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プレシジョン・システム・サイエンスのニュース
PCRネットワークの構築からラボの開設まで、感染対策に向けた研究をサポート
日本中が新型コロナウイルス感染症の第1波に襲われる中、近畿圏では京都大学が中心となって複数の急性期病院に高精度PCR検査装置を導入し、病院での検査体制を確立し、そこから集めた検体情報を臨床と研究に活用する「COVID-19全自動PCRネットワーク」が立ち上がりました。このプロジェクトにはプレシジョン・システム・サイエンス株式会社(以下「当社」、本社:千葉県松戸市)のジーンリード エイトとエリート インジーニアスが採用されています。さらに、京都大学とは2020年から共同研究を開始し、22年8月には「PSS京大ラボ」が開設されました。この2つの取り組みを通してアカデミアと企業の協働の可能性について京都大学医学部附属病院検査部部長の長尾美紀先生と副部長の松村康史先生にお話を伺いました。
(本インタビューは2022年9月に実施させていただきました。)
京都府京都市 京都大学医学部附属病院
検査部 長尾美紀 部長
松村康史 副部長
納入製品: ジーンリード エイト 他
新型コロナ第1波の中、京大を中心にPCRネットワークを構築
2020年1月下旬から始まった第1波の中、京都大学医学部附属病院(宮本享病院長・1141床)では新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを開始したものの、未知の病原体に対応できる既存の検査システムがなく、日を追うごとに増え続ける新型コロナウイルス感染症患者を前に臨床現場では検査や治療に非常に苦慮していました。「検査ができなかったら、治療にあたる医療スタッフの安全も確保できない。こんな焦燥感に満ちた声が渦巻いていました」と当時の状況について検査部副部長(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学准教授)の松村康史先生は打ち明けます。
この状況は同大学病院に限らず、国内のすべての医療機関に共通することでした。医療関係者の誰もが強い危機感を抱く中、PCR検査体制の構築に向けていち早く動き出したのが京都大学iPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥教授でした。山中教授と長尾研究室は、大阪市立大学(現・大阪公立大学)、大阪府と共同研究グループ「COVID-19全自動PCRネットワーク」を立ち上げ、三井住友フィナンシャルグループから寄附される検査機器を活用し、できるだけ早く多くの医療機関にPCR検査装置を配置したいと考えました。
「臨床検査の結果は、治療にダイレクトに影響するだけに間違いは許されません。つまり、精度の高さは臨床検査の生命線ともいえます。遺伝子検査の一種であるPCR検査は技能が要求される領域で、一般病院の検査室で行う場合は全自動の検査装置でなければ、臨床検査の生命線である精度の高さを守り切れないと思いました」(松村先生)。
しかし、物流も混乱し、各医療機関でPCR検査装置の取り合いが起こっているような状況で、高精度の全自動PCR検査装置が何十台も確保できるのだろうか――。「共同研究グループのメンバーが半信半疑の中、山中教授の呼びかけに手を挙げたのが御社(以下、PSS)だったのです」と松村先生は経緯を振り返ります。
このネットワークの構築において技術面のサポートを受け持っていた検査部では、松村先生を中心に当社の全自動PCR検査装置「ジーンリード エイト」の性能評価を開始しました。その結果、検査の感度は高く、特に検体抽出に関しては非常に性能がよいと評価されました。「当初は簡単に使用できるPCR試薬がなく、手動での分注作業が必要でしたが、検査の精度は十分に担保されていると思いました。そして、最後の決め手になったのが大量のPCR検査装置を迅速に供給できることでした」(松村先生)
近畿圏の検査情報を分析し、検査数や陽性率の速報値を公開
こうして当社は「COVID-19全自動PCRネットワーク」に全自動PCR検査装置(ジーンリード エイト、エリート インジーニアス)を納入しました。同ネットワークを通じてこれらの装置を導入された大阪府・京都府の23の急性期病院(研究協力機関)では、迅速かつ高精度の検査が可能になりました。
「このネットワークが稼働し始めた20年夏は新型コロナウイルス感染症に関する地域の動向に関する情報が何もなかったのです。そこで、臨床で検査を実施するだけでなく、研究協力機関からネットワークに集まった検体・検査情報を分析し、検査数や陽性率などの動向を当教室のホームページで公開することにしました※1)。データを活用して次の展開を予測し、その対策を考えていくのが我々アカデミアの使命だからです」(松村先生)
21年4月には同ネットワークに参加する一部の施設(京都府、大阪府、滋賀県)で変異株のスクリーニング検査も開始しました。同時に京都大学ではゲノム解析が実施できる体制を整備し、このスクリーニング検査を行った株を含め陽性株は全ゲノム解析を行い、ホームページを通して臨床現場に迅速にフィードバックしています※2)。また、これらの動向や解析結果を論文化することによってデータの学術的価値を高めることにも取り組んでいます。
※1「COVID-19全自動PCRネットワーク」
https://clm.med.kyoto-u.ac.jp/wordpress/?page_id=439
※2「SARS-Cov-2ゲノム解析」
https://clm.med.kyoto-u.ac.jp/wordpress/?page_id=555
実証研究の場として「PSS京大ラボ(PCR検査センター)」を開設
一方、松村先生が所属する京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学教室では20年6月より当社との共同研究※3を開始しており、その新たな実証研究の場として、22年8月に同大学病院先端医療機器開発・臨床研究センター内に「PSS京大ラボ(PCR検査センター)」を開設しました。この狙いについて同大学病院検査部部長(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学教授)の長尾美紀先生は次のように説明します。
「私たちは国内有数の医療機関・アカデミアとしてコロナ禍以前から保険診療の適用にはならないけれど、臨床上のニーズがある特殊検査の受託体制を構築したいと考えていました。一方、PSSとの共同研究で開発した製品を臨床応用していく段階で臨床評価は欠かせないプロセスです。この臨床評価をこれまで大学研究室で行
ってきましたが、ラボを立ち上げて実証研究という形で行うことにより実益も兼ねられるため、この仕組みを活用することにしました。将来的に特殊検査の受託も可能になると期待しています」(長尾先生)
このような柔軟性のあるラボ体制が構築できたのもジーンリード エイトが専用機ではなく汎用機という優位性を持っているからだと松村先生は指摘します。つまり、コロナ禍だけでなく、ポストコロナを見据えた戦略も描きやすいというのです。
PSS京大ラボでは、当社の全自動PCR検査装置(ジーンリード エイト)2台を使用し、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)のPCR検査受託から取り組みを開始しています。これは社会貢献的な意味合いも強い活動です。「第7波の大流行を受け、新型コロナウイルス感染症の検査体制はいっそう推進され、街中においてもPCR検査を気軽に受けられるようになりました。半面、そこで行われているのは簡易的なPCR検査が主流のため、一般の人に高精度のPCR検査を受けてもらえる機会を提供したいと思ったのです」(松村先生)
今後は、長尾先生が意欲を示していたように細菌・真菌同定検査やウイルス同定・定量検査なども随時実施していく予定で、PSS京大ラボでは近畿圏に止まらず、国内全体をターゲットにしています。
「PSSは検査装置だけでなく、高品質の試薬もすでに供給できる体制にあります。こうしたものがなければ自分たちで一から設計して実験や試験を繰り返し、検査方法を確立していかなければなりません。この過程に過大な労力がかかるので、PSSに開発部分を担ってもらえると、私たちは新しい検査を受託して臨床評価を行うことに集中できます。両者の強みを生かし、社会に必要とされる検査の臨床応用へのスピードを高めていきたいと考えています」(松村先生)
※3 全自動遺伝子検査装置geneLEADシリーズおよび関連システムを用いたSARS-Cov-2検査PCR試薬の評価研究
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-07-15-1
臨床ニーズをダイレクトに届け、PCR検査装置の改良にも関与
「新型コロナウイルス感染症が大流行すると検査室では連日大量のPCR検査を行わなければならなくなるので、検査にかかる手間をできるかぎり減らしてほしいとお願いしました。その省力化の一つが採取した検体をすぐに検査できることでした。唾液採取ソークスティックキットはこの要望を満たしてくれる製品で、採取した検体にキャップで蓋をしてPCR検査装置にセットするだけでよいのです。特にこだわって開発されたと伺っている検査装置に検体をセットする仕掛けはとても工夫されていると感心しています。ウイルスを不活化するための処理とウイルスのRNAが分解されないようにするための機能を兼ね備えた溶液の開発に成功されたことも大きかったと思います」(松村先生)
PSS京大ラボでは、8月末より先行的に唾液採取ソークスティックキットを使用しています。松村先生によると、1か月ほどの使用期間中、特に大きなトラブルは起こっていないそうです。当初は受検者から唾液を採取する方法がわかりにくいという声が上がっていましたが、採取の手順を説明した動画を受検者に見てもらいながら採取する工夫をしたことで、その戸惑いもなくなっていったといいます。
「容器に唾液を採取するタイプとは異なり、唾液を吸収するタイプは見た目に採取量がわからないうえに検体量が足りていることを評価する手段もありません。そのため、検体量不足で偽陰性になる可能性がありますが、唾液採取ソークスティックキットの場合は、唾液の採取に吸水性の高い素材を使っていることに加え、約500ulほどで検査が可能な設計になっているので、偽陰性のような事態はかなり避けられるのではないかと期待しています」(松村先生)
PSS京大ラボでは、唾液採取ソークスティックキットの実地評価についても順調にデータを取り始めており、この集積・分析結果は製品の改良に生かしていくことになっています。臨床現場のニーズが当社の開発部にダイレクトに届くことで、新製品の開発だけでなく既存製品の使いやすさや作業効率の改善にも役立っています。
新型コロナウイルス感染症のPCR検査体制の構築をきっかけに始まった京都大学との協働は、汎用性のある当社のPCR検査装置と試薬を強みにポストコロナに向けた次なる取り組みへと展開し始めています。
日本中が新型コロナウイルス感染症の第1波に襲われる中、近畿圏では京都大学が中心となって複数の急性期病院に高精度PCR検査装置を導入し、病院での検査体制を確立し、そこから集めた検体情報を臨床と研究に活用する「COVID-19全自動PCRネットワーク」が立ち上がりました。このプロジェクトにはプレシジョン・システム・サイエンス株式会社(以下「当社」、本社:千葉県松戸市)のジーンリード エイトとエリート インジーニアスが採用されています。さらに、京都大学とは2020年から共同研究を開始し、22年8月には「PSS京大ラボ」が開設されました。この2つの取り組みを通してアカデミアと企業の協働の可能性について京都大学医学部附属病院検査部部長の長尾美紀先生と副部長の松村康史先生にお話を伺いました。
(本インタビューは2022年9月に実施させていただきました。)
京都府京都市 京都大学医学部附属病院
検査部 長尾美紀 部長
松村康史 副部長
納入製品: ジーンリード エイト 他
新型コロナ第1波の中、京大を中心にPCRネットワークを構築
2020年1月下旬から始まった第1波の中、京都大学医学部附属病院(宮本享病院長・1141床)では新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを開始したものの、未知の病原体に対応できる既存の検査システムがなく、日を追うごとに増え続ける新型コロナウイルス感染症患者を前に臨床現場では検査や治療に非常に苦慮していました。「検査ができなかったら、治療にあたる医療スタッフの安全も確保できない。こんな焦燥感に満ちた声が渦巻いていました」と当時の状況について検査部副部長(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学准教授)の松村康史先生は打ち明けます。
この状況は同大学病院に限らず、国内のすべての医療機関に共通することでした。医療関係者の誰もが強い危機感を抱く中、PCR検査体制の構築に向けていち早く動き出したのが京都大学iPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥教授でした。山中教授と長尾研究室は、大阪市立大学(現・大阪公立大学)、大阪府と共同研究グループ「COVID-19全自動PCRネットワーク」を立ち上げ、三井住友フィナンシャルグループから寄附される検査機器を活用し、できるだけ早く多くの医療機関にPCR検査装置を配置したいと考えました。
「臨床検査の結果は、治療にダイレクトに影響するだけに間違いは許されません。つまり、精度の高さは臨床検査の生命線ともいえます。遺伝子検査の一種であるPCR検査は技能が要求される領域で、一般病院の検査室で行う場合は全自動の検査装置でなければ、臨床検査の生命線である精度の高さを守り切れないと思いました」(松村先生)。
しかし、物流も混乱し、各医療機関でPCR検査装置の取り合いが起こっているような状況で、高精度の全自動PCR検査装置が何十台も確保できるのだろうか――。「共同研究グループのメンバーが半信半疑の中、山中教授の呼びかけに手を挙げたのが御社(以下、PSS)だったのです」と松村先生は経緯を振り返ります。
このネットワークの構築において技術面のサポートを受け持っていた検査部では、松村先生を中心に当社の全自動PCR検査装置「ジーンリード エイト」の性能評価を開始しました。その結果、検査の感度は高く、特に検体抽出に関しては非常に性能がよいと評価されました。「当初は簡単に使用できるPCR試薬がなく、手動での分注作業が必要でしたが、検査の精度は十分に担保されていると思いました。そして、最後の決め手になったのが大量のPCR検査装置を迅速に供給できることでした」(松村先生)
近畿圏の検査情報を分析し、検査数や陽性率の速報値を公開
こうして当社は「COVID-19全自動PCRネットワーク」に全自動PCR検査装置(ジーンリード エイト、エリート インジーニアス)を納入しました。同ネットワークを通じてこれらの装置を導入された大阪府・京都府の23の急性期病院(研究協力機関)では、迅速かつ高精度の検査が可能になりました。
「このネットワークが稼働し始めた20年夏は新型コロナウイルス感染症に関する地域の動向に関する情報が何もなかったのです。そこで、臨床で検査を実施するだけでなく、研究協力機関からネットワークに集まった検体・検査情報を分析し、検査数や陽性率などの動向を当教室のホームページで公開することにしました※1)。データを活用して次の展開を予測し、その対策を考えていくのが我々アカデミアの使命だからです」(松村先生)
21年4月には同ネットワークに参加する一部の施設(京都府、大阪府、滋賀県)で変異株のスクリーニング検査も開始しました。同時に京都大学ではゲノム解析が実施できる体制を整備し、このスクリーニング検査を行った株を含め陽性株は全ゲノム解析を行い、ホームページを通して臨床現場に迅速にフィードバックしています※2)。また、これらの動向や解析結果を論文化することによってデータの学術的価値を高めることにも取り組んでいます。
※1「COVID-19全自動PCRネットワーク」
https://clm.med.kyoto-u.ac.jp/wordpress/?page_id=439
※2「SARS-Cov-2ゲノム解析」
https://clm.med.kyoto-u.ac.jp/wordpress/?page_id=555
実証研究の場として「PSS京大ラボ(PCR検査センター)」を開設
一方、松村先生が所属する京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学教室では20年6月より当社との共同研究※3を開始しており、その新たな実証研究の場として、22年8月に同大学病院先端医療機器開発・臨床研究センター内に「PSS京大ラボ(PCR検査センター)」を開設しました。この狙いについて同大学病院検査部部長(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学教授)の長尾美紀先生は次のように説明します。
「私たちは国内有数の医療機関・アカデミアとしてコロナ禍以前から保険診療の適用にはならないけれど、臨床上のニーズがある特殊検査の受託体制を構築したいと考えていました。一方、PSSとの共同研究で開発した製品を臨床応用していく段階で臨床評価は欠かせないプロセスです。この臨床評価をこれまで大学研究室で行
ってきましたが、ラボを立ち上げて実証研究という形で行うことにより実益も兼ねられるため、この仕組みを活用することにしました。将来的に特殊検査の受託も可能になると期待しています」(長尾先生)
このような柔軟性のあるラボ体制が構築できたのもジーンリード エイトが専用機ではなく汎用機という優位性を持っているからだと松村先生は指摘します。つまり、コロナ禍だけでなく、ポストコロナを見据えた戦略も描きやすいというのです。
PSS京大ラボでは、当社の全自動PCR検査装置(ジーンリード エイト)2台を使用し、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)のPCR検査受託から取り組みを開始しています。これは社会貢献的な意味合いも強い活動です。「第7波の大流行を受け、新型コロナウイルス感染症の検査体制はいっそう推進され、街中においてもPCR検査を気軽に受けられるようになりました。半面、そこで行われているのは簡易的なPCR検査が主流のため、一般の人に高精度のPCR検査を受けてもらえる機会を提供したいと思ったのです」(松村先生)
今後は、長尾先生が意欲を示していたように細菌・真菌同定検査やウイルス同定・定量検査なども随時実施していく予定で、PSS京大ラボでは近畿圏に止まらず、国内全体をターゲットにしています。
「PSSは検査装置だけでなく、高品質の試薬もすでに供給できる体制にあります。こうしたものがなければ自分たちで一から設計して実験や試験を繰り返し、検査方法を確立していかなければなりません。この過程に過大な労力がかかるので、PSSに開発部分を担ってもらえると、私たちは新しい検査を受託して臨床評価を行うことに集中できます。両者の強みを生かし、社会に必要とされる検査の臨床応用へのスピードを高めていきたいと考えています」(松村先生)
※3 全自動遺伝子検査装置geneLEADシリーズおよび関連システムを用いたSARS-Cov-2検査PCR試薬の評価研究
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-07-15-1
臨床ニーズをダイレクトに届け、PCR検査装置の改良にも関与
「新型コロナウイルス感染症が大流行すると検査室では連日大量のPCR検査を行わなければならなくなるので、検査にかかる手間をできるかぎり減らしてほしいとお願いしました。その省力化の一つが採取した検体をすぐに検査できることでした。唾液採取ソークスティックキットはこの要望を満たしてくれる製品で、採取した検体にキャップで蓋をしてPCR検査装置にセットするだけでよいのです。特にこだわって開発されたと伺っている検査装置に検体をセットする仕掛けはとても工夫されていると感心しています。ウイルスを不活化するための処理とウイルスのRNAが分解されないようにするための機能を兼ね備えた溶液の開発に成功されたことも大きかったと思います」(松村先生)
PSS京大ラボでは、8月末より先行的に唾液採取ソークスティックキットを使用しています。松村先生によると、1か月ほどの使用期間中、特に大きなトラブルは起こっていないそうです。当初は受検者から唾液を採取する方法がわかりにくいという声が上がっていましたが、採取の手順を説明した動画を受検者に見てもらいながら採取する工夫をしたことで、その戸惑いもなくなっていったといいます。
「容器に唾液を採取するタイプとは異なり、唾液を吸収するタイプは見た目に採取量がわからないうえに検体量が足りていることを評価する手段もありません。そのため、検体量不足で偽陰性になる可能性がありますが、唾液採取ソークスティックキットの場合は、唾液の採取に吸水性の高い素材を使っていることに加え、約500ulほどで検査が可能な設計になっているので、偽陰性のような事態はかなり避けられるのではないかと期待しています」(松村先生)
PSS京大ラボでは、唾液採取ソークスティックキットの実地評価についても順調にデータを取り始めており、この集積・分析結果は製品の改良に生かしていくことになっています。臨床現場のニーズが当社の開発部にダイレクトに届くことで、新製品の開発だけでなく既存製品の使いやすさや作業効率の改善にも役立っています。
新型コロナウイルス感染症のPCR検査体制の構築をきっかけに始まった京都大学との協働は、汎用性のある当社のPCR検査装置と試薬を強みにポストコロナに向けた次なる取り組みへと展開し始めています。
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