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オンコリスバイオファーマのニュース
■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向
d) 胃がん・胃食道接合部がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法、米国)
ステージ4の胃がん・胃食道接合部がん患者を対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による医師主導の第2相臨床試験が、2019年5月より米コーネル大学などで進められている。ペムブロリズマブ投与中の患者に対してテロメライシンを投与し、半年程度の観察期間で安全性と有効性を評価する試験となる。予定症例数は最大で18例だが、2022年8月時点で14例の組入れが完了し、うち2例で部分奏功が確認された。現在、15例目を組入れ中だが部分奏功が確認できれば、企業治験に切り替えて開発を進めていく意向となっている。コーネル大学の担当医師から、「部分奏効率で標準治療を上回る結果であれば、企業治験に切り替えていく価値がある(ペムブロリズマブ単剤では約15%)」と言われているためだ。
このため、免疫チェックポイント阻害剤を保有するメガファーマと、ライセンス契約や治験計画の策定を含めた協議を2022年秋以降に進めていく予定にしている。ステージ4の患者では、腫瘍で食道が塞がることで嚥下障害となる患者も多い。テロメライシンで腫瘍を縮小させることで嚥下障害を解消し、患者のQOL向上に役立てることが可能になると同社では見ており、ライセンス契約締結に向けてはメガファーマがこうしたQOL向上といった価値をどの程度評価するかにかかっていると言える。
e) 頭頸部がん(免疫チェックポイント阻害剤/放射線との併用療法、米国)
同社は2020年8月にコーネル大学医学部らを中心とする研究グループと頭頸部がん患者(手術不能・再発または進行性頭頸部がん)を対象とした医師主導の第2相臨床試験を実施する契約を締結し、第1例目の症例がCR(完全奏功)を達成するなど良好な結果を得られていたが、頭頚部がんの治療指針が免疫チェックポイント阻害剤を中心とした治療法に変化してきており、現在試験を進めている併用療法で開発を進めていくことは困難と判断し、一旦組入れを終了した。今後、試験計画を見直したうえで、製薬メーカーと共同開発できるかどうか模索していくことになる。
f) 肝細胞がん(免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬との併用療法、日本)
中外製薬において肝細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ及び分子標的薬ベバシズマブとの併用療法による第1相臨床試験が2021年1月より開始されたが、ライセンス契約の解消に伴い両社協議のうえ、2022年10月で同試験を終了することが決まっている。
ただ、肝細胞がんに関しては2014年から2020年にかけて台湾・韓国で提携先のメディジェンと共同で単剤による第1相臨床試験を実施しており、評価可能な18例において安全性が確認されている。また、18例のうち3例で部分奏功が確認されたほか、8割は投与後の腫瘍体積が変化しないといった結果が出るなど薬効も確認されており、新たなライセンス先が決まれば、ライセンス先にて併用療法による開発を進めていく可能性はある。
g) 中国市場での取り組みについて
食道がんの患者数で世界最大となる中国市場では、中外製薬を有力候補先として契約交渉を進めていたが契約解消に伴い振り出しに戻った格好だ。ただ、重要戦略市場であることは間違いなく中国企業との交渉は適宜進めているもようだ。現時点では、国内で販売承認を取得して製品の価値を高めたうえで導出することを基本方針に据えている。
(4) 製造体制
同社はテロメライシンの製造体制の充実、製造拠点の分散によるリスク軽減などを目的に、商業用製品の製造委託先として新たにベルギーのHenogen SA(以下、ヘノジェン社)と2021年に提携し、米Lonza Houston, Inc.(ロンザ)との2社供給体制を構築していくことにした。現在、ヘノジェン社の製造拠点でプロセス開発及びバリデーションが順調に進んでおり、2022年内にGMP製造、2023年に商用製造が可能な体制を構築していく計画となっている。
(5) 成長戦略と潜在市場規模
テロメライシンの今後の成長戦略については、食道がんを適応症とする放射線併用療法での販売からスタートし、その後適応拡大と海外市場の開拓を進めていくことで収益最大化を図っていく戦略となっている。
まずは、国内における第2相臨床試験を予定通り完了し、2024年に販売承認申請を行うことを最優先課題に取り組んでいく。販売承認された場合は、「手術不適応な局所進行性の食道がん」が対象となり、「放射線療法の併用」が適用条件になると考えられる。その後はCRT療法や免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に適応拡大を進めながら市場を開拓していくことになる。副作用リスクが低いことから、手術不適応な患者や高齢患者にとっての1st-Line治療※になる可能性も十分考えられる。
※患者に対する最初の治療法。同治療で効果が無ければ2nd-Line治療を行うことになる。
国内における潜在市場規模については最大で200億円規模になると同社では推計している。国内の食道がん患者数は年間で2万人強となっており、このうち「手術不適応な局所進行性食道がん」の患者数の比率は5~8%、1,500~2千人程度と見られている。薬価についてはウイルス製剤として日本国内で初めて販売承認された第一三共<4568>の「デリタクト」(悪性神経膠腫治療薬)の薬価143万円を前提とし、テロメライシンは1クール3回投与するため、429万円(143万円×3回)となる。これに適応対象患者数の80%が利用すると仮定すると、50~70億円の売上が見込めることになる。
さらに、症例実績が積み上がってくれば、手術可能な患者でも手術を回避して放射線とテロメライシンの併用療法で治療を受けたい患者が一定割合出てくると予想されること、また、CRT療法との併用療法に適応拡大することができれば200億円規模まで国内の食道がん向けで売上が見込めるものと同社では推計している。また、海外市場においても米国でチェックポイント阻害剤との併用療法の開発に成功すれば、数百億円規模の需要が見込まれ、最大マーケットである中国市場での展開も含めて考えれば、将来的に国内外合わせて1,000億円を超える市場規模に育つ可能性がある。まずは、国内における第2相臨床試験の結果が注目されることになるが、順調に進めば2023年秋頃にもトップラインデータを発表できるものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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d) 胃がん・胃食道接合部がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法、米国)
ステージ4の胃がん・胃食道接合部がん患者を対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による医師主導の第2相臨床試験が、2019年5月より米コーネル大学などで進められている。ペムブロリズマブ投与中の患者に対してテロメライシンを投与し、半年程度の観察期間で安全性と有効性を評価する試験となる。予定症例数は最大で18例だが、2022年8月時点で14例の組入れが完了し、うち2例で部分奏功が確認された。現在、15例目を組入れ中だが部分奏功が確認できれば、企業治験に切り替えて開発を進めていく意向となっている。コーネル大学の担当医師から、「部分奏効率で標準治療を上回る結果であれば、企業治験に切り替えていく価値がある(ペムブロリズマブ単剤では約15%)」と言われているためだ。
このため、免疫チェックポイント阻害剤を保有するメガファーマと、ライセンス契約や治験計画の策定を含めた協議を2022年秋以降に進めていく予定にしている。ステージ4の患者では、腫瘍で食道が塞がることで嚥下障害となる患者も多い。テロメライシンで腫瘍を縮小させることで嚥下障害を解消し、患者のQOL向上に役立てることが可能になると同社では見ており、ライセンス契約締結に向けてはメガファーマがこうしたQOL向上といった価値をどの程度評価するかにかかっていると言える。
e) 頭頸部がん(免疫チェックポイント阻害剤/放射線との併用療法、米国)
同社は2020年8月にコーネル大学医学部らを中心とする研究グループと頭頸部がん患者(手術不能・再発または進行性頭頸部がん)を対象とした医師主導の第2相臨床試験を実施する契約を締結し、第1例目の症例がCR(完全奏功)を達成するなど良好な結果を得られていたが、頭頚部がんの治療指針が免疫チェックポイント阻害剤を中心とした治療法に変化してきており、現在試験を進めている併用療法で開発を進めていくことは困難と判断し、一旦組入れを終了した。今後、試験計画を見直したうえで、製薬メーカーと共同開発できるかどうか模索していくことになる。
f) 肝細胞がん(免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬との併用療法、日本)
中外製薬において肝細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ及び分子標的薬ベバシズマブとの併用療法による第1相臨床試験が2021年1月より開始されたが、ライセンス契約の解消に伴い両社協議のうえ、2022年10月で同試験を終了することが決まっている。
ただ、肝細胞がんに関しては2014年から2020年にかけて台湾・韓国で提携先のメディジェンと共同で単剤による第1相臨床試験を実施しており、評価可能な18例において安全性が確認されている。また、18例のうち3例で部分奏功が確認されたほか、8割は投与後の腫瘍体積が変化しないといった結果が出るなど薬効も確認されており、新たなライセンス先が決まれば、ライセンス先にて併用療法による開発を進めていく可能性はある。
g) 中国市場での取り組みについて
食道がんの患者数で世界最大となる中国市場では、中外製薬を有力候補先として契約交渉を進めていたが契約解消に伴い振り出しに戻った格好だ。ただ、重要戦略市場であることは間違いなく中国企業との交渉は適宜進めているもようだ。現時点では、国内で販売承認を取得して製品の価値を高めたうえで導出することを基本方針に据えている。
(4) 製造体制
同社はテロメライシンの製造体制の充実、製造拠点の分散によるリスク軽減などを目的に、商業用製品の製造委託先として新たにベルギーのHenogen SA(以下、ヘノジェン社)と2021年に提携し、米Lonza Houston, Inc.(ロンザ)との2社供給体制を構築していくことにした。現在、ヘノジェン社の製造拠点でプロセス開発及びバリデーションが順調に進んでおり、2022年内にGMP製造、2023年に商用製造が可能な体制を構築していく計画となっている。
(5) 成長戦略と潜在市場規模
テロメライシンの今後の成長戦略については、食道がんを適応症とする放射線併用療法での販売からスタートし、その後適応拡大と海外市場の開拓を進めていくことで収益最大化を図っていく戦略となっている。
まずは、国内における第2相臨床試験を予定通り完了し、2024年に販売承認申請を行うことを最優先課題に取り組んでいく。販売承認された場合は、「手術不適応な局所進行性の食道がん」が対象となり、「放射線療法の併用」が適用条件になると考えられる。その後はCRT療法や免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に適応拡大を進めながら市場を開拓していくことになる。副作用リスクが低いことから、手術不適応な患者や高齢患者にとっての1st-Line治療※になる可能性も十分考えられる。
※患者に対する最初の治療法。同治療で効果が無ければ2nd-Line治療を行うことになる。
国内における潜在市場規模については最大で200億円規模になると同社では推計している。国内の食道がん患者数は年間で2万人強となっており、このうち「手術不適応な局所進行性食道がん」の患者数の比率は5~8%、1,500~2千人程度と見られている。薬価についてはウイルス製剤として日本国内で初めて販売承認された第一三共<4568>の「デリタクト」(悪性神経膠腫治療薬)の薬価143万円を前提とし、テロメライシンは1クール3回投与するため、429万円(143万円×3回)となる。これに適応対象患者数の80%が利用すると仮定すると、50~70億円の売上が見込めることになる。
さらに、症例実績が積み上がってくれば、手術可能な患者でも手術を回避して放射線とテロメライシンの併用療法で治療を受けたい患者が一定割合出てくると予想されること、また、CRT療法との併用療法に適応拡大することができれば200億円規模まで国内の食道がん向けで売上が見込めるものと同社では推計している。また、海外市場においても米国でチェックポイント阻害剤との併用療法の開発に成功すれば、数百億円規模の需要が見込まれ、最大マーケットである中国市場での展開も含めて考えれば、将来的に国内外合わせて1,000億円を超える市場規模に育つ可能性がある。まずは、国内における第2相臨床試験の結果が注目されることになるが、順調に進めば2023年秋頃にもトップラインデータを発表できるものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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