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エノモトのニュース
■中期経営計画と進捗
1. 「ビジョン2030」
電子部品の用途が急速に広がるにつれ、高精密化・ハイスペック化と安定かつ大量生産という相反する要求が日増しに高まっている。このため、前述したような強みを持つエノモト<6928>へのニーズは、中長期的にますます強まることが予想される。そこで同社は、「金型の技術で未来を創る」という長期の「ビジョン2030」を策定し、今後10年間の指針を打ち出した。「ビジョン2030」では、既存製品の需要拡大を見据えつつ、付加価値率の向上を軸とした各種施策によって主力製品でマーケットの成長を上回る利益成長を図ることを目指す。また、先端製品の需要急拡大への対応や先端分野の研究開発を継続し、次世代情報通信や医療関連などの分野でも成長していくことを狙っている。
また、同社は「ビジョン2030」を3つのステップに分け、1stSTEPでEV・車載向けパワー半導体、スマートフォンやウェアラブル端末向け部品など成長分野への投資を行い、金型製作の自動化や一貫生産体制の強化によって収益力を強化し、津軽工場のスマートファクトリー化で生産性向上の実証実験を行う予定である。また、新規事業では、脱炭素社会の切り札となる燃料電池部品の開発・製品化を行う。2nd~3rdSTEPでは、パワー半導体パッケージ部品の進化に合わせて生産能力を強化することで、常に更新される次世代情報通信分野への対応、金型技術の進化による海外拠点の競争力向上、全工場のスマートファクトリー化、先端製品(燃料電池部品)の実用化も目指す。これにより2030年に営業利益20億円を目指すが、さらに新分野や新商品向け部品により利益の上積みを狙っていくことを考えている。
中期経営計画1年目で早くも目標値は上方修正へ
2. 中期経営計画
同社は「ビジョン2030」をかなえるため、その1stSTEPとなる中期経営計画を策定、成長戦略と収益力強化、新規事業を軸とする戦略を打ち出した。収益目標としては、2024年3月期に売上高250億円、営業利益20億円、ROE8%を達成する計画である。また、こうした中期経営計画を実行するため、同社は、1stSTEPの3年間で60億円~70億円の設備投資を計画している。内訳は、スマートフォンやウェアラブル端末向けなどコネクタを増産する津軽工場増築に31億円、ワイヤレスボンディング仕様のパワー半導体用リードフレームの増産に10億円、スマートファクトリー向けデジタル投資に5億円などである。ただし、2022年3月期第2四半期の業績が好調だったことから、中期経営計画における売上高と営業利益の目標に関して、期末には早くも上方修正の方向で見直しする考えのようだ。
(1) 成長戦略と収益力強化
1stSTEPでは成長戦略として、情報通信やEV・自動運転などの分野において、5年で1.5倍の伸長が見込まれるウェアラブル端末向けコネクタや、フィリピンや中国で伸長が期待されるEV・車載向けパワー半導体、ニーズの強い国内のデータセンター向けパワー半導体など、高い成長が見込まれる品目を強化する計画である。一方、自動化と一貫生産体制を強化して収益力の強化も図る。主力製品の核となる金型製作は、熟練の技術が必要で加工工数も多く、技術者を育成するのに長い時間を要する。このため、自動化と低コスト化を進めることで将来の技術者不足に対応し、さらに加工データを活用した技術伝承も見据えた仕組み化を目指す。また、一貫生産体制をバージョンアップすることで、短中期的な収益性改善を見込むとともに、将来へ向けて、価格競争力の維持や新たな需要への対応、主力製品の付加価値の向上などを図る。このように1stSTEPでは、金型製作の自動化と一貫生産体制の強化によって売上を拡大し限界利益率を引き上げ、営業利益率で1%超の改善を目指すが、津軽工場への増築投資の成否がカギを握る。
(2) 燃料電池部品の開発
ところで、脱炭素の主役としてEVが脚光を浴びてきたが、近年、FCV(燃料電池自動車)が再注目されている。いずれも、“燃料”となる電気や水素を作る際の自然エネルギーの利用に課題が残る。しかし、中近距離移動にはEV、幹線輸送・長距離移動にはFCVなど棲み分けがきくと考えられる。同社はいずれにも関与しており、特に新規事業として、燃料電池部品の固体高分子型燃料電池(PEFC)向けのガス拡散層(GDL)一体型金属セパレータの開発を山梨大学と産学共同で開発した。現在、新開発の流路付きGDL(GDLFC+)で大幅な高電流密度化を実現、同社技術により汎用樹脂にガス流路を成形することができた。また、金属セパレータ、GDLを自社生産することでガスソケットと一体化し、コスト削減も実現している。既に実用化に向けて数社と組んでいる模様で、グリーンローンを活用して調達した資金で中量生産体制を構築している。2025年のFCV向けテストの開始や、2030年の実用化~大量生産開始へ向けて、1stSTEPでは、顧客の仕様や条件への適用、量産ラインの稼働実験、顧客開拓などを進めていく方針である。燃料電池部品のメインターゲットはFCVで、その市場規模は5兆円近くとも言われるが、同時並行してEVやドローン、緊急電源、エネファームなどへの応用範囲の拡大も図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 「ビジョン2030」
電子部品の用途が急速に広がるにつれ、高精密化・ハイスペック化と安定かつ大量生産という相反する要求が日増しに高まっている。このため、前述したような強みを持つエノモト<6928>へのニーズは、中長期的にますます強まることが予想される。そこで同社は、「金型の技術で未来を創る」という長期の「ビジョン2030」を策定し、今後10年間の指針を打ち出した。「ビジョン2030」では、既存製品の需要拡大を見据えつつ、付加価値率の向上を軸とした各種施策によって主力製品でマーケットの成長を上回る利益成長を図ることを目指す。また、先端製品の需要急拡大への対応や先端分野の研究開発を継続し、次世代情報通信や医療関連などの分野でも成長していくことを狙っている。
また、同社は「ビジョン2030」を3つのステップに分け、1stSTEPでEV・車載向けパワー半導体、スマートフォンやウェアラブル端末向け部品など成長分野への投資を行い、金型製作の自動化や一貫生産体制の強化によって収益力を強化し、津軽工場のスマートファクトリー化で生産性向上の実証実験を行う予定である。また、新規事業では、脱炭素社会の切り札となる燃料電池部品の開発・製品化を行う。2nd~3rdSTEPでは、パワー半導体パッケージ部品の進化に合わせて生産能力を強化することで、常に更新される次世代情報通信分野への対応、金型技術の進化による海外拠点の競争力向上、全工場のスマートファクトリー化、先端製品(燃料電池部品)の実用化も目指す。これにより2030年に営業利益20億円を目指すが、さらに新分野や新商品向け部品により利益の上積みを狙っていくことを考えている。
中期経営計画1年目で早くも目標値は上方修正へ
2. 中期経営計画
同社は「ビジョン2030」をかなえるため、その1stSTEPとなる中期経営計画を策定、成長戦略と収益力強化、新規事業を軸とする戦略を打ち出した。収益目標としては、2024年3月期に売上高250億円、営業利益20億円、ROE8%を達成する計画である。また、こうした中期経営計画を実行するため、同社は、1stSTEPの3年間で60億円~70億円の設備投資を計画している。内訳は、スマートフォンやウェアラブル端末向けなどコネクタを増産する津軽工場増築に31億円、ワイヤレスボンディング仕様のパワー半導体用リードフレームの増産に10億円、スマートファクトリー向けデジタル投資に5億円などである。ただし、2022年3月期第2四半期の業績が好調だったことから、中期経営計画における売上高と営業利益の目標に関して、期末には早くも上方修正の方向で見直しする考えのようだ。
(1) 成長戦略と収益力強化
1stSTEPでは成長戦略として、情報通信やEV・自動運転などの分野において、5年で1.5倍の伸長が見込まれるウェアラブル端末向けコネクタや、フィリピンや中国で伸長が期待されるEV・車載向けパワー半導体、ニーズの強い国内のデータセンター向けパワー半導体など、高い成長が見込まれる品目を強化する計画である。一方、自動化と一貫生産体制を強化して収益力の強化も図る。主力製品の核となる金型製作は、熟練の技術が必要で加工工数も多く、技術者を育成するのに長い時間を要する。このため、自動化と低コスト化を進めることで将来の技術者不足に対応し、さらに加工データを活用した技術伝承も見据えた仕組み化を目指す。また、一貫生産体制をバージョンアップすることで、短中期的な収益性改善を見込むとともに、将来へ向けて、価格競争力の維持や新たな需要への対応、主力製品の付加価値の向上などを図る。このように1stSTEPでは、金型製作の自動化と一貫生産体制の強化によって売上を拡大し限界利益率を引き上げ、営業利益率で1%超の改善を目指すが、津軽工場への増築投資の成否がカギを握る。
(2) 燃料電池部品の開発
ところで、脱炭素の主役としてEVが脚光を浴びてきたが、近年、FCV(燃料電池自動車)が再注目されている。いずれも、“燃料”となる電気や水素を作る際の自然エネルギーの利用に課題が残る。しかし、中近距離移動にはEV、幹線輸送・長距離移動にはFCVなど棲み分けがきくと考えられる。同社はいずれにも関与しており、特に新規事業として、燃料電池部品の固体高分子型燃料電池(PEFC)向けのガス拡散層(GDL)一体型金属セパレータの開発を山梨大学と産学共同で開発した。現在、新開発の流路付きGDL(GDLFC+)で大幅な高電流密度化を実現、同社技術により汎用樹脂にガス流路を成形することができた。また、金属セパレータ、GDLを自社生産することでガスソケットと一体化し、コスト削減も実現している。既に実用化に向けて数社と組んでいる模様で、グリーンローンを活用して調達した資金で中量生産体制を構築している。2025年のFCV向けテストの開始や、2030年の実用化~大量生産開始へ向けて、1stSTEPでは、顧客の仕様や条件への適用、量産ラインの稼働実験、顧客開拓などを進めていく方針である。燃料電池部品のメインターゲットはFCVで、その市場規模は5兆円近くとも言われるが、同時並行してEVやドローン、緊急電源、エネファームなどへの応用範囲の拡大も図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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