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アンジェス Research Memo(4):コロナの影響で一部の臨床試験でやや遅れが生じているものの、大勢には影響無し

配信元:フィスコ
投稿:2020/09/04 15:04
■主要開発パイプラインの動向

アンジェス<4563>の主要開発パイプラインには、HGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴ、DNA治療用ワクチン等がある。各パイプラインの概要と進捗状況、今後の開発方針は以下のとおり。


HGF遺伝子治療用製品の米国での第2b相試験は2023年の治験完了、2024年の結果発表を目指す
1. HGF遺伝子治療用製品
HGF遺伝子治療用製品は、血管新生作用の効果を活用して閉塞性動脈硬化症の中でも、症状が進行した慢性動脈閉塞症向け治療薬として開発が進められてきた。慢性動脈閉塞症とは、血管が閉塞することによって血流が止まり、組織が潰瘍・壊疽を起こすことによって最終的に下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患である。治療法としてはカテーテル治療や血管バイパス手術などが行われているが、手術ができない状態になっているケースも多く、新たな治療法の開発が望まれていた。

HGF遺伝子治療用製品は、血管が詰まっている部位周辺に注射投与することによって新たな血管を作り出し、血管新生による血流回復によって潰瘍の改善や安静時疼痛の緩和といった症状の改善を図るというもの。国内では2019年3月に、「標準的な薬物治療の効果が不十分で、血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能、効果または性能として、条件及び期限付販売承認を取得し※、同年9月より「コラテジェン®筋注用4mg」として提携先の田辺三菱製薬を通じて販売を開始している。用法は、虚血部位に対して筋肉内投与を4週間間隔で2回行い(4mg/回)、また、症状が残存する場合には4週間後に3回目の投与を行うことも可能となっている。

※本承認の条件は、承認日から5年以内に、1)重症化した慢性動脈閉塞症に関する十分な知識・治療経験を持つ医師のもとで、創傷管理を複数診療科で連携して実施している施設で本品を使用すること、2)条件及び期限付き承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品を使用する症例全例を対象として製造販売後承認条件評価を行うこと、の2項となる。


また、今回は条件及び期限付承認となっているため、製造販売後承認条件評価を行うことになっており、5年以内に120症例のデータを収集し、非投与群80症例との比較を行い、同結果を持って本承認の申請を行う予定にしている。本承認されれば薬価も見直される可能性がある。同社では確実に本承認を得るために質の高い患者の登録活動を進めており、2020年6月までの進捗状況としては50例弱と順調に進んでいる。実施医療施設については徐々に増やしながらスピードアップを図り、目標としては3年程度で終了し、5年目での本承認を目指している。年換算だと40例ペースとなり、平均2.5回投与したとすると薬価ベースで年間60百万円の売上となる。症例データの収集・解析や治療後のフォローアップなどを含めて、製造販売後承認条件評価にかかるコストは合計で6億円超の規模になると予想される。

加えて、同社は「コラテジェン®」の対象領域を広げるため、慢性動脈閉塞症での「安静時疼痛の改善」を目的とした第3相臨床試験も2019年10月より開始している。予定症例数は約40例(うち、プラセボ群18例)で試験費用として6億円程度を見込んでいる。新型コロナウイルス感染症の影響で医療施設の体制が整わず、当初の予定よりは進捗が若干遅れているものの、こちらも2~3年程度の期間で臨床試験を終了させ、承認申請を目指すことになる。

一方、米国でも2020年2月より第2b相臨床試験がスタートしている。2019年6月に閉塞性動脈硬化症のうち、包括的高度慢性下肢虚血についてのグローバル治療指針※が公表されており、同治療指針を踏まえて下肢切断リスクの低いステージ1-2の患者を対象に、臨床試験を進めている。国内の臨床試験では症状の重い患者が対象であったが、米国では対象範囲を広げた格好となっている。主要評価項目は「潰瘍の改善」と「血流の改善」としており、治験プロトコルはHGF遺伝子治療用製品またはプラセボを2週間の間隔を置いて2回投与するというもの。被験者を4mg/回、8mg/回、プラセボの3群に分けて各20症例のデータを収集する(観察期間は12ヶ月間)。

※グローバル治療指針(Global Vascular Guidelines;GVG):包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic limb-threatening ischemia)の初期段階から適切な治療マネージメントを提供することで患者のQOLの向上を図ることを推奨している。本ガイドラインでは臨床ステージを4段階(clinical stage 1~4)に分け、それぞれのステージにおける治療方針が示されており、今回の試験では下肢切断リスクの低いclinical stage 1と2を対象としている。このステージの患者には、まず潰瘍の治療を考慮することがガイドラインで推奨されており、該当する患者は全体の約60%と専門家は指摘している。


米国での臨床試験の進捗状況については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で医療施設の体制が整わなかったこともあり、当初の予定から遅れ気味となっているが、2023年には被験者登録を完了し、2024年の試験結果発表を目指している。同社では試験結果が良好であれば、RMAT※指定制度を用いて早期承認を目指すことも選択肢の一つとして考えているようだ。米国における閉塞性動脈硬化症の患者数は日本と比べて格段に多いだけに、今後の開発動向が注目される。

※RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy):重篤な疾患を開発対象とした再生医療の先端治療法で、臨床試験で一定の効果を示したものに対する指定制度。RMAT指定を受けた品目は優先審査と迅速承認の機会を得ることができる。


そのほか、2019年2月にはイスラエルのKamadaとイスラエルを対象国とした導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しており、今後、イスラエルでも当局からの販売承認が得られ次第、Kamadaが販売を開始することになる。現在、Kamadaが同社の臨床試験データを用いて当局と協議を進めている段階だが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、承認時期については2021年以降となる可能性が高いと弊社では見ている。

なお、HGF遺伝子治療用製品の販売承認を条件付きながらも国内で得られたことで、遺伝子治療用製品としては国内初となっただけでなく、世界初のプラスミド(DNA分子)製品及びHGF実用化製品、末梢血管を新生する治療用製品、循環器医療領域での治療用製品となり、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す同社にとっては大きな第一歩を踏み出したものと評価される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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配信元: フィスコ
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