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日本ヒュームのニュース
*14:34JST 日本ヒューム Research Memo(4):技術開発の推進により、企業価値向上を目指す(1)
■技術開発戦略
地球温暖化、脱炭素社会、DXなど、社会・経済環境は大きく変化してきている。技術開発もこのような流れをとらえる必要がある。日本ヒューム<5262>は、これらの社会課題を解決すべく、これまで培ってきたプレキャスト製品の技術開発に取り組んでいる。技術開発の方向性としては、(1) 耐震化対策、(2) 防災・減災対策、(3) 社会インフラの老朽化対策、(4) 省力化対策、(5) 脱炭素社会対策などが挙げられる。
(1) 耐震化対策
大規模地震の発生時には液状化によってマンホールが隆起し下水道管が使えなくなるなど、社会生活への影響が懸念される。同社は、管渠と人孔接合部を非開削で耐震化する工法であるガリガリ君や、地震で発生する過剰間隙水圧を消散させるための弁を人孔壁面に設け、人孔の浮上を抑制するフロートレス工法などを用いて、地震に強い下水道管路を提供している。
(2) 防災・減災対策
同社は対策が急がれる都市型水害対策製品のラインナップを拡充している。近年においてゲリラ豪雨が頻繁に発生しており、それに伴う都市型水害である内水氾濫への対策として、縦スペースを利用し、狭い面積でも一時貯留が可能な施設を開発(「ウェルマン貯留槽(R)」(後述))している。また、水害に対するソフト対策として下水道管路に敷設される水門の水位計をロボットで施工するなど、遠隔管理や遠隔操作に向けたロボット工法にも取り組んでいる。
(3) 社会インフラの老朽化対策
日本においては、50年を経過する管路が急増しており、その対策は喫緊の課題である。同社は、下水道管渠の形状を考慮した透明で軽量のプラスチック製セグメント材を利用して管渠更生を行う3Sセグメント工法等で老朽化が進む下水道管の更生事業に取り組んでいる。セグメント材を透明にするのは、充填剤の注入状況を目視で確認できるようにするためである。
(4) 省力化対策
建設業においては、就業者の高齢化と若者の建設業離れにより、建設現場の技能者不足が深刻な課題となっている。また、2024年4月より時間外労働の上限規制が建設業にも適用されるため、建設現場の生産性向上を実現するためにプレキャスト化の一層の促進が見込まれる。工区短縮などの優位性をもつ同社プレキャスト製品のPCウェルが評価され、同社において受注が積みあがっている。
また、工事現場の生産性向上の観点から政府はi-Constructionを推進している。こうした外部環境のなか、同社は杭施工管理の生産性向上のためICT施工管理システム「Pile-ViMSys(R)」を開発するなど、杭施工管理のDXにも取り組んでいる。
(5) 脱炭素社会対策
日本政府は2030年度の温室効果ガス排出削減目標について、2013年度比で46%削減を目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける方針を示している。そして、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言している。同社はカーボンニュートラルを実現するため、再生可能エネルギー向け部材や環境製品の開発に取り組んでいる。そして2021年の機構改革により、持続可能な社会(SDGs)の実現に向けて「開発志向型企業」として技術開発に注力し、社会に貢献できるプレキャスト製品や施工法を開発するため、技術開発センター(技術研究所を改変)を設置した。さらに設計技術部を新設し、それらを統括する技術本部を設置した。また、2022年4月には洋上風力発電プロジェクト部を新設した。
技術本部では、生産本部、工事本部、営業本部、下水道関連事業部、支社・工場などと連携して、多くのテーマについて技術開発を進めている。開発スピードの加速、開発管理の強化と一元化を図るため、開発委員会(委員長:専務取締役、副委員長:執行役員技術本部長)を設置した。開発委員会を四半期ごとに開催し、テーマの選定、予算原案の策定、進捗管理、評価などを行っている。基礎研究の成果は、応用研究及び開発を経て技術として成長し、生産そして営業・販売とつながっていく。「技術開発の推進により企業価値向上を目指す」が同社の方針である。
開発管理において重要になるのが「研究開発計画」である。研究開発計画は、経営計画を技術の側からいかに展開するかを明らかにすることでもある。同社は2024年3月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画「21-23計画」を推進している。このなかで、成長に向けた戦略の1つとして技術開発の強化を挙げている。具体的には1) 「環境問題、社会問題を踏まえた製品開発、技術開発の強化を図る(研究開発投資の強化)」、2) 「デジタル化に対応する設計技術のプラットフォームの構築、サービスの向上に取り組む」、3) 「生産の更なる効率化、デジタル化による品質管理の合理化を推進するため、生産技術、施工技術開発の強化を図る(設備投資の強化)」である。
以下、1) 「環境問題、社会問題を踏まえた製品開発、技術開発の強化を図る(研究開発投資の強化)」に関する取り組みを取り上げる。
(a) 「ウェルマン貯留槽(R)」
「ウェルマン貯留槽(R)」は、都市防災ソリューションの1つである。ゲリラ豪雨の発生に伴う内水氾濫への対策として、縦スペースを利用し、狭い面積でも一時貯留が可能な立坑型貯留施設である。工法は、同社のオリジナルであるPCウェル工法を活用している。貯留槽の大きさは内径が約8mあり、4分割されているが、それらを組み立て(プレキャスト製品)、圧入しながら約40mの深さまで沈設する。
「ウェルマン貯留槽(R)」の特長は3点ある。1) 内水氾濫対策が半年という短期間で終了すること。貯留できる量は、1,500~2,000m3規模である。2) 狭隘地(きょうあいち)及び近接地施工が可能であり、公園などピンポイントのエリアに対して貯留施設を提供することができる。3) 貯留施設をパッケージ化していること。具体的には、落差工、昇降設備、堆砂ます、排水ポンプ、脱臭設備など貯留施設に必要な設備一式をパッケージ化することで設計の手間を省略できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
<SI>
地球温暖化、脱炭素社会、DXなど、社会・経済環境は大きく変化してきている。技術開発もこのような流れをとらえる必要がある。日本ヒューム<5262>は、これらの社会課題を解決すべく、これまで培ってきたプレキャスト製品の技術開発に取り組んでいる。技術開発の方向性としては、(1) 耐震化対策、(2) 防災・減災対策、(3) 社会インフラの老朽化対策、(4) 省力化対策、(5) 脱炭素社会対策などが挙げられる。
(1) 耐震化対策
大規模地震の発生時には液状化によってマンホールが隆起し下水道管が使えなくなるなど、社会生活への影響が懸念される。同社は、管渠と人孔接合部を非開削で耐震化する工法であるガリガリ君や、地震で発生する過剰間隙水圧を消散させるための弁を人孔壁面に設け、人孔の浮上を抑制するフロートレス工法などを用いて、地震に強い下水道管路を提供している。
(2) 防災・減災対策
同社は対策が急がれる都市型水害対策製品のラインナップを拡充している。近年においてゲリラ豪雨が頻繁に発生しており、それに伴う都市型水害である内水氾濫への対策として、縦スペースを利用し、狭い面積でも一時貯留が可能な施設を開発(「ウェルマン貯留槽(R)」(後述))している。また、水害に対するソフト対策として下水道管路に敷設される水門の水位計をロボットで施工するなど、遠隔管理や遠隔操作に向けたロボット工法にも取り組んでいる。
(3) 社会インフラの老朽化対策
日本においては、50年を経過する管路が急増しており、その対策は喫緊の課題である。同社は、下水道管渠の形状を考慮した透明で軽量のプラスチック製セグメント材を利用して管渠更生を行う3Sセグメント工法等で老朽化が進む下水道管の更生事業に取り組んでいる。セグメント材を透明にするのは、充填剤の注入状況を目視で確認できるようにするためである。
(4) 省力化対策
建設業においては、就業者の高齢化と若者の建設業離れにより、建設現場の技能者不足が深刻な課題となっている。また、2024年4月より時間外労働の上限規制が建設業にも適用されるため、建設現場の生産性向上を実現するためにプレキャスト化の一層の促進が見込まれる。工区短縮などの優位性をもつ同社プレキャスト製品のPCウェルが評価され、同社において受注が積みあがっている。
また、工事現場の生産性向上の観点から政府はi-Constructionを推進している。こうした外部環境のなか、同社は杭施工管理の生産性向上のためICT施工管理システム「Pile-ViMSys(R)」を開発するなど、杭施工管理のDXにも取り組んでいる。
(5) 脱炭素社会対策
日本政府は2030年度の温室効果ガス排出削減目標について、2013年度比で46%削減を目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける方針を示している。そして、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言している。同社はカーボンニュートラルを実現するため、再生可能エネルギー向け部材や環境製品の開発に取り組んでいる。そして2021年の機構改革により、持続可能な社会(SDGs)の実現に向けて「開発志向型企業」として技術開発に注力し、社会に貢献できるプレキャスト製品や施工法を開発するため、技術開発センター(技術研究所を改変)を設置した。さらに設計技術部を新設し、それらを統括する技術本部を設置した。また、2022年4月には洋上風力発電プロジェクト部を新設した。
技術本部では、生産本部、工事本部、営業本部、下水道関連事業部、支社・工場などと連携して、多くのテーマについて技術開発を進めている。開発スピードの加速、開発管理の強化と一元化を図るため、開発委員会(委員長:専務取締役、副委員長:執行役員技術本部長)を設置した。開発委員会を四半期ごとに開催し、テーマの選定、予算原案の策定、進捗管理、評価などを行っている。基礎研究の成果は、応用研究及び開発を経て技術として成長し、生産そして営業・販売とつながっていく。「技術開発の推進により企業価値向上を目指す」が同社の方針である。
開発管理において重要になるのが「研究開発計画」である。研究開発計画は、経営計画を技術の側からいかに展開するかを明らかにすることでもある。同社は2024年3月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画「21-23計画」を推進している。このなかで、成長に向けた戦略の1つとして技術開発の強化を挙げている。具体的には1) 「環境問題、社会問題を踏まえた製品開発、技術開発の強化を図る(研究開発投資の強化)」、2) 「デジタル化に対応する設計技術のプラットフォームの構築、サービスの向上に取り組む」、3) 「生産の更なる効率化、デジタル化による品質管理の合理化を推進するため、生産技術、施工技術開発の強化を図る(設備投資の強化)」である。
以下、1) 「環境問題、社会問題を踏まえた製品開発、技術開発の強化を図る(研究開発投資の強化)」に関する取り組みを取り上げる。
(a) 「ウェルマン貯留槽(R)」
「ウェルマン貯留槽(R)」は、都市防災ソリューションの1つである。ゲリラ豪雨の発生に伴う内水氾濫への対策として、縦スペースを利用し、狭い面積でも一時貯留が可能な立坑型貯留施設である。工法は、同社のオリジナルであるPCウェル工法を活用している。貯留槽の大きさは内径が約8mあり、4分割されているが、それらを組み立て(プレキャスト製品)、圧入しながら約40mの深さまで沈設する。
「ウェルマン貯留槽(R)」の特長は3点ある。1) 内水氾濫対策が半年という短期間で終了すること。貯留できる量は、1,500~2,000m3規模である。2) 狭隘地(きょうあいち)及び近接地施工が可能であり、公園などピンポイントのエリアに対して貯留施設を提供することができる。3) 貯留施設をパッケージ化していること。具体的には、落差工、昇降設備、堆砂ます、排水ポンプ、脱臭設備など貯留施設に必要な設備一式をパッケージ化することで設計の手間を省略できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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