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―データ利用拡大とプライバシー保護両立で市場拡大の兆し―
新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークなどが急速に拡大したことや、特別定額給付金申請時に行政のデジタル化の遅れが浮き彫りになったことなどを受けて、日本でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速するとの見方が強まっている。
その一方、DXで先行する民間企業では、デジタルデータを取り扱う際に個人情報を守る技術である「プライバシーテック」に注目が集まり始めている。今後、DXの更なる加速が見込まれるなか、個人情報の取り扱いへの関心もこれまで以上に高まるとみられ、関連企業のビジネスチャンスは広がりそうだ。
●「プライバシーテック」とは
「プライバシーテック」とは、個人情報の保護と企業による個人情報の適切な活用をサポートする技術の総称をいう。データがあらゆる経済活動に欠かせないようになった現代では、企業にはより多くのデータを集め、それを分析する力が求められるが、それには個人情報保護の視点が不可欠だ。
海外では、個人データ保護を規制する法として、2018年5月にGDPR(EU一般データ保護規則)が、20年1月にCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行され、個人情報に関わるあらゆるデータに保護規則を設けている。また、これらに追随する形で世界の国・地域でプライバシー保護の動きが加速している。
●個人情報保護法改正でCookie利用に規制
海外の動きに後れを取っていた日本でも、昨年8月に発覚した就活サイト「リクナビ」による内定辞退率を本人に無断で販売した問題などを機に、20年6月に個人情報保護法を改正した。例えば従来の法律では、Cookie(クッキー)と呼ばれる閲覧情報は、単体だと「個人情報」にあたらなかったため、多くの企業が比較的自由に広告などの分析に活用していた。しかし改正後は、企業が他社からCookieを集めて自社の個人情報と紐付けし、個人の属性を推定できるデータに加工する場合には、利用者本人の明示的な同意を得ることが必要になっている。
閲覧情報は、過去の履歴などを元に自分好みの商品・サービスなどを紹介してくれるレコメンド(自動推奨)など便利な機能に用いられる一方、解析することでセンシティブな情報を企業側が取得することができ、プライバシーの侵害につながりかねない。こうしたことから、デジタルデータを活用する際は個人情報の取り扱いに配慮する必要がこれまで以上に生じており、「プライバシーテック」関連市場も拡大が見込まれている。
●CMP関連企業は商機拡大へ
プライバシーテック関連銘柄はまだ数が少ないものの、デジタルデータの活用を図るためには個人情報保護との両立が欠かせないことから関心を持つ企業も増えている。
ベクトル <6058> は今年3月、インティメート・マージャー <7072> [東証M]と合弁で、プライバシーテックを手掛ける新会社「Priv Tech(プライブテック)」を設立した。ソリューションの第1弾として、個人データなどの利用同意管理プラットフォーム(CMP)「Trust360」の提供を行っている。
CMPとは、閲覧履歴を記録したCookieなどの個人情報を企業に提供してもよいかどうかを確認するソフト。「Trust360」を導入した企業サイトにアクセスすると、閲覧者の閲覧履歴などのデータを収集してよいか同意を求めるバナーが表示され、閲覧者はデータの活用目的を確認したうえで、同意するか否かを選択できる。初年度で260社の導入を目指しているようだ。
また、大手広告代理店はこれよりも早くCMPに取り組んでおり、博報堂DYホールディングス <2433> 傘下のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)は19年4月に米ソース・ポイント社と提携し、CMPを提供。電通グループ <4324> のグループ企業であるマイデータ・インテリジェンスも今年3月、トレジャーデータ(東京都千代田区)などと組んでCMPを提供している。
●Cookieを使用しない技術も注目
また、Cookieを使用しない技術にも注目が集まっている。
ログリー <6579> [東証M]は19年5月、Cookieを使用せずにユーザーの属性を推定する技術を確立し、特許を取得したと発表。10月には、同技術を用いた広告配信最適化エンジン「SYNAPSE D-engine」を開発し、ネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」に搭載した。今年8月12日に発表した第1四半期(4-6月)決算では、「LOGLY liftが当初の想定よりも早い段階で拡大期に入った」ことを明らかにしており、今後の業績牽引役となることが期待されている。
CARTA HOLDINGS <3688> のグループ会社サイバー・コミュニケーションズは、ポストCookie時代に対応した新たなマーケティングサービス「ゼロパーティデータ構築サービス」を開始した。顧客が企業に対して対価と引き換えに意識的に提供するデータであるゼロパーティデータの構築・活用を支援するもので、これにより、ゼロパーティデータをさまざまなマーケティング施策に活用しやすくなるという。
一方、イルグルム <3690> [東証M]は、マーケティング効果測定プラットフォーム「アドエビス」で19年10月にサードパーティCookieを使わない新しい計測方法「CNAMEトラッキング」をリリースした。同サービスは、訪問したサイトによって設定され、プライバシーに配慮したファーストパーティCookieと呼ばれるCookieのみを利用。行き過ぎた趣味趣向の分析やターゲティング広告などへのCookie利用を抑止しながらも、高精度な計測を継続できることから、広告主や広告代理店からの導入が急増している。
株探ニュース
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