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住友金属鉱山のニュース
*13:48JST 戸田工業 Research Memo(8):中期経営計画「Vision2026」を策定(2)
■戸田工業<4100>の中長期の成長戦略
(3) LIB用材料
同事業の主体は連結対象として正極材料の前駆体を扱うカナダの戸田アドバンストマテリアルズが連結売上の対象であるが、主力は持分対象のBTBMである。このため、今回の「Vision2026」において具体的な売上高、利益率目標の提示がなされなかったが、ビジネスパートナーであるBASFとグローバルな需要拡大に対応して事業拡大を図る。現状、BTBMの提供する主な正極材料はハイニッケル系であり、高級車は航続距離などの点でニッケルコバルトアルミン酸リチウム(Hi-Nickel NCA)の採用が継続すると見られる。PPESへNCM系正極材料の納入を開始しており、またハイニッケル系正極材料の年間生産能力をバッテリーセル容量として45GWh分である6万トンに引き上げ、2024年後半に生産を開始する計画である。BTBMは従来NCA(円筒型電池)正極向けが多かったが(国内トップは住友金属鉱山<5713>、2位がBTBM)、PPESへ納入するのはNCM(角/ラミネート型)正極向けであり、国内では日亜化学工業(株)が供給しているが、今後のトヨタ自動車の国内EV戦略とともに拡大が期待される。なお戸田アドバンストマテリアルズは納入先の正極材料メーカーがEV車向けに供給しているが、足元はモデル末期のため苦戦が続き、2025年3月期は収益の低迷が続く見通しにある。挽回策として次世代モデルへの対応も進めているが、その成果が出始めるのは2026年3月期以降となる見通しである。一方、トヨタ自動車が米国において電池工場に総額139億ドルを投資する計画を発表し、2030年には年間生産量が30GWh以上に達する見通しであることから同社も新規ユーザーとして参画できる可能性もあり、その成果が待たれる。ただし、世界的にEVに対して見直す機運もあり、実際、パナソニックホールディングスが国内工場の稼働率低下などを理由に2024年6月にEV向け電池事業について2031年3月期までに3兆円超を目指す計画を一部修正、時期未定とする動きなどもある。このため、車載用LIB関連事業は長期的には成長が期待できるものの、しばらくは収益が停滞する状況もあり得る。
同社はこれまでLIB用材料として車載用、とりわけハイパワーEV向けのビジネスを展開し、この方向性に変化はない。しかしリチウム資源の調達とコスト問題の懸念から、主に定置用電源に利用される安価で資源制約のないナトリウムイオン電池の開発も行っている。具体的には2024年3月25日に鳥取大学と同社が酸化鉄(ナトリウムフェライト)を正極、負極に用いた革新的なナトリウムイオン電池(SIB)を共同開発したことを発表した。同社が燃焼排ガスCO2の回収材として独自開発した酸化鉄の一種であるナトリウムフェライト(NaFeO2)が、SIB負極として優れた特性を得られることを発見した。酸化鉄は無害で資源的に豊富な素材として広く利用されている。SIBは、資源が偏在することで供給不足と価格高騰のリスクが存在するLiとは対照的に、ほぼ無尽蔵で安く入手できるNaを用いるため資源と価格の面で有利な次世代蓄電池と言われている。従来、α型のナトリウムフェライト(α-NaFeO2)が正極として機能することは報告されていたが、同社が独自開発した酸化鉄であるα-NaFeO2を負極に適用し優れた充放電性能が得られることを世界で初めて発見した。また、同質多形であるβ型のナトリウムフェライト(β-NaFeO2)も同様に負極に適用でき、さらに負極と正極の両方に同種の酸化鉄を用いて可逆的に充放電させることに世界で初めて成功した。現在SIBは大型の定置用電源の安価な蓄電池として期待され、海外では、EV用電源としても中国CATLが実用化を進めており、一層注目が集まっている。ただしその負極には、LiBの場合と同様に炭素系材料が使用され、高エネルギー密度化にはNaをより吸蔵できる新負極材料が求められている。以前Fe2O3が非常に大きいNa吸蔵−放出量(理論容量:1,007mAhg-1)を有し候補になったが、Fe2O3が凝集して電極の耐久性が低くなる充放電劣化の課題を抱えていた。今回、同社はアンチモン(Sb)との複合化により、電極の集電性が向上し、Fe2O3粒子の凝集が抑制されることでサイクル寿命を改善できることを確かめた。さらにレアメタルの一種であるSbを使わずに酸化鉄単独での課題の解決を目指し、NaFeO2をSIB負極として適用し充放電が可能であることを新たに発見、加えてFe2O3のみを負極に用いた場合の課題であった短い充放電サイクル寿命を酸化鉄単独で克服できることを明らかにした。また同じ材料で負極と正極とで異なるNa吸蔵−放出機構で充放電動作を行い、NaFeO2負極とNaFeO2正極からなるフルセルを可逆的に充放電させることに世界で初めて成功、負極をβ型NaFeO2に替えても同様の充放電特性が得られることを確かめた。Fe2O3をはじめとする酸化鉄系材料は、SIBだけでなくLiBでも研究されてきた負極材料であり、NaFeO2という酸化鉄を使用することで、他の金属との複合化を行うことなくその高容量を効果的に引き出せることは大きな意味がある。
(4) 軟磁性材料
軟磁性事業については完全子会社化したTICが2025年3月期より連結されるため、2025年3月期には電子材料事業において磁石事業に次ぐ売上規模になるとともに、2027年3月期には売上高70億円、営業利益率3%を目指す。さらに2031年3月期にはありたい姿として売上高100億円超、営業利益率7%を目指す。
現状、TICについて2023年12月期は営業減益となっているが、車載用インダクター中心に開発を行い、売上拡大とシナジー効果で売上拡大と収益性向上を目指す。具体的にはインダクター向けの軟磁性フェライト粉に加え、パワーインダクター向け軟磁性メタル粉などインダクター需要増に対応する。さらに素材技術と複合化技術の融合により、インダクター向け軟磁性コンパウンドのワンストップの提供を目指す。また自動車の電動化に対し電子部品搭載製品の増加による電磁波ノイズ問題が大きな課題となっており、ノイズ対策材料やEV用非接触給電向け厚膜大判フレキシブルフェライトプレート、ノイズ抑制用フレキシブルフェライトシートやテープなどの成形品販売も強化する。その他、ソフトフェライト粉末をエポキシ樹脂に混合させ優れた透磁率を有するエポキシ系磁性接着剤、高性能インダクターなど電子部品の実現を可能とする高い球形度と均一な粒度分布を兼ね備えたサブミクロンサイズのFe基軟磁性メタル粉末など、今後、大きく売上の拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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(3) LIB用材料
同事業の主体は連結対象として正極材料の前駆体を扱うカナダの戸田アドバンストマテリアルズが連結売上の対象であるが、主力は持分対象のBTBMである。このため、今回の「Vision2026」において具体的な売上高、利益率目標の提示がなされなかったが、ビジネスパートナーであるBASFとグローバルな需要拡大に対応して事業拡大を図る。現状、BTBMの提供する主な正極材料はハイニッケル系であり、高級車は航続距離などの点でニッケルコバルトアルミン酸リチウム(Hi-Nickel NCA)の採用が継続すると見られる。PPESへNCM系正極材料の納入を開始しており、またハイニッケル系正極材料の年間生産能力をバッテリーセル容量として45GWh分である6万トンに引き上げ、2024年後半に生産を開始する計画である。BTBMは従来NCA(円筒型電池)正極向けが多かったが(国内トップは住友金属鉱山<5713>、2位がBTBM)、PPESへ納入するのはNCM(角/ラミネート型)正極向けであり、国内では日亜化学工業(株)が供給しているが、今後のトヨタ自動車の国内EV戦略とともに拡大が期待される。なお戸田アドバンストマテリアルズは納入先の正極材料メーカーがEV車向けに供給しているが、足元はモデル末期のため苦戦が続き、2025年3月期は収益の低迷が続く見通しにある。挽回策として次世代モデルへの対応も進めているが、その成果が出始めるのは2026年3月期以降となる見通しである。一方、トヨタ自動車が米国において電池工場に総額139億ドルを投資する計画を発表し、2030年には年間生産量が30GWh以上に達する見通しであることから同社も新規ユーザーとして参画できる可能性もあり、その成果が待たれる。ただし、世界的にEVに対して見直す機運もあり、実際、パナソニックホールディングスが国内工場の稼働率低下などを理由に2024年6月にEV向け電池事業について2031年3月期までに3兆円超を目指す計画を一部修正、時期未定とする動きなどもある。このため、車載用LIB関連事業は長期的には成長が期待できるものの、しばらくは収益が停滞する状況もあり得る。
同社はこれまでLIB用材料として車載用、とりわけハイパワーEV向けのビジネスを展開し、この方向性に変化はない。しかしリチウム資源の調達とコスト問題の懸念から、主に定置用電源に利用される安価で資源制約のないナトリウムイオン電池の開発も行っている。具体的には2024年3月25日に鳥取大学と同社が酸化鉄(ナトリウムフェライト)を正極、負極に用いた革新的なナトリウムイオン電池(SIB)を共同開発したことを発表した。同社が燃焼排ガスCO2の回収材として独自開発した酸化鉄の一種であるナトリウムフェライト(NaFeO2)が、SIB負極として優れた特性を得られることを発見した。酸化鉄は無害で資源的に豊富な素材として広く利用されている。SIBは、資源が偏在することで供給不足と価格高騰のリスクが存在するLiとは対照的に、ほぼ無尽蔵で安く入手できるNaを用いるため資源と価格の面で有利な次世代蓄電池と言われている。従来、α型のナトリウムフェライト(α-NaFeO2)が正極として機能することは報告されていたが、同社が独自開発した酸化鉄であるα-NaFeO2を負極に適用し優れた充放電性能が得られることを世界で初めて発見した。また、同質多形であるβ型のナトリウムフェライト(β-NaFeO2)も同様に負極に適用でき、さらに負極と正極の両方に同種の酸化鉄を用いて可逆的に充放電させることに世界で初めて成功した。現在SIBは大型の定置用電源の安価な蓄電池として期待され、海外では、EV用電源としても中国CATLが実用化を進めており、一層注目が集まっている。ただしその負極には、LiBの場合と同様に炭素系材料が使用され、高エネルギー密度化にはNaをより吸蔵できる新負極材料が求められている。以前Fe2O3が非常に大きいNa吸蔵−放出量(理論容量:1,007mAhg-1)を有し候補になったが、Fe2O3が凝集して電極の耐久性が低くなる充放電劣化の課題を抱えていた。今回、同社はアンチモン(Sb)との複合化により、電極の集電性が向上し、Fe2O3粒子の凝集が抑制されることでサイクル寿命を改善できることを確かめた。さらにレアメタルの一種であるSbを使わずに酸化鉄単独での課題の解決を目指し、NaFeO2をSIB負極として適用し充放電が可能であることを新たに発見、加えてFe2O3のみを負極に用いた場合の課題であった短い充放電サイクル寿命を酸化鉄単独で克服できることを明らかにした。また同じ材料で負極と正極とで異なるNa吸蔵−放出機構で充放電動作を行い、NaFeO2負極とNaFeO2正極からなるフルセルを可逆的に充放電させることに世界で初めて成功、負極をβ型NaFeO2に替えても同様の充放電特性が得られることを確かめた。Fe2O3をはじめとする酸化鉄系材料は、SIBだけでなくLiBでも研究されてきた負極材料であり、NaFeO2という酸化鉄を使用することで、他の金属との複合化を行うことなくその高容量を効果的に引き出せることは大きな意味がある。
(4) 軟磁性材料
軟磁性事業については完全子会社化したTICが2025年3月期より連結されるため、2025年3月期には電子材料事業において磁石事業に次ぐ売上規模になるとともに、2027年3月期には売上高70億円、営業利益率3%を目指す。さらに2031年3月期にはありたい姿として売上高100億円超、営業利益率7%を目指す。
現状、TICについて2023年12月期は営業減益となっているが、車載用インダクター中心に開発を行い、売上拡大とシナジー効果で売上拡大と収益性向上を目指す。具体的にはインダクター向けの軟磁性フェライト粉に加え、パワーインダクター向け軟磁性メタル粉などインダクター需要増に対応する。さらに素材技術と複合化技術の融合により、インダクター向け軟磁性コンパウンドのワンストップの提供を目指す。また自動車の電動化に対し電子部品搭載製品の増加による電磁波ノイズ問題が大きな課題となっており、ノイズ対策材料やEV用非接触給電向け厚膜大判フレキシブルフェライトプレート、ノイズ抑制用フレキシブルフェライトシートやテープなどの成形品販売も強化する。その他、ソフトフェライト粉末をエポキシ樹脂に混合させ優れた透磁率を有するエポキシ系磁性接着剤、高性能インダクターなど電子部品の実現を可能とする高い球形度と均一な粒度分布を兼ね備えたサブミクロンサイズのFe基軟磁性メタル粉末など、今後、大きく売上の拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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