過程で次世代通信規格「5G」は大きな役割を担うことになる。人工知能(AI)や IoTをつなぐ神経回路ともなる5Gは、経済全般を押し上げるエネルギーも絶大だ。英調査会社のIHSマークイットによると5Gがもたらす経済効果は2035年までに最大で12兆3000億ドル、日本円にして1350兆円あまりに達すると試算されている。これは4Gとは異なり、モバイル端末だけではなくIoTをバックボーンとしたあらゆる産業とリンクしてくることによるものだ。紛れもなく今はその入り口に差し掛かっているといってよい。
今春から日本国内でも5Gの商用サービスが始まることで、株式市場において5G関連株はいよいよ現実買いのステージに入った。5Gはこれまでの4Gと比較してそのスピードとキャパシティーに大きな差がある。通信速度が最大20Gbps、多端末同時接続でも1平方キロメートル当たり100万台、更に1ミリ秒という低遅延も大きな特長だ。
●自動運転普及の基盤を担う5G回線
そして、この5Gが生み出す未来図として、我々の目に見える形で最も大きなインパクトを与える産業分野といえば 自動運転車だ。自動運転車はいうまでもなく現在の自動車市場が基盤となっていることで、近い将来に巨大マーケットの形成が約束されている。世界のハイテク企業や自動車メーカーが研究開発でしのぎを削るゆえんだ。自動運転技術については、そのレベルが「0~5」の6段階に分類されており、現在、世界における開発競争の土俵は特定条件のもとで人間が運転に関与しない「レベル4」。そして、その先に最終形である“完全自動運転”の「レベル5」を目指す局面にある。いずれにせよ将来的には、ドライバーがボタン一つ押せば目的地にスムーズにたどり着くことができる社会が待っている。ドライバーという概念自体が希薄化する時代は意外に早いかもしれない。
しかし、5Gがなければこれは画餅に帰す。5Gにおける1ミリ秒という低遅延は4G回線と比較してほぼ10分の1であり、自動運転にとってはこの遅延性の低さが絶対条件となる。また、最大20Gbpsの通信速度は運行管理に際し車両から発せられる膨大な情報を受信・高速処理するうえで必須だ。これにAIが加わることになるが、車の周囲360度をカバーする複数のセンサーからの情報を認知し実行する際にインフラとしての5G環境は大前提となる。
●モビリティー時代に野心燃やすソニー
自動運転技術では「LiDAR(ライダー)」と呼ばれる高性能センサーが重要な役割を担う。これは車体上部で赤外線レーザーを発し、その光の反射によって周囲の自動車や障害物との距離を正確に把握し、その取得した情報をサーバーに送信する仕組みであり、自動運転車の安全走行の実現に不可欠となる。このLiDARが力を発揮できるのは、5Gの高速大容量・低遅延があってこそ。したがって、世界的な5Gの商用化は自動運転車の普及に向けた動きを一気に加速させることにもなるのだ。
1月初旬に行われた世界最大のデジタル見本市「CES」ではトヨタ自動車 <7203> 、ホンダ <7267> 、アウディ、テスラ、フィアット・クライスラーなど世界のそうそうたる自動車メーカーが自動運転技術を披露して会場を沸かせた。しかし、何といっても話題の中心となったのはソニー <6758> だ。独自技術による自動運転システムを搭載した試作車を発表したことで脚光を浴びた。同社は得意とするイメージセンサーをはじめAIやクラウド技術なども総動員して、公道での走行実験を20年度内に実現させる方向で開発を進めていく構えにある。既に、これに先立ってセンサーやAI技術を活用した運行支援サービスを、出資先の「みんなのタクシー」(東京都台東区)を通じタクシー会社に順次提供していく計画を進めている。ソニーの吉田憲一郎社長が「過去10年のメガトレンドはモバイル(携帯電話)だったが、これからはモビリティーだ」と強く主張していることもあり、今後は自動運転分野における同社の存在感はがぜん高まっていくことになりそうだ。
●2025年、完全自動運転の市場化へ
現在、自動運転は特定ルートでの走行を前提とすれば技術的には実現できる段階にある。基本的にシステムが運転を行い、それをドライバーが監視して必要に応じ対応する形での実用化は20年度をメドに現実化する公算も大きい。東京五輪開催年である今年が自動運転元年といわれるゆえんだ。そして、大阪万博が行われる25年には「レベル5」、つまり完全自動運転の市場化が見込まれている。
株式市場でも再び関連銘柄に幅広くスポットライトが当たる局面が近づいている。測量土木ソフトを主力とするアイサンテクノロジー <4667> [JQ]はKDDI <9433> など7社と協力して、長野県塩尻市で自動運転の実用化に向けた実証実験を進める包括連携協定を締結、今夏をメドに塩尻市内でバスやタクシーの自動運転の実験を開始することが伝わっている。こうした動きは今後活発化する可能性があり、航空測量最大手のパスコ <9232> や車載デジタル機器向けソフト開発のアートスパークホールディングス <3663> [東証2]、自動車向け組み込みソフトを手掛けるコア <2359> などにも注目度が高まりそうだ。
●ゼンリン、モルフォなど成長への布石
また、自動運転分野で欠かせないダイナミックマップでは、地図情報で群を抜いた存在であるゼンリン <9474> が外せない銘柄となる。自動運転では開発中の協業案件を有しており、収益化への期待がかかる。売り切り型ビジネスから特定顧客向けサブスクリプションモデルのストック型ビジネスへ重心を移す計画にあり、足もとの業績は苦戦しているものの中長期的には成長シナリオが描ける。
画像処理ソフトを手掛けるモルフォ <3653> [東証M]も関連銘柄としてマークされる。同社は昨年11月に顔認識ソフトで強みを持つパナソニック系のPUX(大阪市中央区)に出資し、自動運転分野における収益機会拡大に向け本腰を入れている。
●車載システムで商機の富士ソフト、東海ソフト
富士ソフト <9749> は独立系ソフト開発会社で車載用制御ソフト開発の実績が高い。自動車産業の革新トレンドである「CASE」にも絡み高い競争力を誇り、自動運転車向けで商機を捉える公算大。同社が手掛ける車線の自動変更や自動ブレーキなどの車載関連向けシステムは、自動運転分野の中核テクノロジーとして高く評価されることになる。
また、同じく独立系ソフト開発会社で自動運転ソフトが業績に貢献しているのが東海ソフト <4430> [東証2]だ。名古屋に本拠を置き、車載関連開発ではトヨタグループとの関係が厚い点が評価材料だ。実際にトヨタの自動運転やコネクテッドカー関連投資への注力で恩恵を享受し、19年6-11月期は営業利益段階で前年同期比3割以上の高い伸びを確保した。
●ハード系では菊水電子、小糸製作所に思惑
ハード系では菊水電子工業 <6912> [JQ]が積極的だ。電子計測器及び電源機器を製造しており、耐電圧試験器や直流安定化電源では業界首位の実力を有している。同社は次世代自動車関連市場を重点市場と位置付けて電気計測器の需要獲得に努めており、電気自動車(EV)や自動運転分野の深耕に伴い収益成長が加速していく可能性がある。
このほか、自動車照明機器のトップメーカーである小糸製作所 <7276> も面白い存在といえる。同社は自動運転技術に早くから傾注していることで知られ、自動運転車で人間の目の役割を担う次世代ランプの研究開発を進めている。具体的にはLiDARを内蔵したランプをドイツのセンサー開発ベンチャーであるブリックフェルド社と協業で開発中、会社側では「LiDARをランプの中に入れることは自動車のスタイリング面や、反応速度及び汚れにくいといった機能面からも有効であり、自動運転車の普及局面では需要獲得への期待が大きい」と自信をのぞかせている。
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