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富田隆弥のチャート倶楽部2025スペシャル <新春特別企画>

配信元:株探
投稿:2025/01/02 09:00

日経平均は高値4万5800円を目指す」

 さて、2025年は「巳年」。格言に「辰巳天井」とあり、2024年に続いて高値を追う可能性はあるものの、ピークアウト(天井形成)には注意する必要がありそうだ。

 新年の日本では、金利上昇、賃金上昇を軌道に乗せられるのか、また企業が利益成長をしっかりと示すことができるのか、さらには7月の参議院選挙の行方などが焦点となる。

 一方、米国ではトランプ新大統領の下で規制緩和や国内産業の育成が期待される半面、インフレ高進と金利高止まりに対する警戒感、激しさを増す貿易摩擦、地政学リスクの高まりなど懸念要因も少なくない。これら要因のその時々の組み合わせによって、株式市場は一喜一憂を繰り返すことになろう。

 ここではファンダメンタルズを踏まえつつ、チャート(テクニカル分析)を重視して2025年の株式市場を展望してみたい。詳細は後述するが、結論としては2025年の日経平均株価は「前半に高値4万5800円、後半は調整」のシナリオを想定している。

◆保ち合いで新年を迎える

 まず、2024年相場を簡単に振り返ると、年初からAI(人工知能)に対する期待感を背景に上昇を強め、2月には34年ぶりに史上最高値(3万8957円)を更新。そして、3月に初めて4万円の大台に乗せると、4万1087円まで前年末比で約22%の上昇を演じた。

 日経平均株価の年間の上昇率の上限は概ね15%~25%であるから、2024年は3月までで上昇エネルギーを大方使い果たしてしまったといえる。7月に史上最高値を4万2426円まで伸ばし、前年末比で26.7%まで上昇したが、8月5日に一時4753円安と過去最大の下落幅を記録するなど夏相場は大きく荒れた。その後4万円処まで戻したものの、年末まで膠着相場が続いた。

 チャートで注目されるのは、日経平均株価が9月下旬から3カ月にわたって膠着を続けていることだ。週足チャートでは、52週移動平均線を下値に三角保ち合いが煮詰まりをみせている。

 この保ち合いを煮詰めている状況は、前年(2023年)の終盤と似ている。2023年は6月に3万3772円まで上昇したがこれが年間の高値となり、年後半はもたついた。ただし、チャート的にはこのもたつきが2024年春の上放れにつながったといえる。

◆保ち合い上放れ、15%高で4万5800円

 ならば、2025年も新春に保ち合いを上放れる可能性がある。仮に年間上昇率の目安である15%上昇ならば「4万5878円」、20%上昇なら「4万7872円」となり、2024年7月の史上最高値4万2426円を更新することになる。ただ、上昇エネルギーの蓄積につながる今回の保ち合い期間は3カ月と2023年の半分程度であり、上放れた時の上昇率は15%程度にとどまるだろう。

 高値をつける時期としては、まずは2月~3月が想定される。1月下旬から3月期企業の決算(4-12月期)発表が始まり、3月は年度末を迎え、春闘もある。日経平均株価のもたつきが長引き、上放れが後ろにずれるなら高値は「4月~5月、4万7800円」の可能性も出てくる。どのタイミングで4万円に乗せて上放れるかが焦点になる。

◆半導体株指数SOX

 2024年に日経平均株価の行方を左右したのは、NYダウでも為替でもなく、米国のフィラデルフィア半導体株指数SOXだった。エヌビディアを筆頭に市場テーマが「生成AI」に偏り、日本株も半導体関連株が上昇を牽引した。だが、SOXの勢いに陰りが出ると、日本株も歩調を合わせて年後半は調整を余儀なくされた。その意味で、2025年はSOXが日本株のカギを握るとみている。SOXの調整が半年を経過することで、新年は調整一巡から生成AI相場の第2ラウンドもあり得よう。

◆NN倍率1倍

 以前にも紹介したが、日経平均株価とNYダウの価格を比較する「NN倍率」(日経平均株価÷NYダウ)という指標がある。12月30日の日経平均株価3万9894円、29日のNYダウ4万2992ドルで算出した倍率は「0.9倍」だが、2024年前半は日経平均株価が高くNN倍率は1.0倍以上で推移していた。それが7月に逆転して半年が経つ。ならば2025年はどこかで日経平均株価が上昇してNYダウに追いつくことも想定される。いずれにしても、2025年は年前半の上昇がポイントとなるだろう。

◆春闘で大幅賃上げは可能か

 ここからは懸念要因を挙げておく。

 ドイツのフォルクスワーゲンは国内工場の閉鎖を回避することで労使が合意した。ただし、労働組合は賃金の一部減額を受け入れている。国内ではホンダ <7267> [東証P]と日産自動車 <7201> [東証P]・三菱自動車工業 <7211> [東証P]の統合報道に驚かされたが、自動車業界を巡る厳しい環境はドイツと変わらない。

 脱デフレに向けて賃上げに取り組む日本だが、産業の要(かなめ)である自動車業界の状況を踏まえると、春闘での大幅な賃上げの実現は怪しく思えてくる。12月11日に自動車総連は2025年春季交渉で1万2000円を要求の目安とする方針を決めたが、すんなりこの水準で決まるかは疑問で、それが株式市場に影響しかねないと懸念している。

◆マネーバブルは5年目に

 2020年3月、世界の株式市場をコロナショックが襲い、各国・地域の金融当局は一斉に大胆な金融緩和に動いた。その甲斐もあって「過剰流動性相場」の恩恵を享受して、2024年に日米欧の主要市場は最高値の更新を果たした。表現を換えると、「マネーバブル」は間もなく5年目に差し掛かる。

 米国ではインフレが顕著となり、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を5.5%まで引き上げた。2024年9月から引き下げに転じたが、インフレの加速ペースは緩んだものの鎮静化に向かう兆しはまだ見られない。そして、トランプ氏の大統領返り咲きによりインフレの再加速が懸念されている。新大統領と議会・マスコミとのハネムーン期間(100日)は4月までとなる。それ以降はマーケットが「トランプリスク」を一段と意識せざるを得ない状況となることも想定される。

 米国市場にバブルの予兆が漂っていることは否めない。その意味で2025年は米国株、日本株ともにチャートの「陰転」シグナルには警戒が必要となる。世界の投資マネーはETF(上場投信)など「ファンド」に集中しており、動き出すと一方向に走りやすいのがいまの相場だ。上述したように年前半の上昇を想定するが、揺り戻しによる年後半の調整には注意を払う必要がありそうだ。 

 新年の注目株については、次回で紹介する。

(2024年12月30日 記、次回更新は2025年1月11日10時を予定)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ


株探ニュース
配信元: 株探
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