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―インバウンド復活で求められる多言語対応、集客効果に着目したニーズも―
コロナ禍から脱却し社会経済活動が正常化に向かうなか、さまざまな情報をタイムリーに配信することができるデジタルサイネージ(電子看板)の需要が一段と高まりそうだ。背景には、インバウンド(訪日外国人)の復活に伴って交通機関や観光地における多言語化の整備が急務となっているほか、流通小売業では他社との競争激化で集客施策を強化する必要性が高まっていることが挙げられる。14~16日に幕張メッセで開催される「デジタルサイネージ ジャパン2023」が刺激となる可能性もあり、関連銘柄に目を配っておきたい。
●視認性向上などメリット多数
デジタルサイネージとは、液晶ディスプレーやプロジェクター、LED(発光ダイオード)ビジョンなどの電子的な表示機器を使い、ネットワークを利用して映像や画像を配信するシステムのこと。看板やポスターに比べて視認性が高く目に入りやすい、データを入れ替えるだけで簡単に更新可能、特定期間や時間帯にあわせた効果的な情報発信、掲載できる情報量が豊富、人工知能(AI)カメラとの連携による分析ができるといった特長がある。
主に活用されているのは、インフォメーション(商業施設内でのフロア案内、交通機関での運行情報など)、広告(大型ビジョン広告、駅中や車内のディスプレー広告など)、プロモーション(商業施設での販促活用など)、空間演出(商業施設や公共施設での季節にあわせた演出など)、イベント(展示会や国際会議などでの情報発信)で、このほかにも防災・災害情報の配信利用も増えている。CARTA HOLDINGS <3688> [東証P]とデジタルインファクト(東京都文京区)が昨年実施したデジタルサイネージ広告市場調査では、今後はこれまで取り付けが積極的に行われてこなかった場所への設置が進むことを見込み、市場規模は2026年に1338億円(22年は推計690億円)に拡大すると予測している。
●拡大する市場を支える企業群
ヒビノ <2469> [東証S]は業務用音響機器の販売・システム設計・施工・メンテナンスが主力事業で、LEDディスプレー(デジタルサイネージ)システムソリューションも提供している。導入された事例としては、1066インチの超大型屋上広告である渋谷駅前ビジョン、スタジアムや競技場で使用される横長のバナーやスコアボード、東京消防庁の大型車両への搭載など。直近では4月15日にオープンした群馬県太田市の「OPEN HOUSE ARENA OTA(オープンハウス・アリーナ・オオタ)」にLEDディスプレーシステム「ChromaVision」及び映像制御システムを納入した。
ニューラルグループ <4056> [東証G]傘下のニューラルマーケティングは4月、東京農工大学が開発した「Luminary AR」技術をLEDビジョンに実装すると発表した。この技術はLEDビジョンから送信される“見えない”データをスマートフォンのカメラで撮影して受け取るもの。従来のQRコードなどを一部置き換えることができるため、世界観を壊さず審美性の高い形態で付与されたデジタルデータを読み取ることが可能で、LEDビジョンによる広告配信のほか、テーマパークやイベントにおける情報配信、デジタルスタンプラリーによる地域振興などさまざまな展開が期待される。
TBグループ <6775> [東証S]は屋外デジタルサイネージが主力事業の一つで、2月からは媒体の持ち主(TBグループ)とロケーション主との間で放映時間枠を応分にシェアする「シェアタイムビジョン」を始めている。同社はシェアタイムビジョンのロケーションを首都圏中心に展開し、自らの放映時間枠において広告収益をあげるDOOH(デジタル・アウト・オブ・ホーム:自宅以外の場所で接触する広告メディアであるアウト・オブ・ホームのうち、デジタルサイネージを活用したメディア全般を指す)広告事業を立ち上げ、収益構造をフロー型(ハード)からストック型(広告収益型)にシフトすることで、継続的な増収増益を図る狙いがある。
IMAGICA GROUP <6879> [東証P]は5月、電通グループ <4324> [東証P]子会社の電通ライブとともに、新たな体験を創造するソリューション「UN-SCALABLE VISION(アンスケーラブルビジョン)」の提供を開始すると発表した。これは場所や空間にとらわれず、サイズやアスペクト比にも制限されない、多種多様な環境に最適化された自由な映像表現を実現。デジタルサイネージなどが普及し、あらゆる場所でさまざまなサイズの映像配信が増加するなか、今までにない「環境に最適化された新しい映像体験」を創造するという。
表示灯 <7368> [東証S]は全国の主要鉄道駅、自治体庁舎、病院、運転免許試験場などへの広告付き周辺案内図「ナビタ」を展開しており、電照式に加え、デジタルサイネージ式も手掛けている。デジタルサイネージナビタは、従来のナビタではできない映像表現・アニメーションによる表示で誘目性と利便性が向上。また、日本初の「4Kタッチパネル式ハイレゾナビタ」を仙台・大阪・上野・浅草に設置し、日本語・英語・韓国語・中国語(簡体字、繁体字)をはじめとする多言語表記に対応するなど、訪日外国人旅行者のニーズにも応えている。
アビックス <7836> [東証S]は1989年にデジタルサイネージの提供から始まり、顧客がサイネージ運用で必要とする設置・コンテンツ制作・メンテナンスをワンストップで行うことにより、トータルサイネージソリューションを提供した経緯がある。また、同社はAIカメラを使用したサイネージの視聴者属性分析サービスも展開しており、このほどAIカメラの新機能「視線認識機能」を開発したことを明らかにした。この機能を使用することで、視聴者がデジタルサイネージを見たかどうかや、画面のどの部分を見たかなど詳細な効果測定が可能。また、売り場や棚の中でどの商品が見られているかなども測定でき、店舗マーケティングに活用することができるという。
●JESCO、ビーマップなどにも注目
これ以外の関連銘柄としては、常設型大型LEDビジョンを提案から設計・施工・メンテナンスまでトータルに行うJESCOホールディングス <1434> [東証S]、クラウドベースのデジタルサイネージ基幹システム「ノヴィサイン」を展開するビーマップ <4316> [東証G]、デジタルサイネージの電力消費量を削減する「ミライネージ for Green」を提供するサイバーエージェント <4751> [東証P]、米社のサイネージ専用プレーヤーを販売するジャパンマテリアル <6055> [東証P]など。
加えて、販促用サイネージを扱うインパクトホールディングス <6067> [東証G]、デジタルサイネージ一体型自動ドアの実証実験を開始したナブテスコ <6268> [東証P]、子会社がデジタルサイネージの開発・製造・販売を手掛けるミナトホールディングス <6862> [東証S]、インテリア内装向けなどを提供するビーアンドピー <7804> [東証S]、多数のラインアップから提案するUSEN-NEXT HOLDINGS <9418> [東証P]にも注目しておきたい。
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