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―9年ぶり最高値更新が迫る、米ゼロ金利政策の長期維持も強力な追い風―
金相場が上昇基調を強めている。コロナショックに見舞われた3月に金はいったん下落したものの、その後、急速な切り返しに転じた。ドル建ての金価格は足もとで9年ぶりの水準に上昇し、最高値が視野に入っている。円建ての金価格は4月に実に40年ぶりとなる最高値更新を達成した。安全資産と呼ばれる金は、株安などリスクオフの時に資金の逃避先となることが多いが、今回は足もとでは、株高と金の上昇が同時進行している。果たして、金上昇の背景には何があるのか。金相場の行方を探った。
●円建て金価格は実に40年ぶりの最高値更新
今月8日にニューヨーク商品取引所で金先物の8月物は一時1トロイオンス1829.8ドルまで上昇。2011年9月以来、約9年ぶりの水準に値上がりした。新型コロナウイルスの感染再拡大に対する警戒感や米低金利政策の長期化への警戒感が強まった。金は11年8月につけた終値ベースの最高値(1891.9ドル)に迫っている。
また、円建ての金価格は4月13日には、販売価格が1グラム6513円(税込み)と1980年1月につけた最高値(6495円)を40年ぶりに更新している。為替が関係するためドル建てと円建てでは最高値の時期が異なるが、ともに最高値圏に駆け上がっている。
●財政悪化懸念や米中対立も上昇要因に
この金価格上昇の要因として、複数の要素が指摘されている。前出のように、ひとつは新型コロナ感染拡大に伴うリスク回避によるものだ。もうひとつは、金はドル安時の代替投資先となることが多いため、低金利の状況下ではドルが売られ金が買われやすい。今春の「コロナショック」で米連邦準備制度理事会(FRB)は、ゼロ金利政策をとり2022年末までは現状の水準を維持する方針が示されている。この超低金利政策が、金上昇の強力な追い風となった。
更に、新型コロナによる景気悪化を防ぐための政府による積極的な財政出動が「一段の赤字拡大につながり、将来的なインフレ圧力を高める要因になるという懸念」(アナリスト)も金に対するリスクヘッジ要因となった。加えて、米国と中国の対立激化も金価格を押し上げているようだ。
●リスクヘッジで株とともに金の両建て買いも
この複数ある要因のなかで、今回の金上昇の要因として最も大きいのは「新型コロナによる先行き不透明感を嫌気したリスク回避の動きだろう」と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員はいう。同氏は、新型コロナによる景気悪化の懸念が深まれば金価格は更に一段の上値追いに走るし、新型コロナが収束に向かえば金価格も下落方向となることを予想している。
そんななか、今回の金価格の上昇が過去と異なるのは、株価の回復と歩調を合わせていることだ。世界の株式市場は今年3月を底に反発局面にあり、特に米ナスダック指数は最高値を更新している。足もとではリスク資産の株式と安全資産の金が、ともに上昇している格好だ。この点に関しては「コロナ禍で先行きの見方は大きく分かれている。先行きを楽観視する投資家は株を買い、警戒する投資家は株とともにリスクヘッジで金を買っているのだろう」(市場関係者)との見方が出ている。
●新型コロナによる状況悪化なら2000ドル乗せも
今後の金価格の動向に関して前出の芥田氏は「新型コロナの感染拡大の状況が続けば、11年8月の最高値更新を経て1900ドル台乗せも見込める。もし、感染状況が一段と悪化するようなら2000ドル台もあり得ないことではない」と予想する。ただ、その一方で「先行き新型コロナが収束し、経済も正常化に向かうのなら1500ドル前後までに下落する可能性もある」とみている。経済が正常化に向かえば、米金融政策も将来的な利上げが意識されることも、金の下落要因となる。ただ、その状態に向かうにはなお時間がかかるとみられており、新型コロナの感染拡大第2波が警戒されるなかでは、当面の金価格は強含みで推移することを予想する見方が多い。
●第一商品やフジトミ、純金信託などに投資妙味
金の関連銘柄は菱刈鉱山(鹿児島県)を擁する住友金属鉱山 <5713> のほか、純金積み立てなどで実績のある三菱マテリアル <5711> や貴金属回収精錬を手掛ける松田産業 <7456> 、非鉄商社のアルコニックス <3036> 、それに商品先物を手掛けるフジトミ <8740> [JQ]や小林洋行 <8742> 、第一商品 <8746> [JQ]、岡藤ホールディングス <8705> [JQ]など。それに、金関連の上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・シェア <1326> [東証E]や金価格連動型上場投資信託 <1328> [東証E]、純金上場信託(現物国内保管型) <1540> [東証E]、WisdomTree 金上場投資信託 <1672> [東証E]などに注目したい。
株探ニュース
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