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ZETAのニュース
■業績動向
1. 2022年6月期の業績
サイジニア<6031>の2022年6月期の業績は、売上高2,595百万円(前期比86.3%増)、営業利益363百万円(前年同期は44百万円の損失)、経常利益354百万円(同43百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失1,146百万円(同55百万円)となった。これまで長年営業損失を続けてきたが、ZETAの経営統合により営業損益の大幅な黒字転換を果たし、2021年11月に公表した利益計画(270百万円)も34.4%上回り、また2022年2月に公表した修正利益計画(350百万円)も上回るなど業績好調で、いよいよ利益成長に弾みがついてきたと見られる。
日本経済は、2022年1月下旬に発令された新型コロナウイルス感染症(以下コロナ禍)対策の「まん延防止等重点措置」が3月下旬に全面解除され、各種政策の効果などもあって景気の持ち直しが期待されていた。しかし、世界的な原油価格の高騰、ロシア・ウクライナ情勢、サプライチェーンの停滞などによる資源価格の上昇、世界経済の停滞などにより、先行きは依然として不透明な状況が続いている。国内におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の加速や、巣ごもり・在宅需要の定着によるEC需要の拡大などを背景に、2021年のインターネット広告費が2兆7,052億円(前年比21.4%増)と成長を続け、マスコミ四媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の総広告費を初めて上回る(出典:株式会社電通「2021年日本の広告費」2022年2月24日)など好調な環境が続いている。
こうした環境のなか、同社のネット広告サービスは、コロナ関連商材の需要や首都圏不動産需要の高まりを受け、広告配信案件が大きく増加した。CX改善サービスでは、小売業界などで自社ECの高度化ニーズが強まっており、経営統合したZETAではライセンス契約数が順調に伸びている。OMO推進サービスは、コロナ禍の影響で厳しい環境だったが、既存大手顧客との取引は継続、大手小売店舗との新規取引も開始となった。この結果、各サービスとも売上高は前年を上回る伸びを見せた。なお、同社とデクワスはフロー型ビジネスのため、広告需要に左右される傾向があるが、インターネット広告市場の拡大に伴い、営業利益は両社ともに2021年6月期第3半期以降継続して黒字かつ拡大基調にあり、利益体質に転換してきたということができる。これにストック型ビジネスであるZETAの、季節性はあるが安定した収益が加わったことで、連結営業利益は前期と比べ大幅に増加することとなった。
会計処理に現れる成長への自信
2. ZETA経営統合に伴うのれんの発生について
2022年6月期第2四半期にZETAを経営統合したことに伴い、1,443百万円という同社にとって比較的大きな特別損失が発生した。これは、非上場会社であるZETAとの経営統合に伴って発生したのれんの一部である。のれんとは買収額が被買収企業の純資産を上回る「魅力」のことで、株式交換契約(の設定株価)が株価の上昇を引き起こしたとすれば「魅力」が増したということになり、一般的には経営統合に対する株式市場の期待度を表しているとの見方ができよう。ZETA株1株に付き同社株125株を交換比率に株式交換契約が成立し、契約成立時2021年3月31日の同社株価終値は537円(遡及修正済み)だったが、7月8日ザラ場高値1,670円(同)、企業結合日の8月31日終値には1,120円(同)となった。
一方、こうした期待と同時に、のれんの発生によって、一時的な特別損失を含め中期的に損益計算書上で償却負担が増すことも事実である。しかも、ディールが魅力的であるほど、のれんの額が大きくなって償却負担は増すことになる。同社の場合、純資産389百万円のZETAののれんが最終的に2,248百万円と算定された。こののれんはPPA(Purchase Price Allocation:取得原価の配分)を通じて、のれん1,448百万円と顧客関連資産※800百万円に分けられ、顧客関連資産と一部のれんは償却期間内に回収可能と合理的に判断されるため10年償却としたが、のれんの大半となる1,443百万円は一時減損として特別損失に計上されることになった。こうした会計処理は、経営統合を機に利益成長することで、確定処理時ののれんを上回る利益を獲得できるという同社の強い自信があってのことだと思われる。本来はこうした意思をなるべく早く市場に明確に示す必要があるのだが、弊社では、同社が経営統合の進捗を見つつ、遠からず中期経営計画を策定して成長への意思を示すことになると見ている。
※顧客関連資産:企業会計上、PPAというプロセスを通じて、企業結合日時点での被取得企業の識別可能な資産をのれんと区分して無形資産に計上する必要がある。顧客関連資産はその1つで、顧客リストや顧客との契約、顧客との関係などが含まれる。
当期純利益は久々の黒字化、営業利益は増益継続へ
3. 2023年6月期業績見通し
同社は2023年6月期業績見通しに関して、売上高2,800百万円(前期比7.9%増)、営業利益370百万円(同1.9%増)、経常利益360百万円(同1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益250百万円(前期は1,146百万円の損失)と増収増益、親会社株主に帰属する当期純利益については久々の黒字化を見込んでいる。なお、2022年6月期はZETAの連結が第2四半期からというタイミングだったため、先行費用期で例年営業損失を計上するZETAの第1四半期業績が連結されておらず、財務会計上の連結営業利益が実態より大きく見えるようになったことで、翌期2023年6月期の成長が鈍化したように見える。しかし、2022年6月期にZETA業績をフル連結し、同一の条件で比較した営業利益は31.2%増という高成長予想となる。もちろん、31.2%増という高成長予想のほうが実態を表しているといえる。
同社の各サービスは、インターネット広告市場の拡大や顧客の自社ECに対する高度化ニーズなどから、それぞれ引き続き高い伸びが予想される。なかでもCX改善サービスは、強みを背景にライセンス契約社数と1社あたりのライセンス契約数がダブルで伸びており、全体収益をけん引することが見込まれる。OMO推進サービスは、小売業界で必要とされるECと実店舗をつなぐサービスのため、行動制限が解除された今、まさに今後の拡大が期待される。ネット広告サービスも市場の伸びから高い成長を期待できるが、景気や制度改正に左右されがちな側面があるため、同社は保守的に想定している模様である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2022年6月期の業績
サイジニア<6031>の2022年6月期の業績は、売上高2,595百万円(前期比86.3%増)、営業利益363百万円(前年同期は44百万円の損失)、経常利益354百万円(同43百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失1,146百万円(同55百万円)となった。これまで長年営業損失を続けてきたが、ZETAの経営統合により営業損益の大幅な黒字転換を果たし、2021年11月に公表した利益計画(270百万円)も34.4%上回り、また2022年2月に公表した修正利益計画(350百万円)も上回るなど業績好調で、いよいよ利益成長に弾みがついてきたと見られる。
日本経済は、2022年1月下旬に発令された新型コロナウイルス感染症(以下コロナ禍)対策の「まん延防止等重点措置」が3月下旬に全面解除され、各種政策の効果などもあって景気の持ち直しが期待されていた。しかし、世界的な原油価格の高騰、ロシア・ウクライナ情勢、サプライチェーンの停滞などによる資源価格の上昇、世界経済の停滞などにより、先行きは依然として不透明な状況が続いている。国内におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の加速や、巣ごもり・在宅需要の定着によるEC需要の拡大などを背景に、2021年のインターネット広告費が2兆7,052億円(前年比21.4%増)と成長を続け、マスコミ四媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の総広告費を初めて上回る(出典:株式会社電通「2021年日本の広告費」2022年2月24日)など好調な環境が続いている。
こうした環境のなか、同社のネット広告サービスは、コロナ関連商材の需要や首都圏不動産需要の高まりを受け、広告配信案件が大きく増加した。CX改善サービスでは、小売業界などで自社ECの高度化ニーズが強まっており、経営統合したZETAではライセンス契約数が順調に伸びている。OMO推進サービスは、コロナ禍の影響で厳しい環境だったが、既存大手顧客との取引は継続、大手小売店舗との新規取引も開始となった。この結果、各サービスとも売上高は前年を上回る伸びを見せた。なお、同社とデクワスはフロー型ビジネスのため、広告需要に左右される傾向があるが、インターネット広告市場の拡大に伴い、営業利益は両社ともに2021年6月期第3半期以降継続して黒字かつ拡大基調にあり、利益体質に転換してきたということができる。これにストック型ビジネスであるZETAの、季節性はあるが安定した収益が加わったことで、連結営業利益は前期と比べ大幅に増加することとなった。
会計処理に現れる成長への自信
2. ZETA経営統合に伴うのれんの発生について
2022年6月期第2四半期にZETAを経営統合したことに伴い、1,443百万円という同社にとって比較的大きな特別損失が発生した。これは、非上場会社であるZETAとの経営統合に伴って発生したのれんの一部である。のれんとは買収額が被買収企業の純資産を上回る「魅力」のことで、株式交換契約(の設定株価)が株価の上昇を引き起こしたとすれば「魅力」が増したということになり、一般的には経営統合に対する株式市場の期待度を表しているとの見方ができよう。ZETA株1株に付き同社株125株を交換比率に株式交換契約が成立し、契約成立時2021年3月31日の同社株価終値は537円(遡及修正済み)だったが、7月8日ザラ場高値1,670円(同)、企業結合日の8月31日終値には1,120円(同)となった。
一方、こうした期待と同時に、のれんの発生によって、一時的な特別損失を含め中期的に損益計算書上で償却負担が増すことも事実である。しかも、ディールが魅力的であるほど、のれんの額が大きくなって償却負担は増すことになる。同社の場合、純資産389百万円のZETAののれんが最終的に2,248百万円と算定された。こののれんはPPA(Purchase Price Allocation:取得原価の配分)を通じて、のれん1,448百万円と顧客関連資産※800百万円に分けられ、顧客関連資産と一部のれんは償却期間内に回収可能と合理的に判断されるため10年償却としたが、のれんの大半となる1,443百万円は一時減損として特別損失に計上されることになった。こうした会計処理は、経営統合を機に利益成長することで、確定処理時ののれんを上回る利益を獲得できるという同社の強い自信があってのことだと思われる。本来はこうした意思をなるべく早く市場に明確に示す必要があるのだが、弊社では、同社が経営統合の進捗を見つつ、遠からず中期経営計画を策定して成長への意思を示すことになると見ている。
※顧客関連資産:企業会計上、PPAというプロセスを通じて、企業結合日時点での被取得企業の識別可能な資産をのれんと区分して無形資産に計上する必要がある。顧客関連資産はその1つで、顧客リストや顧客との契約、顧客との関係などが含まれる。
当期純利益は久々の黒字化、営業利益は増益継続へ
3. 2023年6月期業績見通し
同社は2023年6月期業績見通しに関して、売上高2,800百万円(前期比7.9%増)、営業利益370百万円(同1.9%増)、経常利益360百万円(同1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益250百万円(前期は1,146百万円の損失)と増収増益、親会社株主に帰属する当期純利益については久々の黒字化を見込んでいる。なお、2022年6月期はZETAの連結が第2四半期からというタイミングだったため、先行費用期で例年営業損失を計上するZETAの第1四半期業績が連結されておらず、財務会計上の連結営業利益が実態より大きく見えるようになったことで、翌期2023年6月期の成長が鈍化したように見える。しかし、2022年6月期にZETA業績をフル連結し、同一の条件で比較した営業利益は31.2%増という高成長予想となる。もちろん、31.2%増という高成長予想のほうが実態を表しているといえる。
同社の各サービスは、インターネット広告市場の拡大や顧客の自社ECに対する高度化ニーズなどから、それぞれ引き続き高い伸びが予想される。なかでもCX改善サービスは、強みを背景にライセンス契約社数と1社あたりのライセンス契約数がダブルで伸びており、全体収益をけん引することが見込まれる。OMO推進サービスは、小売業界で必要とされるECと実店舗をつなぐサービスのため、行動制限が解除された今、まさに今後の拡大が期待される。ネット広告サービスも市場の伸びから高い成長を期待できるが、景気や制度改正に左右されがちな側面があるため、同社は保守的に想定している模様である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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