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KeyHolderのニュース
―事業拡大に向け“仕掛け”着々、乃木坂46公式ライバル出資の狙いは―
総合エンターテインメント企業として、ここ数年で存在感を増してきたKeyHolder <4712> [東証S]。積極的なM&A で飛躍的に事業を拡大させ、アイドルグループ「SKE48」及び共同事業である「乃木坂46」の運営や映像制作 、広告事業と展開する。現在の事業体制の確立に尽力し、昨年現職に就任した大出悠史社長、加えて乃木坂46の運営主体「乃木坂46合同会社」の持ち分を50%保有する子会社ノース・リバーの北川謙二社長、SKE48を筆頭に多彩なタレント群を擁する子会社ゼストの高田裕充社長の3人に話を聞いた。(聞き手・井出勇斗)
●前期絶好調、今期も成長継続見通しで優待復活も
――前期(22年12月期)は売上高・利益とも絶好調でした
大出 乃木坂46に関連する事業の数字はこれまでと同様に強かったですが、とはいえここまで大きな業績をあげられたのはコロナ収束で映像制作事業が回復した点と、高田がゼスト社長に就いてからコスト見直しを徹底してもらって既存コンテンツの収益が改善した点、あわせてデジタル広告事業を強化した点が理由としてあります。乃木坂46事業の好調に加え、これら3つが大きく伸びたことで大幅な増収増益となりました。
――今期(23年12月期)も成長継続の見通しです。物価高の影響は
大出 今すごく受ける質問なのですが、物価高が現時点で当社の商流に何か影響しているものはないです。乃木坂46は前期と変わらぬ良い数字を今期も出してくれそうですし、グループ各社も計画通りにきています。(業績予想を)出した以上は必ずやるということで、現時点で少し厳しいと感じる部分はありません。
――配当など株主還元の方針について教えてください
大出 株主還元に関しては据え置きありきでなく、数字が良いときはしっかり利益還元していこうという方針です。前期の好業績を受け、社内では(増配の)議論を繰り返し行いました。ただ、このタイミング、この地合いで本当に良いのか、内部留保を厚くし、会社の規模を大きくすることを優先すべきではないか、という意見も考慮しまして――。今回は、ご意見・ご要望を多数いただいていた優待を復活させることにしました。今期については業績や経営環境を吟味し、いま一度検討していきます。
●秋元氏との出会いに「スタジオアルタ」
――この数年で大きく業態を転換しています。どのような経緯があったのでしょうか
大出 私が2017年に経営立て直しのため当社(旧アドアーズ)に入社後、当時手掛けていたゲームセンター事業の売却に踏み切り、次に何をやろうかと考えていました。そうした時、当社に不動産部門があった関係でたまたま新宿のスタジオアルタ(現KeyStudio)に空きが出たという話が入り、このスタジオで何かできないかと赤塚(赤塚善洋・現ゼスト会長)のところへ話を持ちかけました。すると、秋元先生(秋元康氏)のところに相談に行こうとトントン拍子で話が進みまして――。
――赤塚氏と秋元氏の間につながりがあったと
大出 赤塚はエイベックス出身で芸能まわりに広い人脈がありました。それで先生とお会いして関係性ができていきながら、ではこのスタジオで何をやるかと。さまざまな案が出るなか、配信も行えるイベントスペースの形態で稼働させることになり、本格的にエンタメ系事業へと踏み出しました。その後、エンタメ企業として当社がどんどん変わっていきたいという話のなかで、先生からSKE48を紹介いただくことになりました。これと前後して、先生には当社の特別顧問に就いていただいております。SKE48と並行して映像制作会社などの買収も進め、これから規模を大きくしていこうとしていた矢先、コロナの大打撃を受けました。
●配信で収益化、コロナ収束で握手会解禁「段階的に」
――未曽有のコロナ禍、当時どのような状況でしたか
大出 何もできない状況でした。イベント開催が行えず、劇場もこれまでのように公演ができないということで、まずベース収益がなくなるわけです。握手会もできずファン離れも進み、どう収益化していけばいいのか本当に焦りました。
――この時期に乃木坂46を取得しています
大出 この先どうしていこうかと秋元先生も交え話し合うなか、それなら国内最大級のコンテンツの乃木坂46をと――(乃木坂46合同会社には)当時株主が複数いたのですが、そこを整理してソニーさん50、我々(ノースリバー)50で持ち分を取り込めれば安定的な収益が確保できる、ということで取得に動きました。
――コロナ禍での事業継続に向け、どのような取り組みを行いましたか
高田 SKE48は劇場の映像配信を前から行っていて、そこの宣伝強化をまずは図りました。できるだけ劇場の灯(ともしび)を消さないように、劇場を使ったさまざまな企画を試行錯誤しながら取り組みました。Novelbright(ノーベルブライト)についてはまさにコロナ禍の2020年にメジャーデビューということで、その時はもう話題を作るしかないなと。彼らの活動拠点であった大阪にある大阪城ホールでのライブを無観客で、しかも完全無料で配信で見せるという。コロナはいずれ収束するから、今ここで何かインパクトのある事をやっている新人がきっと人の心に残るはずだ、と思いながらやっていました。
北川 乃木坂46もコロナのなかで配信に力を入れました。従来、(ファン側には)会場までの移動という時間的、金銭的なハードルがありましたが、これを取っ払えたのは配信の一つのメリットとして感じました。ファンの方々に対して間口を大きく広げられたということです。多くのファンを取り込むことができ、収益率が上がったというのはあります。
――配信のほうが収益力は高いと
北川 ある程度の水準を超えてくれば、そこからは増える分だけ収益になりますので――。
――今後も配信は続けますか
北川 (有観客と)併用していく形になります。今後予定しているライブでも、すべてではないですが配信を絡めていきたいと考えています。
――現在コロナ禍が収束しつつあります。握手会を解禁するメドはありますか
北川 (業界内外の)状況を見ながら、という感じです。やはりファンの方、タレント双方にとって一番センシティブな部分ですので、しっかりとご理解をいただいた上で、たぶん段階的になってくるとは思います。例えば、SKE48は対面で一部規制をかけながら実施しているとか――。
高田 SKE48は既に去年一度握手会を行っていて、その時はお客さんが参加方法を選べるようにしました。そういう実績があるので、この先もう半歩踏み込んだことができないかというのを、まさにきょうの会議でもそういった話が出ていました。いろいろな懸念点を見つつ、半歩突っ込んでやろうという気持ちです。
●SKE48アジア展開の「野望」、映像制作もグローバル展開へ
――中長期の成長ストーリーについて聞かせてください。まずは、主力の総合エンターテインメント事業はいかがですか
北川 アフターコロナに向けて状況を見ながらも、ファンの皆様に喜んでいただけるイベント、興行を実施していきたいと思います。乃木坂46は5期生が加入していろいろと活動の幅を広げているので、今後の力強い活躍に期待しています。(運営について)計算とか戦略というよりは、自然とファンの人たちに合わせていくという感じかもしれません。
高田 SKE48は改めてもう一度、東海3県でしっかりと地盤を築きながら、愛されるアイドルにしていきます。Novelbrightは先日アリーナクラスのライブを発表しまして、とにかく彼らは今どんどん右肩上がりの状況にあるので規模を上げていきます。この2つを軸にしながら、私自身の野望としては中長期的にアジアに連れていきたいなと――。
――海外から引き合いがあるのでしょうか
高田 コロナになる前から、シンガポールや台湾、韓国などからライブをやらないかというお話をいただいていました。アイドルのファンはアジアに結構いて、やはりアイドルは日本を代表するサブカルチャーなのでアジアに展開したい。日本のバンドもアジアでしっかり戦えている歴史があるので、コロナ明けに今こういうことをやろうとしている人が少ないからこそ、アジアを意識してやっていこうと考えています。
――映像制作、広告代理店事業についてはいかがですか
大出 映像制作は、既存のバラエティー番組制作でレギュラー化など実績を積み上げており好調です。しかし、これは国内市場に限った話で、さまざまな映像配信サービスが普及した現在、映像コンテンツはボーダーレス化が進んでいます。今後は世界を見据えて大きなパイを取りにいくため、総合的な体制を整えて自分たちから案件を仕掛けていく方針です。
――体制整備に向けて何か取り組みを進めているのでしょうか
大出 4月19日付で開示しましたが、制作経理を中心にしたプロダクションバックオフィス事業を手掛ける会社を買収します。国内ではまだ数少ないものの、海外ではスタンダードな同事業を取得し、世界標準品質の作品を制作するプロダクションの基礎を固め、日本発の映像コンテンツでグローバルに展開する体制を目指します。
――広告代理店事業では、昨年からネット広告事業を展開しています
大出 広告代理店 については、デジタル広告分野を伸ばしていこうと考えています。M&Aを絡めた営業の裾野拡大を図る動きを既に始めています。
●“公式ライバル”が活性化のポイントに
――他社主導の乃木坂46公式ライバルプロジェクトに資本参画することを2月に明らかにしました。狙いは何でしょうか
大出 乃木坂46は5期生の人気などもあり、今後の活躍に一層の期待を持っています。それとともにアイドル業界を盛り上げる意味で、うまくライバルとして切磋琢磨して競い合いながらやっていこうと、そのための仕掛けです。
北川 片方のグループのやり方が良かったとなれば、もう一方のグループも何か別のことをやらなければ、とか。切磋琢磨するというのは大きな活性化のポイントになります。
――資本参画の具体的な内容は
大出 子会社allfuz(オルファス)が、Ligareaz Management(レガリアスマネジメント、同プロジェクトの主導企業)に出資しています。関係する企業や人物の出資割合といった詳細はお伝えできませんが、allfuzは広告代理店としてキャスティングやマーチャンダイジング(商品政策)などの面で関わっていきます。
◇大出悠史(おおいで・ゆうし)
2005年三井住友銀行入行。17年アドアーズ(現KeyHolder)入社、同年取締役、21年KeyHolder専務取締役、22年3月から現職。
◇北川謙二(きたがわ・けんじ)
2011年から現職。20年KeyHolder取締役。23年3月から同社取締役副社長に就任。
◇高田裕充(たかた・ひろみつ)
1997年エイベックス・ディー・ディー(現エイベックス)入社。2019年ゼスト入社、21年取締役、22年3月から現職。
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