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富士電機のニュース
―大手企業の増産設備投資が加速、株価大変貌のタカトリに続く次の主役候補を探せ―
東京株式市場は5月中旬を境に戻りに転じ、特に実質6月相場入りとなった5月30日を境に上げ足を一気に強めた。週末10日の日経平均株価は前日比422円安の2万7824円と目先はその反動もあって急反落を余儀なくされたが、日本株優位論が広まるなか、ここからの押し目は強気に買い下がって報われる可能性が高い。株式市場ではテーマ物色の動きが活発だが、そのなか今後大きく成長が期待されるパワー半導体 分野に再びスポットが当たっている。大手企業がこれまで以上に同分野への投資意欲を高めており、関連銘柄の中には中期視野で絶好の買い場提供となっている有望株も少なくない。
●脱炭素戦略と共鳴するパワー半導体
脱炭素 戦略を背景とした世界的な電気自動車(EV)シフトの動きを背景に、パワー半導体需要は今後一段と喚起される可能性が高まっている。また、EVシフトに限らず、自動車のエレクトロニクス武装が進むなか、パワー半導体の搭載点数も増え続けていくことは必至だ。パワーステアリングやエンジン制御ユニットをはじめ、自動車のあらゆる場所にパワー半導体は組み入れられており、これに電動化需要が拍車をかけている状況にある。
いうまでもなく自動車以外でもゲーム機器、デジタル家電、産業ロボットなど、旺盛な需要先は多岐にわたる。最近は半導体不足が顕著となっており、需給逼迫を背景としてパワー半導体の価格も上昇傾向を強めている。需要側も品不足の影響を回避するために長期契約を望む動きが主流となっており、製造・販売する側にとって強い追い風が吹いていることは間違いない。
●増産投資の動きが一気に加速へ
今年に入り大手重電メーカーの増産投資の動きが活発だ。富士電機 <6504> [東証P]は、1月下旬に次世代製品であるSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の増産に向けた設備投資を、従来から前倒しして2024年度に量産を開始する計画を発表した。
また、東芝 <6502> [東証P]は2月初旬、約1000億円を投じ、24年度に石川県の半導体生産拠点(加賀東芝エレクトロニクス)で製造棟を新設し、パワー半導体の製造を行う計画を発表。同年度中に稼働を開始する予定にあるが、これにより生産能力は21年度比で2.5倍まで高まる見通しという。
車載用半導体で世界屈指のルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]も負けてはいない。5月中旬に、パワー半導体増産に約900億円を投資する方針を発表し、市場の注目を浴びた。閉鎖した甲府工場を生産拠点として稼働を再開、大型ウエハー用生産ラインを使って、25年から量産を本格開始し、生産能力を倍増させる計画だ。
カスタムICの雄であるローム <6963> [東証P]もSiCパワー半導体生産に強気の投資を進める構えだ。年内に福岡県で新工場を稼働させ、25年度までに従来計画600億円に対して約3倍となる1700億円をSiCパワー半導体の増産投資に注ぎ込む。同製品分野でロームは業界トップクラスの実力を誇っており、今後も先頭集団を走り続けることに貪欲な姿勢を示している。
●タカトリの株価変貌が示唆する強力なテーマ性
パワー半導体は市場規模の急拡大が続く見通しで、25年には3兆円を超えるマーケットが創出されるとの試算もある。それだけに株式市場でも関連銘柄に注がれる視線は熱い。直近、東京市場ではパワー半導体関連企業で株価を変貌させた銘柄がある。それは精密切断加工を行うマルチワイヤーソーを看板商品とするタカトリ <6338> [東証S]だ。同社はSiCデバイスの精密切断技術などで抜群の商品競争力を有している点が特筆される。そうしたなか、5月末にSiC材料切断加工装置の大口受注(約80億円)を海外企業から獲得したことを発表、これが材料視される形で、怒涛のごとく投資資金が流れ込んだ。株価は動意初日(6月1日)にストップ高に買われたが、その後も勢いよく上値追いを続け、10日のザラ場高値2695円までわずか8営業日で80%高を演じた。
このタカトリの株価変貌に触発されるように、パワー半導体をテーマに株価を大化けさせる銘柄が今後も輩出される可能性は決して小さくない。金融相場の土壌が失われつつあるなか、ハイテクセクターの投資環境は決して良好とは言えないが、時代の要請に応える銘柄群にとって金利上昇の向かい風は怖くない。次代を担う成長株候補となり得る5銘柄を選出した。
●このパワー半導体関連5銘柄をロックオン
◎タムラ製作所 <6768> [東証P]
トランスやリアクターのほか、はんだ材料など電子化学材料も手掛けている。同社からのカーブアウトベンチャーであるノベルクリスタルテクノロジーは、次世代パワー半導体材料の有力候補とされるβ酸化ガリウムの研究開発を推進、昨年世界初の量産に成功している。昨年12月下旬には酸化ガリウムを材料とする高電圧対応のパワー半導体ダイオードを開発し話題となった。また、今年3月には半導体デバイスの劣化につながる欠陥を従来の10分の1に減らし、大電流への耐性を向上させEV向けパワー半導体への新たな活路も開いた。業績は前期まで苦戦が続いていたが、今期は営業利益段階で前期比92%増の30億円と急回復を見込む。株価は6月に入ってから急速な戻り足を示したが、底値圏離脱の初動といえ、今後は26週移動平均線越えから戻り本番となる可能性がある。昨年6月には急騰相場を演じ、短期間で株価を倍化させ1127円の高値をつけた実績が光る。
◎高田工業所 <1966> [東証S]
製鉄・化学プラント の建設を主力とした中堅プラントメーカーだが、電力やエレクトロニクス分野での展開力にも定評がある。設備診断事業では電流情報量診断システムの拡販に期待がかかる。一方、半導体装置分野では高い技術力を生かして独自商品を展開、有機薬液を使いウエハーを1枚ずつ回転させながら表面処理を行う枚葉式ウエット処理装置は、パワー半導体の成膜工程で数多く採用されるなど実績が高い。また、次世代パワー半導体や高周波デバイスの切断で活躍する超音波カッティング装置も同社ならではの高技術が生かされた商品。業績も回復色が鮮明だ。23年3月期営業利益は前期比7割増益の20億3000万円と急拡大を見込み、時価予想PER3倍台、PBR0.4倍台と割安感が際立っている。株価は6月に入ってから動兆しきりだが、中期上昇トレンドの入り口と判断される。昨年3月につけた高値991円奪回から、4ケタ台を地相場とした強調展開を見込む。
◎テセック <6337> [東証S]
半導体製造装置を展開するが、同社は分類装置(ハンドラ)と検査装置(テスター)に特化しているのが特徴だ。高度な開発力が強みで基本性能の追求だけでなく、新しい方式や新技術の提供で業界をリード、先進性を武器に高水準の需要獲得につなげている。高速通信規格5Gや車載用パワー半導体向けテスターの伸びが顕著で、業績拡大に貢献。豊富な品揃えでハイパワーデバイスの測定など幅広いニーズに対応し収益機会を広げている。22年3月期業績は従来計画を大きく上振れ、営業利益が17億4800万円(前の期実績は4億4800万円の赤字)と特筆に値する高変化をみせた。発射台が高くなったこともあり、23年3月期は18億円予想と控え目な見通しを示しているが、PER8倍前後で3%台の配当利回りは株価の水準訂正余地を暗示する。昨年6月初旬に3500円の高値をつけており、そこから4割近くディスカウントされた時価は中期スタンスで買い場と判断される。
◎日新電機 <6641> [東証P]
重電を主力とする電力機器メーカーで、住友電気工業 <5802> [東証P]が過半の株式を保有する筆頭株主。売上高で全体の約半分を占める電力機器が堅調で業績に寄与しているほか、同社の戦略商品であるイオン注入装置が会社側想定を上回る引き合いで収益を押し上げている。イオン注入装置はFPD製造用と半導体製造用に大別されるが、半導体用ではとりわけ旺盛な設備投資需要に対応する形で、パワーデバイス向けに重点を置いて需要を取り込む方針にある。収益も成長路線をまい進しており、22年3月期はトップラインが過去最高を更新した。23年3月期も前期比6%増収の1400億円予想とピーク更新が続く見通しにあり、営業利益は同1.5%増の170億円見通しとしているものの、保守的で上振れする可能性も十分にある。株式需給面では信用買い残が枯れた状態で、株価も目先の押し目は強気対処して報われそうだ。中勢2000円大台替えを目指す展開が期待できる。
◎新電元工業 <6844> [東証P]
パワー半導体をはじめとした電子デバイスの製造を行っており、車載用やロボット向け用途で、複数個のパワー半導体を組み合わせてパッケージ化したパワーモジュールを提供している。また、世界的な脱炭素に向けた取り組みが加速するなか、高効率・高電力密度・小型化などが求められる電子機器に貢献が期待されているGaN搭載のパワーモジュール開発を進めている。このほか、情報通信機器用電源では、電力ネットワークへの送電効率が高い高電圧直流給電(HVDC)整流装置の需要開拓が期待されている。業績面では22年3月期営業損益が55億6200万円と大幅黒字化を達成。続く23年3月期は好調な車載用デバイスなどの寄与により売上高が1000億円大台に乗せる見通しにあり、営業利益は前期比2.5%増の57億円を見込むものの保守的で増額修正の公算大。株価は13週・26週移動平均線のゴールデンクロスが接近、中勢4000円台活躍を目指す。
株探ニュース
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