■日本株に流れ込むアップルの「甘い汁」

　一方、足元で株価が急伸しているのがソニーなど日本の電機株だ。円安・ドル高を手掛かりに海外投資家の資金が流入。昨年は11年末比でアップルは７割高まで買われ、ソニーは４割安まで売られるなど対照的な値動きをした２銘柄だが、直近はアップル１割高、ソニー１割安まで差を縮めている。

　アップルのような「勝ち組」のハイテク株から流出した資金が、日本株に流入しているとの指摘は多い。大和住銀投信投資顧問の門司総一郎経済調査部長は昨年10月以降、「アップルのような米国の安定成長銘柄に集中していた投資資金の一部が流出し、日本などアジア株にシフトしている」と指摘。「海外投資家から、アップルとサムスンを売ってソニーを買ってもいいかという質問が増えている」（外資系証券）という。

アップル株は24日の急落で、時価総額/dx/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3EBE0E7E7E2E3E5E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXがわずか１日で約596億ドル（約５兆4000億円）減少した。日本企業ではＪＴ１社分にあたる。海外投資家による昨年１年間の日本株買越額２兆8000億円を上回る規模だ。

■ソニーの業績期待は高まらず

　ただ、決してソニーの業績改善期待が高まっているわけではなく、「１倍を下回る低ＰＢＲ（株価純資産倍率/dx/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3EBE3EAE4E2E3E5E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NX）の修正局面でしかない。円安を受けて代表的な日本株をとりあえず買っておこうという方針の海外投資家や、短期的なヘッジファンド/dx/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3EAE4E2E1E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXの資金が入っているだけ」（損保系運用会社の株式ファンドマネジャー）との見方は多い。

　足元では「スマホにプレイステーションＯＳ（基本ソフト）を採用する可能性もある」「高精細の『４Ｋ』テレビの効果で４～６月期のテレビ事業が黒字化する」などとの観測もあるが、「いずれも市場規模が拡大するかどうか不透明な商品」（ネット証券の株式情報担当者）と市場の反応は冷静だ。

　もちろん、市場では「スマホにおいて、アップルが伸び悩む中、ソニーの巻き返しに注目している」（メリルリンチ日本証券の片山栄一調査部長）、「電池の持続時間などで差別化すれば期待が持てる」（前出のファンドマネジャー）など、スマホ分野でのソニー復活の可能性を指摘する声も残っている。円安と「敵失」という外部要因頼みのソニー株上昇が長期化するには、業績成長という裏付けが見えてくる必要がある。〔日経ＱＵＩＣＫニュース（ＮＱＮ）　吉田晃宗〕