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窪田製薬ホールディングスのニュース
*14:56JST 窪田製薬HD Research Memo(6):エミクススタト塩酸塩は共同開発パートナーを探す段階に
■主要開発パイプラインの概要と進捗状況
3. エミクススタト塩酸塩
スターガルト病とは網膜の遺伝性疾患で、小児期から青年期における視力低下や色覚障害などが主な症状として挙げられる。若年性黄斑変性とも呼ばれ、8千~1万人に1人がこの病気にかかると推定されている。大半の患者は視力0.1以下に低下すると言われており、有効な治療法がいまだ確立されていないアンメットメディカルニーズの強い疾患の1つで、エミクススタト塩酸塩(以下、エミクススタト)は米国でオーファンドラッグに指定されている。スターガルト病の市場規模は2027年に約1,600億円になるとの調査報告があると窪田製薬ホールディングス<4596>は発表している※。
※WISEGUY RESEARCH CONSULTANTS PVT LTD Global Juvenile Degeneration (Stargardt Disease) Market Research Report- Forecast to 2027
2022年8月12日付で同社は、スターガルト病を適応症とした第3相臨床試験(被験者数194名)のトップラインデータを発表し、主要評価項目及び副次的評価項目においてプラセボ群との統計的な有意差が示されなかったことを発表した。主要評価項目である黄斑委縮の進行率については、エミクススタト投与群で1.280mm2/年、プラセボ群で1.309mm2/年であった(p=0.8091)。ただし、その後のデータ解析の結果、ベースライン時の萎縮病巣面積がより小さい被験者グループ(初期症状段階)に限ると、エミクススタト投与群の24ヶ月目の黄斑委縮進行率はプラセボ群に対して40.8%と大幅に抑制され、有意差のあることが確認されたとしている(P=0.0206、エミクススタト投与群n=34、プラセボ群n=21)。このため、同社は同試験データをもって共同開発パートナーを探し、再度臨床試験を実施したい意向を示している。
スターガルト病患者のうち、対象となりうる初期症状段階の患者は全体の80%以上を占めていると同社では推定している。第3相臨床試験でこれら被験者群の比率が約3割と低くなったのは、試験対象年齢を16歳以上としたことが要因と考えられる。小児期の初期段階からエミクススタトを服用すれば、その後の症状進行を大幅に抑制できる可能性が見えてきたことで、今後共同開発パートナーが現れることも十分に考えられる。
そのほか、エミクススタトについては、2016年4月から2017年11月にかけて米国で増殖糖尿病網膜症を適応症とした第2相臨床試験を実施した。その結果、プラセボ群に比べエミクススタト塩酸塩投与群では、網膜症の発症や悪化に関連するバイオマーカーの1つであるVEGF(血管内皮増殖因子)濃度に軽度の改善が認められたが、そのほかのバイオマーカーについては有意差が得られなかった。第3相臨床試験については費用負担が大きくなることから共同開発パートナーが見つかれば進める方針とし、現在は開発の優先順位を引き下げている。
NASA向けプロジェクトは中断中だが予算が付き次第再開される可能性あり
4. 宇宙飛行士向け超小型眼科診断装置「SS-OCT」
宇宙飛行で発症する眼疾患に関する研究を行うための超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT(以下、SS-OCT)」の開発プロジェクトをNASAと開発受託契約を締結して2019年より開始し、2020年初に第1フェーズの開発ミッションを完了した。開発の第2フェーズについては2021年に米政府が民主党に政権交代したことや、コロナ禍の影響で国家予算がコロナ対策に優先されたためNASAの開発予算が削減されたこともあり、一時中断状態となっている。
同プロジェクトは、長期的な宇宙飛行を経験した宇宙飛行士の約69%が、視力障害や失明の恐れがある神経眼症候群を患っているという研究報告※をもとに、宇宙飛行が眼領域に与える影響を研究することが目的である。現在、国際宇宙ステーション(International Space Station、以下、ISS)で使用されている市販のOCTは据え置き型で操作が複雑であり、数ヶ月間の宇宙ステーション滞在中に宇宙飛行士は3回しか検査できていなかった。今回、開発する超小型SS-OCTは、飛行士自身が毎日測定して記録を保存しておくことが可能となり、宇宙飛行が眼疾患に与える影響をより詳細に分析することで、疾患リスクの軽減や予防などに役立てていく。
※かすみ目や視神経乳頭浮腫、眼球後部平坦症、綿花状白斑等の眼疾患症状が報告されている。
開発フェーズは全体で3ステップに分かれており、第1フェーズのミッションは、耐久性と安価な光源であるレーザーを使用した概念実証(POC)の確認で、複数のレーザーを用いて視神経乳頭の形状を高解像度で測定する装置を開発することであった。2020年1月にNASAでデモンストレーションを行ったが、NASAのプロジェクト担当者からも高い評価を受けた※ 2020年2月に第1フェーズの開発を終了し、同年4月に開発報告書をNASA及びTRISHに提出し、開発受託収入37百万円を2020年12月期に事業収益として計上した。
※NASA担当者から、次のようなコメントが寄せられた。「小型でありながら操作が簡単で、データ処理が早い。宇宙飛行中の眼球への影響を研究するために、ISSで大いに役立つと信じている」「フェーズ1の使用条件を満たしているだけでなく、期待以上の完成度であった。外見も洗練され、軽くて持ちやすい。フェーズ2での仕上がりが楽しみである」
第2フェーズは、同装置を用いてどのような画像解析手法で宇宙飛行に起因する眼疾患の検証を行うか、運用上で必要となる要件定義を固める工程となり、最終の第3フェーズでは、実際に宇宙飛行環境において使用可能な装置の開発を進める。具体的には、宇宙放射線被ばくに対する耐久性を持ち、無重力環境下で宇宙飛行士自身が操作できるハードウェアの開発を提携企業と共同開発することになる。
現在は、プロジェクトが中断中であるが、NASAのプロジェクト担当者とは定期的にミーティングを行っており、継続の意向を確認している。このため、今後開発予算が付き次第、再開されるものと予想される。NASAでは月面飛行プロジェクトが動き始めるなど予算が再び付き始めていることから、今後プロジェクトが再開される可能性は十分にあると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YI>
3. エミクススタト塩酸塩
スターガルト病とは網膜の遺伝性疾患で、小児期から青年期における視力低下や色覚障害などが主な症状として挙げられる。若年性黄斑変性とも呼ばれ、8千~1万人に1人がこの病気にかかると推定されている。大半の患者は視力0.1以下に低下すると言われており、有効な治療法がいまだ確立されていないアンメットメディカルニーズの強い疾患の1つで、エミクススタト塩酸塩(以下、エミクススタト)は米国でオーファンドラッグに指定されている。スターガルト病の市場規模は2027年に約1,600億円になるとの調査報告があると窪田製薬ホールディングス<4596>は発表している※。
※WISEGUY RESEARCH CONSULTANTS PVT LTD Global Juvenile Degeneration (Stargardt Disease) Market Research Report- Forecast to 2027
2022年8月12日付で同社は、スターガルト病を適応症とした第3相臨床試験(被験者数194名)のトップラインデータを発表し、主要評価項目及び副次的評価項目においてプラセボ群との統計的な有意差が示されなかったことを発表した。主要評価項目である黄斑委縮の進行率については、エミクススタト投与群で1.280mm2/年、プラセボ群で1.309mm2/年であった(p=0.8091)。ただし、その後のデータ解析の結果、ベースライン時の萎縮病巣面積がより小さい被験者グループ(初期症状段階)に限ると、エミクススタト投与群の24ヶ月目の黄斑委縮進行率はプラセボ群に対して40.8%と大幅に抑制され、有意差のあることが確認されたとしている(P=0.0206、エミクススタト投与群n=34、プラセボ群n=21)。このため、同社は同試験データをもって共同開発パートナーを探し、再度臨床試験を実施したい意向を示している。
スターガルト病患者のうち、対象となりうる初期症状段階の患者は全体の80%以上を占めていると同社では推定している。第3相臨床試験でこれら被験者群の比率が約3割と低くなったのは、試験対象年齢を16歳以上としたことが要因と考えられる。小児期の初期段階からエミクススタトを服用すれば、その後の症状進行を大幅に抑制できる可能性が見えてきたことで、今後共同開発パートナーが現れることも十分に考えられる。
そのほか、エミクススタトについては、2016年4月から2017年11月にかけて米国で増殖糖尿病網膜症を適応症とした第2相臨床試験を実施した。その結果、プラセボ群に比べエミクススタト塩酸塩投与群では、網膜症の発症や悪化に関連するバイオマーカーの1つであるVEGF(血管内皮増殖因子)濃度に軽度の改善が認められたが、そのほかのバイオマーカーについては有意差が得られなかった。第3相臨床試験については費用負担が大きくなることから共同開発パートナーが見つかれば進める方針とし、現在は開発の優先順位を引き下げている。
NASA向けプロジェクトは中断中だが予算が付き次第再開される可能性あり
4. 宇宙飛行士向け超小型眼科診断装置「SS-OCT」
宇宙飛行で発症する眼疾患に関する研究を行うための超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT(以下、SS-OCT)」の開発プロジェクトをNASAと開発受託契約を締結して2019年より開始し、2020年初に第1フェーズの開発ミッションを完了した。開発の第2フェーズについては2021年に米政府が民主党に政権交代したことや、コロナ禍の影響で国家予算がコロナ対策に優先されたためNASAの開発予算が削減されたこともあり、一時中断状態となっている。
同プロジェクトは、長期的な宇宙飛行を経験した宇宙飛行士の約69%が、視力障害や失明の恐れがある神経眼症候群を患っているという研究報告※をもとに、宇宙飛行が眼領域に与える影響を研究することが目的である。現在、国際宇宙ステーション(International Space Station、以下、ISS)で使用されている市販のOCTは据え置き型で操作が複雑であり、数ヶ月間の宇宙ステーション滞在中に宇宙飛行士は3回しか検査できていなかった。今回、開発する超小型SS-OCTは、飛行士自身が毎日測定して記録を保存しておくことが可能となり、宇宙飛行が眼疾患に与える影響をより詳細に分析することで、疾患リスクの軽減や予防などに役立てていく。
※かすみ目や視神経乳頭浮腫、眼球後部平坦症、綿花状白斑等の眼疾患症状が報告されている。
開発フェーズは全体で3ステップに分かれており、第1フェーズのミッションは、耐久性と安価な光源であるレーザーを使用した概念実証(POC)の確認で、複数のレーザーを用いて視神経乳頭の形状を高解像度で測定する装置を開発することであった。2020年1月にNASAでデモンストレーションを行ったが、NASAのプロジェクト担当者からも高い評価を受けた※ 2020年2月に第1フェーズの開発を終了し、同年4月に開発報告書をNASA及びTRISHに提出し、開発受託収入37百万円を2020年12月期に事業収益として計上した。
※NASA担当者から、次のようなコメントが寄せられた。「小型でありながら操作が簡単で、データ処理が早い。宇宙飛行中の眼球への影響を研究するために、ISSで大いに役立つと信じている」「フェーズ1の使用条件を満たしているだけでなく、期待以上の完成度であった。外見も洗練され、軽くて持ちやすい。フェーズ2での仕上がりが楽しみである」
第2フェーズは、同装置を用いてどのような画像解析手法で宇宙飛行に起因する眼疾患の検証を行うか、運用上で必要となる要件定義を固める工程となり、最終の第3フェーズでは、実際に宇宙飛行環境において使用可能な装置の開発を進める。具体的には、宇宙放射線被ばくに対する耐久性を持ち、無重力環境下で宇宙飛行士自身が操作できるハードウェアの開発を提携企業と共同開発することになる。
現在は、プロジェクトが中断中であるが、NASAのプロジェクト担当者とは定期的にミーティングを行っており、継続の意向を確認している。このため、今後開発予算が付き次第、再開されるものと予想される。NASAでは月面飛行プロジェクトが動き始めるなど予算が再び付き始めていることから、今後プロジェクトが再開される可能性は十分にあると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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