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サカイ引越センターのニュース
*15:35JST ハウスコム Research Memo(5):DX推進でビジネスモデルを変革、アフターデジタルでの優位性を確立する(1)
■中長期の成長戦略
ハウスコム<3275>は2021年12月に「新成長戦略」を発表した。新しい事業ポートフォリオへの転換と成長の加速に向けて、「事業領域拡大による収益構造の転換」「既存事業分野の競争力強化等」「店舗数増加による規模の拡大」「グループ経営を前進させるための内部体制の強化」の4施策を着実に推し進め、3年後の2025年3月期には営業収益167億円、営業利益11.9億円、ROE10.9%、8年後の2030年3月期にはそれぞれ196億円、21.3億円、12.3%の達成を目指す方針だ。店舗数に関しては、2030年3月期までに262店舗に拡大することを計画している。同戦略の下で各施策が着実に実行されており、特にデジタル化に関しては実績とノウハウがあり、先行者優位を順調に構築していると評価できる。
同社は「新成長戦略」の下、「事業領域拡大による収益構造の転換」「既存事業分野の競争力強化等」「店舗数増加による規模の拡大」「グループ経営を前進させるための内部体制の強化」の4つの施策を推し進めていたが、「店舗数増加による規模の拡大」については2023年3月期から方針を転換し、新規出店の抑制と1店舗当たりの収益性向上に向けた舵取りを行っており、その成果が表れている。これらの施策遂行における上期のトピックスとして、(1) シーアールエヌの子会社化によるグループ店舗数の増加(2023年6月の子会社化で「クラスモ」をブランドとするフランチャイズを含んだ店舗数は2023年3月末の204店舗から2023年9月末時点で237店舗に拡大した)、(2) 基幹システムの活用による業務効率化の推進(ハウスコム本社の基幹システムを使用することで、各店舗において業務上必要な物件情報、問い合わせ情報、営業ステータス情報、申し込み情報や契約関連情報の入力・管理・共有機能や請求書処理、入金処理といった情報処理機能が飛躍的に向上した。また、各種営業情報のリアルタイムの集計や分析を通じ、スピーディかつ正確な業務遂行が可能になった)、(3) グループ会社の業務デジタル化の推進(2022年10月の分社化実施後、各社で業務デジタル化、具体的には物件情報等の契約関連情報のデジタルアーカイブ化を進め、それらを事業エリアごとに各店舗がオンラインでデータ共有することが可能になり、店舗の業務負担の軽減やエリア内情報格差の低減が進展した)、の3つが挙げられる。
1. 外部環境に左右されない収益構造を構築
この新成長戦略は、同社事業の成長力が店舗数の増加ペースに比例していることが課題であること、そしてコロナ禍によって同社の収益構造が外部環境の影響を受けやすいことが浮き彫りとなったことから策定されたものであり、同戦略の下、DXによる収益基盤の安定化に注力してきた。
従来、同社の主な収入源は各種手数料であったため、会計上の売上総利益率はほぼ100%で、限界利益率が非常に高いビジネスモデル(売り切り収入モデル)であった。そのため、事業環境が好転・悪化を繰り返すような局面では、業績が不安定になる傾向があった。今後は、顧客との各接点において継続的にサービスを提供するリテンション収入モデルへ移行し、安定的な収益確保を図っていくとしており、売上高に占めるストック収入の割合が高まり、外部環境の動向に左右されない収益構造になることが推察される。また、ストック収入の割合が増えるなかで利益率も高まっていくものと弊社は予想する。
具体的なリテンション収入モデルとしては、2021年10月にリリースした「スマートレント」と同年12月にリリースした「スマートシステム」という継続収入型サービスがある。
スマートレントは転居の際にかかる初期費用をゼロに抑えることができるという点が特徴だ。これにより、入居のハードルを下げることができる。ここ数年増加傾向にある「引越し時の初期費用を抑えたい」という入居者ニーズに応えることで住み替えのサイクルを早め、仲介件数の増加を図るという狙いもある。このサービスの仕組みは、オーナーや管理会社から同社が物件を賃借し転貸するもので、入居者は初期費用額や賃料を自由に設定し、自身の資金計画に沿った形でキャッシュ・フローを組み立てることができる。同社は月々の賃料にスマートレントシステム利用料を上乗せした金額を営業収益として受け取る仕組みだ。また、入居者向けに鍵の故障対応、ガラス破損への対応、水回りのトラブルサポートなどのサービスも提供する。これらのサービスは無料と有料が組み合わされており、同社の優れた企画力を表す商材の1つと言える。また、このスキームは同社がまず物件を借りることからスタートするものであるが、これは高い財務安全性が前提となっており、総じて同社の強みが反映されたサービスであると弊社は評価する。
また、スマートシステムは自主管理家主向けの継続収入型サービスである(2020年にリリースされた「スマートシステム」への反響が大きかったことを受けて利便性をさらに高めたサービス)。1部屋1,650円の料金でスマート内見による空室募集から滞納保証・入居者サポート、退去立会まで各ステップにわたって充実したサポートを受けることができるほか、共用部分の清掃や法定点検といった建物管理業務など適宜必要なサービスをシステムから簡単に発注することが可能になる。同社にとっては加入部屋数に応じた追加収益を安定して得ることができるサービスである。
同社の強みの1つとして、自主管理家主(不動産管理会社に委託せずに自ら所有物件を管理する家主のこと)との太いパイプを挙げることができる。実際、直近3年で自主管理家主物件を仲介した家主数が3.4万名にも上る。自主管理家主の開拓余地はまだまだ大きく、スマートシステムPLUSの伸び代も大きいと言えるだろう。新規に自主管理家主を獲得することにより、同社の売上に占めるストック収入の割合が高まっていくものと弊社は考える。
2. 同業・異業種との積極的業務提携による収益獲得機会の拡大及び競争力の強化
「既存事業分野の競争力強化等」に関しても着実に計画を進行している。2021年7月には「オンライン内見」サービスを提供する(株)Tryellとの連携をさらに深化させ、同社の全国直営店で管理する所有物件データを「オンライン内見」情報サイトにて検索することを可能にした。また、同年12月には(株)アミックスとの提携により「ハラッパ団地・草加運営企画プロジェクト」を開始した。これらの施策によって同社が独占的に関与できる仲介件数を増やし、収益獲得機会を拡大している。将来的には、仲介に留まらず、様々な業種の企業と提携し新サービスを提供していくことも視野に入れており(ハラッパ団地・草加においてはイベント企画会社と共同でイベントの企画・運営をすることによって、地域との接点を強化し、認知度の向上から集客促進につなげていく施策も計画している)、同社の競争力が高まっていくと同時に収益源が多様化していくことが期待される。
また、2021年12月にはサカイ引越センター<9039>との業務提携により、スマートレントの対象に引っ越し代金を追加するとともに家具家電のレンタルサービスの提供も開始した。これにより「完全0円」での引っ越しが可能になり、顧客への訴求力が高まることは間違いないと言っても過言ではないだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
<SI>
ハウスコム<3275>は2021年12月に「新成長戦略」を発表した。新しい事業ポートフォリオへの転換と成長の加速に向けて、「事業領域拡大による収益構造の転換」「既存事業分野の競争力強化等」「店舗数増加による規模の拡大」「グループ経営を前進させるための内部体制の強化」の4施策を着実に推し進め、3年後の2025年3月期には営業収益167億円、営業利益11.9億円、ROE10.9%、8年後の2030年3月期にはそれぞれ196億円、21.3億円、12.3%の達成を目指す方針だ。店舗数に関しては、2030年3月期までに262店舗に拡大することを計画している。同戦略の下で各施策が着実に実行されており、特にデジタル化に関しては実績とノウハウがあり、先行者優位を順調に構築していると評価できる。
同社は「新成長戦略」の下、「事業領域拡大による収益構造の転換」「既存事業分野の競争力強化等」「店舗数増加による規模の拡大」「グループ経営を前進させるための内部体制の強化」の4つの施策を推し進めていたが、「店舗数増加による規模の拡大」については2023年3月期から方針を転換し、新規出店の抑制と1店舗当たりの収益性向上に向けた舵取りを行っており、その成果が表れている。これらの施策遂行における上期のトピックスとして、(1) シーアールエヌの子会社化によるグループ店舗数の増加(2023年6月の子会社化で「クラスモ」をブランドとするフランチャイズを含んだ店舗数は2023年3月末の204店舗から2023年9月末時点で237店舗に拡大した)、(2) 基幹システムの活用による業務効率化の推進(ハウスコム本社の基幹システムを使用することで、各店舗において業務上必要な物件情報、問い合わせ情報、営業ステータス情報、申し込み情報や契約関連情報の入力・管理・共有機能や請求書処理、入金処理といった情報処理機能が飛躍的に向上した。また、各種営業情報のリアルタイムの集計や分析を通じ、スピーディかつ正確な業務遂行が可能になった)、(3) グループ会社の業務デジタル化の推進(2022年10月の分社化実施後、各社で業務デジタル化、具体的には物件情報等の契約関連情報のデジタルアーカイブ化を進め、それらを事業エリアごとに各店舗がオンラインでデータ共有することが可能になり、店舗の業務負担の軽減やエリア内情報格差の低減が進展した)、の3つが挙げられる。
1. 外部環境に左右されない収益構造を構築
この新成長戦略は、同社事業の成長力が店舗数の増加ペースに比例していることが課題であること、そしてコロナ禍によって同社の収益構造が外部環境の影響を受けやすいことが浮き彫りとなったことから策定されたものであり、同戦略の下、DXによる収益基盤の安定化に注力してきた。
従来、同社の主な収入源は各種手数料であったため、会計上の売上総利益率はほぼ100%で、限界利益率が非常に高いビジネスモデル(売り切り収入モデル)であった。そのため、事業環境が好転・悪化を繰り返すような局面では、業績が不安定になる傾向があった。今後は、顧客との各接点において継続的にサービスを提供するリテンション収入モデルへ移行し、安定的な収益確保を図っていくとしており、売上高に占めるストック収入の割合が高まり、外部環境の動向に左右されない収益構造になることが推察される。また、ストック収入の割合が増えるなかで利益率も高まっていくものと弊社は予想する。
具体的なリテンション収入モデルとしては、2021年10月にリリースした「スマートレント」と同年12月にリリースした「スマートシステム」という継続収入型サービスがある。
スマートレントは転居の際にかかる初期費用をゼロに抑えることができるという点が特徴だ。これにより、入居のハードルを下げることができる。ここ数年増加傾向にある「引越し時の初期費用を抑えたい」という入居者ニーズに応えることで住み替えのサイクルを早め、仲介件数の増加を図るという狙いもある。このサービスの仕組みは、オーナーや管理会社から同社が物件を賃借し転貸するもので、入居者は初期費用額や賃料を自由に設定し、自身の資金計画に沿った形でキャッシュ・フローを組み立てることができる。同社は月々の賃料にスマートレントシステム利用料を上乗せした金額を営業収益として受け取る仕組みだ。また、入居者向けに鍵の故障対応、ガラス破損への対応、水回りのトラブルサポートなどのサービスも提供する。これらのサービスは無料と有料が組み合わされており、同社の優れた企画力を表す商材の1つと言える。また、このスキームは同社がまず物件を借りることからスタートするものであるが、これは高い財務安全性が前提となっており、総じて同社の強みが反映されたサービスであると弊社は評価する。
また、スマートシステムは自主管理家主向けの継続収入型サービスである(2020年にリリースされた「スマートシステム」への反響が大きかったことを受けて利便性をさらに高めたサービス)。1部屋1,650円の料金でスマート内見による空室募集から滞納保証・入居者サポート、退去立会まで各ステップにわたって充実したサポートを受けることができるほか、共用部分の清掃や法定点検といった建物管理業務など適宜必要なサービスをシステムから簡単に発注することが可能になる。同社にとっては加入部屋数に応じた追加収益を安定して得ることができるサービスである。
同社の強みの1つとして、自主管理家主(不動産管理会社に委託せずに自ら所有物件を管理する家主のこと)との太いパイプを挙げることができる。実際、直近3年で自主管理家主物件を仲介した家主数が3.4万名にも上る。自主管理家主の開拓余地はまだまだ大きく、スマートシステムPLUSの伸び代も大きいと言えるだろう。新規に自主管理家主を獲得することにより、同社の売上に占めるストック収入の割合が高まっていくものと弊社は考える。
2. 同業・異業種との積極的業務提携による収益獲得機会の拡大及び競争力の強化
「既存事業分野の競争力強化等」に関しても着実に計画を進行している。2021年7月には「オンライン内見」サービスを提供する(株)Tryellとの連携をさらに深化させ、同社の全国直営店で管理する所有物件データを「オンライン内見」情報サイトにて検索することを可能にした。また、同年12月には(株)アミックスとの提携により「ハラッパ団地・草加運営企画プロジェクト」を開始した。これらの施策によって同社が独占的に関与できる仲介件数を増やし、収益獲得機会を拡大している。将来的には、仲介に留まらず、様々な業種の企業と提携し新サービスを提供していくことも視野に入れており(ハラッパ団地・草加においてはイベント企画会社と共同でイベントの企画・運営をすることによって、地域との接点を強化し、認知度の向上から集客促進につなげていく施策も計画している)、同社の競争力が高まっていくと同時に収益源が多様化していくことが期待される。
また、2021年12月にはサカイ引越センター<9039>との業務提携により、スマートレントの対象に引っ越し代金を追加するとともに家具家電のレンタルサービスの提供も開始した。これにより「完全0円」での引っ越しが可能になり、顧客への訴求力が高まることは間違いないと言っても過言ではないだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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