エブレンのニュース
エブレン、主力の計測・制御事業は半導体需要が引き続き好調 分野別売上高は前年比+41.1%と大幅増
会社概要(2022年3月末現在)
上村正人 氏(以下、上村):エブレン株式会社の概要からお話ししたいと思います。設立が1973年、本社が東京都八王子市にあり、現在、資本金が約1億4,300万円、売上高が約39億円、経常利益が5億2,900万円です。
従業員数が118名、事業所が東京都八王子市の本社工場をメインとして、東京都荒川区、埼玉県入間市、大阪市東淀川区と、国内に4拠点、さらに海外には、中国江蘇省蘇州市に、蘇州エブレンという100パーセント子会社が1社あり、合計5拠点でコンピュータ関係の仕事をしています。事業内容は、産業用の電子機器、工業用のコンピュータの設計製造販売です。
事業内容:産業用コンピュータの設計・製造
具体的に私どもの事業内容をご説明します。現在のメインの仕事内容は、通信・電力・鉄道・医療などの社会インフラ系設備、および半導体製造装置や生産自動化機械などの産業インフラ系設備に、コントローラーとして使用される産業用コンピュータの受託設計と受託生産が中心で、売上の80パーセント以上を占めています。
鉄道や電力、通信などの公共性の高い事業会社向け設備の開発や調達については、日本を代表するような大手の装置メーカーが主契約者となっていて、その下について仕事を行うというのが私どものビジネスのポジションです。
主契約者の装置メーカーは、設備やシステムの開発構想に基づいて、当社へ委託するコンピュータ製品の要求仕様書を作成して提示し、私どもは、その要求仕様に基づいて製品を設計し、試作品を作り、装置メーカーへ送って、評価と設計検証を受けるというかたちになります。
設計完了後、量産に入るまでに半年や1年以上かかるものも多いのですが、量産開始以降は、中長期的に安定した生産供給を要求されるケースがほとんどです。最終製品はスライド右側の写真のようなものになります。私どもが行っている仕事は、このような設備の中に組み込まれたり、接続して使うコンピュータを専門とした受託設計、受託製造です。
製品区分(1) ボードコンピュータ
私どもの製品のイメージをつかんでいただくために、スライドに写真を掲載しています。スライドに掲載しているようなものだけではありませんので、一例です。いわゆる電子機器は、プリント基板の上に、必要となる電子部品などを印刷配線基板と呼ばれるたくさんの配線がされている板に実装し、コンピュータの回路を形成します。
スライド左側の写真が比較的規模の大きな電子機器に採用される方式で、1枚の基板の中にすべての機能を組み込むことが大変難しいため、バックプレーンと言って、場合によっては、20枚や30枚という複数枚の基板をつなぎ合わせて、コンピュータ全体の機能を実現するかたちになります。
基板の端に白い部分がありますが、その白い部分はコネクタと言われるもので、つなぎ合わせるための部品です。つまり、基板の端にコネクタが必ずついているというのが、バックプレーンシステム用のボードコンピュータの特徴です。
一方、それほど大きな規模のコンピュータでない場合は、1枚の基板の中にすべての機能を入れることができます。最近は、非常に高密度で、性能のよい半導体がたくさん使えるようになりました。
ですので、小規模のもの、例えばエッジコンピューティングや、IoTの端末などは、大規模なコンピュータシステムである必要がなく、1枚の基板の上に必要な部品を実装して、基本的には1枚で使うというものもあります。このようなものをワンボードコンピュータと言い、スライド右側の写真になります。
産業用で使われるコンピュータの中に入っている基板は、1枚や2枚ということもあります。しかし、枚数が非常に多い、規模の大きなものが圧倒的に多いなどの理由で、つなぎ合わせるためのものとして、このようなバックプレーンが使われます。
製品区分(2) バックプレーン
スライドにバックプレーンの写真の一例を掲載しています。そもそもバックプレーンとはどういうものかご説明します。先ほどお話ししたように、CPUボードやメモリーカードや、各種インターフェースなどいろいろな種類ごとに、機能単位で分けて回路基板を作り、これらをつなぎ合わせて大規模な回路を作ります。
その際に、つなぎ合わせるものがバックプレーンです。人間の体に置き換えて考えるとわかりやすいと思いますが、コンピュータのすべての信号が集中的に集まるという点で、バックプレーンは人間の体の脊髄のようなものです。スライド右側にボードコンピュータの絵を掲載していますが、最終的にはこのようなかたちのものが、金属で作られた筐体の中に組み入れられて使われます。
製品区分(3) コンピューターシャーシ
回路基板を収納する筐体を、ラックと言ったり、シャーシと言ったりしますが、スライドにあるようなかたちをしています。
よく見ると、奥に青い板と白いコネクタが見えており、これがバックプレーンです。箱の中の一番奥に実装されているのがバックプレーンで、形は目的によってさまざまです。
共通の特徴は、金属で作られた筐体の一番奥の背面にバックプレーンが実装され、前から基板を入れられるようになっています。他には、電源がついていたり、中の温度が一定以上にならないようにするためのファンがついています。これらが一般的な構造の共通点です。
一方、ワンボードコンピュータの場合は、1枚の基板でよいため、スライド右側のような形になります。手のひらの上に乗るくらいの小さいサイズと考えていただくとよいです。その中に、ねじ止めで水平に固定されるようなかたちで、ボードを1枚取り付けて使いますので、抜き差しをするのではなくて、固定して使うというかたちになります。これがワンボード型のシャーシというものであり、IoTの端末やエッジコンピューティングなどはだいたいこのようなかたちで作られます。
一般の産業用の電子機器は、半導体の製造装置、通信、医療も含めて、圧倒的にこのようなかたちのものが多いという状況です。
製品区分(4) 制御用コンピュータ
さらに、作られた製品がどのようなかたちで使われるかということを表した一例としての半導体製造装置です。装置全体としてはかなり大きなもので、最終的にはスライドのようなかたちになりますが、私どもが作っているのは、この中のほんの一部ですが、半導体製造装置全体を制御するという役目を担っています。
前段でお話ししたように、スライド左下に掲載したボードコンピュータで言えば、例えばCPUボードや通信をするためのもの、あるいは画像処理をするものや、入出力の制御をするもの、モーターを回したり、コントロールしたりするものなど、機能的に分割して用意されたボードコンピュータが、一斉にフロント側から挿入されます。
これがバックプレーン方式の特徴であり、ワンタッチでボードをスロットインすることができます。私どもはこれ(バックプレーン側のコネクター)をスロットと言うのでスロットインですが、プラグインと言ったほうがわかりやすいかもしれません。要するに、ワンタッチで抜いたり差したりできるような状態で実装されます。
ボードコンピュータがラックに実装されると、フロント面が全部平面になります。そして、外部からの電磁波の影響を受けたり、電磁波を外に出したりしないように、電磁波的に密封状態をとるというのが一般的な構造です。一方で、空気が入らないと、中の温度がどんどん上がってしまいますので、空気は取り入れるが電磁波は中に入らないようにする工夫が非常に大切になります。
このように産業用、制御用のコンピュータが作られ、私どもがメーカーに納めると、装置に取り付けられて、装置全体を動かすという役目を果たします。
バックプレーン方式が産業用に多用される理由
私どもは40年くらい、バックプレーンを専門にしてきていますので、「どうしてバックプレーン方式が産業用の装置に多用されているのか?」「もっと他の方法はないのだろうか?」と話題になることがあります。
実はこれには理由があります。バックプレーンの基本的な構造、機能としては、各種回路基板を相互に接続し、信号伝送や電力供給を行うというものですがここで、ワンタッチで抜き差し、切り離しができるというのが最大の特長で、これは保守のしやすさにつながります。
どのような製品も絶対壊れないという保証はなく、おびただしい数の電子部品を使っていますので、やはり壊れたり故障したりすることは、想定しておかなければなりません。そのような時は、短時間で修復させる必要がありますので、保守性に対してはかなり神経を使って設計します。
ワンタッチで切り離しができるのは非常によいことで、一般にはボード単位でスペアが常時用意されており、万が一故障などがあった場合は「抜いて差し替えてみてください」ということがあります。その結果、直れば、「このボードに何か不具合がある」ということで、メーカーに送り、ゆっくり直してもらえます。
これがワンタッチで切り離しができることの、非常に大きな優位性です。したがって産業用の機械はバックプレーンを使って回路ボードがワンタッチで抜き差しできるようなかたちにすることが圧倒的に多く、それが一般的ということになります。
その他の機能としては、拡張性といいますが、スロットには世界的に通用する国際規格であるバス規格というものがあり、プラグコンパチブルになっています。身近にあるものでたとえると、USBメモリはどのコンピュータでも差し込み、動かすことができます。USBという国際規格で統一しているから互換性がとれるというわけです。
コンピュータの世界は規格がたくさんあるため、我流で作るのではなく、要所要所は国際的に通用する規格に、きちんと則って作ることがとても大事になります。産業用の機械はすべてそのようになっています。
バックプレーンも規格に基づいて作っています。ボードコンピュータの大きさについても国際規格で何種類も定められています。
規格に合わせて設計することで、拡張する時には後で増設が可能になります。例えば、メモリを増やすためのスロットを追加したり、通信関係では、最初はわざとスロットを空けてスタートして、加入者数が増えてくると通信のボードをどんどん増やしていくようなことがよくあります。これは、増設できる機能を持っているからこそ可能なことです。
汎用性については、お客さまがソフトウェア、ハードウェアを開発する際に、場合によっては、私どもがこの中に入れるボードも一緒に請け負うこともありますが汎用的なボードコンピュータは、世の中にはたくさん流通しているものがあります。
産業用に使用できるボードを専門に扱っている優秀なメーカーも世の中にはたくさんありますし、世界的に流通しています。したがって、お客さまがすべてゼロから設計して作り上げることももちろんありますが、CPUボード等については、規格が合っていれば、各メーカーのものを採用することもできます。
つまり汎用性という面で、市場に流通しているボードコンピュータを採用することが可能な理由は、バックプレーンがきちんと規格どおりに作られていて、いつでも切り離したり増設できるようにしているからです。保守性、拡張性、汎用性があることが、産業用にバックプレーン方式が圧倒的に採用されている理由です。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):バックプレーン方式について教えていただきました。このバックプレーンは、大きさや実装されているコネクタ数によって違うと思いますが、1台いくらくらいするのでしょうか?
上村:バックプレーンはコンピュータの規模によって、小さなものから大きなものまで非常に幅があります。小さなものだと、ハガキ大くらいの大きさにコネクタが数個載っているようなものもあり、5,000円から6,000円くらいからです。
畳ほどではないですが、幅500ミリメートル、長さ1,200ミリメートルくらいの大きさのものもあります。弊社で現在生産している中で、一番高いものは1枚55万円です。筐体ではなく板(バックプレーン)だけの価格です。
もちろん、板の上にコネクタはついていますが、当然それらはすべて実装して、検査をして、品質を保証して出しています。
エブレン製品の用途(応用分野)
続いて、エブレンの製品はどのような用途に使われているのか、その応用分野についてご説明します。
先ほどお伝えしたように、合計売上高は39億2,200万円ほどの規模です。この中で一番多いのがスライド右下の円グラフで緑色の「計測・制御」で65.3パーセントを占めています。その他は「電子応用」「通信・放送」「防衛・その他」「交通関係」です。
「交通関係」で、一番わかりやすいところは新幹線です。新幹線の中には、安全運行を保つため、また、通信するためにたくさんの電子機器が載っています。私どもが供給するものの中でもたいへん大切な部分です。その他、高速道路で料金を自動的に収受するETCにも産業用のコンピュータが多用されていますし、AHS関係もそうです。
新幹線以外の一般の電車にも、車両にはATSやATCなどの、万が一のことがあっても自動的にブレーキがかかったりするものが必ず搭載されています。
最近は新幹線にも、車内でのトラブル防止のために、セキュリティカメラが装備されています。いつ、どこへ行っても誰かに見られているとも言えますが、防犯のために搭載されています。
スライドで赤い丸で囲っている「通信・放送」「電力・プラント」については、通信には、有線、無線、モバイル、ブロードバンド、衛星通信、海底ケーブルなど、放送には、放送映像装置やビデオサーバーなどが含まれます。電力関係では、発電、変電、送電などの分野に使われています。これらが、円グラフの「通信・放送」です。
黄色い丸は「電子応用」のセグメントで、医療関係がまず大きく、MRIやCTスキャナー、超音波診断装置などの医療用画像装置も非常に多くなっています。また、血液分析装置などもこちらのセグメントに入ります。その他、スーパーコンピュータもこのセグメントに入っており、私どもはディープラーニング用のスパコンの開発に関わっています。
日本では理化学研究所が運用している世界一のスーパーコンピュータ「富岳」が有名ですが、世界的にも日本のスーパーコンピュータ関係はAI用、ディープラーニング用も含めて、非常に高い技術力を持っていると言われています。以上が電子応用の部分で10.5パーセントを占めています。
最後に緑の丸で囲っている部分が「計測・制御」で、たまたま半導体製造装置がこのセグメントに入っていることもあり、割合も非常に大きいです。半導体製造装置はたいへん種類が多くて、エッチング装置、成膜装置、コータ・デベロッパ、洗浄装置、ウェハプローバ、マスク検査装置など、非常に多岐にわたって作られています。
半導体製造装置の他にこのセグメントに入ってくるのがFA(ファクトリー・オートメーション)です。チップマウンター、ロボット、工作機械の制御、食品機械、外観試験装置などが含まれ、半分以上の65パーセントほどを占めています。
特に半導体が近年大変活況を呈しており、なかなか生産が間に合わない状態で、非常に伸びていることが特徴です。このように当社の製品はさまざまな用途に使われております。
主要納入先 (直接納入,間接納入を含む)
こちらのスライドでは、製品の納入先として、主要取引先を並べさせていただきました。
生産拠点の分散
生産拠点については社会インフラ系の設備に関わっていることもあり、会社の事情で生産ができなくなったり、何か支障があってはいけないため、あえて生産拠点は分散化しています。
現在は東京都八王子市を中心として、埼玉県入間市、東京都荒川区、大阪市東淀川区、中国江蘇省蘇州市に活動拠点を置いています。主要設備はすべての工場に入れており、万が一重大な支障が起きて、特定の事業所で生産できなくなった場合には、他の工場にデータを送れば生産できます。BCPの観点からも共通の設備で、複数の生産拠点で生産するかたちをとっています。
2022年3月期 (第49期) 決算実績
業績報告に移ります。2021年度は2022年3月に終わり、当社での49期になります。売上高は前年比22.5パーセント増の39億2,200万円、営業利益は前年比80.1パーセント増の5億3,700万円でした。
経常利益は同じく前年比76.2パーセント増の5億2,900万円で、当期純利益は前年比72.5パーセント増の3億4,500万円という結果でした。47期と48期は売上も利益もほとんど変わらない状態ですが、今年度はなんとか売上高で20パーセント強増加することができました。
2022年3月期 (第49期)応用分野別概況-1
分野別の概況として、まず計測・制御関係は、半導体制御装置、半導体検査装置を中心に部材調達難がありました。先行的な調達でなんとか出荷停止は回避することができましたが、大変苦戦をした年でした。
半導体供給不足を背景に、半導体製造装置への設備投資が加速している部分があります。半導体需要が引き続き堅調で、その影響も受けて、当期の売上高は前年比41.1パーセント増で、18億1,500万円から25億6,000万円になりました。
交通関係は、緊急事態宣言による移動制限などがあったため、鉄道会社の設備投資に延期がありました。また、リモートワークで通勤客が減ったり、旅行にブレーキがかかったことにより鉄道運営会社が受けた影響は、当然設備投資にも関係しています。
海外向けの鉄道関連の入札についても、延期や設置工事の遅延が発生しています。売上は前年比1.8パーセント減で、前年並みマイナスアルファくらいで収まりました。影響はそれほど大きくありませんが、いずれにしても交通関係は若干のマイナスでした。
坂本:計測・制御のセグメントでかなり伸びているというお話があったのですが、さまざまな会社で部材の調達難の話を聞いています。御社は売上が前年から大きく伸びているということですが、そのあたりの影響に対して工夫されたことはありますか?
上村:本当にこの1年間は部材の調達難で、人と会うとこの話ばかりです。
坂本:前回も厳しいというお話でしたね。
上村:極めて厳しい年でした。幸いなことに、私どものお客さまは、どのような部材が世界的にどのような状態になっているかを、私ども以上によく知っています。私どもが細かいことを説明しなくても、大変厳しい状況にあることがわかっているため、まずはできるだけ早く注文して頂きました。
注文していない物に対して「遅れるな!」などということは言えませんので、大変積極的に、調達難をなんとかカバーしていくということを、お客さまも一緒になって協力していただきました。
普通であればそんなに先までフォーキャストを明示してくれないものを、かなり先まで正式注文を入れてくるというような協力をしていただきました。お客さまと一緒になってこの部材調達難に対応したことが、結果としては大きかったと考えています。
2022年3月期 (第49期)応用分野別概況-2
通信・放送については、電力・放送関連はほぼ予定通りに推移しました。通信インフラ増強計画はありましたが、半導体が入らないということで、かなりの影響を受けました。
私どもが5Gに関わっている部分はそれほど大きくないのですが、「アンテナだけは立っているが、装置に接続されていない」というようなお話をよく聞いたりするほど、どの分野も大変な状況であったと考えています。売上は前年比で38.6パーセントの大幅な減ですが、部品が入らなかったことの影響がかなり大きいと思います。
電子応用ですが、先送りされていた高額医療装置への設備投資が再開されました。先ほど少しお話ししましたが、私どもが担当している医療関係のコンピュータはMRIやCTスキャナなどで使用されていますが、この種の医療機器は1台で1億円、2億円単位のかなり高額なものです。そのようなものを高額医療装置と言います。
新型コロナウイルスの影響で、この2年間くらいはそちらのほうをかなり優先することもあってのことかと思うのですが、高額医療装置の設備投資の繰り延べがありました。ようやく再開されたというのが2022年3月期です。
溜まっていた部分が押し上げられて後にきたものですから、当然大幅に増となるという点があり、42パーセントほど増えました。つまり、前年がすごく少なかったということです。
防衛・その他については、売上は前年比約10パーセント増でした。防衛関係については、なかなか情報が取れない部分がありますが、10パーセントほど伸びたというところでした。
2022年3月期 (第49期) 応用分野別売上
売上高を4年続けてジャンル別のグラフに表したものです。今ご説明した2022年3月期は39億2,200万円です。棒グラフの一番下の緑色が「防衛・その他」で、2番目の黄色が「交通関連」3番目のグレーの部分が「計測・制御」で、半導体製造装置がここに入ってきます。圧倒的に多いのが計測・制御分野です。橙色が「電子応用」で、医療関連などです。一番上の青色が「通信・放送」です。
売上高の総額は前年が約32億円だったものが約39億円になり、合計22パーセントほど伸びました。この中で明らかに伸びたものは、「計測・制御」であることは一目瞭然です。
半導体製造装置がいかにピッチを上げたかということが、スライドのグラフをご覧いただいてわかると思います。他は分野によって少し上がったり下がったりというレベルでした。
通信・放送は3億9,300万円が2億4,100万円になったということで、すごく少なくなってきている状況です。私どもはブロードバンドのアクセス系の装置の占める割合が大きかったため、この影響が大きいのですが、今、日本の光ファイバーの世帯別の普及率は99パーセントになっており、これは世界一です。
1Gbpsが10Gbpsに代わるような置き換えはあるため、なくなったわけではないのですが、ここまでいってしまうと、大量に生産しなくてよくなっているのです。私どもはその影響を受けていると思われます。
電子応用については、先ほどお話ししたようなことで若干増えて2億9,000万円が4億1,200万円です。電子応用は、コロナ禍によって医療機器が抑えられていたものが復活したということです。
なんと言っても大きいのは、この半導体製造装置関連が「作っても作っても足りない」という状態です。「作っても作っても」と言っても「そんなに製造に使用する部品が集まるのか?」と言いますと、集まらないこともあって辛いところではあるのですが、これが活況でした。
黄色の部分の交通関連は、2021年3月期に5億6,500万円だったものが2022年3月期に5億5,400万円であまり変わっていません。交通関連というのは社会インフラの中でも代表的な部分であるため、とにかく安定している分野です。「景気がよいから進める」「景気が悪いから進めない」ということではなく「しなければならないことは、予算どおりに長期的に進めていかなくてはならない」というしきたりが強い分野で、比較的安定しています。2021年3月期に5億6,500万円だったものが、若干落ちて2022年3月期に5億5,400万円になったという程度です。
防衛はアマウントそのものが小さいため、あまり影響がないのですが、グラフのような状態です。ジャンル別には、やはり目立っているのが半導体関係で極端ですが、ほかは若干プラス、若干マイナスというかたちで大きな変化はないと言えるかと思います。
2022年3月期(第49期) 業績 – 財政状態
数字で財政状況をお話ししたいと思うのですが、まず当社の流動資産が39億円ほどで、前年比で約18パーセント増となりました。固定資産が12億7,700万円で、これはほとんど変わりません。資産合計が51億8,400万円で、約13パーセント増でした。
流動負債が10億1,800万円で、約32パーセント増でした。固定負債が3億7,400万円で3パーセント増、負債合計が13億9,200万円で、22.7パーセント増です。
純資産が約37億9,000万円で、9.9パーセント増になりました。負債純資産合計で51億8,400万円、約13パーセント増です。自己資本比率は73.1パーセントです。
2023年3月期 (第50期) 通期予想
次の期である50期についてご説明します。通期予想としては売上高は約10パーセント増で約43億円、営業利益は約20パーセント増で6億5,000万円、経常利益は約22パーセント増で6億5,000万円、当期純利益は約24.5パーセント増で4億3,000万円を想定しています。スライド下はこれらをグラフで表したものです。
2023年3月期 (第50期) 見通し
この4月から始まった50期ですが、分野別には計測・制御関係が最も大きく、スマホ・自動車・データーセンター向けを中心に半導体需要がさらに拡大しつつあり、半導体製造装置市場の増加は当面継続すると見ています。
ウクライナ問題、新型コロナウイルスの影響で半導体製造装置生産に支障を来す可能性もあり、部品入手難の顕在化のリスクが一番恐ろしいですが、先ほどお話ししたような工夫をしながら取り組んでいます。
交通関連では、交通・車両関係は例年並みを予測しています。海外向け案件を中心に、新型コロナウイルスの影響により設備投資延期の可能性もあります。
2023年3月期 (第50期) 見通し
通信・放送関係ですが、新規電力案件で量産開始されたものがあります。また、放送分野で前期分からの後ろ倒し、つまり遅れてしまって今期入ってくるものもあるようです。
電子応用については、医療関係を中心に例年並みを予測しています。防衛関係は、おそらく例年並みから微減くらいという状態です。
2023年3月期 (第50期) 応用分野別売上予想
これらをグラフにするとスライドのようになります。先ほど応用分野別にご説明しましたが、第50期は概ねこうなるのではないかという程度です。半導体製造装置を中心とした計測・制御関係のジャンルが大きく伸び、他はそれほど大きな変化はないということです。
極めて大雑把に言いますとそのような状態で、2022年3月期の売上高は合計で39億2,200万円だったのですが、2023年3月期は43億2,000万円と10パーセント強の成長が見込めると考えています。
直近10年間の業績推移
スライドは、当社が成長しているかどうかを振り返ったもので、直近の10年間の売上と利益の推移です。青の棒グラフが左の目盛りで売上、ピンクの棒グラフが右の目盛りで経常利益ベースです。
売上高は、10年前は23億5,000万円のものが、当期は39億2,000万円ほどになり、グラフのような調子で伸びています。
経常利益は、7,500万円のものが、10年間で5億2,900万円という推移になっています。年によって増減はありますが、このようなトレンドになっていると私どもは考えています。
私は常に思うのですが、商売にはよい時と悪い時というのが必ずあるのです。よい方向に向いているか、よいトレンドに乗っているかどうかということが、最も大事なことだと思います。月毎や年毎に一喜一憂せず、トレンドがよい方向に向いているということが、何よりも一番大事なことです。
坂本:よいセグメントの方とお付き合いするということですね。
上村:おっしゃるとおりです。「傾向として捉える」というのは、経営上とても大事なことだと思っているのです。
坂本:最後に御社の成長についてお聞かせください。
当面の目標
上村:成長を図にするとスライドのようになります。でこぼこはしていますが、なんとかこのバンドに乗せていきたいというのが、現在の私どもの成長に対するイメージです。来年度以降は、このような軌道に乗せていこうということです。
成長戦略
これを実現するために、コア事業のさらなる拡大、受注範囲の拡大、ボートコンピュータ事業の積極的推進、中国の子会社の戦略的活用などに取り組んでいきます。
坂本:いろいろセグメントがあるため、その中で調子のよいところと深くお付き合いする、次に調子がよくなるのがどこかを探しながら成長していくということですね。
上村:おっしゃるとおりです。
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