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カルナバイオサイエンスのニュース
■業績動向
1. 2019年12月期の業績概要
カルナバイオサイエンス<4572>の2019年12月期の連結業績は、売上高で前期比325.0%増の3,207百万円、営業利益で977百万円(前期は1,144百万円の損失)、経常利益で957百万円(同1,159百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で828百万円(同1,210百万円の損失)となった。売上高は、創薬事業において2019年6月にギリアドとのライセンス契約締結に伴う契約一時金2,128百万円を計上したことに加え、創薬支援事業も米国、中国向けの販売好調で前期比53.2%増の1,079百万円と好調に推移したことが増収要因となった。「AS-0871」「AS-1763」の前臨床試験を進めたことにより研究開発費が前期比141百万円増加したものの、契約一時金の計上により営業利益は4期ぶりに黒字に転換している。
(1) 創薬事業
創薬事業の売上高は2,128百万円(前期は50百万円)、営業利益は577百万円(同1,261百万円の損失)となった。同社が次世代がん免疫療法として自社研究していた創薬プログラムについて、2019年6月に米ギリアドと開発・商業化にかかる全世界における独占ライセンス契約を締結し、契約一時金2,128百万円を受領した。今後、同プログラムの研究開発の進展に伴い、最大で450百万米ドル、及び売上高に応じたロイヤリティを受領することになる。
なお、ライセンス契約とは別に当該プログラムの開発をサポートするために、同社が開発した脂質キナーゼ阻害薬に関する創薬基盤技術を、有償でギリアドに一定期間、独占的に供与することになっている。
一方、米シエラに導出したがん治療薬候補のCDC7キナーゼ阻害薬※「SRA141」については、臨床第1相試験の開始が遅れている。シエラが別の開発候補品の臨床第3相試験にリソースを集中させているためで、様々な戦略オプションを検討していくと発表している。臨床第1相試験が開始されればマイルストーン収入4百万米ドルを同社は受領するが、こうした状況を鑑みると当面はマイルストーン受領を見通すことは困難と言える。なお、シエラとの契約では開発の進展に伴って最大270百万米ドルのマイルストーン、及び売上高に応じたロイヤリティを受領することになっている。
※CDC7キナーゼ阻害薬のメカニズムは、細胞分裂する際に重要なDNA複製等の染色体サイクルにおいて、その制御に深く関与しているCDC7キナーゼを阻害することで、がん細胞におけるゲノムの不安定化を引き起こし、がん細胞を死滅させるというもの。正常細胞については影響を受けないため、副作用のリスクも低いと見られている。
そのほか、同社では知財戦略も着々と進めている。2019年12月期における特許登録の実績としては、BTK阻害剤を中国、Wnt-Signal阻害剤を日本、CDC7キナーゼ阻害薬を日本と韓国、新規マラリア治療薬を米国で行っている。
(2) 創薬支援事業
創薬支援事業の売上高は前期比53.2%増の1,079百万円と初めて10億円の大台に乗せ、営業利益も同241.0%増の400百万円と4期ぶりの増益に転じた。米国、中国向けの販売が好調に推移したことが増益要因となった。
売上高の内訳を見ると、国内向けが前期比10.2%減の259百万円、欧州向けが同8.3%減の86百万円と低調に推移したものの、北米向けがギリアドからの大口受注(アッセイ開発等)もあって同154.0%増の634百万円と急増したほか、中国向けが好調だったその他地域向けも同38.3%増の99百万円と2ケタ増となった。国内向けについては、主力顧客である小野薬品工業を中心に研究開発予算の絞り込みが続いていることが影響している。ただ、下期だけで見ると前年同期比13.7%増と回復の兆しが見え始めている。米国に関してはギリアド以外にもバイオベンチャー向けにプロファイリング受託サービスが好調で、キナーゼ阻害薬に関する開発意欲が旺盛なことがうかがえる。
また、新規サービスとして2018年12月より開始した細胞評価の受託試験サービス(セルベースアッセイ)も、規模はまだ小さいものの計画を上回る販売実績となった。発光技術を用いた研究試薬のリーディングカンパニーであるPromega Corporationが保有するNanoBRETTM(ナノブレット)テクノロジー※を用いたサービスとなる。測定可能なキナーゼは当初47種類からスタートし、現在は100種類以上まで可能となっている。
※ナノブレットテクノロジーとは、化合物がターゲットとするキナーゼに対してどのように作用するのか、また、キナーゼの選択性や親和性など各種指標を簡易に測定でき、化合物の評価を効率的に行える技術。
そのほか、キナーゼタンパク質に関しては18個の新製品を投入したほか、プロファイリングパネルについても脂質キナーゼを含む2つの新規アッセイをパネルに追加し、サービスラインナップの拡充を図っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2019年12月期の業績概要
カルナバイオサイエンス<4572>の2019年12月期の連結業績は、売上高で前期比325.0%増の3,207百万円、営業利益で977百万円(前期は1,144百万円の損失)、経常利益で957百万円(同1,159百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で828百万円(同1,210百万円の損失)となった。売上高は、創薬事業において2019年6月にギリアドとのライセンス契約締結に伴う契約一時金2,128百万円を計上したことに加え、創薬支援事業も米国、中国向けの販売好調で前期比53.2%増の1,079百万円と好調に推移したことが増収要因となった。「AS-0871」「AS-1763」の前臨床試験を進めたことにより研究開発費が前期比141百万円増加したものの、契約一時金の計上により営業利益は4期ぶりに黒字に転換している。
(1) 創薬事業
創薬事業の売上高は2,128百万円(前期は50百万円)、営業利益は577百万円(同1,261百万円の損失)となった。同社が次世代がん免疫療法として自社研究していた創薬プログラムについて、2019年6月に米ギリアドと開発・商業化にかかる全世界における独占ライセンス契約を締結し、契約一時金2,128百万円を受領した。今後、同プログラムの研究開発の進展に伴い、最大で450百万米ドル、及び売上高に応じたロイヤリティを受領することになる。
なお、ライセンス契約とは別に当該プログラムの開発をサポートするために、同社が開発した脂質キナーゼ阻害薬に関する創薬基盤技術を、有償でギリアドに一定期間、独占的に供与することになっている。
一方、米シエラに導出したがん治療薬候補のCDC7キナーゼ阻害薬※「SRA141」については、臨床第1相試験の開始が遅れている。シエラが別の開発候補品の臨床第3相試験にリソースを集中させているためで、様々な戦略オプションを検討していくと発表している。臨床第1相試験が開始されればマイルストーン収入4百万米ドルを同社は受領するが、こうした状況を鑑みると当面はマイルストーン受領を見通すことは困難と言える。なお、シエラとの契約では開発の進展に伴って最大270百万米ドルのマイルストーン、及び売上高に応じたロイヤリティを受領することになっている。
※CDC7キナーゼ阻害薬のメカニズムは、細胞分裂する際に重要なDNA複製等の染色体サイクルにおいて、その制御に深く関与しているCDC7キナーゼを阻害することで、がん細胞におけるゲノムの不安定化を引き起こし、がん細胞を死滅させるというもの。正常細胞については影響を受けないため、副作用のリスクも低いと見られている。
そのほか、同社では知財戦略も着々と進めている。2019年12月期における特許登録の実績としては、BTK阻害剤を中国、Wnt-Signal阻害剤を日本、CDC7キナーゼ阻害薬を日本と韓国、新規マラリア治療薬を米国で行っている。
(2) 創薬支援事業
創薬支援事業の売上高は前期比53.2%増の1,079百万円と初めて10億円の大台に乗せ、営業利益も同241.0%増の400百万円と4期ぶりの増益に転じた。米国、中国向けの販売が好調に推移したことが増益要因となった。
売上高の内訳を見ると、国内向けが前期比10.2%減の259百万円、欧州向けが同8.3%減の86百万円と低調に推移したものの、北米向けがギリアドからの大口受注(アッセイ開発等)もあって同154.0%増の634百万円と急増したほか、中国向けが好調だったその他地域向けも同38.3%増の99百万円と2ケタ増となった。国内向けについては、主力顧客である小野薬品工業を中心に研究開発予算の絞り込みが続いていることが影響している。ただ、下期だけで見ると前年同期比13.7%増と回復の兆しが見え始めている。米国に関してはギリアド以外にもバイオベンチャー向けにプロファイリング受託サービスが好調で、キナーゼ阻害薬に関する開発意欲が旺盛なことがうかがえる。
また、新規サービスとして2018年12月より開始した細胞評価の受託試験サービス(セルベースアッセイ)も、規模はまだ小さいものの計画を上回る販売実績となった。発光技術を用いた研究試薬のリーディングカンパニーであるPromega Corporationが保有するNanoBRETTM(ナノブレット)テクノロジー※を用いたサービスとなる。測定可能なキナーゼは当初47種類からスタートし、現在は100種類以上まで可能となっている。
※ナノブレットテクノロジーとは、化合物がターゲットとするキナーゼに対してどのように作用するのか、また、キナーゼの選択性や親和性など各種指標を簡易に測定でき、化合物の評価を効率的に行える技術。
そのほか、キナーゼタンパク質に関しては18個の新製品を投入したほか、プロファイリングパネルについても脂質キナーゼを含む2つの新規アッセイをパネルに追加し、サービスラインナップの拡充を図っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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