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新晃工業のニュース
■事業概要
1. 事業内容
新晃工業<6458>の事業は、地域別(セグメント別)に日本とアジアに分けられ、2022年3月期の売上高構成比は日本が83.3%、中国15.4%、その他1.3%となっている。製品及びサービス別の売上高構成比は、主軸の空調機器製造・販売事業(国内)53.0%、工事・サービス事業20.0%、ビル管理事業12.3%、空調機器製造・販売事業(海外)14.7%となっている。空調機器製造・販売事業(国内)は、新規案件46.4%、更新需要53.6%であり、用途別ではオフィス30.4%、工場34.4%、データセンター7.4%、医療福祉・文京・宿泊・駅・空港などその他27.8%となっている。また、生産拠点を神奈川と岡山に2拠点(ほかにテクニカルセンター)有し、同社が空調機器などの製造販売を行うほか、日本ビー・エー・シー(株)が空調機器関連製品などの販売、新晃アトモス(株)が設備更新工事やメンテナンス、千代田ビル管財(株)がビル管理及びメンテナンスなど、子会社が周辺事業を行っている。海外は、上海新晃空調設備股フン有限公司、SINKO Air Conditioning (H.K.) Limited、Taiwan SINKO Kogyo Co.,Ltd.、SINKO Air Conditioning (Thailand) Co.,Ltd.の4社が上海、香港、台湾、タイに生産・販売拠点を有している。最大の市場となる中国以外は、台湾、タイ、そのほかの国も含めて代理店中心に営業を展開している。
水AHUを軸にヒートポンプAHUや工事・サービス事業に注力
2. 製品・サービス
同社の製品やサービスは、セントラル空調で使用されるAHUと個別空調で使用されるヒートポンプAHU、「健康空調(R)」(以下、「健康空調」)、FCUなどその他製品、及び更新工事やメンテナンスなどである。同社は、製品ラインナップから、施主・設計事務所の意向や施設の特性・用途、設置場所の事情などに応じ、風量や熱処理量、清浄性、静音性など求められる仕様に合わせて、様々な製品やサービスを完全オーダーメイドで提供している。さらに最先端の技術や最新のニーズを取り入れ、製品の省エネ化や省スペース化、高効率化を追求することで、個別空調など新規の事業領域や「健康空調」のような新たな切り口、更新・メンテナンス需要を開拓・開発している。
(1) 水AHU
主軸の水AHUは、室内からの還気※と同時に外気を取り込み、空気中の塵埃を除去した後に熱処理を行って各室へ向けて給気する機器で、セントラル空調で使用される。一般に送風機・コイル・加湿器・エアフィルタなどをケーシングに収めたユニット構造をしており、専用の機械室などに置かれる。貸室床面積を重視するオフィスビルなどでは、高機能かつ設置面積を抑えた空調機器といった高度な仕様が求められる。同社は、プラグファンの大幅な高効率化を実現した標準型AHU、空調性能をコンパクトなボディに集約したコンパクト型AHU、機械室を必要としないターミナル型AHUなど豊富なラインナップを用意しているほか、さらなる高機能製品の開発も続けている。
※還気:室内の空気を循環使用するため、ダクトを通って空調機器の吸い込み側に返ってくる空気のこと。
(2) ヒートポンプAHU
ヒートポンプAHUは、外気の取り入れや加湿・空気清浄などセントラル空調の空調品質と、熱源の分散という個別空調の利便性を兼ね備えた個別空調機器である。もともと個別空調とセントラル空調のすき間を狙った商品であったが、近年になって冬期の加湿不足などの課題への対策として採用の要請が強まってきた。このため同社は、2017年5月に競合企業で個別空調に強みを持つ空調業界トップのダイキン工業と、ヒートポンプAHUの共同開発において業務資本提携をした。同社にはヒートポンプ技術をキャッチアップしたいという意向があり、ダイキン工業には水AHUに関して同社のノウハウで補完したいという考えがあったため、Win-Winの関係と言うことができる。すでに自社ブランド製品を開発しており、2021年にモデルチェンジした室外機一体型ヒートポンプAHU「オクージオ」を戦略製品として販売強化する一方、2022年にはヒートポンプAHUの室外機をモデルチェンジし、複数の室外機が除霜運転のタイミングをコントロールして給気温度の低下を抑制する「デフロストローテーション機能」を搭載した。
(3) 「健康空調」
同社はコロナ禍以前から「健康空調」という考え方を提唱してきた。細菌やウイルスは、対策を徹底していても、どこからともなく施設内に持ち込まれてしまう。このため同社は、空調機器にUVC(紫外線C波)ランプを搭載し、空気中に潜む細菌やウイルスを強力な紫外線照射で分解・除去する、空気除菌システム「健康空調」シリーズを開発した。オフィスや工場のほか、医療福祉施設や公共施設、文教施設など外部から大勢の人が集まる場所に最適な製品で、コロナ禍においては注目がさらに増した。直近では、従来のUVCランプ搭載AHUに加え、UVCランプ搭載のFCUカセット形を投入した。簡単なリプレイス工事だけで設置が可能であること、人体に悪影響のあるオゾンなど2次汚染物質がほとんど発生しないこと、安全装置付きで紫外線漏洩の心配がないことなどの特長がある。
(4) FCUなどそのほか製品
そのほかの製品のなかでも、セントラル空調で水AHUとセットで使用されるFCUは主力製品と言える。コイルとファンモータユニット、エアフィルタで構成され、室内還気の温度調整を行う機器である。特に個別に仕切られた会議室や外気温度の影響を受けやすい窓側など、AHUだけでは難しいエリアの温度制御を行っている。FCUには、1台の熱交換用のコイルに必要に応じて冷水と温水を切り替えて供給して温度調整をする2管式と、2台の熱交換用コイルに冷水と温水を別々に供給して温度調整する4管式がある。4管式は個々の機器で自由な温度設定ができ、セントラル空調でありながら個別空調の特徴も持った製品である。そのほか、品質や温度・湿度といった室内環境をエネルギー損失なしで個別コントロールするデシカント空調機・除湿機や、蒸気や温水を熱源に暖房を行うユニットヒータなどがある。2021年には既存の空調設備に付設する大空間向け除菌システムの空調専用噴霧ユニットを発売した。
(5) 工事・サービス事業
2021年4月、工事・サービス事業を展開する子会社の新晃アトモスが、メンテナンス事業を行う子会社の新晃空調サービス(株)を吸収合併した。業界トップメーカーという信頼感や設備劣化診断など豊富なサービスメニューを生かすため、子会社の機能を集約化することで工事・サービス事業を強化していく考えである。また、中期的にデータセンターや都心再開発などの需要はあるものの、長期的には人口減少などによる新設物件の減少と既存施設の増加が予測されていることも見据えている。またこの合併により、オーダーメイドに対応できず退出した大手メーカー製空調機器の設備更新工事の獲得も見込んでいる。このように、工事・サービス事業を強化する戦略は長期的に非常に合理的ということができ、今後継続的に発生することが見込まれる設備更新工事・メンテナンス需要を確実に取り込んでいく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<EY>
1. 事業内容
新晃工業<6458>の事業は、地域別(セグメント別)に日本とアジアに分けられ、2022年3月期の売上高構成比は日本が83.3%、中国15.4%、その他1.3%となっている。製品及びサービス別の売上高構成比は、主軸の空調機器製造・販売事業(国内)53.0%、工事・サービス事業20.0%、ビル管理事業12.3%、空調機器製造・販売事業(海外)14.7%となっている。空調機器製造・販売事業(国内)は、新規案件46.4%、更新需要53.6%であり、用途別ではオフィス30.4%、工場34.4%、データセンター7.4%、医療福祉・文京・宿泊・駅・空港などその他27.8%となっている。また、生産拠点を神奈川と岡山に2拠点(ほかにテクニカルセンター)有し、同社が空調機器などの製造販売を行うほか、日本ビー・エー・シー(株)が空調機器関連製品などの販売、新晃アトモス(株)が設備更新工事やメンテナンス、千代田ビル管財(株)がビル管理及びメンテナンスなど、子会社が周辺事業を行っている。海外は、上海新晃空調設備股フン有限公司、SINKO Air Conditioning (H.K.) Limited、Taiwan SINKO Kogyo Co.,Ltd.、SINKO Air Conditioning (Thailand) Co.,Ltd.の4社が上海、香港、台湾、タイに生産・販売拠点を有している。最大の市場となる中国以外は、台湾、タイ、そのほかの国も含めて代理店中心に営業を展開している。
水AHUを軸にヒートポンプAHUや工事・サービス事業に注力
2. 製品・サービス
同社の製品やサービスは、セントラル空調で使用されるAHUと個別空調で使用されるヒートポンプAHU、「健康空調(R)」(以下、「健康空調」)、FCUなどその他製品、及び更新工事やメンテナンスなどである。同社は、製品ラインナップから、施主・設計事務所の意向や施設の特性・用途、設置場所の事情などに応じ、風量や熱処理量、清浄性、静音性など求められる仕様に合わせて、様々な製品やサービスを完全オーダーメイドで提供している。さらに最先端の技術や最新のニーズを取り入れ、製品の省エネ化や省スペース化、高効率化を追求することで、個別空調など新規の事業領域や「健康空調」のような新たな切り口、更新・メンテナンス需要を開拓・開発している。
(1) 水AHU
主軸の水AHUは、室内からの還気※と同時に外気を取り込み、空気中の塵埃を除去した後に熱処理を行って各室へ向けて給気する機器で、セントラル空調で使用される。一般に送風機・コイル・加湿器・エアフィルタなどをケーシングに収めたユニット構造をしており、専用の機械室などに置かれる。貸室床面積を重視するオフィスビルなどでは、高機能かつ設置面積を抑えた空調機器といった高度な仕様が求められる。同社は、プラグファンの大幅な高効率化を実現した標準型AHU、空調性能をコンパクトなボディに集約したコンパクト型AHU、機械室を必要としないターミナル型AHUなど豊富なラインナップを用意しているほか、さらなる高機能製品の開発も続けている。
※還気:室内の空気を循環使用するため、ダクトを通って空調機器の吸い込み側に返ってくる空気のこと。
(2) ヒートポンプAHU
ヒートポンプAHUは、外気の取り入れや加湿・空気清浄などセントラル空調の空調品質と、熱源の分散という個別空調の利便性を兼ね備えた個別空調機器である。もともと個別空調とセントラル空調のすき間を狙った商品であったが、近年になって冬期の加湿不足などの課題への対策として採用の要請が強まってきた。このため同社は、2017年5月に競合企業で個別空調に強みを持つ空調業界トップのダイキン工業と、ヒートポンプAHUの共同開発において業務資本提携をした。同社にはヒートポンプ技術をキャッチアップしたいという意向があり、ダイキン工業には水AHUに関して同社のノウハウで補完したいという考えがあったため、Win-Winの関係と言うことができる。すでに自社ブランド製品を開発しており、2021年にモデルチェンジした室外機一体型ヒートポンプAHU「オクージオ」を戦略製品として販売強化する一方、2022年にはヒートポンプAHUの室外機をモデルチェンジし、複数の室外機が除霜運転のタイミングをコントロールして給気温度の低下を抑制する「デフロストローテーション機能」を搭載した。
(3) 「健康空調」
同社はコロナ禍以前から「健康空調」という考え方を提唱してきた。細菌やウイルスは、対策を徹底していても、どこからともなく施設内に持ち込まれてしまう。このため同社は、空調機器にUVC(紫外線C波)ランプを搭載し、空気中に潜む細菌やウイルスを強力な紫外線照射で分解・除去する、空気除菌システム「健康空調」シリーズを開発した。オフィスや工場のほか、医療福祉施設や公共施設、文教施設など外部から大勢の人が集まる場所に最適な製品で、コロナ禍においては注目がさらに増した。直近では、従来のUVCランプ搭載AHUに加え、UVCランプ搭載のFCUカセット形を投入した。簡単なリプレイス工事だけで設置が可能であること、人体に悪影響のあるオゾンなど2次汚染物質がほとんど発生しないこと、安全装置付きで紫外線漏洩の心配がないことなどの特長がある。
(4) FCUなどそのほか製品
そのほかの製品のなかでも、セントラル空調で水AHUとセットで使用されるFCUは主力製品と言える。コイルとファンモータユニット、エアフィルタで構成され、室内還気の温度調整を行う機器である。特に個別に仕切られた会議室や外気温度の影響を受けやすい窓側など、AHUだけでは難しいエリアの温度制御を行っている。FCUには、1台の熱交換用のコイルに必要に応じて冷水と温水を切り替えて供給して温度調整をする2管式と、2台の熱交換用コイルに冷水と温水を別々に供給して温度調整する4管式がある。4管式は個々の機器で自由な温度設定ができ、セントラル空調でありながら個別空調の特徴も持った製品である。そのほか、品質や温度・湿度といった室内環境をエネルギー損失なしで個別コントロールするデシカント空調機・除湿機や、蒸気や温水を熱源に暖房を行うユニットヒータなどがある。2021年には既存の空調設備に付設する大空間向け除菌システムの空調専用噴霧ユニットを発売した。
(5) 工事・サービス事業
2021年4月、工事・サービス事業を展開する子会社の新晃アトモスが、メンテナンス事業を行う子会社の新晃空調サービス(株)を吸収合併した。業界トップメーカーという信頼感や設備劣化診断など豊富なサービスメニューを生かすため、子会社の機能を集約化することで工事・サービス事業を強化していく考えである。また、中期的にデータセンターや都心再開発などの需要はあるものの、長期的には人口減少などによる新設物件の減少と既存施設の増加が予測されていることも見据えている。またこの合併により、オーダーメイドに対応できず退出した大手メーカー製空調機器の設備更新工事の獲得も見込んでいる。このように、工事・サービス事業を強化する戦略は長期的に非常に合理的ということができ、今後継続的に発生することが見込まれる設備更新工事・メンテナンス需要を確実に取り込んでいく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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