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メディパルホールディングスのニュース
*15:16JST ファンペップ Research Memo(6):FPP005は2023年内に第1相臨床試験を開始予定
■主要開発パイプラインの動向
3. FPP005(乾癬)
「FPP005」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-23を標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-23は自己免疫疾患において主要な役割を担うTh17細胞を分化・安定化するサイトカインで、乾癬においてもIL-23により活性化されたTh17細胞が、IL-17AやTNF-αを含む炎症性サイトカインを産生することにより慢性的な炎症を引き起こす。乾癬の治療では、既存治療が効かないまたは重症例の患者にTNF-α、IL-17及びIL-23を阻害する抗体医薬品が使用されているが、IL-23は炎症性サイトカインの産生過程において、IL-17A及びTNF-αの上流に位置するため、維持投与期に投与間隔を3ヶ月まで広げても有効性が持続することが特徴となっている。
「FPP005」の開発状況については、2021年1月より開始した前臨床試験で順調な結果だったことから、2023年内を目途に乾癬を適応症とした第1相臨床試験をオーストラリアで開始する予定となっている。臨床試験は「FPP003」とほぼ同じ内容で進めていくものと見られる。「FPP003」で抗体産生とその持続性が確認されたことで、製薬会社からの注目度も高まっており、同社としては経営基盤の強化を優先して早期に開発・販売のオプションまたは本契約を締結する方向で交渉を進めていくことにしている。ライセンス交渉についてはすでに国内外の複数の製薬企業が関心を示しており協議を進めている状況にあり、「FP003」の臨床試験の結果がおおむね良好だったことから、早ければ2023年内にも契約が決まる可能性もあると弊社では見ている。
なお、2016年2月に同社の抗体誘導ペプチドプロジェクトの研究開発支援に関する提携契約※を締結していたメディパルホールディングス<7459>(以下、メディパル)が、利益分配等の対象開発品として新たに「FP005」を選定したことから、同社は「FPP005」から得られる契約一時金及びマイルストーン収入の一定率をメディパルに支払うことになる。
※同社が、メディパルから抗体誘導ペプチドの研究開発資金に関する契約一時金及び3年間にわたる研究開発協力金を受け取り、メディパルは本研究から創出された抗体誘導ペプチドのうち一定数の対象開発品を選定したうえで、同開発品から得られる契約一時金及び開発マイルストーン収入の一定率を受け取る契約となっている。
抗IL-23抗体医薬品の市場規模は、乾癬のほか乾癬性関節炎やクローン病、潰瘍性大腸炎なども適応疾患となっているため、IL-17抗体医薬品よりも大きく、2020年の10,986百万米ドルから2025年には18,140百万米ドルに拡大するとの調査会社の予測※もある。現在商品化されている「ステラーラ(R)」「スキリージ(R)」「トレムフィア(R)」「イルミア(R)」の2022年販売実績は合計で17,903百万米ドルと予想を上回るペースで拡大している。抗IL-17A抗体の2倍以上の市場規模となり、大型契約につながる可能性もあるだけにその動向が注目される。
※Informa「Datamonitor Healthcare」(2021年11月)。
花粉症及び片頭痛を適応症とした開発候補化合物を決定し、2023年後半に前臨床試験入りを目指す
4. その他の開発状況
(1) 花粉症治療薬候補品「FPP004」
「FPP004」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとで同社が創製した開発化合物で、IgEを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IgEはアレルギー性疾患の発症・進展に関与する重要因子で、花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)が代表的な疾患として知られている。
花粉症の患者数は国内で約4~5千万人と多い一方で、既に多くの抗ヒスタミン薬が開発、販売されている。効果が不十分な重症例では抗IgE抗体医薬品の「ゾレア(R)」※が処方されている。同社は「FPP004」を中等度から重度の患者向けに需要があると見て開発を進めていく計画だ。「ゾレア(R)」の場合、投与間隔が2週間または4週間ごととなり花粉のシーズン(約3ヶ月間)に3回または6回の治療を受ける必要があるが、「FPP004」では抗体誘導ペプチドの持つ持続性の高さから1回の投与で済む可能性があり、かつコストの大幅な引き下げが可能と見ている。同社では「FPP004」の候補化合物を特定し、前臨床試験を数年前に実施済みではあったが、今回改めて有効性の高い開発化合物を特定し、2023年後半に再度前臨床試験を開始する予定にしている。
※主にアレルギー性喘息治療薬として販売されていたノバルティス ファーマの抗IgE抗体「ゾレア(R)」が、抗体医薬品として初めて花粉症への適応追加の承認を2019年12月に取得した。
(2) 片頭痛治療薬候補品
今回、新たに片頭痛を適応症とした開発化合物を特定し、2023年後半から前臨床試験を開始する方針を明らかにした。CGPRを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。CGRPは主に三叉神経節で発現する神経ペプチドで、片頭痛患者では血中CGRP濃度が上昇していると言われており、CGRPの活性を阻害することで片頭痛発作の発症を抑制する効果が期待される。
片頭痛の患者は国内で約1,000万人いると言われており、治療薬も安価な経口剤が普及しているが、こうした既存薬が効かない重度の患者や片頭痛が月に複数回以上発生する慢性片頭痛の患者に対しては抗体医薬品が発症抑制薬として処方されている。国内では2021年に「エムガルティ(R)」「アイモビーグ(R)」「アジョビ(R)」の3品目が承認、販売を開始している。投与間隔は基本的に1ヶ月に1回となり、薬価は4万円台で患者負担は1回あたり1.2~1.3万円となる。乾癬治療薬ほど高価ではないものの、継続的に使用する患者にとっての負担は大きい。抗体誘導ペプチドであれば持続期間がより長く、低コストで提供できる可能性があり、患者負担や医療財政の負担軽減の観点からも開発する意義は大きい。なお、これら3品目合計の2022年における世界販売額は、前年比19.4%増の1,442百万米ドルとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
3. FPP005(乾癬)
「FPP005」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-23を標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-23は自己免疫疾患において主要な役割を担うTh17細胞を分化・安定化するサイトカインで、乾癬においてもIL-23により活性化されたTh17細胞が、IL-17AやTNF-αを含む炎症性サイトカインを産生することにより慢性的な炎症を引き起こす。乾癬の治療では、既存治療が効かないまたは重症例の患者にTNF-α、IL-17及びIL-23を阻害する抗体医薬品が使用されているが、IL-23は炎症性サイトカインの産生過程において、IL-17A及びTNF-αの上流に位置するため、維持投与期に投与間隔を3ヶ月まで広げても有効性が持続することが特徴となっている。
「FPP005」の開発状況については、2021年1月より開始した前臨床試験で順調な結果だったことから、2023年内を目途に乾癬を適応症とした第1相臨床試験をオーストラリアで開始する予定となっている。臨床試験は「FPP003」とほぼ同じ内容で進めていくものと見られる。「FPP003」で抗体産生とその持続性が確認されたことで、製薬会社からの注目度も高まっており、同社としては経営基盤の強化を優先して早期に開発・販売のオプションまたは本契約を締結する方向で交渉を進めていくことにしている。ライセンス交渉についてはすでに国内外の複数の製薬企業が関心を示しており協議を進めている状況にあり、「FP003」の臨床試験の結果がおおむね良好だったことから、早ければ2023年内にも契約が決まる可能性もあると弊社では見ている。
なお、2016年2月に同社の抗体誘導ペプチドプロジェクトの研究開発支援に関する提携契約※を締結していたメディパルホールディングス<7459>(以下、メディパル)が、利益分配等の対象開発品として新たに「FP005」を選定したことから、同社は「FPP005」から得られる契約一時金及びマイルストーン収入の一定率をメディパルに支払うことになる。
※同社が、メディパルから抗体誘導ペプチドの研究開発資金に関する契約一時金及び3年間にわたる研究開発協力金を受け取り、メディパルは本研究から創出された抗体誘導ペプチドのうち一定数の対象開発品を選定したうえで、同開発品から得られる契約一時金及び開発マイルストーン収入の一定率を受け取る契約となっている。
抗IL-23抗体医薬品の市場規模は、乾癬のほか乾癬性関節炎やクローン病、潰瘍性大腸炎なども適応疾患となっているため、IL-17抗体医薬品よりも大きく、2020年の10,986百万米ドルから2025年には18,140百万米ドルに拡大するとの調査会社の予測※もある。現在商品化されている「ステラーラ(R)」「スキリージ(R)」「トレムフィア(R)」「イルミア(R)」の2022年販売実績は合計で17,903百万米ドルと予想を上回るペースで拡大している。抗IL-17A抗体の2倍以上の市場規模となり、大型契約につながる可能性もあるだけにその動向が注目される。
※Informa「Datamonitor Healthcare」(2021年11月)。
花粉症及び片頭痛を適応症とした開発候補化合物を決定し、2023年後半に前臨床試験入りを目指す
4. その他の開発状況
(1) 花粉症治療薬候補品「FPP004」
「FPP004」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとで同社が創製した開発化合物で、IgEを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IgEはアレルギー性疾患の発症・進展に関与する重要因子で、花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)が代表的な疾患として知られている。
花粉症の患者数は国内で約4~5千万人と多い一方で、既に多くの抗ヒスタミン薬が開発、販売されている。効果が不十分な重症例では抗IgE抗体医薬品の「ゾレア(R)」※が処方されている。同社は「FPP004」を中等度から重度の患者向けに需要があると見て開発を進めていく計画だ。「ゾレア(R)」の場合、投与間隔が2週間または4週間ごととなり花粉のシーズン(約3ヶ月間)に3回または6回の治療を受ける必要があるが、「FPP004」では抗体誘導ペプチドの持つ持続性の高さから1回の投与で済む可能性があり、かつコストの大幅な引き下げが可能と見ている。同社では「FPP004」の候補化合物を特定し、前臨床試験を数年前に実施済みではあったが、今回改めて有効性の高い開発化合物を特定し、2023年後半に再度前臨床試験を開始する予定にしている。
※主にアレルギー性喘息治療薬として販売されていたノバルティス ファーマの抗IgE抗体「ゾレア(R)」が、抗体医薬品として初めて花粉症への適応追加の承認を2019年12月に取得した。
(2) 片頭痛治療薬候補品
今回、新たに片頭痛を適応症とした開発化合物を特定し、2023年後半から前臨床試験を開始する方針を明らかにした。CGPRを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。CGRPは主に三叉神経節で発現する神経ペプチドで、片頭痛患者では血中CGRP濃度が上昇していると言われており、CGRPの活性を阻害することで片頭痛発作の発症を抑制する効果が期待される。
片頭痛の患者は国内で約1,000万人いると言われており、治療薬も安価な経口剤が普及しているが、こうした既存薬が効かない重度の患者や片頭痛が月に複数回以上発生する慢性片頭痛の患者に対しては抗体医薬品が発症抑制薬として処方されている。国内では2021年に「エムガルティ(R)」「アイモビーグ(R)」「アジョビ(R)」の3品目が承認、販売を開始している。投与間隔は基本的に1ヶ月に1回となり、薬価は4万円台で患者負担は1回あたり1.2~1.3万円となる。乾癬治療薬ほど高価ではないものの、継続的に使用する患者にとっての負担は大きい。抗体誘導ペプチドであれば持続期間がより長く、低コストで提供できる可能性があり、患者負担や医療財政の負担軽減の観点からも開発する意義は大きい。なお、これら3品目合計の2022年における世界販売額は、前年比19.4%増の1,442百万米ドルとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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