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*17:43JST エラン Research Memo(3):CSセットは「手ぶらで入院・面会・退院」を可能にするサービス
■事業概要
1. CSセットのサービス概要と収益構造
エラン<6099>のCSセットは、病院の入院患者や介護老人保健施設等の入所者が、身の回り品を準備しなくても「手ぶらで入院・面会・退院」できるように、衣類(病衣・トレーナー上下・肌着・靴下など)やタオル類・食事用エプロンなどの洗濯サービス付レンタル、歯ブラシ・ティッシュ・口腔ケア商品や紙オムツなど、入院・入所生活に必要な日常生活用品を提供する入院セットサービスである。
サービス利用料金は地域、施設の種類、商品構成品目等によって異なる複数のプランを用意し、標準プランで日額300円~700円程度と利用しやすい手頃な水準である。また「何」を「どれだけ」使用したかではなく、日額定額制を採用しているため、入院・入所日数で計算しやすくしていること(例:日額500円プランで7日間入院した場合、500円×7日間=3,500円)も特徴である。
なお付加価値の向上や同業他社との差別化に向けた新商品・新サービスとして、入院費用保証付き入院セット「CSセットR」、利用患者に起因する損害事故補償付き入院セット「CSセットLC」、クラシコと共同開発したオリジナル患者衣「リフテ」などの提供も本格化している。
CSセットの収益構造は、病院や介護老人保健施設等を通じて入院患者や入所者とCSセット利用契約(レンタル契約)を結び、入院患者や入所者から受け取るサービス利用料(レンタル料)収入が同社の売上高となる。契約施設数や利用者数の増加に伴ってサービス利用料収入が増加するというストック型収益モデルである。
サービスのオペレーションの一部は、業務委託契約を結んだ病院・介護老人保健施設等及びリネンサプライ業者等が行う。病院・介護老人保健施設等に対しては、業務委託契約を結んでCSセットの説明・申込受付、衣類・タオル類等の貸与・回収、日常生活用品の配布などを委託し、業務委託手数料を支払う。リネンサプライ業者等に対しては、賃貸借契約や物品納入契約等を結び、洗濯済み衣類・タオル類等の納品、使用済み衣類・タオル類等の回収、日常生活品の納入などを委託し、洗濯代金や物品購入代金などを支払う仕組みである。
なお契約形態によって、同社が元請けになる契約形態(同社元請け)と、リネンサプライ業者等が元請けになる契約形態(業者元請け)があるが、いずれの契約形態でも同社、病院・介護老人保健施設等、リネンサプライ業者等の各々の役割は同じである。同社が入院患者や入所者とCSセット利用契約を結び、入院患者や入所者からサービス利用料を受け取る基本的なビジネスモデルに変わりはない。
入院患者の回転が少ない療養型病院でサービス利用率が上昇すれば、売上増加とともに施設当たり業務コスト比率が低下する。入院患者の回転が速い急性期病院では、利用者数の増加が売上の増加につながるが、同時に請求関連業務コストが増加して利益率が低下する。また新規契約施設への導入時には、備品・消耗品等の増加で一時的に利益率が低下する傾向がある。こうした課題に対する収益向上策として、ベストプラクティクスの全社展開、新請求システムの構築、付加価値向上に向けた新商品・サービス開発などの施策を実施し、収益力の強化を推進している。
入院患者と家族、病院、リネンサプライ業者にメリット
2. 「WIN-WIN-WIN」の関係を構築した共存共栄型ビジネスモデル
同社のCSセットは、サービスを利用する入院患者・入所者とその家族の利便性を高めるだけではなく、業務委託契約を結ぶ病院・介護老人保健施設等やリネンサプライ業者等にとっても業務改善等の大きなメリットがあり、同社を中心に「WIN-WIN-WIN」の関係を構築した共存共栄型ビジネスモデルである。
入院患者・入所者とその家族にとっては、入院・入所の際に身の回り品を準備しなくても「手ぶらで入院・面会・退院」できる。短期間の入院・入所の場合には、必要な身の回り品を新たに買いそろえるよりも経済的メリットがあり、衣類・タオル類等の日々の交換・洗濯や日常生活用品の補充といった手間を省くことができるというメリットもある。家族にとっては、日常生活用品の補充を主目的としたお見舞い訪問ではなく、本来のお見舞いや看病に専念することができる。また入院患者・入所者にとっては、家族に日常生活用品を準備・補充させているという気兼ねがなくなるという心理的メリットもある。共働き世帯や単身世帯においては、入院生活時の日常生活用品の準備や補充を頼める家族がいないケースも多いが、このような場合にも役に立つ。
なお同社が2022年に実施した顧客満足度調査によると、「CSセットを80~100%程度、他の方にお勧めできる」と回答した方は83%で、2020年の調査に比べて4ポイント上昇した。「40~60%程度お勧めできる」を含めると98%に達した。また「CSセットで必要を満たすことができた」と回答した方は90%となった。このようにCSセットは高評価を得ている。
病院・介護老人保健施設等においては慢性的な看護師・介護士等の不足状況が続いているが、CSセットを導入することで、入院患者・入所者の日常生活用品まわりの作業(物品の不足等が生じた場合の家族への連絡、個人が持ち込んだ衣類・タオル類の交換・洗濯・消毒にかかる作業など)を省いて、本来の看護・介護業務に専念することが可能になる。このため看護師・介護士等の業務効率化や労働環境改善につながる。また、入院患者・入所者が日常生活用品を持ち込む場合に比べ、使用後交換待ちの衣類・タオル類がベッドまわりに保管されることもなくなり、院内感染対策・衛生管理の徹底にもつながっている。
保険適用外のサービスに関して、病院・介護老人保健施設等が自ら患者・入所者に利用料金を請求する場合、厚生労働省からの行政指導に従った厳格な対応が必要となるが、CSセットは行政指導に適合した形態で提供しているため行政指導のリスクを低減できる。また、同社からの業務委託手数料が保険適用外の収入となるため、新たな保険外収益の増加や収益機会の創出につながるというメリットがある。なお、病院・介護老人保健施設等におけるCSセット導入ニーズとしては、大都市圏では収入・収益機会の増加、中都市圏では看護師・介護士等の労働環境改善、地方都市圏では入院患者・入所者へのサービス向上といった要望が強いようだ。
リネンサプライ業者等は、病院・介護老人保健施設等と契約して、医療保険・介護保険の対象となる寝具類(布団、包布、シーツ、枕、枕カバー)の納入や洗濯業務を受託している。CSセット導入によって、これまでリネンサプライ業者等が扱っていなかった衣類・タオル類の洗濯業務や、日常生活用品の販売といった新たな収益機会を得るメリットがある。同社は自らがリネンサプライ業に参入することを考えておらず、CSセットの提案にあたっては、対象となる病院・介護老人保健施設等と既に契約・取引している各地域のリネンサプライ業者等に洗濯業務を委託することを基本方針としている。リネンサプライ業者にとっての脅威は、自社が寝具類の供給・洗濯などを行っている病院等に他の同業者が関与することであり、同社のこの基本方針によって、リネンサプライ業者等の多くは同社との連携にメリットを感じている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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1. CSセットのサービス概要と収益構造
エラン<6099>のCSセットは、病院の入院患者や介護老人保健施設等の入所者が、身の回り品を準備しなくても「手ぶらで入院・面会・退院」できるように、衣類(病衣・トレーナー上下・肌着・靴下など)やタオル類・食事用エプロンなどの洗濯サービス付レンタル、歯ブラシ・ティッシュ・口腔ケア商品や紙オムツなど、入院・入所生活に必要な日常生活用品を提供する入院セットサービスである。
サービス利用料金は地域、施設の種類、商品構成品目等によって異なる複数のプランを用意し、標準プランで日額300円~700円程度と利用しやすい手頃な水準である。また「何」を「どれだけ」使用したかではなく、日額定額制を採用しているため、入院・入所日数で計算しやすくしていること(例:日額500円プランで7日間入院した場合、500円×7日間=3,500円)も特徴である。
なお付加価値の向上や同業他社との差別化に向けた新商品・新サービスとして、入院費用保証付き入院セット「CSセットR」、利用患者に起因する損害事故補償付き入院セット「CSセットLC」、クラシコと共同開発したオリジナル患者衣「リフテ」などの提供も本格化している。
CSセットの収益構造は、病院や介護老人保健施設等を通じて入院患者や入所者とCSセット利用契約(レンタル契約)を結び、入院患者や入所者から受け取るサービス利用料(レンタル料)収入が同社の売上高となる。契約施設数や利用者数の増加に伴ってサービス利用料収入が増加するというストック型収益モデルである。
サービスのオペレーションの一部は、業務委託契約を結んだ病院・介護老人保健施設等及びリネンサプライ業者等が行う。病院・介護老人保健施設等に対しては、業務委託契約を結んでCSセットの説明・申込受付、衣類・タオル類等の貸与・回収、日常生活用品の配布などを委託し、業務委託手数料を支払う。リネンサプライ業者等に対しては、賃貸借契約や物品納入契約等を結び、洗濯済み衣類・タオル類等の納品、使用済み衣類・タオル類等の回収、日常生活品の納入などを委託し、洗濯代金や物品購入代金などを支払う仕組みである。
なお契約形態によって、同社が元請けになる契約形態(同社元請け)と、リネンサプライ業者等が元請けになる契約形態(業者元請け)があるが、いずれの契約形態でも同社、病院・介護老人保健施設等、リネンサプライ業者等の各々の役割は同じである。同社が入院患者や入所者とCSセット利用契約を結び、入院患者や入所者からサービス利用料を受け取る基本的なビジネスモデルに変わりはない。
入院患者の回転が少ない療養型病院でサービス利用率が上昇すれば、売上増加とともに施設当たり業務コスト比率が低下する。入院患者の回転が速い急性期病院では、利用者数の増加が売上の増加につながるが、同時に請求関連業務コストが増加して利益率が低下する。また新規契約施設への導入時には、備品・消耗品等の増加で一時的に利益率が低下する傾向がある。こうした課題に対する収益向上策として、ベストプラクティクスの全社展開、新請求システムの構築、付加価値向上に向けた新商品・サービス開発などの施策を実施し、収益力の強化を推進している。
入院患者と家族、病院、リネンサプライ業者にメリット
2. 「WIN-WIN-WIN」の関係を構築した共存共栄型ビジネスモデル
同社のCSセットは、サービスを利用する入院患者・入所者とその家族の利便性を高めるだけではなく、業務委託契約を結ぶ病院・介護老人保健施設等やリネンサプライ業者等にとっても業務改善等の大きなメリットがあり、同社を中心に「WIN-WIN-WIN」の関係を構築した共存共栄型ビジネスモデルである。
入院患者・入所者とその家族にとっては、入院・入所の際に身の回り品を準備しなくても「手ぶらで入院・面会・退院」できる。短期間の入院・入所の場合には、必要な身の回り品を新たに買いそろえるよりも経済的メリットがあり、衣類・タオル類等の日々の交換・洗濯や日常生活用品の補充といった手間を省くことができるというメリットもある。家族にとっては、日常生活用品の補充を主目的としたお見舞い訪問ではなく、本来のお見舞いや看病に専念することができる。また入院患者・入所者にとっては、家族に日常生活用品を準備・補充させているという気兼ねがなくなるという心理的メリットもある。共働き世帯や単身世帯においては、入院生活時の日常生活用品の準備や補充を頼める家族がいないケースも多いが、このような場合にも役に立つ。
なお同社が2022年に実施した顧客満足度調査によると、「CSセットを80~100%程度、他の方にお勧めできる」と回答した方は83%で、2020年の調査に比べて4ポイント上昇した。「40~60%程度お勧めできる」を含めると98%に達した。また「CSセットで必要を満たすことができた」と回答した方は90%となった。このようにCSセットは高評価を得ている。
病院・介護老人保健施設等においては慢性的な看護師・介護士等の不足状況が続いているが、CSセットを導入することで、入院患者・入所者の日常生活用品まわりの作業(物品の不足等が生じた場合の家族への連絡、個人が持ち込んだ衣類・タオル類の交換・洗濯・消毒にかかる作業など)を省いて、本来の看護・介護業務に専念することが可能になる。このため看護師・介護士等の業務効率化や労働環境改善につながる。また、入院患者・入所者が日常生活用品を持ち込む場合に比べ、使用後交換待ちの衣類・タオル類がベッドまわりに保管されることもなくなり、院内感染対策・衛生管理の徹底にもつながっている。
保険適用外のサービスに関して、病院・介護老人保健施設等が自ら患者・入所者に利用料金を請求する場合、厚生労働省からの行政指導に従った厳格な対応が必要となるが、CSセットは行政指導に適合した形態で提供しているため行政指導のリスクを低減できる。また、同社からの業務委託手数料が保険適用外の収入となるため、新たな保険外収益の増加や収益機会の創出につながるというメリットがある。なお、病院・介護老人保健施設等におけるCSセット導入ニーズとしては、大都市圏では収入・収益機会の増加、中都市圏では看護師・介護士等の労働環境改善、地方都市圏では入院患者・入所者へのサービス向上といった要望が強いようだ。
リネンサプライ業者等は、病院・介護老人保健施設等と契約して、医療保険・介護保険の対象となる寝具類(布団、包布、シーツ、枕、枕カバー)の納入や洗濯業務を受託している。CSセット導入によって、これまでリネンサプライ業者等が扱っていなかった衣類・タオル類の洗濯業務や、日常生活用品の販売といった新たな収益機会を得るメリットがある。同社は自らがリネンサプライ業に参入することを考えておらず、CSセットの提案にあたっては、対象となる病院・介護老人保健施設等と既に契約・取引している各地域のリネンサプライ業者等に洗濯業務を委託することを基本方針としている。リネンサプライ業者にとっての脅威は、自社が寝具類の供給・洗濯などを行っている病院等に他の同業者が関与することであり、同社のこの基本方針によって、リネンサプライ業者等の多くは同社との連携にメリットを感じている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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