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―葬祭市場は伸び悩み予想も周辺事業展開で成長力を確保、体力のある上場企業に有利―
「終活」ブームが続いている。「終活」という言葉が登場したのは、2009年に連載がスタートした週刊誌の記事タイトルが最初と言われているが、12年には新語・流行語大賞トップテンにランクインするなどして話題に上った。そこから10年が経つが、エンディングノートの売り上げが堅調に推移するなど引き続き「終活」に対する関心の高さがうかがえる。
一方で、核家族化に加えて、昨今のコロナ禍により、 葬祭市場の規模縮小傾向は加速している。関連する企業も苦戦が予想されるが、9月に発表された鎌倉新書 <6184> [東証P]の第2四半期累計(2-7月)連結決算は営業利益が3億1100万円(前年同期比13.6%増)と2ケタ増益を記録した。鎌倉新書のほかにも終活関連銘柄には好業績のものが多く、改めて注目が必要だ。
●少子高齢化で加速する日本の人口減少
日本の人口は09年の1億2707万人(住民基本台帳人口)をピークに減少に転じているが、少子高齢化により人口減が加速している。年間死亡者数は第2次世界大戦直後である1947年に113万人を数え、その後は公衆衛生の向上や医療の進歩などで減少していたが、2008年にそれを上回る114万人に増加。21年には143万人と戦後最多となった。
人が亡くなると必要になるのが葬儀だ。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、葬祭業主要社の売上高は年間死亡者数が戦後再び100万人を突破した03年には3646億円だったが、17年には6112億円に拡大した。20年にはコロナ禍で急減したものの、21年は増加に転じ5157億円になった。取扱件数も03年には24万件だったが、21年には45万件に増加した。
●葬祭市場は20年を底に回復基調
一方で、葬祭市場全体の見通しについては厳しい見方がされている。矢野経済研究所(東京都中野区)が21年10月に発表した「葬祭ビジネス市場に関する調査を実施(2021年)」によると、葬祭ビジネスの市場規模(事業者売上高ベース)は、コロナ禍により前年比で16.9%も減少した20年から回復基調にあるとして21年は1兆6179億円と予測している。
更に30年の市場規模は21年比で4.8%増となる1兆6959億円になると予測する。ただ、死亡者数は今後増加していく見込みではあるものの、それを上回るペースで葬儀単価が下落していくことによって、金額ベースでみた市場規模は伸び悩むとみており、19年の市場規模である1兆8132億円には届かない見通しだ。
●足もと好決算の終活関連
葬祭ビジネスは地域密着型のため、多くの企業が特定エリアで事業展開している。そのため、中小零細事業者が大多数を占め、業界最大手でも市場シェアは数パーセントに過ぎない。市場の高い成長が見込めないなかでは、葬祭事業周辺の終活関連へビジネスを展開するなどして、成長力を確保する上場企業が市場で存在感を増しそうだ。
鎌倉新書は、葬祭ビジネスを含む終活関連の代表格。葬儀相談・依頼サイト「いい葬儀」やお墓に関するポータルサイト「いいお墓」、仏壇・仏具に関するポータルサイト「いい仏壇」などを中心に、相続手続きの無料相談と専門家紹介「いい相続」、介護施設・老人ホーム紹介サイト「いい介護」などさまざまなメディアを運営している。足もとでは、こうした相続や介護などの事業が伸長しているほか、自治体との官民協働事業も順調に推移し業績が拡大。26年1月期には売上高100億円(22年1月期38億2600万円)もイメージされている。
アスカネット <2438> [東証G]はフューネラル(葬儀)事業として、全国の葬儀社をネットワークでつなぎ遺影写真など画像映像のデジタル加工処理や通信出力サービスを提供している。足もとで葬儀の小規模化傾向は継続しているものの、新たな葬儀社との契約獲得が堅調に進んでいることから同事業の売り上げは順調に推移。9月に発表した第1四半期(5-7月)単独営業利益は5200万円(前年同期比24.3%増)だった。また同社は、独自の空中結像技術を用いた空中ディスプレー事業に取り組んでおり、注目されている。
ティア <2485> [東証S]は、創業地である名古屋を中心に、関西や関東に直営・FCで葬儀会館を展開している。葬儀社単体として取り扱う葬儀件数は国内トップクラスで、22年9月期の葬儀件数は2万262件を数えた。11月に発表した22年9月期連結営業利益は10億5700万円(前の期比19.2%増)と2ケタ増益を達成。続く23年9月期はティア・デザイン・ラボ開設に伴うコスト増で上期は減益を見込むが、通期では同11億円(前期比4.0%増)を予想。25年9月期の数値目標である営業利益12億3000万円に対する進捗も順調だ。
はせがわ <8230> [東証S]は、仏壇・仏具専門店の国内首位。11月に発表した第2四半期累計(4-9月)単独決算で営業利益は12億6500万円となり、通期計画に対する進捗率は90%に及ぶ。商品の拡充効果やプロモーションが奏功し仏壇・仏具や墓石などの主力事業が牽引役となった。引き続きこれら既存事業の強化を図るほか、供養周辺のサービスにも力を入れる。
燦ホールディングス <9628> [東証P]は、傘下に葬儀専門会社として国内最大手クラスの公益社をはじめタルイ、葬仙などを有している。11月に発表した第2四半期累計(4-9月)連結決算は、大規模葬儀の件数増加や一般葬儀の単価の持ち直しなどが寄与し営業利益は17億8200万円(前年同期比11.1%増)を計上。特に7~9月期に葬儀3社の葬儀施行件数が揃って2ケタの伸び率となった。23年3月期通期では営業利益34億円(前期比0.7%増)を見込む。また同社は、ライフエンディングサポート事業としてシニア世代に向けた終活サービスのポータルサイト「みんなが選んだ終活」のサービス拡充に取り組んでおり、中長期の成長にはこれらのサービスの成長が牽引役となろう。
このほか、10月に発表した第1四半期(6-8月)連結決算は、想定していた出店や人員投資により営業利益は1億9700万円(前年同期比5.5%減)と減益ながら、「家族葬のファミーユ」の葬儀件数が2ケタ増と順調に推移しているきずなホールディングス <7086> [東証G]や、11月に発表した第2四半期累計(4-9月)単独決算は、原価高騰の対応に時間がかかり営業損益は800万円の赤字(前年同期7400万円の黒字)と赤字に転落したものの、「選べる我が家の葬儀」に強みを持つ葬祭事業やお墓事業がともに伸長したニチリョク <7578> [東証S]、11月の第2四半期累計(4-9月)決算発表時に、あわせて23年3月期業績予想の上方修正を発表したサン・ライフホールディング <7040> [東証S]にも注目したい。
更に、日本初の自宅葬に特化した葬儀社を16年8月に設立したカヤック <3904> [東証G]、終活に関連してデジタル遺品サポートサービスを提供する日本PCサービス <6025> [名証N]、生花祭壇の企画提案や設営を行うビューティ花壇 <3041> [東証S]、きずなHDと共同出資会社を設立し葬祭事業に参入した学研ホールディングス <9470> [東証P]なども関連銘柄として挙げられる。
株探ニュース
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