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タカラバイオのニュース
■新型コロナウイルス感染症向けワクチン及び治療薬の開発状況について
1. 新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況について
新型コロナウイルス感染症ワクチンについては2020年12月以降、欧米などで米ファイザーやモデルナ〈MRNA>、イギリスのアストラゼネカなど大手製薬企業の開発した製品の承認が相次ぎ、集団接種が開始されている。国内においてもファイザーのワクチンが特例承認を受けており、医療従事者や高齢者を対象に予防接種が始まっているほか、春頃にはアストラゼネカのワクチンも承認が見込まれている。
アンジェス<4563>が2020年3月より大阪大学と共同で開発しているプラスミドDNA※1製法を用いたワクチンは、新型コロナウイルスの遺伝子をプラスミドに挿入し、このプラスミドを大腸菌で大量培養した後にDNAを抽出して製剤化する。無害化されたDNAワクチンを投与することで、新型コロナウイルスに対する免疫(抗体※2)を作り、感染症の発症や重症化を防ぐことが可能となる。
※1 プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。プラスミド製法では、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。
※2 ウイルスや細菌などの抗原が体内に入り込んだとき、そのたんぱく質に反応し、体から追い出すためにできる対抗物質。
現在の開発状況については、2020年12月より第2/3相臨床試験(予定症例数500例)を実施している。試験概要は、用量2.0mgを2週間隔で2回接種するグループと、4週間隔で2回接種するグループに分けて実施する(各グループ250例のうち50例はプラセボ)。ワクチンの用法及び用量における安全性と免疫原性の評価を目的とし、2021年3月10日に500症例の接種を予定通り完了したことを発表している。順調に進めば試験結果は同年初夏に発表できる見通しとなる。なお、第1/2相臨床試験での有効性に関するデータも合わせて発表する方針となっている。
第2/3相臨床試験の結果が良好であれば、大規模な第3相臨床試験を開始すべく、PMDAと協議を開始することになるが、症例数が1万人~数万人規模になり、先行承認されているワクチンが海外での臨床試験も実施していることから、同社においても国内だけでなく海外での臨床試験を進めていくことになると予想される。このため、開発資金については国からの助成金が必須となり、海外での臨床試験を円滑に進めるためのパートナーも必要となってくると見られる。ワクチンの国産化は今後のことも見据えると重要性が高いと考えられるため、第2/3相臨床試験の有効性評価において先行するワクチンと同等以上であることが確認されれば(前臨床試験のデータでは遜色ない結果が得られている)、助成金が付く可能性も高いと弊社では見ており、同試験結果の内容が注目される。
なお、現在のワクチンの開発や量産体制構築に向けた費用については、国の助成金等で賄われている。具体的には、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に、2020年5月に採択されており、研究開発費20億円(直接経費、研究開発期間:2020年6月−2021年3月)の支援を受けているほか、厚生労働省が公募した「令和2年度ワクチン生産体制等緊急整備事業」にも同年8月に採択され、約93億円の交付金(事業期間:2020年8月−2022年3月)を受けて、タカラバイオ<4974>などが大規模生産体制の構築を進めている。そして、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募、研究開発予定期間:2020~2021年度目途)にも同年8月に採択されており(金額は非開示)、新型コロナウイルス(COVID-19)を標的とした DNA ワクチンの臨床開発を推進している。なお、2020年12月期末時点でAMED及び厚生労働省からの助成金の一部が入金されており、前受金として3,594百万円計上している。
なお、同社のワクチン共同開発プロジェクトについては、多くの企業が参画している。ワクチンの製造に関してはタカラバイオをはじめ、AGC Biologics S.p.A.、Cytiva、シオノギファーマ(株)、Kaneka Eurogentec S.A.などが大規模治験に向けた体制整備に取り組んでいる。また、次世代ワクチンの開発についてもダイセルの薬剤送達デバイスに関する臨床研究を大阪大学にて進めるなど、様々な研究開発が行われている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
1. 新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況について
新型コロナウイルス感染症ワクチンについては2020年12月以降、欧米などで米ファイザー
アンジェス<4563>が2020年3月より大阪大学と共同で開発しているプラスミドDNA※1製法を用いたワクチンは、新型コロナウイルスの遺伝子をプラスミドに挿入し、このプラスミドを大腸菌で大量培養した後にDNAを抽出して製剤化する。無害化されたDNAワクチンを投与することで、新型コロナウイルスに対する免疫(抗体※2)を作り、感染症の発症や重症化を防ぐことが可能となる。
※1 プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。プラスミド製法では、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。
※2 ウイルスや細菌などの抗原が体内に入り込んだとき、そのたんぱく質に反応し、体から追い出すためにできる対抗物質。
現在の開発状況については、2020年12月より第2/3相臨床試験(予定症例数500例)を実施している。試験概要は、用量2.0mgを2週間隔で2回接種するグループと、4週間隔で2回接種するグループに分けて実施する(各グループ250例のうち50例はプラセボ)。ワクチンの用法及び用量における安全性と免疫原性の評価を目的とし、2021年3月10日に500症例の接種を予定通り完了したことを発表している。順調に進めば試験結果は同年初夏に発表できる見通しとなる。なお、第1/2相臨床試験での有効性に関するデータも合わせて発表する方針となっている。
第2/3相臨床試験の結果が良好であれば、大規模な第3相臨床試験を開始すべく、PMDAと協議を開始することになるが、症例数が1万人~数万人規模になり、先行承認されているワクチンが海外での臨床試験も実施していることから、同社においても国内だけでなく海外での臨床試験を進めていくことになると予想される。このため、開発資金については国からの助成金が必須となり、海外での臨床試験を円滑に進めるためのパートナーも必要となってくると見られる。ワクチンの国産化は今後のことも見据えると重要性が高いと考えられるため、第2/3相臨床試験の有効性評価において先行するワクチンと同等以上であることが確認されれば(前臨床試験のデータでは遜色ない結果が得られている)、助成金が付く可能性も高いと弊社では見ており、同試験結果の内容が注目される。
なお、現在のワクチンの開発や量産体制構築に向けた費用については、国の助成金等で賄われている。具体的には、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に、2020年5月に採択されており、研究開発費20億円(直接経費、研究開発期間:2020年6月−2021年3月)の支援を受けているほか、厚生労働省が公募した「令和2年度ワクチン生産体制等緊急整備事業」にも同年8月に採択され、約93億円の交付金(事業期間:2020年8月−2022年3月)を受けて、タカラバイオ<4974>などが大規模生産体制の構築を進めている。そして、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募、研究開発予定期間:2020~2021年度目途)にも同年8月に採択されており(金額は非開示)、新型コロナウイルス(COVID-19)を標的とした DNA ワクチンの臨床開発を推進している。なお、2020年12月期末時点でAMED及び厚生労働省からの助成金の一部が入金されており、前受金として3,594百万円計上している。
なお、同社のワクチン共同開発プロジェクトについては、多くの企業が参画している。ワクチンの製造に関してはタカラバイオをはじめ、AGC Biologics S.p.A.、Cytiva、シオノギファーマ(株)、Kaneka Eurogentec S.A.などが大規模治験に向けた体制整備に取り組んでいる。また、次世代ワクチンの開発についてもダイセルの薬剤送達デバイスに関する臨床研究を大阪大学にて進めるなど、様々な研究開発が行われている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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