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富士ソフトサービスビューロのニュース
■富士ソフト<9749>の事業内容
3. 採算性が大きく改善した狭義のプロダクト・サービス
SI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスの売上高構成比は30.0%(2019年12月期)、営業利益構成比は23.7%(同)である。2019年12月期は前期比で17.7%増収、84.5%増益となり、期末受注残高は前期末比で58.7%増と大幅な積み上がりとなっており、2020年12月期も順調な滑り出しが見込まれるだろう。
売上高構成比が過去4年間において上昇する一方で、セグメント利益率が総じて全社水準を下回っている理由は、利幅が薄い物販等が区分売上高の半分程度を占めるためである(残りの売上高は自社プロダクトとライセンスビジネスでほぼ等分される)。とはいえ、2018年12月期に行った品質強化のための先行投資等が奏功、子会社サイバネットシステムの収益性改善を主因に2019年12月期のセグメント利益率は4.5%と過去5年間における最高水準へと向上している。
狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)、から成る。2019年12月期の前期比増収率を見ると、自社プロダクトが13%増(2018年12月期7%増)、ライセンスビジネスが28%増(同26%増)、物販等が15%増(同17%増)となり、ライセンスビジネスの好調ぶりが際立つ。ライセンスビジネスについては、Windows7のサポート終了(2020年1月14日)を控えた特需的な動きが足元の売上げを押し上げた部分もあるが、一般論としては、office365や各種クラウドサービスといったICTプロダクトのサブスクリプションモデル化(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)の進展により、従来以上に事業の安定性が高まっている可能性があるだろう。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上げは自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。
独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、コミュニケーションロボット「PALRO」等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。コアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きであるが、会社側が「高い水準を求めている」としている先行投資局面後の収益性については注意深く見守りたい。
4. 底入れを模索するアウトソーシング
アウトソーシングは、データセンターやシステム運用・保守等のサービスを提供しており、売上高構成比は6.5%(2019年12月期)、営業利益構成比は7.2%(同)、セグメント利益率は6.4%である。近年の減収傾向は、流通・サービス向け継続案件の減少によるところが大きく、2019年12月期も前期比0.4%減収、同6.2%減益となっている。2019年12月期末の受注残高は前期末比で7.2%増と持ち直しているものの、回復のリード役はシステム運用・保守であり、他社クラウドサービスとの競争が厳しいデータセンター事業については、引き続き底入れ模索局面にあると考える。
5. 高収益のファシリティ事業
保有するオフィスビルの賃貸を収入とするファシリティ事業の売上高構成比は1.3%(2019年12月期)、営業利益構成比は9.1%(同)で、セグメント利益率は41.8%(同)と高い。2019年12月期は0.3%減収ながら7.1%増益を確保し、同社の利益水準を安定的に下支えしている。なお、セグメント利益率は2018年12月期比で2.9ポイント上昇し、過去5年間で最高水準を実現している。
有価証券報告書で確認できるファシリティ事業向け保有不動産は、横浜本社(土地取得年:2000年、土地建物簿価:11,399百万円)、秋葉原オフィス(同:2005年、同32,635百万円)、錦糸町オフィス(同:2000年、同6,065百万円)、門前仲町オフィス(同:2003年、同1,760百万円)の4棟である。
6. その他では富士ソフトサービスビューロが急減速
その他の売上高構成比は5.5%(2019年12月期)、営業利益構成比は2.4%(同)である。2019年12月期は4.3%増収、44.6%減益と前期(13.5%増収/4.8%増益)までの好調ぶりから一転して急減速、セグメント利益率は2.5%と前期比で2.2ポイント低下している。子会社の富士ソフトサービスビューロ<6188>が手掛けるBPOサービス事業やコンタクトセンター事業の好調が近年の増収・増益をけん引してきたわけだが、日本年金機構案件の競争参加資格一時停止(2019年4月8日から2020年1月7日まで)がブレーキ要因となっている。
2002年11月に東京大学医学部附属病院で「骨・軟骨再生医療寄付講座」を開講し、2007年より(独)科学技術振興機構(現在は国立研究開発法人)の委託(2015年4月からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構より委託)を受けて取り組んでいる再生医療事業は、一見飛び地参入に見えるが、医療分野におけるICT利活用の有効性に着目した「挑戦と創造」である。
同社は、東京大学からの技術移転を受けた研究開発により世界初の自己細胞による「インプラント型再生軟骨」の開発に成功し、2015年から鼻の外観と機能改善を目指した口唇口蓋裂患者治療への有効性・安全性を評価する企業治験を進めてきた。そして、2018年9月にインプラント型再生軟骨の成功認定を獲得、2020年の製造販売を目指している。
7. 「AIS-CRM」領域での取り組みを事業戦略に、新製品・新事業の創出に挑戦
前述のとおり、同社は「AIS-CRM」を重点技術分野に揚げ、新製品・新事業のシーズ創出や既存事業の付加価値向上に注力している。一見、流行り言葉の羅列のようだが、「AIS-CRM」戦略の上位概念には同社のコアコンピタンスが据えられており、その取り組み成果は順調に実りつつある。特にクラウド領域が好調であり、「AIS-CRM」領域全体では単体売上高の過半を占めるに至っているとのことである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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3. 採算性が大きく改善した狭義のプロダクト・サービス
SI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスの売上高構成比は30.0%(2019年12月期)、営業利益構成比は23.7%(同)である。2019年12月期は前期比で17.7%増収、84.5%増益となり、期末受注残高は前期末比で58.7%増と大幅な積み上がりとなっており、2020年12月期も順調な滑り出しが見込まれるだろう。
売上高構成比が過去4年間において上昇する一方で、セグメント利益率が総じて全社水準を下回っている理由は、利幅が薄い物販等が区分売上高の半分程度を占めるためである(残りの売上高は自社プロダクトとライセンスビジネスでほぼ等分される)。とはいえ、2018年12月期に行った品質強化のための先行投資等が奏功、子会社サイバネットシステムの収益性改善を主因に2019年12月期のセグメント利益率は4.5%と過去5年間における最高水準へと向上している。
狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)、から成る。2019年12月期の前期比増収率を見ると、自社プロダクトが13%増(2018年12月期7%増)、ライセンスビジネスが28%増(同26%増)、物販等が15%増(同17%増)となり、ライセンスビジネスの好調ぶりが際立つ。ライセンスビジネスについては、Windows7のサポート終了(2020年1月14日)を控えた特需的な動きが足元の売上げを押し上げた部分もあるが、一般論としては、office365や各種クラウドサービスといったICTプロダクトのサブスクリプションモデル化(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)の進展により、従来以上に事業の安定性が高まっている可能性があるだろう。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上げは自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。
独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、コミュニケーションロボット「PALRO」等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。コアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きであるが、会社側が「高い水準を求めている」としている先行投資局面後の収益性については注意深く見守りたい。
4. 底入れを模索するアウトソーシング
アウトソーシングは、データセンターやシステム運用・保守等のサービスを提供しており、売上高構成比は6.5%(2019年12月期)、営業利益構成比は7.2%(同)、セグメント利益率は6.4%である。近年の減収傾向は、流通・サービス向け継続案件の減少によるところが大きく、2019年12月期も前期比0.4%減収、同6.2%減益となっている。2019年12月期末の受注残高は前期末比で7.2%増と持ち直しているものの、回復のリード役はシステム運用・保守であり、他社クラウドサービスとの競争が厳しいデータセンター事業については、引き続き底入れ模索局面にあると考える。
5. 高収益のファシリティ事業
保有するオフィスビルの賃貸を収入とするファシリティ事業の売上高構成比は1.3%(2019年12月期)、営業利益構成比は9.1%(同)で、セグメント利益率は41.8%(同)と高い。2019年12月期は0.3%減収ながら7.1%増益を確保し、同社の利益水準を安定的に下支えしている。なお、セグメント利益率は2018年12月期比で2.9ポイント上昇し、過去5年間で最高水準を実現している。
有価証券報告書で確認できるファシリティ事業向け保有不動産は、横浜本社(土地取得年:2000年、土地建物簿価:11,399百万円)、秋葉原オフィス(同:2005年、同32,635百万円)、錦糸町オフィス(同:2000年、同6,065百万円)、門前仲町オフィス(同:2003年、同1,760百万円)の4棟である。
6. その他では富士ソフトサービスビューロが急減速
その他の売上高構成比は5.5%(2019年12月期)、営業利益構成比は2.4%(同)である。2019年12月期は4.3%増収、44.6%減益と前期(13.5%増収/4.8%増益)までの好調ぶりから一転して急減速、セグメント利益率は2.5%と前期比で2.2ポイント低下している。子会社の富士ソフトサービスビューロ<6188>が手掛けるBPOサービス事業やコンタクトセンター事業の好調が近年の増収・増益をけん引してきたわけだが、日本年金機構案件の競争参加資格一時停止(2019年4月8日から2020年1月7日まで)がブレーキ要因となっている。
2002年11月に東京大学医学部附属病院で「骨・軟骨再生医療寄付講座」を開講し、2007年より(独)科学技術振興機構(現在は国立研究開発法人)の委託(2015年4月からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構より委託)を受けて取り組んでいる再生医療事業は、一見飛び地参入に見えるが、医療分野におけるICT利活用の有効性に着目した「挑戦と創造」である。
同社は、東京大学からの技術移転を受けた研究開発により世界初の自己細胞による「インプラント型再生軟骨」の開発に成功し、2015年から鼻の外観と機能改善を目指した口唇口蓋裂患者治療への有効性・安全性を評価する企業治験を進めてきた。そして、2018年9月にインプラント型再生軟骨の成功認定を獲得、2020年の製造販売を目指している。
7. 「AIS-CRM」領域での取り組みを事業戦略に、新製品・新事業の創出に挑戦
前述のとおり、同社は「AIS-CRM」を重点技術分野に揚げ、新製品・新事業のシーズ創出や既存事業の付加価値向上に注力している。一見、流行り言葉の羅列のようだが、「AIS-CRM」戦略の上位概念には同社のコアコンピタンスが据えられており、その取り組み成果は順調に実りつつある。特にクラウド領域が好調であり、「AIS-CRM」領域全体では単体売上高の過半を占めるに至っているとのことである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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