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―バイデン新政権発足へ、脱炭素社会に向けた新たな相場の未来図と有望株を探る―
地球温暖化防止に向けて「脱炭素社会」を実現する取り組みが国際的に加速している。そうしたなか、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスといった地球上に存在する自然の力で定常的に補充することが可能な、いわゆる「再生可能エネルギー」が脚光を浴び、株式市場でも強力な物色テーマとして投資資金を誘導している。
脱炭素=二酸化炭素(CO2)排出抑制への積極的なアプローチはそもそも欧州が先行していた。しかし、これが一気にテーマ性を強く帯びる背景となったのは、来週20日に就任予定のバイデン次期米大統領の存在が大きい。バイデン氏は就任後の早い段階で地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」への復帰を明言し、脱炭素に向けた環境インフラ拡充に4年間で2兆ドルという過去最大規模の資金を投入することを公約として掲げている。これが世界的に再生可能エネルギー関連銘柄の株高を後押しする背景となった。
●グリーン成長戦略で変わる日本
国内でも菅政権はパリ協定を視野に入れつつ、2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標(カーボンニュートラル)を掲げ、今の世界の流れにキャッチアップしていく姿勢を明示している。その流れに沿って打ち出されたのがカーボンニュートラルを実行に移すための計画「グリーン成長戦略」である。ここでは脱炭素化で成長シナリオに乗る洋上風力発電や自動車・蓄電池、 水素、原子力、次世代太陽光発電など14分野について、その数値目標や国策として重点的に取り組む項目などが示されている。これ以外に、政府が元利払い保証するグリーンボンド(環境債)を発行し、省エネルギー住宅などへの低利融資に充当する計画なども伝わっている。
洋上風力発電では、日本が四方を海に囲まれた島国である利点を生かし、40年までに3000万~4500万キロワットの導入を目指す方向にある。これは原子力発電所30~45基分に相当するだけにインパクトは大きい。一方、日本は脱炭素化では欧州の後塵を拝したが、元来は世界屈指の省エネ大国であるとともに水素先進国でもある。今回のグリーン成長戦略では水素をキーテクノロジーに位置づけている。
また、国内の温暖化ガス排出量の15%は家庭から排出されている。こうした状況を鑑(かんが)みて政府は新築住宅の排出量を30年までにゼロとする目標を設定している。カギを握るのは家庭で使う電力を太陽光発電などで賄い、エネルギー収支が実質ゼロとなる住宅「ZEH=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の普及だ。ZEHシフトをにらんだ動きが住宅業界でも顕在化している。
●過剰流動性相場のなかで相次ぐ大化け株
株式市場では、昨年来、太陽光発電関連などを中心に再生エネ関連が大相場に発展し、大化け株が相次いだ。例えば直近は調整を入れているが、昨年9月時点で1000円トビ台に位置していたレノバ <9519> はその代表的銘柄であり、今月13日に4835円の上場来高値をつけている。メガソーラー開発のウエストホールディングス <1407> [JQ]はコロナショック後の4月下旬から一貫した上昇トレンドを構築、1300円前後の株価は今月14日に5450円まで水準を切り上げた。更に、太陽電池製造装置を主に米国で展開するエヌ・ピー・シー <6255> [東証M]は昨年11月中旬から動意し、個人投資家の視線をさらった。400円台のもみ合いを上放れ、今月14日には瞬間風速で1212円の高値をつけている。
ここ数ヵ月の株式市場を振り返れば、再生エネに水素や省エネ関連を含めた「新エネルギー関連」の切り口で株高の恩恵を享受した銘柄は数多い。そして、まだ株価が“変身前”の銘柄もかなりの数眠っていると思われる。
直近では米長期金利の上昇に警戒ムードも漂っているが、FRBのパウエル議長は当面の間はテーパリング(緩和政策の縮小)についての可能性を完全否定している。そしてECBや日銀も“右へ倣え”であることはいうまでもない。仮にバイデン新政権発足後にいったん調整があったとしても、基本的に過剰流動性相場は続くだろう。21年は株式市場にとって“新エネ革命”で株価の居どころを変える銘柄がまだまだ出てくる気配がある。今回はここから新たに上値が狙える有望5銘柄をエントリーした。
●新エネ革命で上昇本番が期待される5銘柄
◎ユアテック <1934> 【風力発電 】
総合電気工事会社で、同社の株式の4割強を東北電力 <9506> が保有している。メガソーラーや風力発電など再生可能エネルギー分野に積極展開しているが、特に洋上風力発電事業に力を入れており、秋田県など日本海側を中心に、大手商社やゼネコンと協業する形でプロジェクトを推進している。21年3月期は風力発電関連設備の工事が好調で収益に貢献、営業利益段階で前期比11%増の75億円と2ケタ伸長を見込んでいる。また国内だけでなく、東南アジア地域など海外も深耕、とりわけベトナムでの展開に重心を置き、商業施設やホテルなどの電気工事関連の受注獲得に取り組んでいる。株価は昨年11月から上値指向を強めているが、株価指標面ではPERが11倍台と割安。更に1株純資産が前期実績ベースで1660円もあり、時価800円台は解散価値の半値近くに放置され水準訂正妙味が大きい。30年前の1991年に3283円(修正後株価)の高値をつけている。
◎東京エネシス <1945> 【太陽光発電 】
電力関連の設備工事を手掛け原発のメンテナンスなどに強みを持っている。筆頭株主は東京電力ホールディングス <9501> で主要顧客でもある。第2位株主に光通信 <9435> が入っており、同社株を買い増す動きをみせている点は注目される。太陽光発電システムの設置では、地盤調査にはじまりシステムに組み込む機器や部材の調達、自社の取付架台を活用した安全性の高い施工、定期・保守に至るまで一貫して手掛けるEPC(設計・調達・建設)事業者として携わっている。店舗屋根屋上のソーラー設備も展開し、ZEHのテーマにも乗る。足もとは太陽光発電関連の設備工事は減少しているものの、中期的には政府のグリーン成長戦略を背景とした再生可能エネルギーシフトを背景に同社の高い実績が生かされる可能性が高い。20年4-9月期は営業利益段階で前年同期比77%増と好調。PBR0.5倍弱で3%の配当利回りは株価見直し余地が大きく、4ケタ大台乗せから一段高が有望。
◎タケエイ <2151> 【バイオマス発電 】
首都圏を中心に建設関連の廃棄物回収・処理および再資源化・エネルギー化事業などを展開する。廃棄物の収集運搬に始まり、選別・破砕・圧縮などの中間処理による再資源化、残留物の最終処分に至るまでワンストップで対応できる優位性を持つ。また、バイオマス発電分野に積極展開しており、三井E&Sホールディングス <7003> から昨年4月にバイオマス発電事業を譲受して展開に厚みを加えている。東北には3社のバイオマス発電子会社を擁し、収益への貢献も大きい。横須賀にはタケエイグリーンリサイクルを傘下に置く。業績も絶好調で20年3月期営業利益は前の期比55%増と急拡大、続く21年3月期も前期比12%の2ケタ成長で37億円を見込むが、22年3月期は福島県の田村バイオマスエナジーが加わることもあり、売上高利益ともに加速する見通し。株価は今月13日に昨年来高値を更新、1400円ラインのフシ抜けから上昇本番が期待できるタイミングにある。
◎三機工業 <1961> 【 省エネ技術】
三井系の総合設備大手でビル空調、産業空調設備、電気工事など総合エンジニアリング大手として幅広く展開する。産業空調はインフラ拡張が進む高速通信規格5G関連の需要が収益を後押しする状況にある。同社は省エネ技術に強みを有し、CO2削減対策と合わせて顧客ニーズを開拓している。熱の徹底的有効活用を実現する「熱回収システム」や電気・ガスなどを動力源とする空調設備の熱源システム、消費エネルギーを最小化する「熱源リアルタイム最適化システム」、空調機を周期的に運転および停止させる「パッシブリズミング空調」、更に「トランスヒートコンテナ(熱の宅配便)」や「雪冷房システム」など商品エリアは多岐にわたる。21年3月期業績は2ケタ減益見通しながら、PER11倍弱でPBR0.8倍近辺と指標面で水準訂正余地が大きい。22年3月期は増収増益転換が有力視される。株価は昨年1月の高値1563円を上回り、1600円台に入れば実質青空圏が広がる。
◎第一実業 <8059> 【地熱発電】
機械商社で石油掘削・精製装置から成形機まで取り扱い品目は幅広く、ITデジタル機器関連にも力を入れている。三菱重工業 <7011> との取引が厚く、太陽光発電をはじめ再生可能エネルギー分野全般で実績が高い。そのなか、日本は世界でも屈指の地熱資源量を有しており、同社がバイナリー発電(地熱発電)分野で強みを持っている点は評価材料。2014年に米アクセスエナジーから小型バイナリー発電システムの国内製造権とアジアでの装置販売権を取得している。とりわけ高効率でコンパクト化を実現した熱利用発電システム「サーマパワーORC125XLT」などに注目度が高い。21年3月期営業利益は前期比24%減益予想ながら、22年3月期はリチウムイオン電池製造装置などの牽引で急回復に向かう公算大。時価は1996年2月以来、約25年ぶりの高値圏に位置。筆頭株主が光通信で、前出の東京エネシス同様、保有株比率を高める動きにあることもポイントとなる。
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