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NANO MRNAのニュース
■開発パイプラインの動向
1. パイプラインの再構築
M&Aや提携の推進により、製品導入やアキュルナとの経営統合などもあり、ナノキャリア<4571>のパイプラインは数年前と比較すると様変わりした。臨床試験第III相段階のVB-111(卵巣がん)とENT103(中耳炎)、同第II相段階のNC-6004(頭頸部がん)の後期臨床開発3製品に重点特化し、早期収益化を目指している。また、革新的治療薬として期待される核酸医薬領域のパイプラインとしてNC-6100 siRNA(乳がん)、RUNX1 mRNA(変形膝関節症)、TUG1 ASO(膠芽腫)の3製品がラインナップされている。
2.後期臨床開発3製品
(1) 遺伝子治療薬(VB-111/卵巣がん)の開発状況と進捗
VBL(イスラエル)からライセンスを受けた遺伝子治療薬である。同社のミセル化ナノ粒子製剤は、腫瘍細胞を標的にした治療薬を目指しているのに対し、VB-111は腫瘍血管を標的としてがんを兵糧攻めにするとともに、腫瘍免疫を惹起する効果が期待できる。ミセル化ナノ粒子とは異なるメカニズムによる治療薬をパイプラインに持つことで、がん領域における同社の選択肢が広がり、経営基盤強化に資する。
一般論として、臨床試験には規模により通常数十億円~数百億円ほど必要であるが、第III相臨床試験段階にある製品であれば、成功確率やその後の開発費用などを鑑みると、十分に投資に値すると考えられる。同社は開発資金のみならず、経営基盤強化のための事業提携等を実施するためのキャッシュも調達済みであったため、2017年11月にVBLと国内開発・商業化権を取得することとなった。この事業は、遺伝子治療薬分野であり、ウイルス製剤ではあるが腫瘍へのデリバリーということでは、事業特性は類似しており、臨床開発のエキスパートを抱える同社において国内での開発を自社で担当することは可能であった。また、遺伝子治療薬VB-111は、免疫惹起作用も持ち合わせるなど、がん治療環境のニーズを満たしている。さらには、全身投与型で各種多様な固形がんなどへの応用拡大が見込め、米国では、大腸がんや脳腫瘍を対象とした治験がVBLにより実施されている。
「VB-111」を開発するVBLが2021年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で「承認申請が1年早まる可能性がある」と発表している。これらのことから、臨床試験が大きく前進すると予想できる。
また、同社が担当する国内の開発においては、がん治療の有力医療機関12施設(国立がん研究センター、がん研究会有明病院など)で第III相臨床試験の患者リクルートを開始しており、2021年6月に最初の患者投与が開始された。
VB-111は、「プラチナ抵抗性卵巣がん」が対象で、第一選択薬であるプラチナ製剤が効かなくなり、治療法がないと言われる患者さんにとって新たな治療法を提供できる社会的意義のある治療薬である。現時点では、競合する治療薬はなく、がん治療の医師から“ハイリー・アンメットメディカルニーズ”と言われている。海外ではアメリカ、イスラエルで先行しており欧州が追加され、また国内も第III相臨床試験に途中から参画できることになった。世界で400症例計画の中、既に約300例が登録済みであり、国内はうち30例を予定している。患者登録は2022年3月末までに登録完了を見込む。その後最後の患者を含めた観察期間を経て、全症例のデータ収集となる。順調にいけば、1年程度でPFSが取得でき、結果が良ければ承認申請に進む。販売は2~3年後(2024年頃)になると見込む。
(2) 耳科用抗菌薬(ENT103/中耳炎)の開発状況と進捗
セオリアファーマとの共同開発品である。日本市場において四半世紀ぶりとなる本格的な治験が実施された新規耳科用抗菌点耳薬であり、抗菌活性が従来品の10倍程度あることから高い有効性が期待され、既存薬の代替を目指す。国内において中耳炎を対象とした第III相臨床試験を実施しており、2021年5月に患者登録が完了している。2021年度末までに申請を目指しており、2023年頃には販売の見通しだ。重症中耳炎患者は老若男女全世代にわたっており、患者数としては比較的多く、早期の収益化に期待がかかる。
(3) シスプラチンミセル(NC-6004/頭頸部がん)の開発状況と進捗
抗がん剤開発市場はオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤が出現して、抗がん剤開発の環境がドラスティックに変化した。同社でもNC-6004の新しい併用療法としてキイトルーダとのコンビネーションで、頭頸部がんを対象とした欧米での第II相臨床試験に取り組んでおり、試験終了後には製薬企業へのライセンスアウトを予定している。NC-6004に封入されているシスプラチンは、免疫チェックポイント阻害剤との併用でがん治療効果への相乗効果が認められるとの報告が多数あり、シスプラチンの強い副作用を軽減するNC-6004の強みを生かした治療剤としての開発が期待できるとしている。第IIa相試験において、疲労、悪心/嘔吐、呼吸困難などの身体症状に改善が認められるなど、副作用については、既存のシスプラチンと比較して、発生頻度や重症度が改善されている。また、シスプラチンで臨床的に問題となる聴覚障害は一例も認められず、末梢神経障害については発現率が低く、軽度であったことが報告されている。第IIb相試験は、2021年度中に患者登録を完了予定で、124例中半数以上は既に登録完了している。主に欧州で開発しており、2022年度に見込まれる第IIb相臨床試験の結果をベースにして、ライセンスアウトを計画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<YM>
1. パイプラインの再構築
M&Aや提携の推進により、製品導入やアキュルナとの経営統合などもあり、ナノキャリア<4571>のパイプラインは数年前と比較すると様変わりした。臨床試験第III相段階のVB-111(卵巣がん)とENT103(中耳炎)、同第II相段階のNC-6004(頭頸部がん)の後期臨床開発3製品に重点特化し、早期収益化を目指している。また、革新的治療薬として期待される核酸医薬領域のパイプラインとしてNC-6100 siRNA(乳がん)、RUNX1 mRNA(変形膝関節症)、TUG1 ASO(膠芽腫)の3製品がラインナップされている。
2.後期臨床開発3製品
(1) 遺伝子治療薬(VB-111/卵巣がん)の開発状況と進捗
VBL(イスラエル)からライセンスを受けた遺伝子治療薬である。同社のミセル化ナノ粒子製剤は、腫瘍細胞を標的にした治療薬を目指しているのに対し、VB-111は腫瘍血管を標的としてがんを兵糧攻めにするとともに、腫瘍免疫を惹起する効果が期待できる。ミセル化ナノ粒子とは異なるメカニズムによる治療薬をパイプラインに持つことで、がん領域における同社の選択肢が広がり、経営基盤強化に資する。
一般論として、臨床試験には規模により通常数十億円~数百億円ほど必要であるが、第III相臨床試験段階にある製品であれば、成功確率やその後の開発費用などを鑑みると、十分に投資に値すると考えられる。同社は開発資金のみならず、経営基盤強化のための事業提携等を実施するためのキャッシュも調達済みであったため、2017年11月にVBLと国内開発・商業化権を取得することとなった。この事業は、遺伝子治療薬分野であり、ウイルス製剤ではあるが腫瘍へのデリバリーということでは、事業特性は類似しており、臨床開発のエキスパートを抱える同社において国内での開発を自社で担当することは可能であった。また、遺伝子治療薬VB-111は、免疫惹起作用も持ち合わせるなど、がん治療環境のニーズを満たしている。さらには、全身投与型で各種多様な固形がんなどへの応用拡大が見込め、米国では、大腸がんや脳腫瘍を対象とした治験がVBLにより実施されている。
「VB-111」を開発するVBLが2021年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で「承認申請が1年早まる可能性がある」と発表している。これらのことから、臨床試験が大きく前進すると予想できる。
また、同社が担当する国内の開発においては、がん治療の有力医療機関12施設(国立がん研究センター、がん研究会有明病院など)で第III相臨床試験の患者リクルートを開始しており、2021年6月に最初の患者投与が開始された。
VB-111は、「プラチナ抵抗性卵巣がん」が対象で、第一選択薬であるプラチナ製剤が効かなくなり、治療法がないと言われる患者さんにとって新たな治療法を提供できる社会的意義のある治療薬である。現時点では、競合する治療薬はなく、がん治療の医師から“ハイリー・アンメットメディカルニーズ”と言われている。海外ではアメリカ、イスラエルで先行しており欧州が追加され、また国内も第III相臨床試験に途中から参画できることになった。世界で400症例計画の中、既に約300例が登録済みであり、国内はうち30例を予定している。患者登録は2022年3月末までに登録完了を見込む。その後最後の患者を含めた観察期間を経て、全症例のデータ収集となる。順調にいけば、1年程度でPFSが取得でき、結果が良ければ承認申請に進む。販売は2~3年後(2024年頃)になると見込む。
(2) 耳科用抗菌薬(ENT103/中耳炎)の開発状況と進捗
セオリアファーマとの共同開発品である。日本市場において四半世紀ぶりとなる本格的な治験が実施された新規耳科用抗菌点耳薬であり、抗菌活性が従来品の10倍程度あることから高い有効性が期待され、既存薬の代替を目指す。国内において中耳炎を対象とした第III相臨床試験を実施しており、2021年5月に患者登録が完了している。2021年度末までに申請を目指しており、2023年頃には販売の見通しだ。重症中耳炎患者は老若男女全世代にわたっており、患者数としては比較的多く、早期の収益化に期待がかかる。
(3) シスプラチンミセル(NC-6004/頭頸部がん)の開発状況と進捗
抗がん剤開発市場はオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤が出現して、抗がん剤開発の環境がドラスティックに変化した。同社でもNC-6004の新しい併用療法としてキイトルーダとのコンビネーションで、頭頸部がんを対象とした欧米での第II相臨床試験に取り組んでおり、試験終了後には製薬企業へのライセンスアウトを予定している。NC-6004に封入されているシスプラチンは、免疫チェックポイント阻害剤との併用でがん治療効果への相乗効果が認められるとの報告が多数あり、シスプラチンの強い副作用を軽減するNC-6004の強みを生かした治療剤としての開発が期待できるとしている。第IIa相試験において、疲労、悪心/嘔吐、呼吸困難などの身体症状に改善が認められるなど、副作用については、既存のシスプラチンと比較して、発生頻度や重症度が改善されている。また、シスプラチンで臨床的に問題となる聴覚障害は一例も認められず、末梢神経障害については発現率が低く、軽度であったことが報告されている。第IIb相試験は、2021年度中に患者登録を完了予定で、124例中半数以上は既に登録完了している。主に欧州で開発しており、2022年度に見込まれる第IIb相臨床試験の結果をベースにして、ライセンスアウトを計画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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