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7889  東証JASDAQ(スタンダード)

桑山

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桑山 Research Memo(2):国内トップの総合ジュエリーメーカー

配信元:フィスコ
投稿:2018/07/11 15:02
■事業概要

1. 会社概要
桑山<7889>は、貴金属チェーンからオリジナルジュエリー製品・OEM/ODM製品、ダイヤモンド・真珠などの宝飾素材まで幅広く取り扱う、国内トップの総合ジュエリーメーカーである。特に貴金属チェーンは、市場に出回る3本に1本は同社製と言われるほど、国内で圧倒的シェアを有している。同社は、変化し続けるグローバルマーケットの動向をいち早くつかむ企画・デザイン、品質を重視した生産技術、通常の営業と技術営業が一体となって顧客サポートをする営業体制に定評がある。こうした総合力を背景に、オリジナルを始め各種製品の企画・デザインから生産、販売、サービスまでを一貫して提供している。同社の技術力は、OEM/ODM※製品を提供する国内大手有名ブランドばかりでなく、世界的コンテストでの最高位受賞により、世界でも広く認められるようになった。こうしたことをテコに、同社は現在、製販両面でアジアや欧米諸国へ進出、グローバル展開を積極的に推進しようとしている。

※OEM/ODM(Original Equipment Manufacturer/Original Design Manufacturer)とは、取引先ブランドの製品を製造すること。OEMはデザインや仕様など取引先の指示により、ODMは詳細な指示がない。



OEM/ODM製品が主力
2. 事業内容
同社の2018年3月期の内外売上高構成比は、国内79%、海外21%であった。製品別では、オリジナルジュエリー・OEM/ODM46%、貴金属チェーン37%、宝飾素材17%という構成比になる。主力はオリジナルジュエリー製品・OEM/ODM製品で、テーマに沿って開発された自社企画の製品や、同社からの企画提案(ODM)あるいは取引先からの開発依頼提案(OEM)に従って開発された製品群である(採用後に取引先のオリジナル商品となる)。企画・デザイン力、地金やダイヤなど宝飾素材の調達力、最新技術と職人の技を融合した製造力などの点から、同社はメーカーとして高い優位性があり、オリジナルジュエリー製品等が伸びる原動力となった。なお、これらの製品は総合力を生かした完成品の販売であるため付加価値が高い。

貴金属チェーンは主に機械編みチェーンで、ネックレスやブレスレットなど高付加価値製品(主に10g未満)と、喜平(きへい)などコモディティ色の強い製品(10g~100g)の2種類に大別される。前者はペンダント製品などを作る材料として他社メーカーへも販売される。後者は加工賃と地金価格を分けた取引になり、地金相場が上下しても同社利益(加工賃)への影響は小さい。宝飾素材はダイヤモンドルース(研磨済みダイヤ、裸石)やパール素材(パール連、裸石)などの製品加工前の材料のことである。特にダイヤモンドルースは相場のあるコモディティ商品のため、需要(投資/投機)動向は相場に左右されるが、これも同社利益への影響は小さい。

海外のうち中国(香港・台湾含む)の売上高が大半を占めると推測される。中国のジュエリー市場は減速気味だが、これは市場の過半を占める資産性の強い純金製品と贈答用途の高額品の需要が減速しているためである。同社が主力とするブライダルリングやファッションジュエリーといったデザインされた高付加価値製品は、結婚指輪取得率(ペア購入率)の上昇やジュエリー市場の地方都市への拡散によって、高く安定的な伸びを続けている。少子高齢化や晩婚化で需要の停滞する日本とは対照的である。


最新技術と職人の技を融合し標準化する
3. 強みは「桑山品質」を支える製品力
同社は豊富な経験とノウハウに基づいて「クオリティ・ファースト」を掲げ、商品開発からアフターケアまでの充実したサービスを、顧客の立場に立って提供している。そして、同社のオリジナリティあふれる企画品質、世界トップレベルの製品品質、顧客に寄り添った営業品質——という全社的な品質への取り組みによって、高水準で安定した製品を生み出すことができ、顧客ロイヤリティにつながっている。これを「桑山品質」と言う。

生産については、世界トップレベルの技術と設備を持つ基幹工場の富山工場で、インゴットから製品までを一貫生産している。多品種少量からOEM/ODMまで様々な生産に対応し、常に安定した品質の製品を安定して供給することができる。主力のジュエリーやチェーンのほか、ルースやジュエリー用パーツなど品ぞろえの幅も広い。調達については、国内外の大手業者とのパートナーシップにより、ダイヤモンドやパール(アコヤ真珠、南洋真珠)など安定した供給ルートを確保している。また、創業当時からジュエリー用チェーンやカットボール、留め具類といったパーツの開発にも取り組んできた。

高品質なジュエリーを安定して供給するため、同社は常に最先端の設備を積極的に導入し、一握りの職人しか持ち得なかった専門技術を広く標準化してきた。そして、3D-CADシステムや3Dスキャナーの活用に加え、同業他社には導入例のない多軸の精密旋盤などにより、世界トップレベルと評される高精度の生産技術を確立したのである。また、R&D部門の研究開発部隊は、外部の専門家の協力を得ながら、3Dモデリングによる鋳造解析や座屈強度解析などの研究を進める一方、新たな生産・管理技術の活用方法を海外の工場に対して指導している。3D技術以外でも同社は様々な技術開発や研究に取り組んでおり、オリジナル製品の引き輪「輪王(Wao)」、チェーン用のデザインボールを製造する「自動デザインボールカット機」、純度の高いままプラチナを硬くした「硬化プラチナ」などの開発へとつなげている。非常に技術志向の強い会社と言うことができる。

1994年に中国の無錫に無錫金藤首飾有限公司を設立し、アセンブリーを中心にハンドメイド製品やパーツ・キャスト製品などの生産を開始した。中国の経済成長や規制緩和を見越しての投資だったが、当初は、日本向けに安い工賃で製品を作ることからのスタートだった。その後中国の経済が成長し、本来の目的であった中国国内市場向け製品を製造するようになった。さらに需要は伸び、広州に中国第2工場の広州桑山珠宝有限公司を設立、いよいよ中国は重要な販売先となってきた。現在2つの工場は、無錫で機械編みチェーンやカットリング、広州でキャスト製品と棲み分けている。中国では日本のジュエリーデザインが人気になってきているが、金やプラチナといった繊細な加工技術に強みを持つ同社は、中国でも大手小売チェーン向けにOEM/ODM製品の供給を伸ばしているところである。

タイ・クリスティ工場は既存工場を買収して進出したが、今では700人を超える従業員を抱える大工場となった。ジュエリー全般の製造とダイヤモンドのカットを行い、日本にも供給している。タイはもともとルビーやサファイアなど色石の産地であり、手先の器用さと長い宝石の歴史からカットや研磨技術、デザインセンスに定評があり、宝石・宝飾品の世界的集積地の1つに数えられている。日本では成熟産業となったジュエリー産業だが、宝石の産地があり優秀な人材も多く、世界へのアクセスもあるタイでは、花形の成長産業なのである。また、タイには設備投資に対する税制優遇制度などもあり、同社にとって進出のメリットは大きい。


製品力は営業力と企画力、品質管理によって生かされる
4. 営業体制と企画・デザイン能力
同社の営業部隊は、通常の営業と工場出身の技術営業がペアを組む。このため、商談の段階で製造に際しての技術的側面からの検討が行われる。これによって商品開発からアフターサービスまで一貫した、いわゆる顧客に寄り添った営業が可能になっている。また、サンプル作製時に3D図面で事前確認を行うなど緊密なコミュニケーションを取っているため、実際のサンプル作成の段階で顧客のイメージを高精度に反映することができる。企画・デザインでは、デザイナーが3D図面でイメージを作り、職人の手や3D-CAD・3Dプリンターを用いてプロトタイプ化する。こうした職人技や最先端の技術によって企画・デザインされた製品は、製造工程ごとに製品単位で品位検査やチェーンの引張強度検査など多角的に検査・分析され、さらに改めて、製品出荷時に製造部門から独立した品質保証部門によって検査が成される。このように、各工程で厳しい品質基準に基づく検査を義務付けることで、安定した品質を確保しているのである。また、アフターサービスにおいては、グループの専門修理部隊が顧客の要望に速やかに対応しており、同社の品質と担保している。

ちなみに、同社のデザイナーには高いファッションセンスと絵を描く能力が必要とされるのはもちろん、3Dプリンターを含む3D技術に対する工学的知見も求められる。一方同社は、ジュエリーに新しい輝きを与える新素材開発や生産性を高める新技術開発を、自社ではもちろん、大学や公共機関との共同研究や異業種との技術交流によって積極的に推進している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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配信元: フィスコ
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