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品川リフラクトリーズのニュース
■品川リフラクトリーズ<5351>の中長期の成長戦略
1. 第5次中期経営計画の重点施策
2022年3月期から2024年3月期までの3ヶ年をカバーする第5次中期経営計画が進行中だ。第4次中期期間では、「商品競争力の徹底強化」及び「成長・未開拓分野の捕捉」を推し進めた。現中期経営計画では、1)国内における拡販と競争力強化、2)海外ビジネスの強化・拡大、3)耐火物・断熱材以外の新規ビジネスの探索、4)設備投資の拡大の4つを重点施策とする。日本経済は潜在成長力が低く、鉄鋼製品の需要が漸減して国内粗鋼生産が年9,000万トン程度に止まることを前提とした。一方、世界では人口が増加しており、鉄鋼需要が拡大することが予想される。3年間の設備投資額は140億円と前中期経営計画の110億円を上回る。これまで生産基盤を強化することで競争力を高めてきたが、今後も積極的な設備投資により国内市場でのシェア拡大を図る。第5次では、グループ各社が新製品を開発するだけでなく、グループ企業の強みを組み合わせて、環境配慮型経営に取り組む顧客のニーズに適した提案をすることで事業機会を創出する。
2022年に入ってからの新たなグループ展開を3つ記述する。
(1)イソライト工業の完全子会社化
2022年3月末にイソライト工業を完全子会社化した。カーボンニュートラル実現等の顧客ニーズ多様化に対応し、両社の技術を融合しカーボンニュートラルの総合ソリューション企業を目指す。同社の不定形耐火物の汎用キャスタブルは曲げ強度が強く、イソライト工業のセラミックファイバーは断熱性能に優れている。これらを複合することで、従来品より断熱性、耐熱性、耐食性、強度に優れた新しい高付加価値の複合材料を開発し、多用途へ展開する。耐火物の使用ユーザーにとって現場における高温管理は重要であり、断熱性能に優れ、熱ロスを防ぎ、省エネに寄与する製品へのニーズは強い。
海外市場においては、顧客基盤の共有や相互の製品の一体販売を拡大、及び両社の拠点における地域補完をする。イソライト工業が販売拠点を有していないオーストラリア及びインドネシアでは、同社の現地子会社製品とのセット販売。また、米国での販売提携先の販売網を活用し、イソライト工業の生体溶解性製品を主とした断熱材の販売活動を開始する。
出資率を55.3%から100%に上げたことによる連結業績へのインパクトは、売上高と経常利益の段階ではないが、親会社株主に帰属する当期純利益で10億円ほどの増加要因となることが見込まれる。
(2) 韓国に販売子会社を新設
2022年4月に、韓国の慶尚北道浦項市に100%所有の販売子会社Shinagawa Refractories Korea Corporation (SRK)を新設した。営業対象は韓国国内の鉄鋼・重工メーカー等になる。新子会社の所在地は、世界6位で韓国最大の鉄鋼メーカーであるPOSCOや現代製鐵、東国製鋼等の製鉄所に近接する。2社購買の推進など顧客の購買姿勢に変化が見られたため、顧客密着型の営業を展開する。同社が得意とする高炉用耐火物(出銑口閉塞材)および連続鋳造用高付加価値耐火物の拡販に注力する。
(3) サンゴバン社からの事業買収
(一社)日本鉄鋼連盟は、新興国の経済成長に伴い、世界の鉄鋼需要は2020年の約18億トンから2050年に約27億トンへ増加すると予測している。同社は、第5次中期経営計画において海外ビジネスの強化・拡大を重点施策の1つとしている。海外売上高を2021年3月期の161億円(海外売上高比率16%)から2024年3月期に220億円(同20%)へ引き上げる計画をしていた。2022年3月期の実績で早くも222億円、海外売上高比率20%を達成した。また、後述するCompagnie de Saint-Gobain(以下、サンゴバン社)のブラジル耐火物事業(同、ブラジル事業)及び米国耐摩耗性セラミックス事業(同、米国事業)の買収は、当初計画になかった新しい展開となる。2023年3月期中に買収手続きが終了する予定であり、2024年3月期の海外売上高は340億円、海外売上高比率27%へ上方修正された。
2022年5月に、同社とサンゴバン社は、ブラジルにおける耐火物事業及び米国における耐摩耗性セラミックス事業に関して、サンゴバン社の子会社から事業を買収することで合意した。両社は、これまで30年にわたり良好な協力関係を築いてきた。1991年よりサンゴバンブラジルに鉄鋼用耐火物の製造技術ライセンス提供を行い、近年ではサンゴバンブラジルが販売店として、南米で鉄鋼、セメントなどの市場向けに同社製品の販売を行っている。また、2019 年にはサンゴバン社の子会社である Grindwell Norton Ltd.との共同出資により、SG Shinagawa Refractories India Pvt. Ltd.をインドに設立した。これらを背景として、本事業買収の合意へと至った。
今回買収する事業は、ブラジルにおける鉄鋼、鋳造、非鉄金属、石油化学、セメント等向け耐火物の製造・販売と米国の鉱業・鉱物処理、鉄鋼、アスファルト、エネルギー等向け耐摩耗性セラミックスの製造・販売になる。2021年の売上高規模は、ブラジル事業が約99億円、米国事業が約12億円であった。買収価格は、ブラジル事業が約89億円、米国事業が約7億円である。本事業買収により同社グループは、成長著しいブラジル耐火物市場においてリーディング・ポジションを確立できる。また、耐摩耗性セラミックスに関する米国拠点を入手したことにより、同社グループにおいて技術的親和性が認められるファインセラミックス事業において、米国市場へのアクセスを得られる。今後、ブラジル事業・米国事業は、同社グループの更なる成長のための強力なプラットフォームとなり、事業の成長やシナジーはもとより収益の更なる多様性と柔軟性をもたらすものと考える。
同社グループは、グループ子会社の新設やM&Aによりインド・太平洋圏の主要市場すべてに生産拠点を確保することになる。海外事業の強化・拡大を成長戦略の柱としていることから、今後もM&Aを含めた投資機会を探り、条件次第では躊躇なく投資を実行する考えでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<NS>
1. 第5次中期経営計画の重点施策
2022年3月期から2024年3月期までの3ヶ年をカバーする第5次中期経営計画が進行中だ。第4次中期期間では、「商品競争力の徹底強化」及び「成長・未開拓分野の捕捉」を推し進めた。現中期経営計画では、1)国内における拡販と競争力強化、2)海外ビジネスの強化・拡大、3)耐火物・断熱材以外の新規ビジネスの探索、4)設備投資の拡大の4つを重点施策とする。日本経済は潜在成長力が低く、鉄鋼製品の需要が漸減して国内粗鋼生産が年9,000万トン程度に止まることを前提とした。一方、世界では人口が増加しており、鉄鋼需要が拡大することが予想される。3年間の設備投資額は140億円と前中期経営計画の110億円を上回る。これまで生産基盤を強化することで競争力を高めてきたが、今後も積極的な設備投資により国内市場でのシェア拡大を図る。第5次では、グループ各社が新製品を開発するだけでなく、グループ企業の強みを組み合わせて、環境配慮型経営に取り組む顧客のニーズに適した提案をすることで事業機会を創出する。
2022年に入ってからの新たなグループ展開を3つ記述する。
(1)イソライト工業の完全子会社化
2022年3月末にイソライト工業を完全子会社化した。カーボンニュートラル実現等の顧客ニーズ多様化に対応し、両社の技術を融合しカーボンニュートラルの総合ソリューション企業を目指す。同社の不定形耐火物の汎用キャスタブルは曲げ強度が強く、イソライト工業のセラミックファイバーは断熱性能に優れている。これらを複合することで、従来品より断熱性、耐熱性、耐食性、強度に優れた新しい高付加価値の複合材料を開発し、多用途へ展開する。耐火物の使用ユーザーにとって現場における高温管理は重要であり、断熱性能に優れ、熱ロスを防ぎ、省エネに寄与する製品へのニーズは強い。
海外市場においては、顧客基盤の共有や相互の製品の一体販売を拡大、及び両社の拠点における地域補完をする。イソライト工業が販売拠点を有していないオーストラリア及びインドネシアでは、同社の現地子会社製品とのセット販売。また、米国での販売提携先の販売網を活用し、イソライト工業の生体溶解性製品を主とした断熱材の販売活動を開始する。
出資率を55.3%から100%に上げたことによる連結業績へのインパクトは、売上高と経常利益の段階ではないが、親会社株主に帰属する当期純利益で10億円ほどの増加要因となることが見込まれる。
(2) 韓国に販売子会社を新設
2022年4月に、韓国の慶尚北道浦項市に100%所有の販売子会社Shinagawa Refractories Korea Corporation (SRK)を新設した。営業対象は韓国国内の鉄鋼・重工メーカー等になる。新子会社の所在地は、世界6位で韓国最大の鉄鋼メーカーであるPOSCOや現代製鐵、東国製鋼等の製鉄所に近接する。2社購買の推進など顧客の購買姿勢に変化が見られたため、顧客密着型の営業を展開する。同社が得意とする高炉用耐火物(出銑口閉塞材)および連続鋳造用高付加価値耐火物の拡販に注力する。
(3) サンゴバン社からの事業買収
(一社)日本鉄鋼連盟は、新興国の経済成長に伴い、世界の鉄鋼需要は2020年の約18億トンから2050年に約27億トンへ増加すると予測している。同社は、第5次中期経営計画において海外ビジネスの強化・拡大を重点施策の1つとしている。海外売上高を2021年3月期の161億円(海外売上高比率16%)から2024年3月期に220億円(同20%)へ引き上げる計画をしていた。2022年3月期の実績で早くも222億円、海外売上高比率20%を達成した。また、後述するCompagnie de Saint-Gobain(以下、サンゴバン社)のブラジル耐火物事業(同、ブラジル事業)及び米国耐摩耗性セラミックス事業(同、米国事業)の買収は、当初計画になかった新しい展開となる。2023年3月期中に買収手続きが終了する予定であり、2024年3月期の海外売上高は340億円、海外売上高比率27%へ上方修正された。
2022年5月に、同社とサンゴバン社は、ブラジルにおける耐火物事業及び米国における耐摩耗性セラミックス事業に関して、サンゴバン社の子会社から事業を買収することで合意した。両社は、これまで30年にわたり良好な協力関係を築いてきた。1991年よりサンゴバンブラジルに鉄鋼用耐火物の製造技術ライセンス提供を行い、近年ではサンゴバンブラジルが販売店として、南米で鉄鋼、セメントなどの市場向けに同社製品の販売を行っている。また、2019 年にはサンゴバン社の子会社である Grindwell Norton Ltd.との共同出資により、SG Shinagawa Refractories India Pvt. Ltd.をインドに設立した。これらを背景として、本事業買収の合意へと至った。
今回買収する事業は、ブラジルにおける鉄鋼、鋳造、非鉄金属、石油化学、セメント等向け耐火物の製造・販売と米国の鉱業・鉱物処理、鉄鋼、アスファルト、エネルギー等向け耐摩耗性セラミックスの製造・販売になる。2021年の売上高規模は、ブラジル事業が約99億円、米国事業が約12億円であった。買収価格は、ブラジル事業が約89億円、米国事業が約7億円である。本事業買収により同社グループは、成長著しいブラジル耐火物市場においてリーディング・ポジションを確立できる。また、耐摩耗性セラミックスに関する米国拠点を入手したことにより、同社グループにおいて技術的親和性が認められるファインセラミックス事業において、米国市場へのアクセスを得られる。今後、ブラジル事業・米国事業は、同社グループの更なる成長のための強力なプラットフォームとなり、事業の成長やシナジーはもとより収益の更なる多様性と柔軟性をもたらすものと考える。
同社グループは、グループ子会社の新設やM&Aによりインド・太平洋圏の主要市場すべてに生産拠点を確保することになる。海外事業の強化・拡大を成長戦略の柱としていることから、今後もM&Aを含めた投資機会を探り、条件次第では躊躇なく投資を実行する考えでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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